赤坂真理のレビュー一覧
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小説の力、言葉の力を存分に味わえる傑作。豊潤なイメージに満ち、読者を迷宮へと誘い込む。純粋に小説として読めるならば、この作品の完成度の凄さにひれ伏したくなってしまうほどだ。ただし、天皇制の是非などという政治的な要素に囚われる人にはこの小説はまったく響かないであろう。
東京裁判を模したハイスクールでのディベートを軸に、「私」の意識は過去と現在、母と娘、「I」と「people」、昔住んでいた家と森、鏡のあちらとこちらを縦横無尽に移行する。「大君」とヘラジカの存在も印象深い鍵となる。アメリカの地で日本人である「私」を突き詰めていくうちに、日本とは何か、そこにある天皇とは何か、という根底に行き着く物語 -
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戦後に生まれ、戦争のことを知らないまま、アメリカに留学した、高校生のマリの物語。
アメリカン・ガヴァメントという授業で、天皇の戦争責任について、進級をかけディベートすることになる…という話は、この本が話題になった頃に知った。
複雑な物語で、どう言っていいかわからない。
たった一人で、カルチャーショックの中、母を国際電話で呼ぶ。
その回路が、2010年前後の、現在のマリに繋がり、二人は母子を演じながら会話する。
二人のマリは、両親の戦中、戦後を追い、バブル前後の自分たちも振り返る。
こういう、日本の近代史を見返していく部分がある。
その一方で、マリが留学中に地雷を踏むような形でアメリカ人の -
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ネタバレ『愛と暴力の戦後とその後』が素晴らしくて、それを読んで以来憲法改正には慎重な立場となった。それからずっとこちらの小説も気になっていて参院選の機会に読んでみたのだけど、けっこうしんどくて投票までに読み終わらなかった。
高校生なのに頭が良すぎる。外国語でディベートをするのもすごいし、それ以前に知識と知能がめちゃくちゃしっかりしていて、そんな子を落第させるなんて、アメリカの先生どうかしている。今50歳のオレの人生のどこを区切っても16歳の彼女より頭がよかったことなんかない。そういう意味ではあまり現実味を感じないほどだった。
時空と人格を超えて通信する場面は面白かったけど、ほかの幻想的な描写 -
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天皇の戦争責任のことを
日本人の少女が
アメリカで弁明する
というあらすじに惹かれて手に取ってみた。
これまで深く考えようと思ったことはなかったけど、確かに天皇って、世界に類を見ない不思議な存在だ。
生と死、男と女、戦争と平和、傀儡と主体、人民と統治。
色々な概念を総合して考えても、答えの出せない人?神?
だから、この小説は正直とてもわかりづらい。
色々なところへ飛んでいき、これはあれだと思った。
難解な演劇によくあるやつ。
ひとつの空間を色んなものにみせてくかんじ。
演劇みたいな読書体験。
でもこれはそうしないと、伝えられないからなんだ。
それくらい、私たちは複雑に屈折したものを抱えてい -
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「箱の中の天皇」
「東京プリズン」の時も思ったけど、攻めるなぁと。
こういう小説は赤坂真理さんにしか書けないのではないか。
ちゃんと読めたかどうか全く自信はない。自信がないのでネットで書評を読もうと思ったが、数が少ない上にあまりピンとこない。中島京子さんの読みたいのに何行かしか読ませてもらえない。
小説の感想にはならないが、この小説を読むことによって、天皇についていろいろ考えた。
今の天皇が誰にもよくわからない「象徴」という意味を考え、行動、実践されてきたことに対し、敬意を改めて持てた。誰にでもできることではないと思う。
本来なら私など「天皇制反対」みたいな方に行きそうなのだが、あのお二人を見 -
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「シン・ゴジラ」評がとてもおもしろかったので、著者の小説をしっかり読みたいと思っていた。
イデオロギーにまみれて日本ではまともな議論の成り立たない「天皇の戦争責任」。著者は、アメリカの高校でのディベートという舞台設定と、さながらシャーマンのように過去の人びとやときには野生動物と心を通わせられる主人公の組み合わせで読者を土俵にとどまらせる。
ベトナム、ネイティブアメリカンの人びと(あるいはその精霊)との対話は、ともすれば「米国だってお互い様」という主張の準備のようにも受け取れる。が、それはとりもなおさず日本もまた加害者である、という歴史から目を背けられないことも意味する。
主人公のマリが東 -
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近現代史ってよくわからなくないですか?
なぜ太平洋戦争が起きたか、
それ以前に、なぜ大東亜共栄圏のもと、
満州や朝鮮、台湾などを支配していたか、
についても、その動機や当時の民衆の考え方や空気が
イマイチつかめなかったりしますし、
そういう方ってけっこういらっしゃるのではないですか。
ぼんやりした近現代史のとらえかたで生きているからこそ、
現在に生きるぼくらの精神構造に少なからずその影響があり、
よくわからない矛盾や苦悩が、
意識上か意識下か、そのすれすれのボーダー付近から生じたりする。
本書は、そのような、ぼんやりとしかわかっていないひとの多い近現代史を、
自らもぼんやりとしかわかっていな -
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私小説というか,ルポというか.
著者が内面を掘り下げながら戦後を総括している.
感情的な語句が多く,こういう種類の新書はあまり読むことがなかっただけに,言葉を飲み込むのにとても時間がかかる.しかしながら,引き込まれる感覚があった.
戦後日本を振り返るならば,誰も責任を取らなかったし,責任を取ることを避ける世の中であり続けたし.また責任を取ることとはいったい何なのかという問いをもたらしているにもかかわらず誰もそこを直視しない現実が有り続けているということを,思考から導き出している.その思考が果たして正しいかどうかは置いといて,それでも圧倒的に深く考えて表現しているものになっていることは間違いない -
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高校生でアメリカに単身留学し、ホームステイをしながら、メイン州の小さな町で勉強する。冬はとても寒くL.L.Beanの本社があって町に住む人のハンティング・ブーツはみなL.L.Bean。機能的で暖かい。とても素朴な留学生活ですが、進級するためのディベートのシーンがとても苦しかったです。学校で唯一の留学生かつ日本人に「天皇に戦争責任はある」を議題に、リハーサルでは否定/弁護し、本番では肯定/訴える立場に立つという課題がでる。たくさんの内なる声を聞いて、混乱し、私とはかけ離れた存在になっていくようでした。天皇とイエス・キリストを比較したり、わたしという一人称で戦争責任を語ることの困難さが伝わり、息苦