魚住昭のレビュー一覧
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京都府園部町に生まれ、不当な差別を受けながら政治家としてのキャリアを歩み始め、57歳で中央政界に初進出し、自民党の黒幕としての地位を築くまでの、野中広務の生き様を追ったノンフィクションです。
不当な差別を受け続けてきたがゆえに、弱者に対する優しいまなざしを持つ反面、差別に抗して自分の居場所を切り開いてきたが故に、ライヴァルたちの弱みを握ってみずからの影響力を強めていく政治手法に長けていた、複雑な政治家の実像を、みごとに描いています。
また、高邁な理念を掲げる政治家ではなかったにしろ、土着的な共同体理念に根づいた優しさを体現していたという意味で、55年体制の終焉を象徴する政治家として野中広務を位置づけており、戦後政治史の一幕を見ることができたという意味でも、興味深く読みました。 -
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被差別部落に生まれながら、老獪な政治手法を用い、内閣の中枢に登りつめ、「影の総理」とまで言われた野中広務の姿を描いた一冊。「潮目を読むこと」に長け、一貫した政治姿勢がないようにも見える野中には、弱者への優しいまなざしと差別の再生産を憎む気持ちがあった。
野中はときに政敵を恫喝し、ときにトリッキーな手法を駆使しして政界を生き抜いてきた。その姿だけをみると、決して評価されるべき政治家ではないようにも思える。しかし、ハンセン病患者らによる裁判での国の控訴見送りは野中の尽力なくしてはあり得なかった。不当な差別を受け続けてきた野中の心には、弱者に対する思いやりと弱者を虐げる社会への強い憤りが生まれていたのだと思う。 -
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渡邉恒雄が生まれてから読売新聞社長の座を手に入れるまでの恐ろしいまでの権力闘争やそれに至る生い立ちを、極めて詳細な取材をもとに紐解いていく本。
どんな組織でも、それが社会に対して持っている影響力の大小に関わらず、権力闘争・派閥争いはあるものだが、読売新聞のような大手メディアでのものが社会に与える影響の大きさに愕然とする。
また、権力闘争を勝ち抜いた渡邉恒雄個人が社内はもちろん、国家に与える悪い意味での影響の大きさは想像を遥かに越えた醜悪なもの。
メディアとはそのようなものと言ってしまえばそのとおりかもしれないが、では健全さを前提としてメディアに与えられているさまざまな権利と、それに基づく権力・権威はどう解釈すれば良いのか。
国民の権利を守るためには国家権力の行使を監視する機能がどうしても必要になるが、その一端を担うのがメディアである限りは、何らかの特別な権力をメディアに与える必要があるだろうが、その資格を現状で保有しているとは考えづらい。
だからといって、現在進められているような、大衆が直接政治・行政に関与していく手法を大幅に拡大していくようなことは、国家の自殺行為であり、最終的にはアナーキズムに繋がってしまう。
やはり現状においては、メディアに対する優遇は残したうえで、この本のような検証を随時進め、それを国民・国家が常に関心を持っておくことが最後に残された道なのだろう。 -
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なかなか面白かったです。特に耐震強度偽装事件については、某ブログを通じて「悪のトライアングル」論を支持していたので、にわかにはこの本の記述を信用できなかった。
でも、第6章「検察の暴走」を読んで、どれも信用できるかも・・と感じた。詳しいことを書くとこのブログがいろいろ面倒なことになりそうなので割愛するけどとても興味ある内容です。第7章では朝日新聞とNHK、第8章では最高裁判所を扱っている。参考までにカバーに書かれたPR文を以下に転載しておきます。
官僚の暴走と、
すり寄るメディアの深い闇
▲「組織」を優先するメディアの腐敗
▲官僚の情報操作に踊るお粗末報道
▲官僚を恐れ批判しないメディアの弱み
▲真実を求めて危険な橋を渡った記者の行方
▲最高裁・電通・メディアが世論誘導を共謀
books70 -
Posted by ブクログ
著者は、共同通信で20年ほど記者をするも、記事内容への上からの圧力、自主規制の強制が嫌になり退社、フリーのジャーナリストとなった人である。
そのため実感を込めてメディアの問題点を取り上げているのがよく分かる。
目次を見ると週刊誌の吊り広告のような内容だが、実際、月刊現代とアエラの記事をまとめた本であった(月刊誌だけど)。
1.新聞の政治家へのすり寄り、外部からの圧力と過剰な自主規制。情報源(政治家、官庁)を怒らせたくないからそういうことになるらしい。
2.姉歯の耐震偽装事件。
姉歯建築士、ディベロッパー、建築会社、確認検査機関、コンサルタント会社らが結託して偽装していたような報道が大々的にされ、世論は大騒ぎ、警察も大がかりな捜査を開始する。
しかしよくよく調べてみると、姉歯が一人で適当な計算書を作り、他の者は誰もそのことを知らず、気付かず、過失はあったとしても共犯はあり得ないということが分かる。
警察は今更引っ込みが付かず、収まらないであろう世論に気兼ねもして、姉歯以外の人達を軽微な粉飾決算などで別件逮捕、新聞各紙はそのことを誉めそやす記事を載せる。
結局、形骸化した建築確認システムを放置していた国交省の責任は問題にされずにウヤムヤのままであった。
3.ライブドア事件。
検察の国策捜査と腐敗、暴走、捜査能力の著しい低下。
佐藤優の国家の罠と同じような話。
大阪地検特捜部のデータ改ざん事件もあったし特捜はほんとにヤバイ…
4.政治圧力によるNHKの番組改変事件。
5.裁判所、電通、新聞社、共同通信が癒着して裁判員制度の広報を行っていた事件。
サクラを集めてタウンミーティングを全国で共同開催、この事を広告ではなく記事として全国の紙面に大きく掲載+下段には裁判所の広告を掲載。
裁判所は裁判員制度賛成へと世論を誘導したい、電通や新聞社は巨額の政府広報費が得たい、という関係。
最近ネットで経産省のクールジャパン戦略に電通が噛んでると話題だが、こういったことは当たり前に起きているみたい。
読みやすくて面白かった。 -
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前掲書と同じ事件についてですが,こっちの方が踏み込んでるような気がする。弁護人と裁判官の人間性により焦点を当てているということだが。
弁護人から見て玉も筋も良すぎるという発言は,ちょっと凄いなと思った。まぁ,大先生ですからね。勿論,無罪を信ずるべき事件ではあったのだろうけれども,それでも,本件でも無罪は厳しいと考えざるを得ないのが,普通の弁護人の感覚ではなかろうか。残念ながら。
本書が指摘するように,裁判所が検察を疑ったという点が,本件のもっとも重大な要素だと思う。それは,可視化とか何とかを吹っ飛ばして,刑事司法の大転換になりうる。
蛇足ながら,このレベルなら,犯人隠避も無罪で良かったはずと思ってしまう。裁判体は同じだったんかな?マスコミというか世論というか,法と証拠以外の部分で決まってしまう部分もあるのだろうけれども。。。
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ネタバレかなり好きな作家の一人。すごく調査に時間をかけられているのが伝わってくるし、表現も簡潔ですごく事件の迫力も伝わる一方で読みやすいのが毎回うれしいです。
障碍者団体の優遇制度を悪用した郵便不正事件で、新聞・TVの報道を見ていた印象としては、村木課長が当然何らか悪いことをしたのだと思い込んでました。完全に刷り込みをされた一般大衆のひとりでした。
ところが、実際にはご本人は全く関係なく、かつ当時の部下の単独犯で、動機も業務が忙しかったから面倒なことをとっとと片付けたかった、、、とは。政治家が絡んでるという疑惑も全く事実に反するし、改めて検察の捜査方法や、ストーリーを作られた側の怖さを感じました。
小沢一郎への政治献金や、4億円の問題などもやはり相当無理があるんだと感じます。報道のされ方、ニュアンスを見ても有罪にもっていく結論ありきで、事実関係からすると厳しいのでしょうね。 -
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部落出身者なのに権力に食い込んだとうことぐらいしか知らなかったから、どんな人だったのかと思い読書。
かなりのボリュームだったから途中で終了。
部落を黙らせることができる政治家として、部落出身だった野中広務は頭角を現してきた。
地方の主要産業は公共工事だと言われるが、企業献金の額と票の量によって公共事業を割り振るというあからさまな構図があり、それを当然としていた時代があったとうこと。
政治的能力とは、結局は金の流れを作ることなんだと実感したしだい。
そのやり方は泥臭くスマートじゃないけど、その根っこに勉強家で努力家という素質があったのだなと感心。
被差別階級に対する親身な暖かいまなざしは、被差別部落出身であるという出生を利用し成り上がってきた野中からすれば、至極当然の姿なのかもしれない。
権力の仕組みって普遍的なものなんだと勉強になりました。 -
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小渕政権の官房長官であり、自民党幹事長であったコワモテで老獪なイメージだった政治家野中広務。彼の出自について知ったのは、辛淑玉さんとの対談本である『差別と日本人』(角川oneテーマ21)で、その「いかにも老獪そうなニッポンの保守派政治家」といったイメージの一方、辛淑玉さんとの対談の中で語った、その人生を通しての差別との戦いに圧倒され、第四章は野中氏と辛淑玉さんの二人の言葉に、涙でページを繰る手も止まったガブ。今回、同書を貸した友人から、返礼のように(?)貸してもらったのが本書である。
対談本とは異なり、本書はプロのジャーナリストが綿密な取材と、巧みな構成によって紡ぎ出した、いわば現代政治史ノンフィクション(講談社ノンフィクション賞受賞作)、野中広務の政治家としての来し方を描くと同時に、ガブが実際に日々ニュースで見聞していたはずの、当時の政治の舞台裏を見せてくれた同時代の政治ルポでもあり、冒頭の数ページから最後まで、読者を引きつけてやまない
ノンフィクションの力作となっている。ここ数年取り替えひっかえ首相に就任した自民党総裁たちの誰よりも、日本の政治史にとって野中広務という政治家が残した足跡は大きく、私たち日本人に突きつけた「差別を生む構造」(それも古い時代そのままのものから、時代に合わせてバージョンアップしたものまで)をどうしたら解体していけるのか・・・という命題を考えさせられずにはいられない。
この本に興味を持った方には、上記の『差別と日本人』もぜひ併せて読んでいただきたい。 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
官僚の爆走と、すり寄るメディアの深い闇。
[ 目次 ]
第1章 もみ消されたスキャンダル
第2章 組織メディアの内実
第3章 悪のトライアングル
第4章 官僚たちの思惑
第5章 情報幕僚
第6章 検察の暴走
第7章 NHKと朝日新聞
第8章 最高裁が手を染めた「二七億円の癒着」
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
元共同通信社記者である著者による、講談社ノンフィクション賞受賞作。
被差別部落出身でありながら、様々な苦難にぶつかりながらも自民党の幹事長まで務めた野中広務という政治家について、その軌跡を赤裸々に綴ったノンフィクション作品。
野中自身も、この著書の出版にはかなり嫌な思いを持っていたようである。
野中広務といえば、ありとあらゆる権謀術数を駆使して権力を握ってきた印象が強いが、その出自のためか、反面弱者に対する慈しみの思いも強く持っていることがわかる。
部落問題という、腫れ物に触るようにして扱われてきた非常にデリケートなテーマ(私はそうは思っていないが)ではあるが、ジャーナリストとして中立的な観点から書かれており、ノンフィクションとして非常に秀逸である。