平等とは何か 運、格差、能力主義を問いなおす

平等とは何か 運、格差、能力主義を問いなおす

990円 (税込)

4pt

かつて一億総中流といわれた日本。
いまや格差が広がり、社会の分断も進んでいる。

人生が親ガチャ・運しだいでよいのか。
能力主義は正しいか。
そもそも不平等の何がわるいのか。

日本の「失われた30年」を振り返り、政治哲学と思想史の知見から世界を覆う不平等に切り込み、経済・政治・評価上の平等を問いなおす。
支配・抑圧のない、自尊を下支えする社会へ。
財産が公平にいきわたるデモクラシーの構想を示す。


■目次
はじめに

第1章 不平等の何がわるいのか?
本書の特徴 前口上――なぜ平等・不平等を考えるのか 不平等から考える――不平等に反対する四つの理由 ①剥奪――貧窮ゆえの苦しみ ②スティグマ化――傲りと卑屈、そして差別 ③不公平なゲーム――人生の難易度の変化 ④支配――非対称的な関係の固定化 みえやすい不平等・みえにくい不平等 窮民問題――貧困にあえぐ社会 寡頭制問題――少数が牛耳る社会 健康格差問題――寿命が短い社会

第2章 平等とは何であるべきか?
平等を支持する四つの理由 ①生存・生活の保障――充分主義 ②恵まれない立場への優先的な配慮――優先主義 ③影響の中立化――運の平等主義 ④支配関係がないこと――関係の平等主義 平等の要点――「局所的な平等化」をこえて 三つの不平等の区別――差別・格差・差異 格差原理と(不)平等 差異ゆえに平等

第3章 平等と能力主義
アファーマティブ・アクション AA――五段階の規範 正義と能力主義 公正な能力主義はゴールか? 能力の測定問題とガラスの天井問題 能力主義の専制 正義と功績をいったん切り離す 機会の平等を見直す――スキャンロンの三段階モデル まとめ――財産所有のデモクラシーへ

第4章 経済上の平等――社会的なもの
『21世紀の資本』のインパクト――r>g 『資本とイデオロギー』――格差はつくられたものである アンダークラスの出現 財産所有のデモクラシー①――社会的なもの 日本型福祉社会の問題 事前分配・当初分配 人的資本のストック 職場環境の正義 ベーシック・インカム タックス・ジャスティス

第5章 政治上の平等――共和主義
誰が統治するのか――政治家のキャリアパス なぜ世襲政治家は多いのか 経済力の政治力への転化 徒党の発生をいかに防ぐか 財産所有のデモクラシー②――共和主義 政治資金規制とメディア宣伝 パブリック・シングス――公共性のインフラ 公共財としての仲介機関――政党とメディア 政治バウチャー クオータ制 ロトクラシー――くじ引き民主制

第6章 評価上の平等――複数性
絶望死、遺伝と能力 時間どろぼう――エンデ『モモ』 財産所有のデモクラシー③――複数性 自尊の社会――配達員の仮想演説 評価集団の多元化――複合的平等 正義と多元性 財産と富 〈自分自身〉であるためのデモクラシー 「自己の内なる体制」

おわりに――平等についての六つのテーゼ

あとがき

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平等とは何か 運、格差、能力主義を問いなおす のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    支配的立場にいるものは現状維持に更なる投資をする。さらに長く支配が続いたことで不公正の負荷を無いものと考えるしかない被支配者がそのストレス回避的な思考の傾向を脱することは容易ではないといった現状である。しかし、だからこそ真に自分の中の公正を問い直し、行動するための礎を作り出すことが平等に繋がっていく

    0
    2025年09月12日

    Posted by ブクログ

    『平等』の政治哲学を概説した一冊。

     平等と聞くと、誰もが素晴らしいものと思うであろう。しかし、平等とは何か?という問いに答えられる人は多くあるまい。本書は、数ある平等の諸概念の中で、特に「関係の平等主義」に注目し、その軸に「財産所有のデモクラシー」を据えるものである。

     筆者によれば、「財産所

    0
    2025年07月28日

    Posted by ブクログ

    この本は、「平等とは何か」について政治哲学的に考察しようとするものである、と「はじめに」に書かれています。
    機会の平等、結果の平等など平等と言ってもいろいろ考えることができるし、平等の反対の不平等もいろいろな不平等がある、ということに改めて気がつきました。
    心に残った文章がいくつかありました。

    0
    2025年04月16日

    Posted by ブクログ

    平等と不平等とは何か、それがもたらす社会的・政治的問題を再検討する本。平等が主題ではあるが、実質的には平等主義的リベラリズム、とりわけロールズが目指した「財産所有のデモクラシー」がなぜ望ましいのか、その説明が体系的に展開されているところに本書の特色がある。不平等が最終的に経済的・社会的格差に基づく政

    0
    2025年11月01日

    Posted by ブクログ

    「政治哲学」として、「平等」を論じた本。

    本を読む中で、しょせん「理念」の話では?そんなに平等を論じたところで、実現不可能なんじゃないの?机上の空論ではないのか?と思うこともあった。例えばベーシックインカムやらクォーター制を現実の社会に適用しようとしたときには、とんでもない苦労が生じる。
    しかし、

    0
    2025年10月19日

    Posted by ブクログ

    同じものを見ていても人によって違うものを指して話をしているのが平等の難しいところだと思います。

    本書は『平等とはこうである。』と言うような本ではありませんし、平等と言う言葉は主語が大きいので、思っていたのと違うと思われる方もいるかもしれません。

    能力主義は不平等の正当化として明確に否定されていま

    0
    2025年10月14日

    Posted by ブクログ

    平等の考え方、捉え方とその議論の概要について紹介。

    あらためて、平等の論点や平等実現の課題については非常に整理されているが、改めて読んで、そもそも、なぜ平等であることが大事か(必要?価値?意味?)を、考えた。

    別書に詳細は譲るが生理的な原因か、または功利主義的な合理性があるのか、あったとして、環

    0
    2025年07月21日

    Posted by ブクログ

    本書を読むまでは、法的に機会の平等が確保されていれば平等な社会であると考えていたが、実際には不平等が残されていること、この問題がプラトン以降多くの哲学者らの間で考えられてきた問題であることなど、再認識することが色々あった。
    とはいえ、サンデルの能力主義による不平等是正策としての「くじ引き」やベーシッ

    0
    2025年06月07日

    Posted by ブクログ

    自分の人生について、努力の結果が平等に報われないと感じており、本書が目に留まった。

    現代の社会は格差が広がるように進んでおり、建前上は自由や平等を民衆に唱えても、結局持てるものが得をするようなシステムになっている。

    能力主義は平等の精神に基づいているように見えるが、そもそも平等とは相いれず、自己

    0
    2025年04月27日

    Posted by ブクログ

    「平等」と簡単に言うが、難しい。
    著者はその「平等」について論を展開する。
    本人も、「実証的研究」でなく「規範的研究」といっており、われわれの日常から帰納的に平等について論じるのではなく、過去の平等についての研究から筆者の考える最強の平等を提示する。

    そんな本だから「平等」について研究する人にはい

    0
    2025年07月28日

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