あらすじ
本書は、官僚とメディアの凄まじい癒着と腐敗をえぐり出した衝撃的ノンフィクションである! 共同通信による安倍首相周辺スキャンダル記事の握りつぶし、姉歯建築士の耐震データ偽装事件で巧妙に仕立て上げられた「悪のトライアングル」、粛正された村上ファンドとホリエモン、NHK「女性国際戦犯法廷」番組の改編圧力と朝日新聞誤報疑惑、最高裁・電通・新聞社が仕組んだ「裁判員制度全国フォーラム」偽装広告。国家もマスコミも内側から壊れていく……「黒幕」は誰だ?
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Posted by ブクログ
本書を読むと、現在のメディアを巡る問題状況-いやメディア自身だけに留まらず、それが関わる森羅万象を巡る問題状況と言ったほうがより適切か-が一つの揺ぎ無い構造の上に成立していることがいやが上にも痛感させられる。メディアが文字通り「媒介者」でしかない以上、その入力を掌握するもの=公権力がいかようにも動かすことができるというのは、あまりにも自明な、そして磐石な構図である。逆にそのような構図にも関わらずメディアが反権力であるという妄想が許された時代が牧歌的であったという気さえするほどだ。哀しいかな、権力の世襲を批判しようにも、今や政治記者の身分が三代に渡って世襲されるご時世なのだ。
言論統制といえば今だに北朝鮮が例に挙がることが多いが、かの国のように「言論統制する事」を半ば公とするような仕組みは、メディアへの入力としての「情報」は統制できても、言論の基盤となる人々の意識を制御することはできない。比較してわが国は言論の自由がタテマエとなっているために、情報を統制することが意識=言論を制御することに直結する。 何でも言えるはずのメディアが黙っているということは、そこに何か言うべき事実が存在しないと見なされる。少なくとも国民はそう見るように馴らされている。
魚住氏は元記者であり、かつての同僚たちの一片の良心に期待しているようだが、その点については異議がある。大企業の広告と公的機関の発表情報に牛耳られたメディア空間で、高額所得を保障された記者が垂れ流す記事が真実を伝えると考える方がどうかしているのだ。この簡単な事実に全ての人が気付くことからしか、突破口は開けない。
Posted by ブクログ
元共同通信社記者の方による、ありていに言うと、権力とメディアの癒着を告発した本です。はまっている佐藤優氏が絶賛と帯に書いてあるので読んでみました。
官僚が自らの行動から自縛的に道を外していく様と、表面的には無自覚的に利用されるメディアの構造が、有名な事件を例に引いて非常に説得力のある形で提示されています。筆者の熱意と信念が伝わってきます。
姉歯耐震強度偽装事件、ライブドア事件、など実体経済に無視できない影響を与えているものもあり、これは構造的に問題ですよな、と納得します。解決策は示されていないのですが(自浄作用に期待したいという程度)。
Posted by ブクログ
2009年の39冊目。共同通信で東京地検特捜部を担当していた著者の権力とメディア批判です。選挙以外の実力行使の術を持たない我々に代わって、メディアが権力の監視をしなければならないのですが、それが機能不全に陥っている現在を鋭く指摘しています。
Posted by ブクログ
一種のガス抜きなのかもしれないが、このような本が出て読まれ、それなりに話題になるだけこの業界(マスコミ)は、まだ自浄能力があるのでは?^^;
個人的にはマスコミ不信が加速しましたが(笑)
Posted by ブクログ
新聞社やTV局などの大手マスメデイアが取材対象の官僚(霞ヶ関)に有利な形でメデイアに掲載する近年の流れを膨大な取材で示した本。ひねくれた顔をしているが、志と取材能力はすばらしい。
マスコミとしての文章の書き方も教えてくれているので仕事本としても参考になる。
あと、耐震データ偽装事件はTVや新聞の報道とは全く異なる事実があるようで驚いた。
Posted by ブクログ
特にメディアが信じられなくなる本。情報の裏付けとは非常に労力を伴うものであり、一般の人は政治問題や様々な事件について本や新聞でしかその情報を仕入れることはできない。その裏にどのような意図が隠されていようと、我々は提示された情報でしか判断できない。その情報が改竄はされていなくとも、判断の為の重要なセンテンスが隠されていたとしたら、もうどうすることもできない。誰のためのメディアなのか、今一度考えさせられる本。
Posted by ブクログ
なかなか面白かったです。特に耐震強度偽装事件については、某ブログを通じて「悪のトライアングル」論を支持していたので、にわかにはこの本の記述を信用できなかった。
でも、第6章「検察の暴走」を読んで、どれも信用できるかも・・と感じた。詳しいことを書くとこのブログがいろいろ面倒なことになりそうなので割愛するけどとても興味ある内容です。第7章では朝日新聞とNHK、第8章では最高裁判所を扱っている。参考までにカバーに書かれたPR文を以下に転載しておきます。
官僚の暴走と、
すり寄るメディアの深い闇
▲「組織」を優先するメディアの腐敗
▲官僚の情報操作に踊るお粗末報道
▲官僚を恐れ批判しないメディアの弱み
▲真実を求めて危険な橋を渡った記者の行方
▲最高裁・電通・メディアが世論誘導を共謀
books70
Posted by ブクログ
著者は、共同通信で20年ほど記者をするも、記事内容への上からの圧力、自主規制の強制が嫌になり退社、フリーのジャーナリストとなった人である。
そのため実感を込めてメディアの問題点を取り上げているのがよく分かる。
目次を見ると週刊誌の吊り広告のような内容だが、実際、月刊現代とアエラの記事をまとめた本であった(月刊誌だけど)。
1.新聞の政治家へのすり寄り、外部からの圧力と過剰な自主規制。情報源(政治家、官庁)を怒らせたくないからそういうことになるらしい。
2.姉歯の耐震偽装事件。
姉歯建築士、ディベロッパー、建築会社、確認検査機関、コンサルタント会社らが結託して偽装していたような報道が大々的にされ、世論は大騒ぎ、警察も大がかりな捜査を開始する。
しかしよくよく調べてみると、姉歯が一人で適当な計算書を作り、他の者は誰もそのことを知らず、気付かず、過失はあったとしても共犯はあり得ないということが分かる。
警察は今更引っ込みが付かず、収まらないであろう世論に気兼ねもして、姉歯以外の人達を軽微な粉飾決算などで別件逮捕、新聞各紙はそのことを誉めそやす記事を載せる。
結局、形骸化した建築確認システムを放置していた国交省の責任は問題にされずにウヤムヤのままであった。
3.ライブドア事件。
検察の国策捜査と腐敗、暴走、捜査能力の著しい低下。
佐藤優の国家の罠と同じような話。
大阪地検特捜部のデータ改ざん事件もあったし特捜はほんとにヤバイ…
4.政治圧力によるNHKの番組改変事件。
5.裁判所、電通、新聞社、共同通信が癒着して裁判員制度の広報を行っていた事件。
サクラを集めてタウンミーティングを全国で共同開催、この事を広告ではなく記事として全国の紙面に大きく掲載+下段には裁判所の広告を掲載。
裁判所は裁判員制度賛成へと世論を誘導したい、電通や新聞社は巨額の政府広報費が得たい、という関係。
最近ネットで経産省のクールジャパン戦略に電通が噛んでると話題だが、こういったことは当たり前に起きているみたい。
読みやすくて面白かった。
Posted by ブクログ
官僚とメディアの癒着は分かっていたけど、裁判所がメディアと癒着していたのには絶句した。その場面を読んでいる瞬間、時が止まった感じだった。それほど、私は裁判所を盲目的に信頼してたということか。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
官僚の爆走と、すり寄るメディアの深い闇。
[ 目次 ]
第1章 もみ消されたスキャンダル
第2章 組織メディアの内実
第3章 悪のトライアングル
第4章 官僚たちの思惑
第5章 情報幕僚
第6章 検察の暴走
第7章 NHKと朝日新聞
第8章 最高裁が手を染めた「二七億円の癒着」
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
佐高さん
08年12月22日より更新
緊急性を要する未読の本にカテゴライズしていたのに、今ようやく読んだ。
非常に良い本。メディアのあり方を考える上で非常にいい。
報道を捻じ曲げる国家権力の存在を知る一冊。共同通信という会社を知る一冊。
Posted by ブクログ
いわゆる官僚=国家公務員?種、ではなくて、永田町や裁判所などの公権力全体と新聞社の関係について書かれていました。佐藤優が主張していた国策捜査については、ライブドア事件などをあげていて興味深かった。「(検察の)組織の安泰のためにやらなければならないことはただ一つ、時代の『象徴的な事件を作り出し、それを断罪する』作業を繰り返すことである。」まさにそういうことなのでしょう。
その世界に入ると、その世界の考え方が身についてしまい常識的ともいえる多角的視点を失いがちになると思うので、注意しなければいけないなと思いました。
Posted by ブクログ
メディアリテラシー学習3部作その1。市場主義は当然だけど、現在は市場原理主義に過ぎないか?メディア(情報のあきんど)の公共性って?ジャーナリズムは公僕でコンテンツ産業は別でいいのか?誰のための利益を指向?国益イコール国民の利益?世界に貢献する?考える、考えろ・・・
Posted by ブクログ
タブーってあるんだな、報道って本当かな・・・というのが感想。メディアリテラシーという能力を身に着けることの重要性を改めて認識させてくれる本。勉強になりました。
Posted by ブクログ
実際の例をあげながら、官僚によるメディア操作を指摘している。
一連の耐震偽造問題やライブドア問題に関して、そして、著者自身が一番追及したかった自民党幹部によるNHKへの圧力問題について熱く書かれている。
Posted by ブクログ
前半は筆者自身の共同通信でのメディアという組織の体験記。自身のジャーナリストとしての矜持と会社組織のせめぎあいはそれはそれで面白い。
後半になると、官僚の情報操作に踊らされる報道の数々に、暗澹たる気分にさせられる。特に、耐震偽造事件での、自身の責任を葬った国交省の情報操作は犯罪的だ。当時を振り返ると、自分もマスコミ報道通り「建設会社ぐるみの偽装」を信じてしまっていた。
このところ、情報操作するまでもなく政官べったりのメディアも多く、状況は益々厳しくなったが、記者の皆さんには是非とも踏ん張ってもらいたい。
Posted by ブクログ
2006年、共同通信の「安倍晋三関係施設の火炎瓶放火事件スキャンダル」のスクープ記事をもみ消したのは当時の編集局長、後藤謙次であった。詳しいことが知りたい方はお読みください。以上。
Posted by ブクログ
官僚とメディアのなれ合いをテーマに、共同通信の記事配信見送り問題から始まる。時代の空気のようなものに、知らないうちにメディアが気を使うようになっているのではないか。
Posted by ブクログ
「官僚とメディアコントロール」がタイトルでいいんじゃないかと。
そんなに驚くべきとはないが、姉歯事件の内幕が興味を引く。
結局著者も「メディア」というよりも「マスコミ」にいたわけで、緩いながらも問題的をしている作品。
Posted by ブクログ
報道は悪のイメージを作り出し、そのイメージに乗っかって当局が罪人を作り出す。その結果、人々の目は最も肝心なところからそらされていく。
著者は、メディアと権力の接点で起きている出来事を取材することで、「メディアは誰のものか」と問いかける。新聞やテレビを中心とするメディアは経営者や株主などのものではなく、無数の読者のものであるべきだ。
メディアは多くの人々の身近な情報源であり、世論の形成に大きな影響を及ぼしている。それゆえ民主主義社会の中でメディアが果たすべき役割は非常に大きい。この本を読むと、そのようなメディアのあり方について再考させられる。
Posted by ブクログ
★闇の分析は深い。がやや散漫★姉歯、ライブドア、NHK対朝日新聞などを取り上げる。姉歯事件では国交省の問題も大きかったのに、メディアは官僚の情報発信に操られてヒューザー叩きに終始してしまった。事件報道などで検察の情報に「ダボハゼ」のように踊らされるメディアの問題はその通りなのだろう。渦中にいると一歩退けはしないのだろうが、メディアはどこかで冷静さを保つ必要が確かにあるし、読み手もそれを意識すべきなのだろう。裁判員制度を巡る広報活動で裁判所、電通、地方紙の癒着を暴くのも素晴らしい。テーマは一貫しているのだろうが、既出の記事をまとめたためか事例がやや散漫に感じる。
Posted by ブクログ
第5。
記者がどのように官僚に密着して情報を得、官僚がどのように報道機関を利用するのか。
"客観報道主義"の名の下、事件・事故を主管する官庁(警察や検察、各省庁など)の発表を
「警視庁は◯日、◯を◯の容疑で逮捕した」とか
「◯の事件で逮捕された◯が◯していたことが警視庁の調べで分かった」の雛形に収める。
その構造は、報道側の思惑では当局発の情報に依拠すれば誤報にならないと考え、
当局側は疑う証拠があって捜査したのだから被疑者に責任はない、との考えを生み出す。
そして、無責任を生み出す。
第6章
検察の暴走を指摘した後
メディアが報道しない理由として
批判すれば検察の不興を買い、捜査情報を取れなくなるという。
Posted by ブクログ
今は汐留にビルを構える共同通信出身の方が著者。
記者クラブの記者ってジャーナリストではなく、役人の1人にすぎないなと思いました。
その他、検察庁の陪審員制度の過度広告、特捜部の偽造事件、タカ派のNHK番組への圧力など。
共同通信・時事通信・電通って元は国策通信会社・同盟通信社だったんですね。
2007/10/23
Posted by ブクログ
ウルトララダラーの魚住さんの新しい新書
かつて魚住さんがいた共同通信の変化や、権力の中枢にいる人達との間にある問題について、ポイントごとにまとめられた本。
本書のテーマは『メディアは誰のものか』である。
新書であるうえに話が多いため、各章ごとの内容は比較的軽めです。もっと踏み込んだ内容だといいと思った。
面白いと思ったのは、現在裁判員制度を導入しようと最高裁をはじめとして国が取り組んでいるが、このことに関して。
かつて第二次世界大戦において、軍部の暴走もさることながら、新聞などのメディアによる煽りや情報統制にも大きな責任があることは有名だが、その当時のメディアの大本であった同盟通信社(新聞聨合社と日本電報通信社)という国策通信社が存在した。
それが戦後解体されて発足したのが共同通信社と時事通信であった。また日本電報通信社の広報部門であったのが現在の電通である。
これらの2つの会社が今、裁判員制度を導入する方向に国の流れをもっていくために再び手をとって最高裁をクライアントにして27億円もの仕事をしている。
メディアに興味のある人には非常に面白いかもしれない。今と昔のメディアの変化などにも触れている。