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「調査の過程で、中年の白人アメリカ人の自殺率が急速に増えていることがわかった。…驚いたことに、中年の白人の間で増えていたのは自殺率だけではなかった。すべての死因による死亡率が増えていたのだ。…もっとも増加率の高い死因は三つに絞られた。自殺、薬物の過剰摂取、そしてアルコール性肝疾患だ。私たちは、これらを「絶望死」と呼ぶことにした。…絶望死が増えているのは、ほとんどが大学の学位を持たない人々の間でだった」(はじめに)「私たちが望むのは、死のエピデミックの純然たる恐ろしさ、そしてレントシーキングと上向きの再分配が生み出した極端な不平等に向き合うことで、これまで長く考えられてきた数々の構想が実行に移されることだ。その時はとっくに訪れている」(最終章)アメリカ労働者階級を死に追いやりつつある資本主義の欠陥を冷静に分析し、資本主義の力を取り戻す筋道を提示する。
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Posted by ブクログ
アメリカと言えば経済超大国、アメリカンドリームの成功への切符のイメージがある。
しかし現在には後ろ暗い苛烈な人生が横たわっている。
本書はそのような現象に目を向けた本。
おそらく経済学の学術書として書かれたものだと思うが、帯に書かれているように「ありとあらゆる市民が読み、議論すべきものだ」だと思う。
これはアメリカで起きていることだが、資本主義を採用している国々でも起きるかもしれない。。
本書で議論される内容は以下だ。
年月を経ると普通、死亡率は低下し平均年齢は上がっていくものだが、大卒未満の白人に関しては死亡率が増えている。
それもアルコール中毒、薬物過剰摂取、自殺という本書で絶望死と呼ばれるものだ。
一体アメリカで今、何が起きているのか?
この質問を皮切りに、統計的にどれだけ大卒未満が悲惨な状況にあるか。
そして、それをもたらす諸要因。
医療業界、薬物、経済、教育をキーワードに何が起きているか解説する。
この本を読んで一番、良かったと思ったのは以下。
この格差社会を是正するには、公的教育を拡充し、高所得者に高税を課し、低所得者に分配するものだと思っていた。
しかしそれだけではうまくいかない。
そもそもこのような悲惨な格差を生み出したのは、不公平な寡占・独占体制そしてそれに伴うサービス提供側・企業の強気な態度がまかり通る事。
そしてその強気な態度は顧客のみでなく、被雇用者である従業員や派遣会社にも及ぶ。
つまり競争を極端に排除した経済システムが極端な格差を生み出す温床となりうる。
そんな事を思った。
ただ、教育の役割と社会的価値についてはまた別途深堀したいと思った。
Posted by ブクログ
世界的に見ても死亡率が低下する中で、中年白人の死亡率が上がっている。
医療やその他の生活環境が改善されているはずなのに、何が起きているのか。
トランプ支持の基盤理解もできる。
アメリカの低学歴労働者を取り巻く問題の原因を検証しながら絞り込んでいく過程もとてもよい。
日本でも同じことにならないようにと思うが、すでに始まっているはず。
企業内で最低賃金と最高の役員報酬の倍率制限など(20倍以内とか)法整備で対応してほしい。
労働分配率がおかしいこと、社会の富を奪っている社会コストは医療費であること(医療サービスが高額料金を設定して、莫大な利益をあげたり、不当な薬で製薬会社が利益をあげていること)、社会を支えていたコミュニティが崩壊していることなど、対岸の火事とは到底いえない。
読み終わると、危機感を感じる。
Posted by ブクログ
自分の浅はかな理解では、米国では、労働者階級の白人中高年の死亡率が高くなっている統計データを元に、白人の下流階級がいかに悲惨で、彼らが収入だけでなく自己評価も苛まれている状況を映し出す。
彼らは自殺率が高いだけでなく、薬物依存、アルコール中毒のような緩慢な死亡も多い。
つまり、自殺に至るまでの絶望感を麻薬やアルコールで紛らわしている状況らしい。
さらには、肉体労働に関係する人達が多いので、死亡に至らなくても、中高年になると心身的な痛みも感じているらしい。
トランプへの熱狂を生み出したのは彼らなわけだ。
今まで疑問に思っていたことは、日本人で米国留学したり、MBAを取得したり、TOEICの高得点を取った人達は皆、反トランプで、バイデン支持だったのに、実際の米国ではトランプの投票率が異常に高かったこと。
トランプを支持した米国人がどんな人達なのか、日本から見えないし、米国を知っている日本人の人達からもその説明はいくら聞いてもわからない。
たぶん、米国留学やMBAを取った日本人は、米国の新上流階級の人達と親しく、彼らと同じ価値観なので、それと相容れない白人の労働者階級の人達と交わることはなかったのだろう。
そんなことを思うと、まだまだ米国を知らないし、米国が色んな意味で世界の最先端を進んでいることを思うと、日本でもそういう未来が近いのかもしれないのかなと思う。
Posted by ブクログ
現代アメリカは超格差社会。
国内の主要産業が製造業からテクノロジー関連にシフトしたために高給が得られる職業に就くためには学歴(学士以上)が必要とされる社会となった。
ひと昔前までなら低学歴者は自動車関連をはじめとする製造業で働いて十分暮らしていけるだけの賃金を得られた。しかし企業がコスト削減のため人件費が安い海外へ工場を移転したことで賃金の高い単純労働は国内から失われてしまった。
仕事を失った低学歴者は以前より賃金が安く、以前より劣悪な職場で働かざるを得なくなった。
将来を悲観した彼らの間で、アルコールや薬物の過剰摂取で命を落としたり、自殺したりする者が増加の一途をたどっている。
著者たちはそれらを絶望死と定義して本書で分析を試みる。
絶望死がもっとも多いのは、低学歴の、非ヒスパニック系白人の、中高年の、男性である。
Posted by ブクログ
高卒と学卒の間で格差が広がっている。
高卒は(特に白人)、学卒にくらべアルコール依存、薬物依存、自殺する割合が多い。この3つを絶望死という。
対策として、オピオイド、医療、コーポレートガバナンス、税と給付策反トラスト、賃金政策、レントシーキング、教育がある。
オピオイド、過剰処方へは、代替医療を検討する。
医療には、ある程度の強制、支払い能力がない人には補助、そのための改革必要。今はお金がある人だけが高度な治療を受けられる。
コーポレートガバナンス、労働組合の衰退は従業員から力を奪って、経営者や資本所有者に与えた。非競走条項は全国的にも違法にすることはできるだろう。
税制と給付政策、UBIの政治的実現可能性は、労働力供給の効果に依存する。UBIは失業者に、新たな仕事の研修を受け、新たな活動を始め、コミュニティーに貢献する自由を与え得る。同時にまた、民主的な政治活動にもっと深くかかわり、長期的には自分自身の人生を再構築する自由も与えることもできる。だが私たちは、仕事の崩壊かもたらした絶望死を、人生の意義と地位の喪失を心配している。そんな私たちから見ると、UBIは未来へと進む最善の方法だとは思えない。
Posted by ブクログ
本書で書かれている事柄には、アメリカ特有だと感じさせることも多いが、資本主義の構造的な変化は日米に共通するものだ。
絶望死へ向かう人々が生み出したのがトランプだとすれば、彼は異端ではなく極めて正統な大統領だったのかも知れない。
金が上へ上へと流れていく、それは資本主義として当然のことなのかも知れないが、それが歪なまでにバランスを欠き始めている。弱者からの構造的な収奪、そんな傾向は日本にもすでに現れているだろう。日本で絶望死が増加しない可能性はない。それは少し違った形なのかも知れないが、絶望で死に至る、そんな人が増えていく。あるいはすでに増加しており誰も気づいていない、そんな気がした。
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