山白朝子のレビュー一覧
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すばらしいです。旅本作家の和泉蠟庵と荷物持ちの耳彦の二人組が旅先で奇怪な出来事に出会う連作怪異譚。上品で無駄のない筆致でつづられる奇怪で美しい怪異譚は、人が生きる上で生じる様々な暗い感情を悲しく切なく浮かび上がらせる。でも決して暗すぎることはない。マイペースな和泉蠟庵の迷い癖はすでに呪いのようなもので、また、それに付き合う耳彦はお世辞にも立派な人間とは言えず常に弱さをさらけ出している。この二人のとぼけた性格とやり取りが、和やかで優しい余韻を残してくれる。また、二人の存在が怪異譚を閉じずに常に未来に開いてくれている。
九編ともほんとうに見事な出来で、怖さの質もみな異なり、予想つかない展開もあり、 -
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短編集。
表題作は肌に合わなかったが、他は全部気に入った。
特に、巨鳥と暮らす少女の話が良かったな。
助けた鳥が、少女を大切に思うあまり、行き過ぎた行動に出ているところは怖くもあり、種族を超えた愛をも感じた。
また、生き物を廃液で黄金に変えてしまう工場の話は、途中まで神秘的な気配を感じていたが、ラストは欲に塗れた人間の末路という感じで、話の急変ぶりに驚いた。工場が閉鎖する前に大きな黄金を手に入れたいと考えた母親の思考はすぐ読めたものの、彼女を駆り立てた理由には全く気づかず、これもまたびっくりした。憎い相手を消して富も得るとは…人間って強欲だな。
他にも、井戸の中で暮らす女の話や、行ったこと -
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ネタバレ乙一/山白朝子のホラー短編集。
非常に久しぶりの、それこそGOTH以来なので20年以上読んでなかったことに衝撃を受けた。
どことなく残酷な世界だけど、ラストは切ない作品が多いイメージだったが、今作はがっつりと怖い。それも人間的な怖さから、理解不能なモノへの怖さなど、バリエーションも豊富。
おすすめは「階段」と「Wi-Fi幽霊」。
「階段」は、どこにでもある階段が非常に怖く思える、目を背けたくなるほどの嫌な話。
「Wi-Fi幽霊」は、まさかのAIがバディの私立探偵風な作品。
読後感がいい作品ばかりとは言えないが、手堅いホラーが揃った良い短編集。 -
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ネタバレ乙一さん、山城朝子さんの短編集で他のアンソロジーや短編集に入っているのもあります。私は最初と最後の話を目当てに読書。
最初は暴力的なお父さんに怯える姉妹の話。乙一さんは肉体的な暴力だけじゃなくて、精神的な暴力の支配とか影響を書くのが上手いと思う。読んでて痛々しくてつらかったです。(褒めてます)
そして乙一作品に出てくる姉もしくは姉的な存在って強いイメージ。困ってる人を支えてくれる立場で出てくるなーと。姉妹はこれから上手く生きていけるのかな、生きてほしいな…というラスト。
Wi-Fi幽霊の方は野良Wi-Fiにアクセスしてから怪奇現象に見舞われる主人公の話。中盤でお母さんと電話してる時の場面が -
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久しぶりに乙一の新作本をタイムリーに購入して読めました。
過去作はほとんど読んでいたと思いましたが、「階段」という作品は初めてでした。父という絶対的存在、ルール、家族構成とそれぞれの距離感など自分と重なる部分があり少し胸が痛みました。1番印象強いです。
他、新作を除く乙一名義の作品はどれも読んだものばかりですが当時読んでいた時からお気に入りだったお話だったので、またこういう形で読み返しできて満足でした。
WiFi幽霊ですが、私はすごく面白かったです。読んでいて怖さもあるんだけど、この主人公なら救いがありそうな感じ。最後に収録されていましたが、後味のよいもので締められていて良かった。 -
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山白朝子名義を含む乙一のホラー短編を集めた短編集。唯一の書き下ろし作品「Wi-Fi幽霊」を除き、すべて過去に発表されたものです。乙一ファンの私にとっては既読の作品が多かったのですが、結構内容を忘れていて、新鮮な気持ちで楽しめました。
中でも「Seven Rooms」は、初読時の強烈なインパクトが忘れられない一編で、再読してもその緊張感と構成の巧みさに引き込まれました。
新作の「Wi-Fi幽霊」は、主人公とAIの対話を通じて不思議な謎を解き明かしていく物語。乙一もついにAIという現代的テーマに踏み込んできたかと、時代の移り変わりを感じさせる興味深い作品でした。 -
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次々と襲いかかる不条理に次ぐ不条理からなる恐怖。
超自然的な力で齎される恐怖。
その振り幅の広い物語が詰め込まれていて、
最初から最後まで飽きることなく楽しめる。
乙一名義と山白朝子名義で作風に僅かな違いを持たせる書き方は非常に面白いな、と。
特に表題作「Wi-Fiの幽霊」は、WiFiの電波に幽霊が乗っかるっていう現代的な設定と、解決の糸口となるのがまさかのAI。ホラーの題材としてはかなり斬新だなぁ、という印象。
ティーンエイジャー特有の複雑な心情や、抱える問題。そういう部分にも焦点を当てる事が恐怖を増幅させる要素になっている気がする。 -
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山白朝子=乙一の別名義(ちなみに中田永一も)。名前でジャンルを書き分けていて、山白朝子はホラー寄り。
充実した内容の7篇の短篇集。
けっこうしっかり怖く、けっこうしっかりグロテスクなお話も多かった。中でも「鬼物語」は巨大な鬼が村を壊滅させてゆくのだけど、描写が容赦ない。鬼の話だけど現実で昔起きた三毛別のヒグマの事件を彷彿とさせる。
全体的に「人間の因果」を感じる物語が多かった。実際生きていると、人と人は思いがけないところで繋がっていることに気づくことがある。違和感の正体に気づいたときに、妙に納得することもある。
そういう現実でもあることをホラーの衣で包んで差し出されたような感覚。
オカルト -
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ネタバレ迷い癖のある旅本作家・和泉蠟庵と、荷物持ちとして彼の迷子に付き合わされる耳彦の奇譚集。
面白かったです。好きな世界観でした。
蠟庵先生は迷った先で名所や温泉に出くわすので道がわからず旅本に書けないし、耳彦は博打好きで借金をこさえがち。懲りないな。。
だいたい耳彦が命の危機寸前までいくけど、間一髪で蠟庵先生がきたりする。最終話もそうだけれど、見える範囲にいるのに迷子になる先生がこういうときはちゃんと辿り着くのでなんかあるのかなぁ。
お話はとくに、表題作と「あるはずのない橋」「「さあ、行こう」と少年が言った」が好きでした。
エムブリヲの健気さがかわいい。
「〆」は凄かった……小豆との顛末も、村で -
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ネタバレ最近万城目学さん、今村夏子さんと不思議な世界の作品を続けて読んでいる (*´˘`*)
こちらも土瓶さんから教えて頂いた山白朝子さんの不思議な八つの短編集( ᜊ°-° )ᜊ
短編集は好みではないのだけれど、このジャンルは別
グロ描写も多いが色々な内容が詰まった話ばかり(⁎˃ᴗ˂⁎)
特に惹き込まれたのはこの四話
『首なし鶏、夜をゆく』
風子のおばさんに、首を手斧で切断された鶏の京太郎ε('ﻬ')зコケッ
首がないのに地面の餌を啄ばむ仕草をしたり、首の切断面に開いた小さな穴から餌や水を吸収する姿はグロテスクε('ﻬ')зコケッ
ある日を境に何故か風子が学