松本裕のレビュー一覧
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★可能性を示す具体例が豊富★インド人の在米マーケティング学者によるアフリカの市場分析。アフリカにいち早く進出したのにはインド人が多いのは、発展の経緯を身をもって知っているからという趣旨は説得力がある。とにかくアフリカでのビジネスの具体例にあふれているのがすばらしい。販売網を整備することで市場を「組織化」する、有線をすっ飛ばし携帯電話がテレビや決済まで手掛ける(いつも不思議なのだがこうした新興国では料金をどうやって払っているのだろう)、ノリウッド(ナイジェリア)の隆盛(といっても映画館ではなく、レストランのテレビで流れる映画を作る)。さらに気になるのが、在外アフリカ人からの送金。ウェスタンユニオ
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現代アメリカは超格差社会。
国内の主要産業が製造業からテクノロジー関連にシフトしたために高給が得られる職業に就くためには学歴(学士以上)が必要とされる社会となった。
ひと昔前までなら低学歴者は自動車関連をはじめとする製造業で働いて十分暮らしていけるだけの賃金を得られた。しかし企業がコスト削減のため人件費が安い海外へ工場を移転したことで賃金の高い単純労働は国内から失われてしまった。
仕事を失った低学歴者は以前より賃金が安く、以前より劣悪な職場で働かざるを得なくなった。
将来を悲観した彼らの間で、アルコールや薬物の過剰摂取で命を落としたり、自殺したりする者が増加の一途をたどっている。
著者たちはそ -
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ネタバレ近年、説明責任ともあいまって、測定基準を公表することが求められているが、パフォーマンス評価を重視し過ぎることのリスク、悪影響を述べた本。
評価はその組織やそのミッションを理解している人が指標を決めることが必要。
その上で、業種によっては実績評価がモチベーションにつながることもあるが、多くの場合、行きすぎた評価は、数値をよく見せるために不正を起こしたり、不作為による別の問題を引き起こす。
それが顕著なのが、教育、医療、警察など。
例えば、医療では、手術の成功率を上げるために、リスクの高い患者の手術を避けるようになる。治る可能性のある患者を放置することは生死に関わる問題である。
警察は、重罪を軽 -
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ネタバレテクノロジー!への懐疑を募らせる日々。
生身の人間から作られているのがこの世界。
…
著者は、テクノロジーという外的な介入パッケージではなく、実際に変化をもたらす主体の「内面的成長」に焦点を当てる必要がある、という。
_本書の中核的テーマは、社会的状況を解決するべき問題としてみるよりも、育成するべき人や制度として見るべきだというものだ。
テクノロジー至上主義への批判や反証をさらに深堀する。
非営利組織アジム・プレムジ財団代表、アヌラーグ・ベハールが、2010年『ウォール・ストリート・ジャーナル』のインド系列紙記事で、15000校以上のコンビェーター室で展開する自らの組織の活動に疑問を -
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測れないものを測る事、誤った計測基準を持ち込む事、それに基づいた誤った価値判断がもたらす負のインパクトについて語った本。
数値化する事で目標を設定したり実績を管理しやすくはなるが、それにより評価値を上げる事が目的とすり替わって本末転倒の行動を取るようになる。
資本主義的な経済原理を持ち込む事で、逆に社会主義国の国営工場のような不正や生産性の低下を、生じてしまう、と指摘している。
読んでいて、一昔前のSEO(検索エンジン最適化)を思い出した。評価値を上げる事だけに特化すると誰も幸せにならない典型例。これに対して、現在では検索エンジン側が計測基準を洗練させていく事で世の実益に沿った物に変わりつ -
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本書で取り上げられている国は、米国や英国などの欧米諸国中心ですが、様々な実績評価が企業だけでなく病院や学校、軍隊など幅広い領域に拡大し、それがある種の機能不全や弊害をもたらしている、という指摘になります。なかでも一番わかりやすい指摘は、実績評価(計測)に費やされる時間とコストがばかにならず、肝心の本業に支障が出ているというものでしょう。これなどは目的と手段が転倒している好例です(実績評価自体が目的になってしまっている)。そしてそれよりも深刻な指摘は、実績評価が個々人の評価(報酬、昇進)と紐づけられてしまうと、腐敗や数字操作、また評価指標以外の要素が不当に軽視されてしまうなどの(重大な)副作用を
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論文形式で、主張が明確。
数値データを絶対視し、それを用いる事で組織に説明責任を果たす事、更に、そこから能力給や評判、ランキングを得る事を信念とする「測定執着」思想の危うさについて、指摘する。
まず、測定行為自体に限界がある。例えば、簡単に測定できるものしか対象としない。また、数字を良くするために簡単な目標のみを設定しがちである。あるいは、目標値を下げようとするインセンティブが働く。実績数値を見栄えを良くしようと操作し、最悪は、達成する目的にとらわれすぎて不正行為に及ぶ。ここで言われるのはあくまで可能性の話だが、しかし、誤ったKPI設定による悲劇は十分起こり得るし、実感がある。医療行為の成 -
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高卒と学卒の間で格差が広がっている。
高卒は(特に白人)、学卒にくらべアルコール依存、薬物依存、自殺する割合が多い。この3つを絶望死という。
対策として、オピオイド、医療、コーポレートガバナンス、税と給付策反トラスト、賃金政策、レントシーキング、教育がある。
オピオイド、過剰処方へは、代替医療を検討する。
医療には、ある程度の強制、支払い能力がない人には補助、そのための改革必要。今はお金がある人だけが高度な治療を受けられる。
コーポレートガバナンス、労働組合の衰退は従業員から力を奪って、経営者や資本所有者に与えた。非競走条項は全国的にも違法にすることはできるだろう。
税制と給付政策、UBIの政 -
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本書で書かれている事柄には、アメリカ特有だと感じさせることも多いが、資本主義の構造的な変化は日米に共通するものだ。
絶望死へ向かう人々が生み出したのがトランプだとすれば、彼は異端ではなく極めて正統な大統領だったのかも知れない。
金が上へ上へと流れていく、それは資本主義として当然のことなのかも知れないが、それが歪なまでにバランスを欠き始めている。弱者からの構造的な収奪、そんな傾向は日本にもすでに現れているだろう。日本で絶望死が増加しない可能性はない。それは少し違った形なのかも知れないが、絶望で死に至る、そんな人が増えていく。あるいはすでに増加しており誰も気づいていない、そんな気がした。 -
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"絶望死"、ショッキングなワードである。
一般的には、社会が裕福になると、平均寿命は伸び、死亡率は低下する。ところが、中年の白人アメリカ人の死亡率が増えていることを著者たちは知る。しかも増加率の高い死因は、自殺、薬物の過剰摂取、そしてアルコール性肝疾患の3つであった。これを著者たちは「絶望死」と名付けた。そして、これら絶望死が増えているのは学位を持たない人々の間であることを、統計的に次々と明らかにしていく。
このような変化の原因は、グローバル化に伴う労働環境の変化、特に製造業労働者の低賃金化、コミュニティの破壊等がある。それでは、他の先進国ではそれほど目立っ -
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■測定執着というパワーワード
この本は、世の中のあらゆる組織にはびこる実績評価のための「数値測定」がもたらす弊害について、実例を用いて詳細に分析、解説された本です。
組織を管理する有能マネージャー(自称)は、部下の売り上げ数、部下が出した不具合の数、部下の残業時間、部下の技能熟練度を数値化したスキルマップ、何でもかんでも測定して美しいグラフを作成して仕事をした気になってしまう、これを本書では「測定執着」と呼んでいます。
なぜ、組織に、この「測定執着」から逃れられない有能マネージャー(自称)がこうも多く存在してしまうのか、その理由が実例を交えて解説されています。
■製品の不具合の数をカウントし