教育 - 中央公論新社 - 中公選書作品一覧

  • インカ帝国 歴史と構造
    4.3
    古代アンデス文明の最終期、一五世紀に台頭した巨大な政治組織を、現在われわれはインカ帝国と呼んでいる。その領域は南北四〇〇〇キロに及び、およそ八〇もの民族集団を統治した。本書では当時の人々が使用した言葉と具体的なモノに着目し、個別的な分析を積み重ねながらインカ帝国の全体像を生き生きと再現する。ひいては、文字を持たなかったアンデス文明を普遍的な人類史的視野のもとに位置づけることを目指す野心的な試みである。
  • 落とされなかった原爆――投下候補地の戦後史
    -
    原爆が落とされるかもしれなかった、小倉、新潟、横浜、京都。この史実は、どのようにして発掘され、受け止められ、継承されてきたか。日米双方の史資料にもとづく空襲記録運動や自治体史編纂、あるいは環境運動、文学・映画等も含め、足元の郷土を知ることから原爆への想像力は始まった。47都道府県の被団協に注目し、広島・長崎以外の被爆問題も考える。戦後世代は、どうすれば戦争に当事者意識を持てるのか。投下候補地からヒントを探る。 はじめに―原爆投下候補地の戦後史 第1章 被爆地以外に残る被爆の痕跡 1 各地に散った被爆者たち 被爆地以外の被爆者/各地の被団協/被爆地との「距離」/「被爆地以外の被爆者」に支えられた被団協/被爆地以外の被爆二世/湖国のカープファン 2 落とされなかった原爆の記憶 ヒロシマ・ナガサキへの道程/投下候補地の存在/落とされなかった4都市/米軍資料のインパクト/「上空の意図」と「地上の証言」 第2章 長崎への贖罪意識―小倉 1 命運を分けた曇天 Primary target KOKURA/「上空」と「地上」の証言/「救われた小倉! 気の毒な長崎!」 2 小倉の原水禁運動 第五福竜丸事件と小倉/投下候補地こそが訴えるべき原水爆禁止/退潮と変容 3 カネミ油症、風船爆弾、そして原爆 北九州市の発足と公害写真展/真夏に降った「雪」/記録作家「林えいだい」の誕生/林えいだいの8・9/足尾から五島へ/「むなしく奇蹟を待つ人々」/油症と原爆の二重被害/風船爆弾と小倉/証言と史料の収集/「地上」と「上空」の視点から/「投下候補地小倉」への推察/風船爆弾と小倉の被爆者たち 4 並存する二つの平和資料館 被爆二世の市長/被爆地以外の原爆関連資料館/二つの資料館/北九州平和資料館をつくる会/公設資料館の開館、民間資料館の閉館/小倉と長崎/続く慰霊 第3章 原爆疎開の伝承―新潟 1 落とされなかった原爆 北国の平和式典/無傷の新潟、焦土の長岡/「予約された都市」としての新潟/原爆への「肩すかし」/官吏たちと一斉疎開/疎開先で迎えられた8・15/新潟日報社と終戦前後 2 新潟版「火垂るの墓」 戦後復興と「戦争体験」の記録/戦中戦後を架橋する「死児」の記憶/一斉疎開と妹の死/野坂昭如と新潟/原資料の不在 3 自治体史の編纂と知事布告資料の発掘 新潟大史学と県史編纂の始動/初の近代史叙述/知事布告資料の発掘/「上空」からの補足資料/投下候補地の「発見」/反核時代の原爆投下候補地/投下候補地に住まう被爆者たち/投下候補地での「原爆展」 4 新潟の被爆者たちと非核平和都市宣言 一通の投書/非核平和都市宣言の策定へ/岡田茉莉子の「被爆体験」/続けられる資料発掘 第4章 大空襲の記録から原爆の記録へ―横浜 1 予約解除された横浜 横浜大空襲/「excellent bombing results」/5月29日が意味するもの 2 空襲記録運動の展開と横浜 「戦場」としての銃後/二重写しとなったベトナム戦争と日本空襲/横浜の記録運動と飛鳥田市政/記録の不在/集められた「地上の証言」/戦災誌の刊行 3 横浜市立大学による米軍資料の発掘 記録運動と横浜市立大学/海外調査と目標検討委員会資料の発見/空襲の記録から原爆の記録へ 4 横浜とヒロシマ・ナガサキ 『資料マンハッタン計画』/祈念碑の建立/横浜の「被爆体験」/横浜大空襲下の峠三吉/横浜からの想像力 第5章 無空襲都市からの想像力―京都 1 「無空襲都市」「非戦災都市」の誕生 AA級目標・京都/スチムソンの「お気に入り」/グローブズと京都/「非戦災都市」の復興/ウォーナー伝説/複数の「神話」「伝説」との挌闘 2 オーテス・ケーリと京都神話 小樽出身のアメリカ人/激戦の裏にあった「日本語講習」/「英霊たち」によって作成されたビラ/「江戸弁」のアメリカ人/デントン神話への疑念/ケーリが迫った「上空の意図」/スチムソン日記と神話の打破/〝爆心地〟羅生門/ケーリへの再批判?/残された課題 3 空襲記録運動と吉田守男 京都の空襲記録運動/『かくされていた空襲』/それでも少なかった空襲/「地上」と「上空」の手がかりをもとに/スチムソン神話への批判/「無空襲」と「無原爆」の意味/打ち破られていく「伝説」/「研究者の認識」と「世間の常識」 4 再生産される古都神話 ケーリと吉田の遺産を継承する/学術出版と反核運動に吉田が与えた影響/サスペンス小説から古典まで/日文研の京都論/続く神話、続けられる抵抗 終章 実証的な想像力の構築へ向けて 出発点としての郷土史/今日の継承策に見られる「飛躍」/「われらみなヒバクシャ」/普遍化への違和/霧散する具体文脈/「朝鮮にも原爆が落とされたんですか?」/普遍と具体の緊張関係の中で/ジャーナリスト金井利博の問いかけ/核権力論と白書運動・目録作成の内接点/ローカル・ヒストリーの可能性/「まだら」の世界の構築へ おわりに 謝 辞 注
  • 女たちよ、大志を抱け――戦時下、外地で就職する
    -
    戦前から戦中、中国大陸や南方からの求人に応じ、大勢の若い女性が単身海を渡った。タイピストや電話交換手といった仕事に就いた彼女たちは、中流女性の居場所が家だとされていた時代に、なぜあえて外地で就職することを選んだのか。早婚多産と労働参加という矛盾した要求がなされる社会で、内地を飛び出した彼女たちはどのような経験をしたのか。当時の女性規範を大きく踏み越えたその行動と背景に、様々な角度から光を当てる。
  • 加藤友三郎 政党政治を見透した軍人政治家
    -
    日清戦争では砲術家、日露戦争では連合艦隊参謀長として名望を集めた加藤友三郎。第1次世界大戦期には8年にわたり海相を務め、巨大な「八八艦隊」作りに奔走する。  だが大戦後、ワシントン会議に全権として参加すると、軍縮支持へと真反対に舵を切る。首相就任後は、軍縮推進、普選を支持したが病に倒れた。  本書は、世論や政党政治の台頭を理解し、戦前唯一、国際的視野から軍部大臣への文官任用さえ模索した軍人政治家の生涯を描く。
  • 漢字の構造 古代中国の社会と文化
    3.0
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 漢字の成り立ちと字形の変化の歴史には、古代中国の生活や風習、祭祀儀礼や社会制度などが反映されている。本書では、複数の字形を組み合わせて動作や様子を表した会意文字を主な対象として取り上げる。これまでに蓄積された出土文字資料を整理して、相互の継承関係を跡づける字形表を作成し、漢字の構造に封じ込められた社会と文化の記憶を解き明かすとともに、先行研究の問題点を検証する。新しい方法論に基づいた字源研究の成果。
  • 「感染」の社会史 科学と呪術のヨーロッパ近代
    -
    「見えない恐怖」は止まらない――。コレラなどの疫病が「感染」するものと認識されてから、たかだか一五〇年ほどにすぎない。だが病気をもたらす不可視の微生物への恐怖と不安は、呪術的思考と絡み合いながら、人と人とのつながりや社会のあり方を一変させた。それは効果的な感染予防の福音を伝えた一方で、ジェノサイドを招く火種ともなった。本書は十九世紀末の「細菌学革命」にまつわる光と影、その後のヨーロッパ世界の激動を、臨場感溢れる多数の図版と共に追う。
  • 関東大震災がつくった東京 首都直下地震へどう備えるか
    4.0
    一九二三年、東京は関東大震災により未曾有の被害を被った。しかし元禄・安政地震の記録をひもとくと、関東大震災の被害が地震規模に対して著しく大きかったことがわかる。被害を拡大させた要因は何か。江戸という町の発展と震災後の帝都復興をたどれば、見えてくるのは都市計画の果たす役割の大きさだ。科学技術が進んだことが、新たな問題を生んではいないか。現在の東京が抱えるさまざまな問題を指摘し、都市の在り方を考える。
  • クレメント・アトリー チャーチルを破った男
    5.0
    一九四五年、第二次大戦の勝利の立役者チャーチルを抑え、総選挙で圧勝したのはアトリー率いる労働党だった。NHS(国民保健サービス)はじめ社会保障政策や産業国有化を次々と実現、現在のイギリス社会の基礎を築くと同時に、多くの旧植民地を独立させたアトリー政権は今なお高く評価されている。政敵チャーチルに副首相として仕えながら、激しい内紛を抱える労働党を信念でまとめ上げ、社会主義を信じ続けたアトリーの本格評伝。
  • ケネディという名の神話 なぜ私たちを魅了し続けるのか
    3.5
    1巻2,090円 (税込)
    目 次  はじめに――アメリカを覆う巨大な影  第一章 ホワイトハウスへの道   1 政治家像の基礎固め   2 大戦の試練   3 政界への第一歩   4 上院への挑戦   5 プリンス&プリンセス   6 負けるが勝ち   7 驀進ニュー・フロンティア   8 決戦の日   9 船出の準備は着々   10 輝くワシントン  第二章 多事多難な一千日    1 対決を乗り越えて   2 宇宙の冷戦    3 突如出現した壁   4 核破滅の瀬戸際   5 破綻した侵攻作戦   6 革命の嵐に苦慮   7 繁栄の鍵   8 平等社会実現のために  第三章 甘い追憶の日々   1 ダラスの悲劇   2 服喪の四日間   3 キャメロット誕生   4 謎また謎   5 巨悪VS.善神   6 松明は再び落ちた   7 王妃出国   8 王朝の黄昏   9 亡霊の影のもとで   おわりに――夢は果てしなく     あとがき   主要参考文献   ケネディ関連年表   事項索引   人名索引
  • 後藤新平の台湾 人類もまた生物の一つなり
    3.0
    初代満鉄総裁、二度の内務大臣、外務大臣、東京市長……。首相にこそ手が届かなかったが、後藤新平は誰もがその名を知る大政治家の一人だ。しかし、後藤の素質と思想が最大限に活かされ、力量が発揮されたのは四十代の台湾総督府民政長官時代であった。「アヘンの島」と呼ばれ、ゲリラの絶えなかった彼の地が植民地経営の一つの成功例と言われるまでになったのはなぜか。政治指導者のリーダーシップの原型を開発経済学の泰斗が描く。
  • 神道の中世 伊勢神宮・吉田神道・中世日本紀
    5.0
    1巻1,650円 (税込)
    神道という言葉が信仰・宗教を指すようになるのは中世であり、仏教の一派ではない独立した神道流派は応仁期の吉田神道に始まる。神仏習合や密教、当時渡来した禅思想を基に続々と神道書が編まれ、神と仏を巡る多様な解釈が生み出された。『古今和歌集』注釈や能などの文芸世界とも相互作用を起こし、神道は豊穣な中世文化の一翼を担っていく。成立時から融通無碍に変化し続けた神道の本質とは何か。最新の研究からその姿に迫る。
  • 新版 戦後史のなかの日本社会党 その理想主義とは何であったのか
    -
    1巻2,640円 (税込)
    敗戦直後、日本社会党が誕生した。 戦前の無産政党を糾合し、「社会主義国日本」を目指しての結党である。 しかし以後半世紀、一度として単独政権を打ち樹てることなく、ついに崩落した。 社会党の歴史は、日米安保体制=自由主義陣営打破の闘いとそれに絡まる路線・派閥抗争の軌跡でもある。 ソ連型社会主義と共振するその「理想主義」は、議会制民主主義と矛盾する側面をもっていた。 日本社会党を通して、戦後日本の全体像をみつめる。
  • 戦後日本の中国観 アジアと近代をめぐる葛藤
    -
    巨大な隣国、中国。その政策、対外行動、国内で起こる事件は時に理解しがたいものと映る。私たちは、この隣国をどのように捉えるべきか。本書は戦後の中国近現代史研究の歴史をひもとき、日本の中国観に迫る。敗戦や文化大革命は、日本の中国研究にどのような影響をもたらしたか。共産党政権の成立、日中国交樹立、改革開放、天安門事件、反日デモ、「一帯一路」などをどう論じたのか。膨張を続ける中国を、冷静に見つめるために。
  • 戦争と音楽 京極高鋭、動員と和解の昭和史
    -
    近代日本において、西洋音楽は「動員」と「和解」の2つの役割を担った。これを一身に体現したのが本書の主人公、京極高鋭である。京極は、戦前は国民精神総動員の方針のもとに作られた「愛国行進曲」のプロデュースを手がけ、戦後は東京オリンピックの開催に大きく関わった。祖父は初代東京帝国大学総長・枢密顧問官の加藤弘之、父は昭和天皇の侍医という名家。本人は幼少時、のちの昭和天皇の遊び相手でもあった。弟は喜劇役者古川ロッパである。白樺派の影響を受けて長じた「華麗なる縁の下の力持ち」京極の人生を通して、昭和史における動員と和解、日本が引き受けざるを得なかった矛盾を描く。 目次より はじめに 第一章 昭和天皇の「御相手」    一、洋学から洋楽へ    二、迪宮の「御相手」となる 第二章 華族は皇室の藩屏    一、学習院という学校    二、活動写真と戦争ごっこ    三、邦語部と柔道部 第三章 クラシック音楽との出会い    一、白樺派の影響    二、学習院音楽部    三、ミッシャ・エルマン、聞きのがすまじ    四、大学生活 第四章 音楽ジャーナリストになる    一、新聞記者になってはみたが……    二、欧米音楽旅行    三、メニューインもフルトヴェングラーも――会見の様子 第五章 著作権問題、結婚    一、洋楽の普及発達のために    二、結婚と襲爵 第六章 「愛国行進曲」のプロデューサー    一、歌詞と曲の懸賞募集    二、「国民歌」の決定まで    三、普及徹底の方針と大ヒット    四、「愛馬進軍歌」 第七章 貴族院議員になる    一、子爵議員に当選する方法    二、「紀元は二千六百年」――「軍歌撰定普及業」者として    三、音楽新体制 第八章 戦時下の音楽はどうあるべきか    一、南方音楽政策    二、厚生音楽運動    三、被災と敗戦 第九章 戦後の音楽界で    一、戦争責任と戦後改革    二、華族の身分を失って    三、メニューイン、シゲティらの招聘 第十章 スポーツと音楽、そして大団円    一、国際スポーツ大会への関与    二、晩 年 おわりに 京極高鋭略年譜 京極高鋭著作目録
  • 大航海時代の日本人奴隷 増補新版
    3.6
    戦国時代の日本国内に、「奴隷」とされた人々が多数存在し、ポルトガル人が海外に連れ出していたことは知られていた。しかし、その実態は不明であり、省みられることもほとんどなかった。ところが近年、三人の日本人奴隷がメキシコに渡っていたことを示す史料が見つかった。「ユダヤ教徒」のポルトガル人に対する異端審問記録に彼らに関する記述が含まれていたのだ。アジアにおける人身売買はどのようなものだったのか。世界の海に展開したヨーロッパ勢力の動きを背景に、名もなき人々が送った人生から、大航海時代のもう一つの相貌が浮かび上がる。 増補にあたっては、豊臣秀吉の朝鮮出兵によって大量に連行された朝鮮人捕虜、その捕虜たちの扱いに直面したイエズス会、さらに、長崎に連れて来られたアフリカ人奴隷など、アジアにおける奴隷貿易の実態をさらに深く紹介する。
  • 大才子 小津久足 伊勢商人の蔵書・国学・紀行文
    -
    映画監督・小津安二郎は異母弟の孫、伊勢松阪の富商、当世随一の人気作家・曲亭馬琴の友人、本居宣長の孫弟子にして、大蔵書家、そして江戸時代最大の紀行文作家・小津久足。湯浅屋与右衛門、小津桂窓、久足、雑学庵という四つの名前を使い分けて生きた男のそれぞれの営みを通して、近代とは似て非なる、あるがままの江戸社会を探る。文学、歴史、文化、経済を横断すると、あり得たかもしれない、もう一つの日本というパラレルワールドが見えてくる。
  • 統帥権の独立 帝国日本「暴走」の実態
    3.0
    帝国陸海軍の作戦行動の指揮・決定権限である統帥権。天皇大権に属し、その「独立」は内閣からの干渉を阻止した。そのため満洲事変以降、陸軍の暴走をもたらした最大の要因とされてきた。しかし近年、通説の見直しが進む。明治政府はなぜ「独立」を必要としたのか。否定論者がいながら、なぜ「独立」は維持されたのか。海軍の役割とは。本書は、軍事の特殊専門意識に着目、明治からアジア・太平洋戦争敗北までの通史を描く。
  • 「敦煌」と日本人 シルクロードにたどる戦後の日中関係
    5.0
    「敦煌」は戦前・戦後を通じて、日本人の「中国への憧れ」を象徴する言葉であった。その最後の輝きとも言える1980年代、井上靖の小説『敦煌』『楼蘭』がロングセラーになり、「敦煌」は世紀の大作として映画化。NHK特集「シルクロード」が高視聴率を記録し、喜多郎のテーマ音楽がヒットチャートを駆けあがった。平山郁夫の描く西域の風景画はカレンダー等の定番でもあった。中国の改革開放政策の進展にともなって巻き起こったあのブームは、いつ、なぜ、どのように消えたのだろうか。  今や「シルクロード」という言葉は中国の経済圏構想「一帯一路」に付随するものになってしまった。中国が世界の脅威と見なされる現状で、日本が隣国とどのような関係を構築すべきかを考える必要に迫られている。20世紀の日本人が何を背景に、どのような中国イメージを形成してきたのかを知ることは、その大きな手がかりとなるだろう。 目次 第一章 井上靖と「敦煌」 第二章 日中国交正常化とNHK「シルクロード」 第三章 改革開放と映画『敦煌』 第四章 平山郁夫の敦煌 第五章 大国化する中国とシルクロード
  • 謎の海洋王国ディルムン メソポタミア文明を支えた交易国家の勃興と崩壊
    4.5
    2019年、ペルシア湾の島国バハレーンの古墳群が世界文化遺産に登録された。バハレーンには今から4000年前、南メソポタミアとオマーン半島、そしてインダス地域を結ぶ海上交易を独占して繁栄をきわめた海洋の王国・ディルムンの人々が、約7万5000基もの古墳を築いた。資源に乏しいメソポタミア文明を物流の面から支え、この文明の生命線を握っていたのが、ディルムンであった。この王国を築いた人々は、それまでほぼ無人の地だったバハレーンにどこから移住してきたのか? なぜ、紀元前1700年頃を境に急速に衰退し、王都や神殿が打ち棄てられ、巨大な王墓の建造が終焉を迎えたのか? 日本の発掘調査団の中心メンバーである著者が、最新の考古学的成果を踏まえ、ディルムン文明の起源と崩壊の謎の解明に挑む。
  • 非国民な女たち 戦時下のパーマとモンペ
    3.9
    「贅沢は敵」と批判されたパーマネントは、実は戦中も大流行しており、客は店に大行列、防空壕にもパーマネント機が持ち込まれていた。モンペは日中戦争開始後、防空演習で着用され注目を集めたが、実際にはすぐ下火になり、「モンペが不格好で不人気だから防空演習への参加率が悪い」と取り沙汰されたりした。戦時期は統制経済や節約といったイメージで語られがちだが、女性の洋装が広まり、お洒落の意識が変化した時代でもある。統制と流行と近代化の狭間で大きな社会問題となった、女性たちの「お洒落」とは。
  • 卑弥呼とヤマト王権
    4.0
    1巻2,860円 (税込)
    卑弥呼はヤマト王権の初代大王、その王都は奈良盆地東南部の纒向(まきむく)にあった! 盟主不在の「倭国乱」ののち、3世紀初めの「卑弥呼共立」によって「新生倭国」=ヤマト王権は誕生した。考古学の成果と中国史書の精読から導き出された、この国の国家形成史の新しい枠組み。 ◆纒向遺跡はいつ出現し、どのような特徴をもった特別な遺跡なのか? 詳細に解説 ◆王権はのちに畿内と呼ばれる地域の勢力から誕生したのか? 新しいストーリーを提示 ◆卑弥呼はそもそも「邪馬台国の女王」だったのか? 彼女はどこに眠っているのか? 箸墓古墳の被葬者はいったい誰なのか? 最新の研究成果にもとづいて推理 本書の構成(目次) 第一章 纒向遺跡論/第二章 日本国家の起源を求めて/第三章 王権誕生への道/第四章 王権の系譜と継承/第五章 卑弥呼共立事情――私の邪馬台国論/第六章 卑弥呼とその後
  • 封じ込めの地政学 冷戦の戦略構想
    4.0
    第二次大戦後、アメリカはそれまでの孤立主義から舵を切り、西側諸国による対ソ戦略を打ち出した。マーシャル・プランの実施、NATO結成など、前例のないアメリカの外交政策を方向付けたのが「封じ込め」という戦略構想である。ドイツの東西分割、朝鮮戦争への米軍介入、日本の経済復興などもその戦略のなかで判断され、東西対立の中に位置づけられた。公開が進む当時の史料も広く用い、アメリカの冷戦戦略の始まりを緻密にたどる。
  • ホモ・サピエンスの宗教史 宗教は人類になにをもたらしたのか
    5.0
    目 次 序 章 宗教は謎だらけだ 第1章 宗教の起源――宗教はいつはじまったか 第2章 アニミズムの世界――狩猟採集民の宗教 第3章 儀礼の体系の成立――農耕民と牧畜民の宗教 第4章 多神教の確立――国家と文明の宗教 第5章 世界宗教の誕生――「枢軸の時代」 第6章 宗教改革の光と影――宗教は現代世界の成立にどう関係したか     結 論     あとがき     注     図版出典     文献表
  • マッカーサー 20世紀アメリカ最高の軍司令官なのか
    4.0
    謝辞 まえがき――「ダグラス・マッカーサーとは誰だったのか?」 第1章 始まり 第2章 参謀総長 第3章 中心から外辺へ 第4章 大惨事 第5章 高くついた教訓 第6章 パラメーター 第7章 見習い期間 第8章 突破口 第9章 帰還と償還 第10章 回帰、侵攻、そして降伏 第11章 青い眼の大君 第12章 勝利と課題 第13章 朝鮮半島での勝利 第14章 朝鮮半島での敗北 第15章 総括 あとがき  「マッカーサーの遺産と戦後日本」
  • 満州事変はなぜ起きたのか
    4.2
    中国の老獪、欧米の野心、日本の熱狂―息づまる日本史のドラマを明らかに。 日露戦争後の日米関係緊張から説き始め、最新研究を基に満州事変史を捉え直した注目作!
  • 明治六大巡幸──「報道される天皇」の誕生
    -
    1巻1,870円 (税込)
    天皇はここから「ニュース」になった──。生涯にわたって全国各地を行幸し、神話世界を別にすれば日本史上で最初の「旅する天皇」であった明治天皇。とりわけ1872年から1885年にかけ6回にわたって全国各地を回った大規模な巡幸は「明治六大巡幸」と呼ばれ、天皇と民衆の視覚的相互関係におけるエポックメイキングな出来事として研究の対象とされてきた。六大巡幸はまた、「旅する天皇」の誕生であると同時に、「報道される天皇」の誕生でもあった。日本における最初の本格的メディアとして新聞が続々と創刊された同時代性に着目し、両者のかかわりを重層的な視点で描く。新聞と天皇を重ね合わせるところから、近代日本の初発の時期における国民国家の形成において、当時のニューメディアが果たした役割を明らかにする。
  • 山本五十六 アメリカの敵となった男
    5.0
    1巻1,870円 (税込)
    山本五十六は、なぜ「最も勇敢に戦争に反対しながら、自ら対米戦争の火蓋を切らなければならなかった」連合艦隊司令長官となったのか。その実像を戦前戦後の価値観の変遷、山本自身の対米認識を軸に明らかにする。ロンドン海軍軍縮会議の「会議対策私見」など初めて活字化して収録。 序章 アメリカの第二の敵・山本五十六 第一章 長岡から海軍へ 第二章 海軍航空への開眼 第三章 ロンドン海軍軍縮会議 第四章 航空主兵論の展開 第五章 真珠湾への道 終章 ペリーの星条旗  資料編
  • 陸軍士官学校事件 二・二六事件の原点
    5.0
    陸軍士官学校事件はクーデター企図事件で、1934年11月に発覚し、関係者逮捕でひとまず終結した。 二・二六事件の前史として扱われており、この後、真崎更迭事件、相沢事件へと続く一連の流れの劈頭をなすものだ。 昭和史の動きを捉えるために重要な事件であるにもかかわらず、非常時日本に頻発したテロ、クーデターのなかでは、従来、ごくマイナーな位置づけであった。  この事件は陸軍士官学校の中隊長であった辻政信大尉(統制派)が、参謀本部の片倉衷少佐らとともに画策したとされる。 対立していた皇道派の村中孝次(陸軍大学校学生)、磯部浅一(一等主計)に陸士候補生(陸軍士官学校生徒のこと)をスパイとして送り込み、クーデター計画が存在するとして、深夜、陸軍次官のもと駆け込み逮捕させた。 村中と磯部は結局、免官となる。  この事件は実に奇妙なものであり、陰謀的な面がきわめて強い。 デッチ上げといわれる場合もあるが、それなら何故、陸軍次官まで動いたのかなど謎に満ちている。 それゆえ、実証的検討作業が遅れたことは、事件の解明を妨げてきた理由としてある。 実際、関係者の軍事裁判の過程では怪文書も多く飛び交い、皇道派・統制派の暗闘のなかで、事件そのものと事態収拾が進んでいった。  いずれにせよ、「陸士事件なくして二・二六事件はなかった」といわれるほど、昭和維新史上で重要な事件であるにもかかわらず、今日まで陸軍士官学校事件を扱った単著はおろか、専門的研究論文も存在していなかった。  本書は昭和史の第一人者が、この事件の実像に迫った本である。 事件関係者への聴取記録など基礎史料を渉猟したうえで、昭和史叙述で欠落していた部分を埋めた第一級の労作といえよう。 時々刻々で事件の流れと人の動きを捉え、ときにドキュメンタリータッチも交えて描かれる一方で、本書は、事実と推測を画然と分けて記す姿勢を通して実証史学の骨法を明らかにしている。  本書のもう一つの特徴は、事件そのものを扱うとともに、事件の背景についても筆を費やしているところだ。 陸軍士官学校事件は陸軍内の派閥闘争が深くからんで起きている。 いうまでもなくそれは皇道派・統制派の対立のことだが、著者は本書で、この対立の前史から説き起こしており、前身となる長州閥と薩摩閥について触れることも忘れない。 また、永田鉄山や東条英機らが関わった「バーデンバーデン盟約」にも筆は及んでいる。 昭和陸軍の主要人物が次々と登場して、事件の叙述に広がりを与えているのも、本書の魅力の一つだといってよい。  戦後も80年を数えたが、現在、憲法改正や安全保障問題などを論議するさい、わが国の過去を振り返る必要は絶えず生じている。 そのなかで、昭和陸軍暗闘史における異色の物語として、本書は、幅広い昭和史ファンの注目を集める本となるだろう。 そして、隠された昭和史の一面に始めて光を当てたという意味で、独自の価値を発信する本となるであろう。
  • 聯合艦隊――「海軍の象徴」の実像
    4.0
    1巻1,870円 (税込)
    誰もが知る「聯合艦隊」初の通史。  東郷平八郎や山本五十六ら聯合艦隊司令長官は、ともすると海軍大臣よりも一般に名の通った存在である。  では、聯合艦隊とはどのような「組織」で、どのような役割を果たしていたのか。  本書は、本来、戦時や演習時に必要に応じて編成される臨時の組織に過ぎなかった聯合艦隊が平時に常設されるようになり、海軍の象徴として政治的にも大きな存在となりながら、次第に戦争の現場に合致しない組織となっていく過程を、鍵となる司令長官の事例を軸に説き起こす。
  • ロシアとは何ものか 過去が貫く現在
    3.0
    ロシアは過去一〇〇年ほどのあいだに、帝政から共産党独裁へ、そして大統領制国家へと変転を遂げた。だが、ロシア史を貫く基本構造は同じである――。ロシア史を大づかみにとらえた上で、ロシア革命期の自由主義政党カデットや社会主義者最左派のボリシェビキの活動の実態から、プーチン政権の権力のあり方までを考察。そこに生きた人間の運命を通して、世界史の今後にとって大きな意味をもつ「ロシアとは何ものか」を見極める。

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