魚住昭のレビュー一覧
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元共同通信社記者の方による、ありていに言うと、権力とメディアの癒着を告発した本です。はまっている佐藤優氏が絶賛と帯に書いてあるので読んでみました。
官僚が自らの行動から自縛的に道を外していく様と、表面的には無自覚的に利用されるメディアの構造が、有名な事件を例に引いて非常に説得力のある形で提示されています。筆者の熱意と信念が伝わってきます。
姉歯耐震強度偽装事件、ライブドア事件、など実体経済に無視できない影響を与えているものもあり、これは構造的に問題ですよな、と納得します。解決策は示されていないのですが(自浄作用に期待したいという程度)。 -
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このルポの凄いところは、「抵抗勢力」「闇将軍」「影の首相」と呼ばれた野中広務を丸裸にしている点だ。あんな強面の政治家がまさか部落出身者であるとは。田中角栄をミニ版にした感じの、政治の舵取りがとてもよく理解できた。両者に共通するのは、金作りのうまさ・多数派工作の巧みさ、そして意外ことに、と言うよりも、両者の出自から当然のことだが、弱者に対する優しさがある。この作品の中でハンセン病患者たちの厚い信頼が紹介されているが、小泉政権がやったかのように思えた政府の方向転換も、野中氏の仕事を小泉が美味しい処取りしただけだった。よく考えたら、小泉や安倍のように出自の良い二世・三世首相はもともと権力側なので,何
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ノンフィクション作家、春日井太一さんのトークショーで紹介された本。いやーとんでもなく面白かった。氏がこれをぜひネットフリックスでドラマ化して欲しい!と言ったのがよく分かる(笑)
権謀術数に長け、あらゆる人脈を駆使して権力の階段を登っていく。立身出世の爽快感は全くないが、権力に取り憑かれたナベツネに漂う悪の魅力というか人間力(いい意味ではない)に圧倒され、のめり込みながら読んでしまった。
これが出版されたのが今から20数年前のまだ渡邉恒雄氏が存命されていた時に書かれたというのが驚くし、著者の気概を感じる。
新聞ジャーナリズムの劣化の原点、戦後民主主義の崩壊、などいろいろこの本の切り口、語り口 -
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まだ小泉政権の頃に危惧していたことが現実になる。安倍晋三の長期政権である。彼自身の私欲だけでなく、彼に取り巻く為政者や宗教家や財界の人びとのはかりごとが、民の生活を虐げていく。そんなことをすれば経済力は低下していき財政は行き詰ることは容易く予測できるのに、現在さえ自分さえ良けりゃいいんだという浅はかな結論でおさまっていいのか。これは自己責任論にも通底しており、弱者を切り捨ててしまう社会の崩壊へと向かってしまう。そこに皆気付くべきであり、気付かなかった、だまされていた、という言い訳はあまりに無責任、私たちは共同体としての人道的行動を実践しよう。
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自民党の代議士として強大な権力を持ちながら、小泉政権の誕生によってその力を削がれ、2003年に政界を引退した野中広務の生涯に迫ったルポルタージュ。
野中広務という政治家の背景として最も重要なのは、やはり被差別部落の出身であるという点である。本書では、そうした点も包み隠さずに書こうとしたことから、あるときに野中広務本人に呼ばれ、彼の涙と共に著者はこう告げられる。
「君が部落のことを書いたことで、私の家族がどれほど辛い思いをしているか知っているのか。そうなることが分かっていて、書いたのか」
それくらいに、野中広務の出自に関する本書での調査は微に入っており、野中広務という人間の全体像が浮かび上 -
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面白く読めるが、深読みし始めると止めがつかない。上がっている本だけでも少しずつ読んでいこうと思いつつ本を置いていたが、内容を読みきったという感触には程遠い。これは、と思い、本を知人に委ねることにした。何人かでよめば、視点が増えるので気がつくことがもっと増えるかも知れない。つまるところ、分かるまで信じるな、というのは、キャッチフレーズ的に伝播力をもち、威力もあるが、はたして、それでも物事を軽信する傾向は、拍車がかかりこそすれ、変わらない。事実が突きつけられない限り人は信じるのだ。欲しいのは何が事実なのか、そうではない事実をどう見分けるか、方法なり、手段なりを持つにはどうするか、なのだろう。この本
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kotobaノンフ特集から。名前くらいしか知らなかった政治家の人物評伝。少なくともいま現在、”自民党”の響きにポジティブな印象は持ち得ないんだけど、それは歴史全てを否定したい感情ではなく、寧ろ第一政党を走り続ける舞台裏とかは、大いに興味あり。55年体制を俯瞰する書も手元にはあるんだけど、特定の人物にスポットを当てつつその歴史を総括する、みたいな本書の方が、より取っ掛かりやすいのでは、と思ってまず本書に当たることに。そしてその思惑は、まあ正解だったかな、と。本書は、戦後政治史としても良くまとまっていて、適度にビッグネームの名前も挙がってくるし、入門書としても機能するものだった。当人物については、
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小説だと思って借りたらそうじゃなかった笑
郵便不正事件で話題となった村木裁判の冤罪ストーリーを暴くもので、当時は公務員嫌いからいいぞ、もっとやれって検察側を応援していたものだが、よく考えると検察も公務員じゃんってw
この話ではやり玉に挙げられたのは検察であるが、世の中検察も、警察も、弁護士も裁判官もどれも人である。人は生まれながらにして悪である、が持論の自分としては、正義なんてその場その場にしかいない。そして、正義は時として悪になる。またマスコミも正義であり、時として悪である。
そんな世の中、何を信じればいいの?
信じるは己だけ、その己でさえも窮地に追い込められたら何を真実として語ればいいのか -
Posted by ブクログ
ネタバレこの本はいくつかに分けることが出来る。
「野中広務とはなんなのか」「政治(パワーゲーム)」の
2つに分かれ、実際のボリュームは後者となる。
ただ、終盤となり権力を失っていく時、野中広務という
人物が非常に色濃く映ってくる。
もともと野中広務のことは殆ど知らなかった。
自民党の、まさに裏で糸を引く人物、という存在だ。
だが実際のところは「調停役」にすぎない。
調停するために様々な情報を握る中で結果的に権力を
握っていくことになる。だが、この著者で何度かでる
メッセージとして「彼にイデオロギー、政策信念はない」
「そのためには平気に180度違うことを発言する」
である。野中広務は与えられた責任、役