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「目がおかしくなったみたい。景色がぶれて見える」―標高3193メートルの南アルプス北岳山頂に立ったとき、息子・涼に高山病の兆候がみえ始めた。早めの下山を決意した父の滝川だが、途中で立ち寄った山小屋には誰ひとりとしていなかった。いったいこの山で何が起こったのか―?想像を絶するカタストロフィを描いた表題作など8篇の怪異譚にくわえ、新作『闇の底より』を特別収録!
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Posted by ブクログ
山岳小説あり、怪異譚あり、ホラーあり、SF小説ありと、まさにバラエティーに富んだ短編集。 著者の作品で読んでいるのは、南アルプス山岳救助隊K-9シリーズや山岳冒険小説なので、本書もその類いと思っていた。しかし解説を読むと、著者は怪奇ホラー長編も物しているようだ。 本書で印象深いのはやはり、表題作の『...続きを読む標高二八〇〇米』とその続編『リセット』。 ある日突然、標高2800mより上にいた人間だけが生き残り、それ以外の人間が消失してしまう。残された主人公たちの孤独で絶望的な日々が綴られる。 この状況に著者は、原発問題を絡めて、単なる消失劇とはしていない。 人類は地球にとって、当初は良性の腫瘍だったが、今では悪性の腫瘍=癌であり、そのきっかけは核エネルギーの発見だったと、登場人物に言わせている(『渓にて』で、俺たち一人ひとりの人間の中に、破滅のプログラムが密かに内包されていたからに他ならない、と記されている)。 やがて、生き残った人間も、制御を失った原発の放射能汚染により次々と死んでゆく。そんな中で、こんな状況に陥らないためには、「身の程を知ることだよ」と、一人の人物が語り、現代社会のリセットを促す。 他の作品で、ある人物に「人間は欲と傲慢さを捨てて、そろそろ謙虚さを学ぶべきなんだ」と言わせていることに通じる考えではないか。 南アルプスの麓で暮らし、現代文明への懸念を抱く著者の思いでもあるのだろう。
久しぶりに樋口明雄作品を読んだ。 初めて読む短編集。 山が舞台のものもあれば、そうでない物もある。 こんなSFやミステリーを書く作家だとはしらなかった。 それぞれがちょっと怖い作品。 個人的には、連作となる標高二八〇〇米とリセットが良かった。 収録作9作品 モーレン小屋、屍山、渓にて、霧が晴れた...続きを読むら、標高二八〇〇米、闇の底より、最終電車、夜よりも暗い影、リセット
「狼は瞑らない」の山岳サスペンスのイメージで読み始めたら全然違った。ホラー・SFの短編集だった^^; どれも明るい兆しがありそうな感じで終わるけど、でもそれでも悲しいし切ない。。希望よりも切なさの方が残った。
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