赤坂真理のレビュー一覧

  • 愛と性と存在のはなし

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    面白い。
    マイノリティ、の前にマジョリティとされているものを考える。マイノリティが抱えている問題とまったく同じ問題を、個人個人が抱えている。
    男と女のズレ、異性愛者と同性愛者のズレ、わたしとあなたのズレ、わたしとわたしのズレ。
    マジョリティというのは幻想なのかもしれない。

    2019年の東大入学式式辞のせいで傷付いた人間への寄り添いが感じられた。こう考えてくれる女性が存在するという事実を知るだけで、日々の緊張感が和らいだ気がする。

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    2023年08月20日
  • 東京プリズン

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    米メイン州の高校で行われたディベートのテーマは「天皇ヒロヒトに戦争責任はあったか」。
    日本人女子高生の幻想めいたエピソードは正直読み進めるのがしんどいが、それぞれが結末にしっかりと繋がっている。
    神でないなら人間か、男でないなら女か、個人とpeopleは別物か、という問いが面白い。

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    2022年01月12日
  • 東京プリズン

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    すごい、すごいよ!この小説は。
    よくこれだけのものを書き切れたと思う。
    メインは「天皇の戦争責任」に関してのディベートなのだが、それまでの狩やスピリチュアルが全て意味を持ちマリのスピーチに繋がっていく。
    アメリカ人の横暴な考えや日本人の卑屈な事なかれ主義、真珠湾、原爆、東京大空襲、はては人間キリストなど目から鱗が落ちた気がした。
    今、若い世代にぜひ読んで欲しい。そして現在の日本政府の在り方を考えて欲しい。

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    2021年06月27日
  • モテたい理由 男の受難・女の業

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    ネタバレ

     軽いテーマの本かなと思ったら、女性誌を題材にして本質に切り込むようなするどい内容で驚いた。「モテたい」という気持ちの後ろには何があるのかを解明していくので、なぜモテたいのかが分かるが、どうすればモテるかは全然分からない。また、他の著作にもあるような戦争やアメリカなどにも言及していて面白い。話題がハンカチ王子など15年くらい前のもので、藤原紀香と陣内智則の結婚が高評価されている。

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    2021年04月12日
  • 愛と性と存在のはなし

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    はたと気がつくと、私は性にかなり淡白だったのだろう。割ることをしたとは思うが、それのある程度生まれつきということかもしれない。と思いながら、申し訳ないなと思った。パートナーシップの中でかなり大きな部分を占めるから、この違いは困ったものだ。

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    2020年12月17日
  • 東京プリズン

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    評価が低いのは、わかる。たしかに読みづらい。パラレルワールド的な展開で進むから追いにくい。高校で読んだ時は離脱してしまった。

    ただ、内容は本当に面白いです。
    もしダメそうだったら後半三分の一だけ読むっていう御法度を犯してもいいのではないでしょうか。核になることが書かれてます。そこだけでも読む価値あると思います。
    輔弼というのがどこまでの責任を負う行為なのか。宗教とはなんなのか。私が学習した歴史と削ぎ落とされた歴史はどう混在しながら存在するのか。完全に思想に依存する話ではありますが、自分自身でこれら説明できる範疇になかったので、再考する良い機会になりました。

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    2020年08月15日
  • 愛と暴力の戦後とその後

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    アメリカから帰ってくる際に、日本の戦後を理解する必要を猛烈に感じた。
    そのため、白井聡と内田樹を読みながら、そうだ、赤坂真理も読もう!と思った。

    自らの半生を振り返りながら、戦後とはなにか、アメリカとの関係とは何だったのかを振り返る姿勢はとてもよいと思う。

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    2020年04月03日
  • 別冊NHK100分de名著 「日本人」とは何者か?

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    斎藤環の河合隼雄「中空構造日本の深層」を軸に繰り広げられる一種曖昧論の推奨が面白い。単に良しとはせずに入り込まれる隙ともなると言う指摘もうなずける。コミュニタリアズムと同調圧力の議論にも似て、空気の研究、言葉の自動機械化という宮台の言説ともほぼ近いのでは。

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    2019年04月13日
  • 愛と暴力の戦後とその後

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    偉そうだが「東京プリズン」という小説はそもそも小説技術において稚拙だった。個人的感情を含めての近代史論を展開するには小説は本来もってこいの手法だったはずだが、技術が惜しくも追いつかず作者の思惑が十分に表現できなかったように思う。翻って本作は、エッセイとしていわば「東京プリズン」のサブテキスト的に読んだが、むしろ感情的にも伝わって小説的な感動も受けたのだ。エーリッヒ・フロムや岸田秀あたりをおそらく経ずにほぼ同じような知見に達していることが驚かされる。英語原文からの日本国憲法の条文解説は、非常に面白い。これだけで一冊さらに掘り下げてほしいくらいだ。

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    2019年03月10日
  • 東京プリズン

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    作者の自伝的な小説。最後の留学先でのディベートは圧巻!恐らく実際に作者の留学時代の事実ではないだろうが。

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    2019年03月10日
  • 東京プリズン

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    小説という武器を使って、天皇と日本、戦争と暴力の出自をむき出しにする、その手腕に脱帽。ある意味著者のバイオロジーを剥き身にして晒す。「愛と暴力の戦後とその後」とパリティにして読むと腹に落ちる。
    読者に新たな日本人観、世界観の構築を促す力作。

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    2017年10月24日
  • 愛と暴力の戦後とその後

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    東京プリズンとパリティになっている。

    現代に至る「日本」というキーワードで隠語として隠されているものをむき出しにする感覚。まるで曼荼羅の様に読者個人の日本人観を再構築させる感覚を持った。

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    2017年10月24日
  • 愛と暴力の戦後とその後

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    ネタバレ

     著者の曖昧なことをそのままにしておくのが、耐えられない感じがすごくいい。「戦争放棄をしていながら朝鮮戦争やベトナム戦争の特需で経済発展」「自民党は保守といいながらアグレッシブに改革する」「学生運動での共産主義が流行ったのは他に反体制の受け皿がなかったから」などなどこれまでモヤモヤしながらもそんなものかなと受け流してきたものが明確になる指摘が多数あった。とても面白く、とても勉強になった。

     これまでに触れた、憲法改正への反対意見で最も腑に落ちて、改正してもいいんじゃないかと思っていたけど、反対したほうがいいような気になった。

     先に結論ありきで、理屈を後付するのとは全く違う感じがよかった。

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    2017年05月11日
  • 愛と暴力の戦後とその後

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    アメリカ的近代民主主義に対する戦後日本のラカン的受容(「他者の欲望」の欲望)を指摘し、これを外来の概念を内実の理解を伴わないまま「外来語」としてそのまま受容してしまえる日本語の特質に帰するあたりの言語感覚はさすが。論旨の流れにとっ散らかった印象を受けないではないが、高度成長期から東日本大震災に至るクロニクルを経て、受容したものを結局理解できずに放り出して明治憲法以前に回帰しようとする現代日本のレジームに対する視線は、温かみのある文章に彩られてはいるが痛みを伴うほどに穎敏だ。

    個人的には、偶然にも少し前に読んだ中公新書「昭和天皇(古川隆久)」と同様、「決断させてもらえない天皇」に触れている点が

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    2015年07月06日
  • 愛と暴力の戦後とその後

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    同い年の人が書いた文章は歩みが違っても共感性が高くなる。これが同時代性というものか。ただ同時代を生きながら、その中心にいるのではなく、辺縁を歩いているからこそ共感できるのかもしれない。この本のテーマは「物語」か思う。著者の問題意識は、「私たちの現在は、明治維新と第二次世界対戦後と、少なくとも二度、大きな断絶を経験していて、それ以前と以後をつなぐことがむずかしい」そのため「自分たちが、自分たち自身と切れている」ことを出発点に戦後の歩みについて著者が探していく「物語」である。最後にたどり着く結論は、「物語」はマジョリティを作り出す、そしてマイノリティを区別し、暴力性を持つ。だから「物語は弱者(マイ

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    2014年12月31日
  • 愛と暴力の戦後とその後

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    凄まじい。
    プロローグ、第一章「母と沈黙と私」と読んですでに「確かにあったのに、誰も語らなかったこと」が横溢している。
    第三章「消えた空き地とガキ大将」は、単独で優れたドラえもん批評。マンガと社会と歴史、現実と願望の関わりに迫った奇跡みたいな評論だ。
    第四章「安保闘争とは何だったのか」 こちらもまたハッとする。日米安保の原文は、日本がアメリカに保護をお願いし、アメリカがそれを受け入れる、という書き方である、という指摘。
    安保闘争は自国民による戦争裁判だった、参加者は一つ前の戦争と同じく特攻と玉砕で消えた、という指摘。
    第五章「一九八〇年の断絶」はちょっと残念。1980年頃のテレビドラマなどから

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    2014年07月24日
  • 東京プリズン

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    第1章の前に、「私の家には、何か隠されたことがある。そう思っていた。」との文が置かれています。
    「私の家」と同じように、日本にも、何か隠されたことがあります。
    これは私の予想ですが、日本には何か隠されたことがある、と肌で感じることができたのは、筆者の世代が最後なのではないかと思います。

    この小説は最終的には、主人公が留学(させられた)先のアメリカの田舎の学校で、「アメリカンガヴァメント」という授業の担当教員から命じられて、東京裁判のやり直しをディベートとして演じ(させられ)る、という場面で終わります。
    主人公が母によって留学させられる理由は結局はっきりしないのですが、母は自分ができなかった、

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    2014年06月06日
  • 東京プリズン

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    一度書いたレビューが飛んでしまったので長く書く気力はないが
    大傑作。ただ、1度読んだだけでは消化しきれない。
    わからないのではなく、立ち止って考えるところが多すぎて。
    マリ・アカサカは作者と同じ名だが作者自身ではない。
    そこが重要。自身の名をあえて作中に用いることで宙づりにしている。
    それはテーマにも重なる二重のフィクションとしてあるように感じた。

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    2014年01月05日
  • 東京プリズン

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    妄想のところはわかりづらかったが、少なからず日本人としてのアイデンティティを揺さぶられる。
    帯にもあるように、外国語に翻訳して世に問うてもいいのではという作品だった。

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    2013年09月06日
  • 東京プリズン

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     エンターテイメントでは、ない。
     複数の時間を往き来し、複数の人物が重なりあう。
     人びとの曖昧なアイデンテイを、表現するための文学的な方法としては、それほど珍しいものじゃない。
     リアルな小説ではないんだから。
     考えることの無かった、まさしく真空地帯に、楔を打ち込んだ。その時に、私たちは、何を知り、何を知らずにいたか。
     これまで繰り返されてきた理屈や論理が、あまりに表層的であったことに気付く。

     

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    2013年07月25日