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『全体主義の起原』『人間の条件』などで知られる政治哲学者ハンナ・アーレント(一九〇六―七五)。未曽有の破局の世紀を生き抜いた彼女は、全体主義と対決し、「悪の陳腐さ」を問い、公共性を求めつづけた。ユダヤ人としての出自、ハイデガーとの出会いとヤスパースによる薫陶、ナチ台頭後の亡命生活、アイヒマン論争――。幾多のドラマに彩られた生涯と、強靭でラディカルな思考の軌跡を、繊細な筆致によって克明に描き出す。
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Posted by ブクログ
二十世紀の激動のさなかを生きたアーレント。本書はそのアーレントの生涯を丹念に追いつつ、その思想を理解する手掛かりを与えてくれる本である。アーレントの思考自体が「手摺のない思考」と呼ばれるように、彼女の生涯もまた手摺のない生涯であった。未曽有の体験を経て紡がれた彼女の言葉を受け留めることの意味を考え...続きを読むさせられる一冊である。 アーレント研究は日に日に増して膨大な量に上り、アーレントに興味を持つ人は途方に暮れてしまうかもしれない。本書はそのような読者のための本である。本書はすべてのアーレント研究の礎となるアーレントの生涯の出来事を彼女の言葉を手掛かりに追っていく。本書で繰り返し言及される決定版とも言うべきヤング=ブルーエルのアーレント伝が最近著者の監訳で刊行されたのだが、そのアーレント伝に多くを負いながらも、できるだけアーレント自身の言葉を通してその生涯を伝えようとしていることが印象的である。 前半部では、アーレント自身の著書が著されていく前の、戦争へと向かっていく時代、そして戦争の時代そのものをどう生きたかが記録を頼りに詳細に描かれる。カントを読み、ハイデガーのみならず当時を代表する神学者たちの活発な議論を横目にヤスパースの許でアウグスティヌスに取り組む姿が目に浮かぶ。中でも印象に残るのはベンヤミンとの交流である。彼が失意のうちにこの世を去った痛みを自らも一身に引き受け、後々まで彼の言葉を残そうとするアーレントの姿に打たれる。そしてまた、彼女の言葉を読むことができることが如何に奇跡的なことであるかということをも思わされるのである。 後半部は『エルサレムのアイヒマン』が引き起こした論争に焦点が当てられていくのだが、戦後の苦悩の中で生き生きとした交流の内に思索を続けていく彼女の様子が印象的である。しかしそれは順風満帆とは程遠く彼女が生きていくこと自体が如何に苦闘の連続であったのか、それこそ戦争の動乱から引き続いて彼女が如何に手摺のない生涯を生きてきたのかを想わされる。むしろ苦悩の中で語られるユーモアが彼女の優しさを伝えてくるのである。 本書には戦慄するような一節がいくつも書かれているのだが、エリック・ホッファーの「砂漠の中のオアシス」についての考察は今の私たちに非常に問いかけるものがあった。アーレントが「孤独」という言葉に込めた意味、「はじまり」を為すために一人でいることの大切さを説く箇所は、ヨゼフ・ピーパーの『余暇と祝祭』における余暇論を思い起こさせる。私たちが自分自身であるために、オアシスを、孤独を、余暇を必要とするのである。世界が世界であるために私たち一人ひとりの「はじまり」が必要であることを繰り返し思い起こさせてくれる本である。 本書は丹念にその生涯を追うだけでなく、主著がどんな状況下で著されたか、そしてその哲学的問いかけを読者にわかりやすく伝えてくれる。彼女が学者として生きたことは世界との隔絶ではなく、むしろ家事や生活における行為と同列の人間的行為であり、なおかつ後に残る活動であったことを思い起させる。アーレントの思想が問いかけるものは今も変わらず生きている。むしろ今こそ向き合うべきであることを伝えてくれる。アーレントに関心のあるすべて読者に強く勧めたい一冊である。
アーレントの人生をざっと知るによいテキスト。20世紀前半の困難な時代を生たベンヤミンたちとの交流に強く共感した。
この本を読むと、アーレントの眼差しに触れることができる。アーレントと知らない街角ですれ違ったような気分になれるので、ほとんどの思考する人はアーレントの著作へと誘われる。
アーレントの生い立ちから始まる生涯と代表作の内容の平易な説明を通して彼女の難解な思想を読み解く入門となる素晴らしい本だった。さらに深く知る上でアーレントの著作をこれから読む必要はもちろんあるが、友人との交流を大切にし、多くの影響を受けた彼女の思想を知るには著作のみでは限界があるのでそういう意味でも伝...続きを読む記色の強い本書はそこまでカバーできているので読む意義があったと思う。 彼女の政治哲学には難しい部分ももちろん多いが、根底にあるのは''現実を理解し事実を語ること''ということだった。また彼女の人柄としては友人思いで、とても誠実な人物なのだと感じた。そんな彼女がアイヒマン論争で友人たちと絶縁することになってしまったのはとても残念に感じた。
ごくごく最近になって名を見聞きするようになった「ハンナ・アーレント」。どんな人だろうとこの本を読んでみた。アーレントの人生をたどりながら著者や論稿の要旨、アーレントの思想がまとまっていて入門書としてとてもいい。 ユダヤの血が流れているとか、『全体主義の起源』(アーレント自身は「全体主義の諸要素」とす...続きを読むべきだったと後悔しており、確かにそうだと思う)という著書があるという程度の前知識から、ナチ批判やユダヤ人に寄った思想の人だと思っていたけど、実はアイヒマン裁判をめぐる論ではユダヤ系はじめリベラル派から大いに非難されたりもしている。でもその考え方は、そういった自分のバックボーンを差し置いてとても公正なものに思える。 著者によれば彼女は「一人前の大人が公的生活のなかで命令に『服従』するということは、組織や権威や法律を『支持』することである」(p.201)と述べているとか。 私だって日常的に、たとえば職場で仲間うちで、今さら自分が声を上げてもしかたないとか、和を乱さないためにと、その社会の総意ということになっている方向性に沿ってしまうときがある。そのとき、私はしかたないと言い訳しながら支持しているわけ。不参加・非協力を選ぶこともできるのに。アーレントはこういう極面で思考する「自分」であれと言っているように読んだ。 しかしなぜ、いま日本でアーレントが注目されているのだろう。安倍くんが跋扈したり嫌韓・嫌中が台頭しているような社会では、アーレントの思想に向き合っては耳の痛い人がたくさんいると思うんだけど……。それとも一定の人はそれではよくないと思っているのかな。
アーレントの半生をなぞりながら彼女の思考の軌跡も共に辿ったとても分かりやすいアーレント入門書。彼女の著書や、彼女がとても大切にしていた友人関係や夫についてもコンパクトにまとめて論述してあり分かりやすい。 これからアーレントの著作を読んでいくにあたっては必携の書かと思う。映画「ハンナ・アーレント」もこ...続きを読むの本のおかげでとても楽しめた。おすすめ。
ハンナ・アーレントに興味を持ったのは映画を見たからかもしれないけれど、この間100分de名著の仲正昌樹先生の本も一気に読み終わって、原本に行く前にこの本を読んでみた。めちゃくちゃ面白い。 考えたのはワタシが人間であることと日本人であることは同義なのか違うのかってこと。あと、人種を最近やたらと感じるこ...続きを読むとが多くてそういうことについても考えた。複数性の大切さ。全体主義に向かう恐ろしさ。 例えば、もしも地球上では人種間での争い事があったとしても月に行ってまで国家にこだわる必要性はあるのかどうかとか考えてしまった。何かを誰かを排除して出来上がる正義は本当の正義なんかじゃなくてまやかしなのではと思う。 複数性で色んな意見を大切にしないとみんなが同じ方向へ向いてしまった時に間違っていることに間違っていると言えるようにすることの大切さとか考えてしまう。 次は『今こそアーレントを読み直す』を読んでそれから原本へ行きます。
気になる著者、著書があると、入門書とか、ガイドブックみたいなのに頼らず、まずは原著(もちろん翻訳のね)を読む。分かろうが、分かるまいが、とりあえず1〜2冊読んで、自分なりに理解した感じをもって、ちょっと「入門」を読んでみる、というのが、自分の読書スタイルかな? 本はそれ自体が一つの世界で、「人とそ...続きを読むの思想」みたいに読むのではなくて、テクストとして何が書かれているのか、ということにフォーカスすべし、みたいな考えも結構染み付いている。 ということで、アーレントも、そのパターンで、原著と悪戦苦闘中。 一応、最後までたどり着いたのは、「暴力について」「イェルサレムのアイヒマン」で、主著(?)の「活動的生」と「革命について」は、半分くらいで、先に進めなくなっている。「全体主義の起源」にいたっては、最初の20ページくらいで挫折。 ものすごく難しいという感じでもなくて、一行一行は読めるし、パラグラフもいくつかは読める。読めるだけではなくて、かなり共感を感じる。もしかしたら、この人は、わたしが疑問に思っている問いへの答えをもっているのではないか?と期待を感じる。 が、ページを繰っているうちに、だんだん話しが分からなくなってしまう。 結局、結論はなんなの? どこに行こうとしているの? みたいな感じ。 というなか、行き詰まりを解消すべく、分かり易そうなこの新書を手にしてみる。 まさに「人とその思考」というより、「人」にかなりフォーカスした本で、すごく読みやすいですね。 これを読むと、アーレントの思想は、かなり彼女の人生に起きたことを知らずしては理解できないものだったんだという気がしてくる。 というのは、わたし的には「邪道」なんだけど、アーレントについては、著書で完結する人ではない。むしろ、彼女の人生そのものが、彼女の作品だったのだ、という気がしてきた。 と言っても、彼女は行動の人ではなくて、思考の人。 でも、その思考というのが、抽象論、演繹法ではなくて、具体的な経験から、自前のツールをその場その場で作りながら、行きつ戻りつ、考える感じなんだよね。そして、その思考は、具体的な言動と一致している。しばしば、かなり過剰な感じで。。。 という人なので、彼女の本を読んで、すっきり理解ができる、ということにもともとならないということが分かった感じ。 彼女の場合、書簡集も結構膨大なものがあるのだが、もしかすると、彼女の人生という作品、つまり彼女がリアルに他者との関係を大切にしながら生きたというのは、そこに残されているのかも、とか思い始めた。 う〜ん、どこまで読めばいいのかな? と悩むほど、アーレントを魅力的に感じた。
悪は悪人が作り出すのではなく、思考停止の凡人が作る。 今でも、人類が引き起こす、ジェノサイトとは特別な何かではなく、普段の我々の横に寄り添う、思考停止の症状でしかない…
本書は20世紀の哲学者アーレントの生涯と彼女の思想についてまとめたものになります。アーレントといえば「全体主義の起源」「人間の条件」などの著作が有名ですが、本書を通じて、彼女の原体験的なものの理解が深まり、思想の背景にあるものが何なのかなどとても考えさせられました。新書なのであっという間に読めるかと...続きを読む思っていましたが思いのほか時間がかかりました。その理由は2つあります。1つ目はアーレントの思想が独特に感じる箇所があって、理解に時間がかかる点。2つ目は、理解できた後に、「なんて深い洞察なんだろう」と感銘を受けて、自分自身の「思考」プロセスが開始されてしまうことです。この2つ目がすごく重要だと思うのですが、アーレントほど自身の思考プロセス、つまり自分と自分自身の間の対話のスイッチをオンにしてくれる人はいない気がします。そしてこれは彼女が望んでいることなのだと思います。思考すること、そしてその思考したことを自分の心の中に閉じ込めるのではなく、他者に投げかけることで「世界」とも関わることこそがアーレントの望んだ人間のあるべき姿だと思います。本書はアーレント初学者でも読めるように配慮されて書かれているとは思いますが、やはり最低1冊くらいは作品を読んでから、本書を通じてアーレントの人物像を学ぶとより得るものが多いのではないかと感じました。おすすめです。
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ハンナ・アーレント 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者
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矢野久美子
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