安岡章太郎作品一覧

  • 青い貝殻
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    生きているウシロメタサと抑圧された性の欲望、抜き差しならぬ友人や女との関係を、安岡章太郎節とも言うべき苦いユーモアと自在の文体で描いた5つの短篇集。
  • 犬と歩けば
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    「コンタはじつに善い犬であった。しかし、その善さについて、私はどう言いあらわしていいか、表現するすべを知らないのである。つまり、それはコンタの中に、それだけ私を超えてすぐれた資質があったということであろう」(あとがき)。気品と孤高の雰囲気を併せ持った愛する紀州犬の死を看取った時、「私の壮年期はコンタと共にありコンタと共に去った」という思いが著者を襲う。犬と人との出会いもまた、一期一会のものなのだ。よき伴走者にめぐまれた作家の切なくやさしい視線。
  • 犬をえらばば
    -
    犬は飼い主に似るとか……。近藤啓太郎の「親切心」から紀州犬コンタを飼うことになった著者が、石坂洋次郎、丹羽文雄、坂口安吾、五味康祐、吉行淳之介、遠藤周作、江藤淳など、現代作家との交遊とその素顔を、それぞれの愛犬と飼い主との個性あふれる交わりを通して綴る。著者一流のオトボケの中に、エスプリの効いた文明批評が光る、楽しい連作エッセイ。
  • 歌のわかれ・五勺の酒
    3.7
    1巻1,100円 (税込)
    金沢を舞台に旧制四高生・片口安吉の青春の光と影を描く「歌のわかれ」、敗戦直後、天皇感情を問うた「五勺の酒」。この二篇のほか、「村の家」「萩のもんかきや」など著者の代表的な短篇七篇を収める。詩篇「歌」、自作をめぐる随筆を併録。文庫オリジナル。 〈巻末エッセイ〉石井桃子・安岡章太郎・北杜夫・野坂昭如 ■目次 歌(詩) 【Ⅰ】 歌のわかれ/春さきの風/村の家/広重/米配給所は残るか/第三班長と木島一等兵/軍楽/五勺の酒/萩のもんかきや 【Ⅱ】 「春さきの風」「五勺の酒」の線/「春さきの風」のとき/「第三班長と木島一等兵」おぼえがき/五十年まえと三十年まえ 【中野重治をめぐって】 ある機縁(石井桃子)/我慢と律義と剽軽と(安岡章太郎)/「茂吉ノート」など(北杜夫)/青春の書(野坂昭如)
  • 海辺の光景ほか六編
    3.0
    海に臨んだ精神病院で狂死する母、それを看取る父と私。父はもと陸軍獣医少将。だがそんな父を軽蔑した母と私。――人間の奥底に潜むエゴイズムを赤裸々にえぐり出し、夫婦とは、親子とは、人生とはを追求した、芸術選奨&野間文芸賞W受賞の表題作。ほかに卓抜な感性の冴えを示す6編を収録。
  • 鏡川(新潮文庫)
    5.0
    私の胸中にはいくつかの川が流れている。幼き日に見た真間川、蕪村の愛した淀川、そして母の実家の前を流れる鏡川だ――。明治維新から大正、昭和初期までを逞しくも慎ましく生きた、自らの祖先。故郷・高知に息づいた人々の暮らしを追憶の筆致で描く。脱藩した母方血族、親族間の確執と恋慕、母が語ったある漢詩人の漂泊……。近代という奔流を、幼き日の情景に重ね合わせた抒情溢れる物語。
  • 柄谷行人対話篇1 1970-83
    3.0
    1969年に「〈意識〉と〈自然〉――漱石試論」が第12回群像新人文学賞評論部門当選作となり、文芸評論家としての執筆活動をスタートした柄谷行人氏は様々な相手と刺戟的な対話をおこなってきた。本書ではこのうち気鋭の文芸評論家として活躍していた1970年から『探究』連載開始前年の1983年になされた7篇を精選。現在は思想家としての執筆・発言が主な活動となっている柄谷氏が当時どのような知識人に関心を抱き、どのように語ってきたかあらためて知ることは、現代の社会を行きていくうえでも重要な道標となるであろう。柄谷ファンに限らず、知的刺戟を求める読者必読の書。 第一弾は、吉本隆明、中村雄二郎、安岡章太郎、寺山修司、丸山圭三郎、森敦、中沢新一。
  • ガラスの靴・悪い仲間
    値引きあり
    3.8
    初期作品世界デビュー作「ガラスの靴」芥川賞受賞「悪い仲間」「陰気な愉しみ」他、安岡文字一つの到達点「海辺の光景」への源流・自己形成の原点をしなやかに示す初期短篇集。幼少からの孤立感、“悪い仲間”との交遊、“やましさ”の自覚、父母との“関係”のまぎらわしさ、そして脊椎カリエス。様々な難問のさなかに居ながら、軽妙に立ち上る存在感。精妙な“文体”によって捉えられた、しなやかな魂の世界。
  • 邱飯店交遊録 私が招いた友人たち
    3.5
    1巻990円 (税込)
    自他ともに認める食通でもてなし好きの著者の家には、文人墨客から経済人まで大勢の友人が訪れた。いつしか自宅は「邱飯店」と呼ばれるようになる。あばら家の七輪を駆使して佐藤春夫と檀一雄を歓待した時分から、食卓で最も笑いの絶えなかった人・本田宗一郎の思い出まで。約三十年間のゲストとその日のメニューの記録を振り返る、愉快で美味しい交遊録。それはある時期の日本文化や経済界の裏面史でもある。 『邱飯店のメニュー』改題。檀一雄が舌鼓をうった「野鶏巻」と安岡章太郎のお気に入り「芋頭扣肉」のレシピ、人名索引付。 〈解説〉畑中三応子 目次 最初のお客は佐藤春夫と檀一雄/〝一本刀土俵入り〟の世界/〝邱飯店〟開店/健啖こそ長寿の秘訣/金を想うがごとく友を想う/メシで釣って文壇へ/〝第三の新人〟と友達に/五味康祐、そして有馬頼義/『ミシュラン』『あまカラ』『東京いい店うまい店』/小島政二郎・白井喬二・子母沢寛/梅崎春生のメスの羊/〝邱飯店〟の名付親・池島信平/スポンサーの鑑・鶴屋八幡/大編集者の風貌と条件/〝日本料理は滅亡する〟/宰相御曹司、舌鼓を打つ/獅子文六の「バナナ」/市村清と今東光のコンビ/栗田春生の痛快な人生/大屋晋三とカ、カ、カのかあちゃん/メニューに出ない料理のメニュー/〝違いのわかる男〟たちの話/永遠の少女・森茉莉/西洋料理のコックを雇う/政情が描く台湾の料理地図/コックを雇って精神修養/年と共に変る料理の中身/大宴のメニューは自分でつくる/宰相夫人佐藤寛子ミニおばさん/〝食通知ったかぶり〟紳士録/紅焼大網鮑と砂鍋大排翅/『邱家の中国家庭料理』楽屋話/美食と大食は紙一重/カミナリ族の大親分本田宗一郎/高度成長の立役者盛田昭夫夫妻/招待状を書く楽しみは残しておいて
  • 教科書名短篇 少年時代
    4.5
    ヘッセ、永井龍男から山川方夫、三浦哲郎まで。少年期の苦く切ない記憶、淡い恋情を描いた佳篇を中学教科書から精選。珠玉の12篇。文庫オリジナル。 【目次】 少年の日の思い出/ヘルマン・ヘッセ(高橋健二訳) 胡桃割り/永井龍男 晩夏/井上靖 子どもたち/長谷川四郎 サアカスの馬/安岡章太郎 童謡/吉行淳之介 神馬/竹西寛子 夏の葬列/山川方夫 盆土産/三浦哲郎 幼年時代/柏原兵三 あこがれ/阿部昭 故郷/魯迅(竹内好訳)
  • 近現代作家集 II
    3.0
    明治から現代までの作家の名品を、作品の時代背景順に収める『近現代作家集』。II巻には昭和初期から戦後までを扱った20篇を集成。安岡章太郎、井上ひさし、安部公房、上野英信など。 戦争、敗戦、占領。 混乱期の中で開花した新しい作家たちの才能。 社会と対峙する20篇。 解説=池澤夏樹 月報=加藤典洋・斎藤美奈子 ※なお、電子書籍版には三島由紀夫『孔雀』は収録されておりません。
  • 群像 2016年 10月号
    -
    1,527円 (税込)
    70年の間に群像に発表された短篇から選りすぐった53の名作。太宰治「トカトントン」、安岡章太郎「悪い仲間」、大江健三郎「無垢の歌、経験の歌」、丸谷才一「樹影譚」、角田光代「ロック母」、小川洋子「ひよこトラック」、筒井康隆「大盗庶幾」、川上弘美「形見」など。名物コラム「侃侃諤諤」傑作選、〈追悼〉の文学史なども収録。永久保存版。※電子版には三島由紀夫「岬にての物語」は収録されていません。
  • 子供の領分
    5.0
    大人と子供の領域を往還する少年。そのどこか醒めた目は何を見つめるのか。教科書で読み継がれた「童謡」、父とその連れの美女に伴われ伊豆大島へ赴く「夏の休暇」、二人の少年の間の危うい均衡を描く表題作など、思春期の波立つ心と体を澄んだ筆致でとらえた十篇。新たに随筆「子供の時間」他一篇を付す。〈巻末エッセイ〉安岡章太郎・吉行和子 【目次】 夏の休暇/暗い半分/梅雨の頃/斜面の少年/悪い夏/崖下の家/童謡/子供の領分/窓の中/春の声 〈随筆〉子供の時間/私と教科書
  • 酒と戦後派 人物随想集
    -
    「近代文学」創刊同人(荒正人、平野謙、佐々木基一、小田切秀雄、山室静、本多秋五)、藤枝静男、野間宏、原民喜、堀辰雄、椎名麟三、梅崎春生、高橋和巳、三島由紀夫、大江健三郎、安岡章太郎、辻邦生、石川淳、中村真一郎、武田泰淳・百合子、竹内好、丸山真男、渡辺一夫、大岡昇平他。20世紀日本を代表する文学者をユーモラスに、時に感動的に素描する。戦後派屈指の文章の上手さ、描写の確かさ、知的センスに舌を巻くはず。
  • 志賀直哉私論
    3.0
    近代の日本文学史にそびえ立つ《小説の神様》志賀直哉。その知友、父母、祖父ら一族の人びとの過去へ遡りつつ、直哉との関わりのひとつひとつの襞を解きほぐして、作品の核心に迫る。のちには自分自身の一族をあつかった名作『流離譚』を発表するにいたるまでの著者独自の方法意識が書かせた、作家・作品論の白眉。作家が鋭い感性で作家を論究する、小説的評論=長編エッセイの魅力。
  • 私説聊斎志異
    値引きあり
    -
    官吏の登竜門である科挙の試験に生涯落第し続けて、その鬱屈をバネに幻想怪異譚『聊斎志異』16巻を書いた、清代の蒲松齢。著者・安岡章太郎は、己れの屈折した戦時下体験をこの作者に重ね合わせつつ、回想小説風に筆を進める。時代と社会と個人の根っこの関係を自在に描いて、人間存在の不可思議な面白さを生きいき剔出する。後の『流離譚』などの作品とも通ずる名篇。
  • 質屋の女房(新潮文庫)
    3.6
    哀しい、無器用な劣等生は、社会にうまく適応してゆく人々の、虚偽を見抜く力をもつ……。先天的に、世間に対する劣弱意識に悩まされた著者は、いたずらに自負もせず、卑下もしない、明晰な自己限定力をもって、巧まざるユーモアのにじむ新鮮な文章で、独自の世界をひらいた。表題作ほか、処女作『ガラスの靴』、芥川賞受賞作『陰気な愉しみ』『悪い仲間』など、全10編を収録する。
  • 月は東に
    値引きあり
    -
    起きてしまった知人の配偶者との「関係」の事実を、男は謝罪し弁明するほどに、ますます窮地に陥ってゆく。露呈する主人公の心の「やましさ」を、作家の眼が凝視する。救いを願う個我の微妙な感情と心理を描いた、意欲的長篇。夏目漱石、志賀直哉らと日本の近代小説が探求し続けてきた、人間の「倫理とエゴ」の重く切実な主題を共有する、『幕が下りてから』に続く著者中期の代表作。
  • とちりの虫
    3.0
    昨年の春、中古のルノーを買って乗り始めてから、間もなく一年になるが、其の間に私は、交通違反でつかまった事が三回ある。その三回とも、奇妙な事に、友人の安岡章太郎が関係しており、これは私には、ただの偶然とはとても思えない。――阿川弘之 私が仕事にかかるふりをしていると、襖がすこしずつ開いて、その隙間から嘲けるような笑いをうかべて、彼はじっと窺っているのである。私もそっと彼の部屋をのぞくと、安岡は布団の上に寝そべって天井を眺めながら鼻毛をぬいているのであった。――遠藤周作 浪人三年、落第一年、秋風がふくと終わらない夏休みの宿題を想い出してゾッとする。出がけには必ず忘れものをし、約束の時間を一時間まちがえてウロウロ。泥棒に入られれば何も盗まれるものがなく警察に困惑され、文学賞の授賞式では緊張してシドロモドロになる。どうも自分の身体の中には一匹の虫が棲んでいて、それが自分を終始とちらせたり、失敗やへまをくり返させたりしているらしい――青春時代をユーモラスにつづる自伝的回想、作家仲間との楽しいやりとり、鋭さを笑いで包んだ社会観察など、著者の魅力が凝縮された随筆集。阿川弘之と遠藤周作によるエッセイを新たに収録。〈解説・中島京子〉
  • 走れトマホーク
    -
    奇妙でユーモア溢れるアメリカ旅行記「走れトマホーク」。身辺私小説仕立ての「埋まる谷間」「ソウタと犬と」。中国の怪異小説家に材を取る「聊斎私異」など多彩な題材と設定で構成されながら、一貫する微妙な諧調――漂泊者の哀しみ、えたいの知れない空白感。短篇の名手の円熟した手腕が光る読売文学賞受賞作。表題作を含む9篇を収録。
  • 果てもない道中記 上
    -
    『大菩薩峠』の物語世界を探索する傑作エッセイ――『大菩薩峠』の開巻劈頭、老巡礼が理由もなく机龍之助に斬り殺される。死と背中合わせの病床にあった著者は、この老巡礼に自らを重ね合せて理不尽な死に想いを馳せる。こうして、不朽の名作『大菩薩峠』探索の旅が始まる。激動の幕末を流浪する盲目の剣士・机龍之助を追跡しつつ、著者の筆は、時に作者・中里介山の思想に及び、また自らの体験や感想に言及して、自在に飛び交う。<上下巻>
  • 花祭
    -
    中学生の「僕」は、成績不良のため、先生が住職をしているお寺に「入院」させられる。環境の変化に期待と緊張をつのらせる「僕」を、待っていたのは相変らず退屈な日常だった。倦怠の中で無気力な日々を送る「僕」。だが、その体に不思議な変化が訪れようとしていた――。性にめざめてゆく思春期の少年の、不安やとまどい、焦りや憧れを、独特のユーモアで描破した書下ろし長編。
  • P+D BOOKS 舌出し天使・遁走
    -
    第二次大戦に翻弄された若者を描く秀作二編。 第二次大戦に人生を翻弄された“日本版・失われた世代”ともいうべき、ある男の混沌とした青春記「舌出し天使」は、愛のない同棲や不義理と借金など、破滅へとひた走る若者を描いた作品。 他方、「遁走」は、著者自身の軍隊体験と周辺の人物群像を描いた初の長編小説。軍隊の愚劣な日常の中で堕ちていく主人公の意識と、弱者のしたたかな抵抗を描いた、戦争文学の中でも特異な位置を占める作品。 若き日の安岡章太郎“野心作”2作をカップリング。
  • P+D BOOKS 大世紀末サーカス
    -
    幕末に米欧を巡業した曲芸一座の痛快行状記。 幕末維新の動乱の世、慶応2年10月から明治2年2月まで、高野広八以下18人の曲芸師たちは米欧各地を巡業した。 アメリカ大統領の謁見を受け、パリでは万国博の最中に公演し大入り満員。ロンドンでは女王までもが見物に来るし、スペインでは、革命にも遭遇する。 芸人らしく行く先々で女郎買いにも走り、風俗も洒脱に記録されている。広八が残した日記をもとに、旅芸人のしたたかさ、動乱期の世相が鮮やかに描かれた、曲芸師一座の痛快行状記である。
  • P+D BOOKS やややのはなし
    -
    軽妙洒脱に綴った、晩年の短文随筆集。 安岡章太郎、結城昌治、立原正秋、村松友視、森茉莉、澁澤龍彦、色川武大、柴田錬三郎ら作家や知人との交流、子供の頃の邂逅、愛用の粋な小道具、酒や甘味、美人論、身体の不調など還暦前後の身辺を腹蔵なく語っている。 《いささか変った書名をつけてみたが、同じ題名の随筆が、この本の中にある。「ややや」と驚く短い話ばかりを集めてみたものだが、いま読み返してみると、そういう要素を含んだ話がこの本の大部分といえそうだ。》あとがきより。 昭和57年から平成3年までの短文随筆を所収。
  • 文士の友情―吉行淳之介の事など―
    3.0
    2013年1月に逝去した文豪が晩年に振り返った、類稀な友人たちとの人生の時間。吉行淳之介の恋愛中の態度に驚き、遠藤周作にキリスト教受洗の代父を頼み、島尾敏雄の戦後の苦闘に思いを馳せ、小林秀雄に文士の心得を訊く。かくも豊かな友情がありえた時代の香りと響きを伝える名品集。「悪い仲間」で出発した安岡文学の芳醇なる帰着。
  • 編集者冥利の生活
    -
    編集者冥利とは人との出会いの冥利です――。安岡章太郎「悪い仲間」のモデル、雑誌『季刊藝術』の編集同人、そして戦争文学の最終走者として知られた芥川賞作家の自伝的エッセイ&交友録。表題作をはじめ単行本未収録作品を多数含む文庫オリジナル編集。
  • 僕の昭和史
    3.5
    植民地朝鮮で過ごす幼少期が「僕」の昭和の始まり。受験失敗、厳しい陸軍の日々、敗戦、生活困難のなか書かれた文壇デビュー作「ガラスの靴」。芥川賞受賞の頃には復興も進み時代が大きく変わり始める。六〇年安保の年、アメリカ南部留学は敗戦国日本の戦後の意味を考える視座をもたらした。そして高度経済成長や学園紛争といった新たな変化。激動の昭和を個人的な実感に基く把握と冷静な筆致で綴った記念碑的名作。
  • 幕が下りてから
    -
    「悪い仲間」「陰気な愉しみ」で芥川賞を受賞、「海辺の光景」で野間文芸賞、芸術選奨両賞を受賞した著者が、新たに挑戦した長篇秀作。敗戦による価値の混乱と青春の惑乱を共にした、一主人公の「やましさ」の根源を、底深く洗いただし、極めてモラリッシュな文学世界を創造した長篇。毎日出版文化賞受賞作品。
  • もぐらの言葉
    -
    その柔軟な感性と、したたかな批評眼で、文壇随一の文明批評家と定評ある著者が、身をひそめて人の世の動向を鋭敏に察知する「もぐら」的人間への、憧憬と共感をこめて贈る、軽妙洒脱な随想集――《私の鑑賞席》《わがまち東京》ほか、ルポルタージュ・文学論・人生断想など、多彩でユニークなエッセイ、45編を収録。
  • やばい老人になろう やんちゃでちょうどいい
    3.6
    嫌われ、憎まれることを恐れるな――。少し昔には、人生で目標とすべき老人がたくさんいた。井伏鱒二、安岡章太郎、宮崎康平、永六輔……豪胆で知己に溢れた先輩たちに学んだことを、秘蔵エピソードとともに綴る。内容例を挙げると、◎やばい老人の条件は三つ ◎老人は社会の指標となる「水先案内人」 ◎死ぬまでハードロッカーだった父 ◎二十八億円の借金も潰れるまでやる決意 ◎郷里のやばい老人たちが教えてくれた ◎どんな旅をし、どんな人に出会い、どんなショックを受けたか ◎ドラマティックな人生を歩んだ父と祖母 ◎素敵なじじぃとして尊敬する文人たち ◎メールでは伝わらない言葉の大切さ ◎「年寄りに聞くに限る」という教え ◎胸を張って孤独に死んでいく覚悟 ◎ひとりのじじぃから若者たちへの伝言 等々 著者が24歳から考え続けてきた「すごいお年寄り」になるための道標を自身の様々な人との出会いを通して著す。この国の未来は老人にかかっている。
  • 夕陽の河岸
    4.0
    夜道で出くわしたシェパード、突撃演習中に非業の死をとげた友、火葬を怖れて故郷・土佐に土葬されている伯父。歳月のかなたから《影法》のようにふとたち現れる、あの懐しき者たちの姿……。「伯父の墓地」(第18回川端康成文学賞受賞)ほか、死と生のあわいにたたずみ、人生の《黄昏》の景観を、濃淡あざやかな筆致で捉えて、透徹の境地を伝える珠玉の全10篇。「虫の声」「朝の散歩」「犬」「春のホタル」「夕陽の河岸」「土佐案内記」「瓦解」「「あめふり」の歌」「地鳴り」収録。
  • 流離譚(上)(新潮文庫)
    -
    「私の親戚に1軒だけ東北弁の家がある」代々土佐に住む安岡の一族が、なぜ遠い北国に渡ったのか。歴史を遡った著者は、幕末維新を駆け抜けた安岡3兄弟にだどりつく。戊辰戦争で戦死した長男覚之助、吉田東洋を暗殺、刑死した次男嘉助、自由民権運動に関わった三男道之助。膨大な資料と綿密な取材で安岡家の歴史をひもとき、同時に激動の時代の全貌を鮮やかに描ききった巨編。
  • 良友・悪友
    -
    ユーモラスなタッチで描く現代作家のうらおもて。――安岡章太郎は、名作「海辺の光景」で自己の文学世界をあざやかに形成したが、彼を支え、才能を開花させたものは、文学を志す仲間たちとの心暖まる交友であった。柴田錬三郎、吉行淳之介、遠藤周作、庄野潤三、小島信夫、三浦朱門、古山高麗雄、開高健ら、現文壇の第一線に活躍する先輩同輩を爼上にのせ、その素顔を軽妙に綴る。
  • 歴史への感情旅行
    -
    歴史は、資料の積み重ねではない、むしろ一個の感情である。――著者は、古老の「むかし噺」に耳を傾けるように古今の文学を逍遥する。酒を慈しみ、愛犬を偲び、信念を述べ、精一杯生きて逝った人々に思いを馳せる。どんな短い一章にも、半世紀にわたる作家人生の精髄が刻み込まれ、暮しの下敷きである「過去」への、敬愛の念が込められている。我に返る時間を与えてくれる一冊。
  • 若い読者のための短編小説案内
    3.9
    「小説って、こんな風に面白く読めるんだ!」。村上春樹が小説家としての視点から、自らの創作の秘訣も明かしつつ、吉行淳之介、安岡章太郎、丸谷才一といった戦後の日本を代表する作家六人の短編小説を読み解いた“私的な読書案内”。
  • 「私小説」を読む
    -
    志賀直哉、藤枝静男、安岡章太郎を貫く「私小説」の系譜。だが、著者はここで日本文学の一分野を改めて顕揚したり、再定義を下したりはしない。本書は、我々が無意識・無前提に受け入れている「読みの不自由さ」から離れ、ひたすら、いまここにある言葉を読むこと、「作品」の表層にある言葉の群との戯れを通じ、一瞬ごとの現在を生きようとする試みなのである。「読むこと」の深見と凄みを示す、文芸批評の名著。
  • 私の文学―「文」の対話 【小田実全集】
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    1巻1,100円 (税込)
    文学は、作者と作品、読者と社会、世界との対話である。戦争を通過した作家たちによって書かれた「戦後文学」への考察は、世界中で戦禍の炎が止まない今、日本文学の枠を越え普遍的価値をもつ。少年期に影響を受けた中村真一郎、野間宏、堀田善衞への思い出。そして武田泰淳、埴谷雄高、大岡昇平、中上健次、佐々木基一、小田切秀雄、小島信夫、安岡章太郎、ドナルド・キーンらとの異色の対談は、読者を小田実の豊潤な小説世界へと招く。作家同士の対談が見せてくれる長編小説の魅力。

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