Posted by ブクログ
2018年10月10日
さすが主人公だけあって、どん底から這い上がるのが早い。
南宋と秦容の土地の間に岳家軍が駐留するということは、岳飛は南宋と戦うことになるのだろうか。
大きくなりすぎた梁山泊の交易は、少しその形態を変える。
拠点を縮小し、常に物が動いているように。
南宋は日本との交易の道を探る。
そして南宋の水軍は徐...続きを読む々にその力を増していく。
今回は韓成の話が良かった。
死ぬことで幸せになるという方臘(ほうろう)軍の生き残りを調練して、童貫戦で梁山泊の切り札として人の盾を作った韓成。
それは、韓成としてもやりたくなかった作戦ではあったのだが、それでも大勢の人間をただ死ぬためだけに戦場に送り出したことの免罪符にはならない。
ずっと自分を許せなかった韓成は、梁山泊を出て、西域に赴く。
西遼に従わない部族を、武器を持たない韓成が命がけで説得する。
”「おまえ、戦がいやだと言い続ければ、ほんとうに戦がなくなると思っているのか?」
「なくなるものか」
(中略)
「たえず、血は流れ続ける。歴史が、それを証明している。しかし、戦をやめようと声を上げるのは必要だ、と俺は思っている。」”
北方謙三が書きたかったのは、これか、と思った。
好戦的な部族に、戦う武器を持たず、殴られ、蹴られても、話し合いを求める韓成。
何か月も何か月も。
やさぐれているように見えた韓成は、ずっと自分を許せず、認めることができなかったんだとわかる。
この先梁山泊は、今まで以上に貿易に傾いていくのだろう。
その時呼延凌(こえんりょう)率いる梁山泊軍はどうなるのだろう。
自然消滅?それとも玉砕?
どちらにしろ、歴史の表舞台から消える日は近づいてきている。