【感想・ネタバレ】東京プリズンのレビュー

あらすじ

十六歳のマリが挑む現代の「東京裁判」とは?少女の目から今もなおこの国に続く「戦後」の正体に迫り、毎日出版文化賞、司馬遼太郎賞受賞。読書界の話題を独占し“文学史的事件”とまで呼ばれた名作!

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

米メイン州の高校で行われたディベートのテーマは「天皇ヒロヒトに戦争責任はあったか」。
日本人女子高生の幻想めいたエピソードは正直読み進めるのがしんどいが、それぞれが結末にしっかりと繋がっている。
神でないなら人間か、男でないなら女か、個人とpeopleは別物か、という問いが面白い。

0
2022年01月12日

Posted by ブクログ

すごい、すごいよ!この小説は。
よくこれだけのものを書き切れたと思う。
メインは「天皇の戦争責任」に関してのディベートなのだが、それまでの狩やスピリチュアルが全て意味を持ちマリのスピーチに繋がっていく。
アメリカ人の横暴な考えや日本人の卑屈な事なかれ主義、真珠湾、原爆、東京大空襲、はては人間キリストなど目から鱗が落ちた気がした。
今、若い世代にぜひ読んで欲しい。そして現在の日本政府の在り方を考えて欲しい。

0
2021年06月27日

Posted by ブクログ

評価が低いのは、わかる。たしかに読みづらい。パラレルワールド的な展開で進むから追いにくい。高校で読んだ時は離脱してしまった。

ただ、内容は本当に面白いです。
もしダメそうだったら後半三分の一だけ読むっていう御法度を犯してもいいのではないでしょうか。核になることが書かれてます。そこだけでも読む価値あると思います。
輔弼というのがどこまでの責任を負う行為なのか。宗教とはなんなのか。私が学習した歴史と削ぎ落とされた歴史はどう混在しながら存在するのか。完全に思想に依存する話ではありますが、自分自身でこれら説明できる範疇になかったので、再考する良い機会になりました。

0
2020年08月15日

Posted by ブクログ

赤坂真理は現代の巫女だ。
過去の自分の声だけでなく、太平洋側戦争で亡くなっていった人々の声も、そして元帥として戦争を指揮した天皇の声まで聞き取ってしまう。
細部までの生々しい描写から描かれる過去の声達もまだ生々しい。
我々は、過去の、死者の声に囲まれて生きている。
そのことを赤裸々に描き、過去が現在に通底していることを実感させる恐ろしい作品。

三島由紀夫の「英霊の聲」の再来。

0
2024年06月22日

Posted by ブクログ

若い娘にこういう事を聞くのはかなりむちゃだなあ…と思いました。
私も同じ年頃に聞かれたらわからなかったと思う…。

0
2023年07月07日

Posted by ブクログ

いやぁ、難しい本だった。
なもんだから、すごく時間がかかってしまった。
いわゆる文藝作品であり、物語小説ではないので書いてある事がちんぷんかんぷんなのだ。

内容はアメリカに留学した16歳の少女が、授業の一環で「天皇の戦争責任」を題材にしたディベートに参加するするという内容。

そもそも日本の社会科教育では、昭和史はほとんど勉強していない。
私自信もそうだし、今でもそうでしょ。
そんな少女がアメリカに留学してきた訳だから、日本人はそこんとこどう考えてるんだ?と興味が沸くのも解る。
しかし、日本人は知らないんだなぁ。。。。
で、必死に勉強する訳ですが、まあ解らない。
日本人の誰もがわからない事なんですから。

東京裁判とか日本国憲法とか。
それらはすべて英語。
英語を訳して、日本国憲法が出来てるわけだから、そんなの成立する訳ないのであって・・・

例えば天皇は「Emperor」と訳されてるけど、外人が感じるヨーロッパの君主としての「Emperor」と天皇は本来違うでしょ。
また、天皇に関しては、例えば「人間宣言」のくだりでは日本人さえわからない日本語が使われてて、それを英語に訳してアメリカ人(すなわち戦勝国)が理解しようとしてるし。

わかりやすい所で言えば、A級戦犯。
ほとんどの人が「rankA」と思ってるけど、元々は「classA」が訳されて「A級戦犯」になっちゃって、それが誤解を招いてるし、そういう事がいっぱいある訳ですよ。

私もまだまだ解らない事だらけで、その辺の事を少しでも知りたいなぁと思ってこの本を手にしたわけだが、ますます解らなくなってしまった。

ただし、解らない事さえ解らない人達は日本の事を論じてはいけないと感じます。
憲法守れ!とか言ってる連中・・・
それちょっと違うでしょ。
平和を守れ!なら百歩譲って理解しても良いけどね。
日本国憲法はもともと英語なんだから、英語で理解した上で「憲法守れ!」って言ってる?

その辺の事を考えさせられる本でした。
ただし、最初にも書きましたが、文章が凄く難しいです。
覚悟してください。
この本の後では、村上春樹だって簡単な文章に感じると思います。

0
2023年03月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

赤坂真理の自伝的な小説?

初めは、様々な時空をいったりきたりしながら「我が家の秘密」にたどり着くお話なのだろう、と思っていたら、「天皇の戦争責任」というテーマに真正面からポジションをとった話だった。

めくるめく表現のメリーゴーランド。抽象的文章やありきたりの日常の後に、具体的・非日常的文章に浸るのは心地よい。と同時に、最後の章までは、辻褄がどうあってくるのがわからず、若干つらい思いもする。

東京裁判、平成最後、天皇、日本の戦後、1964年東京都生まれ、高円寺、落合、ハンティング、ビートル、ハロウィン、インディアン、ヘラジカ、大君、ベトナムといったあたりがキーワード。

最後の章になって、見えてくるのが「罪の次元の違い」といった視点である。国が組織的に相手の国を焼き尽くすような罪と戦争に送り込まれた人間が狂気にかられて虐殺を行うような罪とでは罪の次元が異なるということだ。前者は、国や集団としてどのような宗教を信じるかということに連動した罪であり、後者は個人としてどのような信念にもとづき行動するか(あるいはしないか)という罪としてとらえられていると理解できる。

その前提で、天皇の戦争責任は「英霊」に対して「はしごをはずした罪」「軍部に利用されるがままになっていた罪」といったことが指摘される。これが、国の罪なのか個人の罪なのか、というあたりの二重性を起点にした議論につながるかがテーマの困難さにつながっているような気がするがそういう理解でよいのかどうか。

0
2020年10月03日

Posted by ブクログ

戦後に生まれ、戦争のことを知らないまま、アメリカに留学した、高校生のマリの物語。
アメリカン・ガヴァメントという授業で、天皇の戦争責任について、進級をかけディベートすることになる…という話は、この本が話題になった頃に知った。

複雑な物語で、どう言っていいかわからない。

たった一人で、カルチャーショックの中、母を国際電話で呼ぶ。
その回路が、2010年前後の、現在のマリに繋がり、二人は母子を演じながら会話する。
二人のマリは、両親の戦中、戦後を追い、バブル前後の自分たちも振り返る。
こういう、日本の近代史を見返していく部分がある。

その一方で、マリが留学中に地雷を踏むような形でアメリカ人の禁忌に触れていくところも描かれる。
ベトナム戦争と、神のこと。
もはやアメリカ人の思考停止に、マリと一緒に、フラストレーションをためてしまう。

ベトナムの二重双生児や、ヘラジカの姿にもなる「大君」の幻が、マリを揺り動かす。
母親と現代のマリが交錯することで、既に私たるものが何だかわからなくなるカオスが生まれていく。
そこに、これらの幻影だ。
もう、この小説がどんな結末を迎えるのか、さっぱりわからず、迷走するかのような気分。
しかし、このカオスの中、ディベートをしながら、マリはほとんどシャーマンのように、生身の体を持ちながら神でもある、大君にして人々そのものでもある、矛盾に満ちた「天皇」というものを理解する。
なるほど、カオスは周到に用意されたものであったか、と遅ればせながら気づく。
不思議なことに、読者として、大君を語るマリにカタルシスを感じてしまうのだ。

二度とは読めない、読まない小説だと思うが、衝撃的だった。

0
2019年11月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 『愛と暴力の戦後とその後』が素晴らしくて、それを読んで以来憲法改正には慎重な立場となった。それからずっとこちらの小説も気になっていて参院選の機会に読んでみたのだけど、けっこうしんどくて投票までに読み終わらなかった。

 高校生なのに頭が良すぎる。外国語でディベートをするのもすごいし、それ以前に知識と知能がめちゃくちゃしっかりしていて、そんな子を落第させるなんて、アメリカの先生どうかしている。今50歳のオレの人生のどこを区切っても16歳の彼女より頭がよかったことなんかない。そういう意味ではあまり現実味を感じないほどだった。

 時空と人格を超えて通信する場面は面白かったけど、ほかの幻想的な描写は頭に入って来なくて読むのに苦労した。そして何より長くてつらかった。

0
2019年07月24日

Posted by ブクログ

天皇の戦争責任のことを
日本人の少女が
アメリカで弁明する
というあらすじに惹かれて手に取ってみた。

これまで深く考えようと思ったことはなかったけど、確かに天皇って、世界に類を見ない不思議な存在だ。
生と死、男と女、戦争と平和、傀儡と主体、人民と統治。
色々な概念を総合して考えても、答えの出せない人?神?

だから、この小説は正直とてもわかりづらい。
色々なところへ飛んでいき、これはあれだと思った。
難解な演劇によくあるやつ。
ひとつの空間を色んなものにみせてくかんじ。
演劇みたいな読書体験。
でもこれはそうしないと、伝えられないからなんだ。
それくらい、私たちは複雑に屈折したものを抱えている。
それは天皇という範囲を超えて、太古の日本から、第二次世界大戦以降まで、私たち日本人が抱えているもの。
もっと広く、世界中の「国民」と呼ばれる人たちが、かかえているものなのかもしれない。

その国に生まれただけだけど、その国の国民となって、生きていく。
その国のルールの中で、考え方の中で。
これまで戦争ものって、人としての生死の尊厳を主題として感じることが多かった。
でもこの本が私に提示してくれたのは、人として生き、行動し、意思を持つことに対する尊厳の根源のようなものだ。
それを揺るがされてしまうものが、戦争ということそれ自体に内包されている。
こんなことしていいのかっていう畏怖みたいなもの。
それを抱えきれない、人は。
そんなストレスフルなこと、絶対やめようよ。

0
2019年07月08日

Posted by ブクログ

東京裁判における天皇の責任という問題を、アメリカ留学中の高校生マリがディベートで追訴する。自分の土壌でない場所で、相手のルールで物事が進めらていく極度のストレスは経験からかなり共感するところがあった。母娘関係、第二次世界大戦の振り返り、戦後の日本人の思考方法など様々な重い問題が何層にも書かれていて、正直読んでて気が重かった。だがそれらを束ね、振り分けて小説にうまく取り込み、主人公の30年の虚無感に救いを見出して示してくれた作者には拍手を送りたい。

0
2019年06月26日

Posted by ブクログ

「シン・ゴジラ」評がとてもおもしろかったので、著者の小説をしっかり読みたいと思っていた。

イデオロギーにまみれて日本ではまともな議論の成り立たない「天皇の戦争責任」。著者は、アメリカの高校でのディベートという舞台設定と、さながらシャーマンのように過去の人びとやときには野生動物と心を通わせられる主人公の組み合わせで読者を土俵にとどまらせる。

ベトナム、ネイティブアメリカンの人びと(あるいはその精霊)との対話は、ともすれば「米国だってお互い様」という主張の準備のようにも受け取れる。が、それはとりもなおさず日本もまた加害者である、という歴史から目を背けられないことも意味する。

主人公のマリが東京裁判的正義を振りかざす教師に立ち向かうシーンは、実際にはそれができない日本人のささやかな幻想かもしれない。だが、そのセリフには胸を打たれる。

「『私たちは負けてもいい』とは言いません。負けるのならそれはしかたがない。でも、どう負けるかは自分たちで定義したいのです。それをしなかったことこそが、私たちの本当の負けでした。・・・自分たちの過ちを見たくないあまりに、他人の過ちにまで目をつぶってしまったことこそ、私たちの負けだったと、今は思います」(P526)。

安藤礼二、三島由紀夫(「英霊の聲」)といった参考文献はまさにゴジラとも響きあう。他の著作も読みたい。

0
2019年04月07日

Posted by ブクログ

なかなか理解が難しい作品であったが、終盤のディベート最終弁論が良かった。天皇の想いが活字になって蘇ってきたように感じた。
キリストと天皇の対比も面白い視点だった。アメリカという国の不合理さもわかる気がした。
作品中でも指摘があるように太平洋戦争とそこに至る歴史を本当に教えられていない。歴史認識が叫ばれる昨今、他国も含めて理解しなければならないと思う。

0
2015年11月06日

Posted by ブクログ

バブル期の頃に多感な時期を迎えた少女が、アメリカ留学先の学校の授業で、天皇の戦争責任についてディベートを行う。その準備の際に、今まで考えたことのなかった敗戦国日本;天皇、戦勝国アメリカ;キリスト教等の対比について考え、感じ取っていく。
バブル期に父親の事業不振で、「電気の川(送電線)」の流れる高井戸から、醜悪に開発された本当の郊外への転居し、環境適応の端緒を失いかけた少女。母親の意思でアメリカ留学、それも環境厳しいメーン州の田舎へ遣られる。風土やカルチャーが全く異なる中でマイノリティ、エスニック、さらに敗戦国の人間として彼女はますます疎外を感じる。その様子は、ハンティングでヘラジカを殺し食す描写、結合双生児をモチーフとしたベトナム戦争や殺戮されたネイティブ・アメリカンや終戦直後に自分と同じような年齢であった母と戦勝国の関係などのイメージが夢や空想の中に登場する様などで執拗に語られる。
日本における天皇と、彼らの唯一神の対比、戦勝国と敗戦国、アングロサクソンとアジア/ネイティブアメリカンの対照などについてがテーマとなる。彼らアメリカは自分たち自身の絶対性を刷り込まれているが、ベトナム戦争が陰をおとしている。そして日本人は、彼らが自分たちの絶対性に依る前で、その相対性をわからしめたい、と苦闘する。
そして、物語全体は、母と娘の輪廻のイメージで包まれている。
多彩なテーマを、女性作家特有の心象風景独白のコラージュでまとめあげるのは相当な力技だと思うし、全体を、ごく読みやすい小説というパッケージに仕上げることができるのも実力の証か。ただ、細部はライトノベル風のあっさりしたタッチを感じる。

0
2018年10月14日

Posted by ブクログ

本屋で『ある晴れた夏の朝』を見かけ、その内容が“アメリカの学生が原爆投下の是非をディベートするお話”と知り、じゃぁ『東京プリズン』と合わせて読んでみようかなと。

『東京プリズン』は、このなんともホラーな表紙wのせいもあり、出た直後から知っていた。
日本の女子学生が、“第二次大戦において天皇に戦争責任はあったのか?”を米国の学生とディベートするお話と知って、読んでみたいなーとは思ったものの。
ただ、ま、他に面白いミステリー小説があったんだろうね(^^ゞ
結局、読まなかったw

ていうかー、こういうお話だとわかっていたら、当時は絶対読まなかっただろう。
それこそ、本屋で『ある晴れた夏の朝』を見て。どちらも第二次大戦について学生がディベートするお話だから、「合わせて読んでみるか」と酔狂起こさなきゃw、絶対読まない本だと思う(^^ゞ
というのも、これって、そのディベートの部分も含めて、著者のインナースペース(内的宇宙)を巡るインナートリップ(今は「マインドトリップ」の方がわかりやすい?)のお話なのだ。
簡単に言えば、陰鬱な「ファンタジー?」みたいな。
そーいえば、『ある晴れた夏の朝』は、ミョーにキレイな、カラッと明るいお話だったけど、だからって、これは『裏・ある晴れた夏の朝』なんだと言うには陰鬱すぎる。
もしかしたら、著者自身、これは他の人に読んでもらう小説というより、自らのインナースペースを旅することで、日本とはなにか?、日本人とはなにか?、日本語とは何か?といった自らの疑問と向き合う…、みたいなことの方が目的だったような気がするかな?
とはいえ、著者って、結構エキセントリックな作家らしいから。
もしかしたら、そもそもこういう作風なのかもしれない。
そこはわからない。


『ある晴れた夏の朝』も日本語の特性(特異性?)が一つの主題になっていたけど、これは、そのことがもっと内容に関わっている。
ストーリー的には、その辺りが語られる、真ん中よりちょっと前くらいから面白くなった。
といっても、すぐにまた、インナートリップしちゃうし。
ニッポン人からするとゲンナリしちゃうw、アメリカのティーンエイジャー特有の価値観や、アメリカの保守的な価値観に染まった人たちと主人公の陰鬱なコミュニケーションにウンザリって感じ(^^ゞ

「最終章」で、やっとそのディベートが始まるので、ストーリが進むこともあり、面白くなるのだが、でも、また途中でインナートリップ┐(´д`)┌
そういえば、この小説にあるインナートリップの描写を「村上春樹を思わせる」みたいな感想を書いている方が何人かいたけど、そこは全然気がつかなかったこともあり、「なるほど!」と。
「そうか。村上春樹の小説にあるファンタジー要素って、たんにインナートリップとして読めばいいんだな」って、そこは大いに気づかされた。


でー、肝心の「天皇の戦争責任」をめぐるディベートだけど。
『ある晴れた夏の朝』を読んだ時は、このディベートの内容って、第二次大戦が歴史の教科書の出来事になっちゃった今、高校生はともかくも、小学高学年〜中学生くらいだとどこまで理解出来るんだろうか?と思ったけど。
ここで語られる歴史認識や歴史解釈は、一般的な大人ですら、どこまで理解が追いつくんだろう?という感じ。

自分は、第二次大戦のことを系統だててわかっているわけではないタイプ…、つまり、大人になってから中途半端にいろいろな本を読んで、中途半端にいろいろ知っているというタイプだから、このディベートの内容になんとかついていけている……、のかな?wという感じだ(^^ゞ
ここで語られていることは、たんなる世界史だけじゃなくて、「その世界史」が書かれた政治的な背景(国の思惑)にも触れている。
そうなってくると、高校で「世界史」を選択したくらいじゃ、ちょっとキツイんじゃないのかな?と思うんだけどどうなんだろう?
だって、それなりに近代史に興味を持っている日本人でも、「東京裁判」の詳細となると結構盲点だと思うのだ。
ただ、自分は「世界史」を選択していないので、その辺はなんともだ。

ていうか、ここでは歴史だけでなく、(今も昔も変わらない)一般的アメリカ人が信仰するキリスト教の当たり前(その非論理性による自らの欺瞞を正義とするために、合理的に利用する)までもディベートの内容に入ってくるので。
その辺となると、普通の日本人だと全く想像の外だと思うのだ。
例の「トランプ現象」があったことで、億万長者のトランプ氏を「中間層」とは名ばかりの中西部の貧乏白人層が支持するその背景の意味不明さを知りたいがために色々本を読んでいく内に、どうやらそこには、キリスト教を盲信する「アメリカの伝統的価値観」が大いに関わっているらしいとわかるけど。
でも、(この本にも出てきたけど)アメリカといったら、NYと西海岸、テイラー・スウィフトはファッションアイコン、今日も大谷翔平がホームラン!というのがアメリカだと思っているのもニッポン人だ(^^ゞ
もっとも、「天皇の戦争責任を学生がディベートする」なんて内容の本を読むのはそういう一般的ニッポン人じゃなくて、ちょっとエキセントリックな人なのかもしれないけどね(爆)


著者の史観?
著者がこの本で書いている(ディベートとして出てくる)、大日本帝国を戦争に暴走させてしまった原因は、うろ覚えだけど渡部昇一の史観と似ているように思った。
そういえば、石破さんも「戦後80年の談話」として、あの戦争の原因として最初に大日本帝国憲法を挙げていたけど。
渡部昇一は、大日本帝国憲法の不備を元老がカバーしていたんだけど、最後の元老である西園寺公望という“重し”がいなくなったことで、軍部による統帥権干犯が発生。それによって、軍部の暴走したことであの戦争に突っ走っていいってしまった…、みたいなことを書いていて。
渡部昇一というと、「左がかった目で物事を見ることが正しいこと!」になっちゃった今のニッポン人からすると「右」の人になっちゃうのか(某日本の首相と比べたら全然ニュートラルなのにね)、最近はあまり語られなくなっちゃった人だけど。
(ていうか、2017年に亡くなっていたんだなぁ…)
決して、極端な国粋主義者というわけではなく、ある意味合理的な視点で歴史を見ていた人だと思う。
もちろん、合理的に視点で歴史を見ることで戦前戦中の日本を擁護しすぎた面もあるのだろう。
でも、たんに耳障りがよさだけで、左がかった「今の正しい」を盲目的に信仰する人たち、あるいは、その逆の「過剰に日本正しい!」に陥っている人たちに溢れている今のニッポンの論理と比べたら、渡部昇一の合理的な歴史の見方というのは全然公正だし。
なにより、中道だ(^^ゞ
ただ、中道というのは、当たり前のことだから退屈で。
左がかった「今の正しい」や「過剰に日本正しい」みたいなデタラメの極論の方が面白いから、そっちを信じて、お祭り騒ぎしたいのはわからなくもないんだけどね。
でもさ。
いつの時代も、どんな国でも、国がおかしくなるのは国民の極論好きから始まるんだよ。


ディベートの中で、天皇の仕事は「恋をすること」というのが出てくるが。
確か、渡部昇一も『日本史から見た日本人』で、その辺りのことも書いてなかったかな?
(違うか? それは『逆説の日本史』だったか? 忘れたw)
ていうか、これは日本人である著者が書いたフィクションだから、アメリカの学生が「天皇の仕事が恋をすること」と言っても不思議はないのだけれど。
もし、アメリカ人のフツーの学生が本当にそれを理解出来ているのだとしたら、かなりビックリだ(^_^;)
たぶん、著者は自らの知識でそれをアメリカ人の学生に言わせているんだとは思うけど、いずれにしてもニッポン人はもっとアメリカ人のことを知ったほうがいいのは確かだろう。


この『東京プリズン』と『ある晴れた夏の朝』、どちらも★3つにしたのは、それぞれ帯に短し襷に長しなんだよなぁーと思ったから(^^ゞ
誰か、今っぽく左寄りでもなく、今っぽい右寄りでもない、ちゃんとモノの見える人が、これらの中間くらいのものを書いて欲しいかなぁーと思う。

0
2025年11月08日

Posted by ブクログ

「天皇の戦争責任」「東京裁判」と題材はよかったのだけど、話が行ったり来たりして、追いついていけないというか、理解ができない部分も多くて‥。
「人はどんなに長く生きても人生に時間が足りたと思うことはないのだろう」
カリキュラムは卑弥呼から始めて明治維新あたりで時間切れになるようになっている。確かに‥正直、卑弥呼だの縄文だのってこれから生きていく上で必要だろうか?ならば近代日本史をもっと学ぶべきだし、戦争のあり方について、過ちについて学ぶべきだと思う。
それと終戦記念日について。なぜ「敗戦」ではなく「終戦」なのか?なぜ負けたのに「記念」するのか?考えたこともなかった。でも言われてみれば、そうだよな!って。

0
2025年11月07日

Posted by ブクログ

なかなか難解であった。突然、人の夢の中入っていくよう。文章は上手いので読んじゃうけど、意味が追えなくて文字見てるだけみたい。
実際の裁判について一度調べてみたくなった。かも。

0
2025年03月16日

Posted by ブクログ

正直、半分くらい、意味わからなかった。
ただ言えることは、アメリカでは、ハイスクールの頃から、日本の国会でもありえないレベルの討論が行われていて、そんな教育環境下で抜きんでてきた、いずれ国の代表となるような方と、平等な会話ができるぐらいの、この国の代表いるわけないよねーという結論しか出てこなかった。

0
2024年07月31日

Posted by ブクログ

アメリカの地で、『日本の天皇には第二次世界大戦の戦争責任がある』という議題でディベートすることになったら、どう議論を展開させていきますか。

天皇制や東京裁判、アメリカの歴史など、もっといろんなことを勉強し、もっとちゃんと考えておかなくちゃと痛切に思いました。

こんなにスピリチュアルな作品だとは思ってなかったので面食らいましたが、日本人としてのアイデンティティを改めて考えるきっかけを与えてくれました。

私は日本人で良かったと、心から思うのでありました。

0
2023年11月16日

Posted by ブクログ

やっと読み終えたって感じです
正直あまり面白くはなかったです
現在の女と彼女の30年前の話が行ったり来たり
30年前はまだ学生で、日本の学校になじめず
なぜか留学しアメリカの学校へ
進級試験に「天皇の戦争責任」のディベートを
指示される
夢の中の話や架空の話が多く
展開はだらだらした感じでした
いろんな記述がなにか回りくどいというか
そんな印象でした

0
2020年11月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 前半は天皇と日本国民の関係などを夢や幻想で比喩として表している部分が多く、読み進めるのがとても辛かったです。
 後半は三島由紀夫の小説が引用されていることに象徴されるように、右翼的な(親米ではない)目線で物語は展開されていきます。東京裁判であまりにも不当に日本を裁いたアメリカへの批判はもちろん、戦後そのアメリカに何の反発も持たずに憧れすら抱いている日本人を痛烈に批判している様は見事です。
 しかし総合すると、前半や後半にもたびたび出てくる夢や幻想の部分が私にはどうしても合わず、このような評価となりました。それがなければ星4つでした。

0
2020年05月18日

Posted by ブクログ

天皇とはどういう存在か。
日本人目線と、アメリカ目線で考えさせられる。
是非日本の学校でもこの題材でディベートしたら面白いと思う。
なぜなら現代の日本人はあまり天皇について深く考えることを避けているように思います。

0
2020年03月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

複雑。
いろいろ思うところはあるし、考えるネタは提供されるが、夢のような部分が長く、そこが個人的には共感し難く、読むことも苦痛に近かった。
そこを越えて、天皇の戦争責任に関するディベートのところは示唆に富み、なるほど、と思わされるところも多く、あらためて考えてみたいと思わせられた。戦後の日本人が「女」になったとの分析は、特になるほどと思わされた。妙に納得できた。媚びなのだな、と。

母親とのくだりや、幻想の場面よりも、ここに集中してくれれば良いのにと思ったが、作者にはこだわりの部分なのだろうな。

0
2019年08月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

小説の面白さは素材選択の時点であらかた決まるようです。

「天皇の戦争責任」という重いテーマを、戦勝国の米国で、そして理詰めだけの議論競技「ディベート」という場で、さらに日本人一人という孤立無援の状況で展開されるストーリーの着想は秀逸です。

とはいえ、付随して展開されるサブストーリーは私には意味不明で、この小説の素晴らしさを減じたように感じました。

そして私がこの小説から気づかされた点が2箇所ありましたので、紹介します。

キリスト像はなぜ磔の図であるのか、なぜ拷問の果てに死んだ救世主の図を崇め、その後に復活した彼の方に興味を持たないのか?
それは、イエスを教会が神の一人子として独占するために、子孫のない絶対唯一の存在とした方が都合がよかったからなのでは?という指摘が1つ。(P516)

もう1点は、議論相手から真珠湾攻撃というだまし討ちを非難されたときに、これはあくまでも手違いの事故であってそもそも軍事施設を攻撃したもので民間人を狙ったものではないと主張すると、では南京大虐殺や731部隊が犯した残虐行為は?と問われたときの答えです。
この時、当時の天皇が彼女に乗り移ったかのようにこう答えます。
「彼らの過ちはすべて私にある。子供たちの非道を詫びるように、私は詫びなければならない。しかし、私の子供たちに対する気持ちを吐露する人の親であることをつかの間許していただけるなら、やはり、前線の兵士の狂気やはねっかえり行動と、民間人を消し去る周到な計画とはまた別次元であると言おう。そしてこの意味において、あなた方の東京大空襲や原爆投下は、ナチスのホロコーストと同次元だと言おう。だからといって何もわが方を正当化はしない。が、前線で極限状態の者は狂気に襲われうる。彼らが狂気の方へと身をゆだねてしまったときの拠り所が、私であり、私の名であったことを、私は恥じ、悔い、私の名においてそれを止められなかったことを罪だと感じるのだ。私はその罪を負いたい。」(P521)

この小説を読んでよかったと心底思えた箇所でもありました。

解説の池澤夏樹は「小説にはこんなこともできるのか」という言葉で締めくくっていましたが、間違いなく小説の可能性を味わうことができる1冊です。

0
2018年11月15日

Posted by ブクログ

ちょうど1Q84を読んでる時にリトルピープルが出てきたので、腰を抜かすほど驚いた。有名なのか、リトルピープル。東京裁判の話なのだがちょっとファンタジー仕立て。こんなにページ数はいらないような。

0
2016年03月31日

Posted by ブクログ

昨今、戦後70年というフレーズをよく耳にしますが、そのような年月を経ても正面切って取り上げられない日本人にとってタブーとも言えるテーマ、「天皇の戦争責任」をこの小説は取り上げています。この小説は、作者の赤坂さんの体験を下地にして書かれたものだろうと思うのですが、15歳でアメリカに留学して受けたディベートの授業を軸にした私の天皇論がダイナミックに展開されています。読む前は、史実に基づいた家の系譜だろうと見当をつけていたのですが、様相は違ってファンタジックな雰囲気もまとった物語に仕上がっています。期待は外れたものの、これはこれで、読ませる内容でした。
A級戦犯を裁いたという東京裁判で母が通訳していたと言う秘密は少女を虜にして過去と現在を行き来します。
殆どの日本人が知らない近代の歴史、第二次世界大戦開始の経緯や敗戦後のこの国の成り立ちは確かに計ったかのように、社会科の授業で習わずに尻切れとんぼのように終わり、それを意識下に置いたまま見ないふりをして過ごしています。15歳だったマリも東京裁判を取り上げたディベートで自国では知り得なかった敗戦国の辿った経緯を知ることになります。少女時代に経験した異国の地での歴史と文化の違いからくる戸惑い、そこでの血生臭い狩猟体験。捕らえたヘラジカの生命が紡ぐもの。そして直面した天皇と言う存在に対する問いは、太古から連綿と紡いできたであろう民族の血脈を意識することになったのでした。
戦争とは何か。敗戦国であった日本が辿った道、アメリカと日本の関係にしても従属的な関係のままで、原子爆弾を落としたことなどのアメリカの責任はどうなっているのだろうか‥と漠然と思ってもそのままになっていました。蓋をして置き去りにされてきた戦争の責任問題。その時の両国の関係性が今だに続くのだろうと思うこともしばしばでした。

0
2016年01月09日

Posted by ブクログ

 留学先のアメリカメイン州の小さな町で、日本人を代表してマリは「天皇の戦争責任」について弁明することになる。アメリカ国民がイメージしている天皇ヒロヒトとドイツの独裁者ヒトラーの違いが分からない。日本国民にしてもまた、天皇を語ることを良しとしない風があり、その起源は神話に頼らざる負えない。
 
 終戦後、天皇ヒロヒトの責任を日本国民が問わなかったことを奇異に感じているアメリカ国民と、戦後の被災地を巡る天皇ヒロヒトを歓迎した日本人の感情に大きな開きがある。韓国の前大統領が天皇に戦争責任ありとし、日本に謝罪を求めたとニュースに流れたときに、日本人として憤慨を覚えた方は多かったはずである。

0
2015年11月28日

Posted by ブクログ

「天皇の戦争責任」をテーマに16歳の少女が進級をかけたディベートを課される。大人でも問われたら窮するテーマ。何より戦争についてあまりに無知で考えを述べる材料が全くないのに茫然としてしまった。戦後70年、知らないことが多すぎる。

0
2015年10月30日

Posted by ブクログ

はじめて読む作家さん。
書店で見て、タイトルで購入を決めた。

アメリカの高校に通うマリ。
進級をかけたディベートのテーマは、天皇の戦争責任についてだった。

正直言って、想像したものとは違う展開だった。
マリが幻覚とも言える夢のような世界に度々引き込まれるのだが、そこの部分がわかりにくい。
幻覚に現れるものが、リトル・ピープルだったりしたときは、村上春樹みたいだなと思ったりした。
それ以外に、第二次世界大戦の英霊や、ベトナム戦争の枯葉剤による奇形児、マリの暗い記憶としてのヘラジカなど、物語に必要で象徴となるものも出てくるので、この幻覚のシーンは必要だということはわかる。
それでも、今のマリが現実なのか何なのかが判然としないため、読んでいて落ち着かない。

最終章のディベートの部分などは、是非読んでおきたいと感じた。
日本人がいかに近代日本史を知らないでいるか。
明治維新の頃までは深く学ぶ日本史は、以後ささっと終了してしまう。今の教育がどうかは知らないが、わたしはそうだった。
ハッキリ言って聖徳太子がどうしたとか、織田信長が本能寺でとか、そんなことよりももっとずっと大切で学ぶべき部分だったんじゃないかと思う。

マリは自分の国の憲法である日本国憲法が、戦後アメリカによって押し付けられたものであることや、天皇という曖昧でわかりにくい存在を説明出来ないなどといったことを、時にアメリカ人から教えられながら知り衝撃を受ける。
自分も高校生の頃に憲法の正しい認識は無かったし、今でも天皇を説明出来るかと言われたら自信がない。しかも英語でアメリカ人に対してならお手上げかもしれない。

幻覚世界の描写がモヤモヤとしながらも長いため、読んでいくのは辛いこともあった。
でも本書は、読んでおいて無駄ではないと思う。
日本人はもっと自国の歴史を知るべきだ。そして、反省だけでなく誇りも併せて持ちたい。

0
2015年09月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「16歳の少女マリがたった一人で挑む「東京裁判」」という帯など諸々の情報から、地道に東京裁判について調べる、という小説かと思っていたので、(その側面は確かにあるのだけれども)それ以外のある種妄想的要素を含む部分についていけませんでした。それ全部いらなくね?と言ってしまうのは簡単なのだけれども、天皇とは日本人にとってなんなのかというテーマを作者が扱うにあたって、それこそが重要なんだろうなと。なんだろうなとは思うのだけれど、もう少し読者に“媚びて”いただけるとありがたい。ちょっと自分ワールドが広がりすぎていて、消化不全です。
ラストのディベートはなかなか圧巻ですが、それまでの主人公マリの英語のつたなさと、突然のペラペラぶりに面食らったのも事実。(”誰か”にのっとられてしゃべっているという解釈もできるんだけれども)
たぶん、優れた作品なんだろうけれども、腹を決めて読まないと、なかなか厳しい一冊でした。

0
2015年08月30日

「小説」ランキング