山白朝子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
現代ホラー小説傑作集。これまた全部再読なのだけれど、傑作揃いというほかのないセレクションです。
かるかやシリーズの「芙蓉忌」、実はシリーズ他の作品に較べると印象が薄かったのですが。再読してみると、なかなかに怖いしひっそりとした切なさも感じる名作でした。なによりこのアンソロジーがこの一編で幕を開け、そしてラストが「七つのカップ」で優しく終わるという構成も素敵なのですよね(ラスト一歩手前が「あまぞわい」でとことんどんよりしたあとだというのもまた)。
小林泰三さんの「お祖父ちゃんの絵」をセレクトするというのもまたなんとも。これ、最初に読んでいるうちは「お祖母ちゃんの絵」の間違いじゃないの? って思うんですよね。それがタイトルの意味を知った時、なんという酷い意味なんだ、と。小林泰三作品にしてはまだましだと思ったのが、良い意味で裏切られた作品でした。 -
Posted by ブクログ
山白朝子と乙一と中田永一は同一人物だという知識を得て、その3人のアンソロジー本で山白朝子を知ってすごく好みのタイプだと思っていた。
そう思ってから初めて読んだ彼女(と呼んでもいいのか)の短篇集は、やはりとても好みだった。
乙一はホラー系で中田永一は恋愛系で山白朝子はミステリ系…みたいなざっくりとしたジャンル分けのイメージだったのだけど、この短篇集は全体を通して、微ホラー+微ミステリ+人間ドラマみたいな印象。ハートフルではないけれど考えさせられたり、浮世離れした設定なのに妙に現実味があったり。
8篇収録されているけれど、どれも同じくらい面白くて印象にも残った。
一番ぞっとしたのは「子どもを沈める」。学生時代にいじめに加担した過去を持つ女性が主人公。同じくいじめをしていた同級生3人が次々自分の子どもを殺してしまうという事件を起こし、そのうちの1人から「殺してしまった自分の娘の顔が生田目頼子そのものだった」という手紙が主人公の元に届く。生田目頼子とは、自分達がいじめて亡くなってしまった同級生で、そしてその手紙を受け取った時、主人公は身籠っていた。
呪いというものは本当にあるのか、それともそれぞれの中にある罪悪感が呪いを生むのか。
表題作はとても辛くて悲しい物語だけど、主人公の生きる力も同時に感じる。
1冊で色んな要素を感じられたし、読み物としてシンプルにとても面白くて、あっという間に読み切ってしまった。装丁も好み。 -
Posted by ブクログ
ああ、いいなぁ、これ。
まるで期待せずに読んだ。
この人の作品はハマるときはハマる。
中には「はぁ?」と首をひねりたくなる著書もあるのだが、今作はすべて良い。
短編集というものは、気に入ったものが1つか2つあればいいかとおもっていたが、9作品のすべてが好きだ。
これは自分的には結構珍しい。
時代はいつ頃だろう?
ざっくりと、江戸と明治のあいだくらいかな。
今で言うところの、旅行ガイドブックを書くのを生業としている和泉螂庵と荷物持ちの耳彦が各地をまわり、奇妙な体験をする物語。
まるであの「乙一さん」のような余韻の良さ。
奇妙で、悲しくて、怖くて、せつない。
ちなみに表題にあるエムブリヲとは、人間の胎児の、まだ赤ん坊の姿に成長する前の状態らしい。
続編も出ているそうなので、ぜひ手に入れようと思う。