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Posted by ブクログ
ああ、いいなぁ、これ。
まるで期待せずに読んだ。
この人の作品はハマるときはハマる。
中には「はぁ?」と首をひねりたくなる著書もあるのだが、今作はすべて良い。
短編集というものは、気に入ったものが1つか2つあればいいかとおもっていたが、9作品のすべてが好きだ。
これは自分的には結構珍しい。
時代はいつ頃だろう?
ざっくりと、江戸と明治のあいだくらいかな。
今で言うところの、旅行ガイドブックを書くのを生業としている和泉螂庵と荷物持ちの耳彦が各地をまわり、奇妙な体験をする物語。
まるであの「乙一さん」のような余韻の良さ。
奇妙で、悲しくて、怖くて、せつない。
ちなみに表題にあるエムブリヲとは、人間の胎児の、まだ赤ん坊の姿に成長する前の状態らしい。
続編も出ているそうなので、ぜひ手に入れようと思う。
Posted by ブクログ
シリーズ第2作『私のサイクロプス』を先に読んでしまったので、本作(第1作)に遡って読んだ。基本的には耳彦と和泉蠟庵の道中記で、第2作のメインメンバーである輪が一話のみ登場する。
人情味、ユーモア、ホラーのバランスが素晴らしい。
弱者に対して、ほのかな、あたたかい情愛が積み重なっていく過程を描くのがうまいと思う。
耳彦と和泉蠟庵の掛け合いも息がぴったりで、クスッと笑える。
人の交わりの温もりを描く一方で、肉親を犠牲にしてでも生き伸びようとする人の本能も炙り出す。美しさと醜さが同居して、双方を引き立てている。
「正しい文章」というのとは少し異なり、時々ねじれを感じるが、繊細な感情を汲み取って、はっとするような表現を生み出している。
<好きな話>
輪が主役の「ラピスラズリ幻想」が白眉で、あまりに切ない彼女の決心に号泣してしまった。
「「さあ、行こう」と少年が言った」では、少年時代の和泉蠟庵が登場する。家族に虐待される女を救う蠟庵少年は、まさに天使か救世主のよう。黄金に輝くススキの野の風景が、いつまでも頭から離れない。第2作ではいまいち影が薄い彼だが、この一篇を読んで大好きになってしまった。
<苦手な話>
「地獄」は、縦穴の閉塞感や腐臭があまりにもリアルで、夢に出そうで怖かった。結末がまさにタイトルどおりで、再読はしたくない。
「〆」は好きな話だが、家も食材もあらゆるものが人間の顔に見える地獄は、想像しただけで気が狂いそうだ。
本作が素晴らしかった分、第2作があれ程つまらなく感じたのが不思議だ。かと言って、もう一度第2作を読もうとも思わない。第3作の刊行に期待したい。
Posted by ブクログ
主人公の和泉蠟庵の設定が、方向音痴、わりと空気読(ま)めない、体力は鬼、しかしながら小柄、最終的に禿を気にし始めた時点でもう脳内配役が確定いたしました(……。)
そして長髪などという全くありがたい設定です。
大変けしからん。
耳彦は山田孝之さんが似合いそう。
濱田岳も合いそうだけれど蠟庵とバランス取れなさそう。
とはいっても実写じゃなくアニメ向きの話ではある。
ライトといえばライトか。
「ラピスラズリ幻想」の構成が好き。
しかし、繰り返すことはどちらかというと呪いに近いものも感じる。
それが故の結末なのだろうと思う。
何かを満たせば何かが満たされない。苦しい。
「〆」はなんとも言えず後味が悪い。
弱肉強食というか、諸行無常というか。
このあとの櫛〜じゃないけど羅生門的な切なさがある。
その世界で普通(と思われる)ことと、自分の中での普通とがブレたときに人はどう行動するのか。
「地獄」は全く違った意味で無力。
人も鬼もあまり変わらないのかもしれない。
「〆」の中でかたくなに守り何かを喪ったというのに、その信念は「地獄」の中ではいとも簡単に崩れさる。
しかし描写がなかなかである。
怖いというよりは気持ち悪いの方が近い。
「櫛を拾ってはならぬ」が一番いい感じにゾワゾワした。
怪談とはこういう物だ!というワクワク感もあり。
長い髪の毛はなんでかわからないけど怖いものの一つ。
髪の毛は抜けた途端に唯の髪の毛になってしまって、怖く感じる。
「「さぁ、行こう」と少年が言った」
これも設定がいい。「ラピスラズリ幻想」に通じる何か。
希望と切なさが交じる。
和泉蠟庵のまだわからない部分がわかる話の一つでもある。蠟庵少年がいい。
他にも何編かあるけれど、特にこれらが好きだった。
続編も読みたいけど文庫化はまだ先の様なので気長に待ちたい。
Posted by ブクログ
すばらしいです。旅本作家の和泉蠟庵と荷物持ちの耳彦の二人組が旅先で奇怪な出来事に出会う連作怪異譚。上品で無駄のない筆致でつづられる奇怪で美しい怪異譚は、人が生きる上で生じる様々な暗い感情を悲しく切なく浮かび上がらせる。でも決して暗すぎることはない。マイペースな和泉蠟庵の迷い癖はすでに呪いのようなもので、また、それに付き合う耳彦はお世辞にも立派な人間とは言えず常に弱さをさらけ出している。この二人のとぼけた性格とやり取りが、和やかで優しい余韻を残してくれる。また、二人の存在が怪異譚を閉じずに常に未来に開いてくれている。
九編ともほんとうに見事な出来で、怖さの質もみな異なり、予想つかない展開もあり、面白いです。以下、一言感想。
『エムブリヲ奇譚』拾った胎児との生活。圧倒的に怪しく切ない。一編目からぞわぞわして、がつんときた。
『ラピスラズリ幻想』特に好み。人生を繰り返す呪い。ある意味でもっとも怖い。唯一閉じた結末か。
『湯煙事変』ちょっとほろりとする切ない話。
『〆』米粒まであらゆるものに人の顔が見出せる漁村で、食べ物を受け付けなくなった耳彦の取った行動は。いやな話。
『あるはずのない橋』またまた耳彦の精神と人間性が試されてしまうのか。
『顔無し峠』耳彦は、今度は幸せな選択を迫られる。暖かくも切ない。
『地獄』恐い。理不尽で残酷な恐さ。さらなる極限状況に置かれた耳彦の戦い。もっとも恐ろしいもの、人間。
『櫛を拾ってはならぬ』特に心霊的で怪談色の強い作品で好み。落ちの異常さも怖い。
『「さあ、行こう」と少年が言った』最後をこの作品で締めてくれてよかった。いい話です。和泉蠟庵のことがもっと好きになる。
Posted by ブクログ
かなりおもしろかった。
短編集。
ラピスラズリ幻想
何度も人生繰り返して強くなる系の話は好き。トムクルーズ主演のあの映画も然り。ラストは切ない。この作者の切なさエンドは効くね。
〆
これもお気に入りの話。目に見えるものだけを嫌がったりするようなことは多い。スマホには便器並みの菌がいるとかそういう話に近い。ラストがいいんです。
顔無し峠
かなりグッときた。最近出会った人なのに…と登場人物本人も言っていたが、自分も同時にかなり感情移入してしまっていた。不思議な感覚だ。
「さあ、行こう」と少年が言った
家での仕打ちに、血管ブチ切れそうになるほどイライラした。これもラストがいい。
全体的に漂う雰囲気と、ラストがいい。
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