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植民地朝鮮で過ごす幼少期が「僕」の昭和の始まり。受験失敗、厳しい陸軍の日々、敗戦、生活困難のなか書かれた文壇デビュー作「ガラスの靴」。芥川賞受賞の頃には復興も進み時代が大きく変わり始める。六〇年安保の年、アメリカ南部留学は敗戦国日本の戦後の意味を考える視座をもたらした。そして高度経済成長や学園紛争といった新たな変化。激動の昭和を個人的な実感に基く把握と冷静な筆致で綴った記念碑的名作。
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Posted by ブクログ
大正生まれの作家、安岡章太郎氏による、私的な昭和史。 教科書的な歴史では分からない、リアルな市民目線の歴史の変遷が感じられる。 あと何年で徴兵に取られると怯えながら過ごす高校、大学時代の青春を実体験できる。 徴兵されて戦地に送られたものの、発病して日本に送還された。同じ部隊の仲間は南方で玉砕、...続きを読むまたはシベリア送還になった。戦後はカリエスを患って寝たり起きたりで作家活動し、結局90歳近くまで天寿を全うした安岡さんは強運というしかない。 呑気で鷹揚な感じの安岡タッチだが、悲運で死んだ友人は数知れず。結構ふてぶてしくなかったらこんな苛烈な時代には生きていかれないだろう。 東京オリンピック、ベトナム戦争前後のアメリカの雰囲気もリアルにわかって面白かった。
1920年に生まれ、ソウルや青森、東京などで幼少期を過ごし、戦争と病を経験しながら「昭和」という時代を歩んできた著者の自伝的作品です。 ジャン・ルノワールの映画『大いなる幻影』が見られなくなってしまった時勢の変化に違和感をおぼえていた少年時代から、理不尽な軍隊生活から思いもかけず帰還し、さらに無気...続きを読む力な学生時代を送りながら、脊椎カリエスのために寝そべって小説を書きつづっていた、遅れてきた青年時代まで、著者の前半生は一見周囲の状況に流されているようにも見えながら、戦争の前後にわたる時流に対して距離をとりつづける態度がつらぬかれていることがわかります。それも、肩ひじを張って抵抗の姿勢を示すのではなく、世の中をながめながらやり過ごそうとするところが著者らしいような気もします。 戦後にかんしては、40歳になってアメリカにわたりそこでの人びとの暮らしをじっさいに目にしての所感のほか、安保反対闘争や連合赤軍事件などについての著者自身の立場が語られています。
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