堀辰雄のレビュー一覧
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乙女の本棚シリーズから、ねこ助さんの「ビルディング 乙女の本棚作品集」です。収録されてるのは、新見南吉『赤とんぼ』、中島敦『山月記』、太宰治『魚服記』、堀辰雄『鼠』、夢野久作『ルルとミミ』のイラストの中から、ねこ助さん自身が選んだ作品です。このほかに描き下ろしとして、夢野久作『ビルディング』が新たに収録されています。
これまでの「乙女の本棚作品集」(しきみさん、ホノジロトヲジさん)と同様、『ビルディング』以外の作品については本編を読むことはできません。イラストを眺めながら、あぁ…そうそう、こんなストーリーだったなぁ…と、思い出す感じですので、本編を読まれてからこの作品週を手にしたほうがよ -
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私は死について考えるのが嫌いだ。
祖父母、両親、飼い犬の死を想像するだけで、
どうしようもない喪失感に駆られて涙する。
どうして死なんてものがあるのだろうかと
避けられない死が怖くてたまらない。
けれど『風立ちぬ』に出会って、最愛の人の死を受け入れるヒントをもらった気がする。
「帰つて入らつしやるな。さうしてもしお前に我慢できたら、死者達の間に死んでお出(いで)。死者にもたんと仕事はある。
けれども私に助力はしておくれ、お前の気を散らさない程度で、屡々遠くのものが私に助力をしてくれるやうに――私の裡で。」
作中で「私」が出会うリルケの『レクヰエム』の一文だ。
敢えて「死者」と呼ぶこと -
購入済み
生と死
死の影に追われているからこそ、より一層、生を実感する。きっと叶わないと分かっていても、それを口には出さない。悲しいけれど、それ以上に透明感や美しさが際立つ作品だと感じた
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「私たちの今の生活ずっとあとになって思い出したらどんなに美しいだろうって…」サナトリウムにいる病床の節子が言うのだ。なんとピュアな、とても幸せで切ない言葉。ハイカラ、軽井沢、サナトリウム、恋と死。堀辰雄の描く、儚く切ない世界観は、晩年病床にあった堀自身の生への執着を投影している。この美しさはなかなか書けない。透き通るような世界、軽井沢にこんな素敵な時代と場所があったのかと思うほど魅力的だ。いや、自分にもこんなピュアな時代はあったろうか。映画化しても演じられそうな現代女優が思いつかない。それくらいピュアな恋愛小説。当然ながら悲しい結末へ。すっかり汚れちまった自分に涙が出てくる。
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ネタバレ鳩山郁子の本は8割がた読んでいる。
毎回ため息をつくほど好きなのに、どこか走り去りゆく作者の背にタッチできないような、隔靴搔痒を感じていた。
が、今回は確実に、少しだけ触れた。
もちろん読後、その感触だけ残していつものように作者は逃げていったのだが、触れた瞬間の喜びと、走り去られるに違いない喪失感の予感とが、同時に感じられたこの読書体験だけは、憶えておきたい。
内容についてはもう、わざわざ書かない。
何度でも読み返すだろうから。
原作小説の展開のあとに、18ページほど、鳩山郁子なりの解釈が描かれているのだが、
ここだけで萩尾望都「残酷な神が支配する」の達成に、届かんとしていると思う。
鳩山 -
購入済み
鳩山郁子のファンなので冷静に善し悪しを論じるのは難しい。
鳩山さんの作品は、言語化しづらい空気とか気配とか光の煌めきをそのまま漫画にしているというか…ただただキラキラした空間に圧倒されてる内に読み終えてしまう感じがします。
今回は原作つきとの事でしたがしっかり鳩山郁子ワールドを堪能できたと思います。
解説まで含めて一個の作品。 -
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「美しい村」
前半は田舎の情景描写が主だが後半は専ら絵を描く少女との交流を通したものが主になる。全体的に散在してる印象。実際に起きたことをぽつぽつと書いているような。
「麦藁帽子」
夏を背景に少女に対する想いの移り変わりを描いた作品。彼女への想いにまた気づかされるシーンは印象的。二人はもう交わることはないのだろうか。昔を回顧するものが多い?
「旅の絵」
堀辰雄の神戸旅行の様子を描いている。形容しがたい鬱々とした心の沈みを感じる。その分ハイネの詩が深く感ぜられる。
「風立ちぬ」
常に漂う死の気配と、しかしその中で感じられる生の喜び。死を感じながらも、2人が共有する愛、幸福があまりにも儚くて愛しく -
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同名のアニメですっかり有名になってしまった『風立ちぬ』でなく、「かげろうの日記」とその続篇「ほととぎす」を採ったのは、大胆な新訳が売りの日本文学全集という編者の意図するところだろう。解説で全集を編む方針を丸谷才一の提唱するモダニズムの原理に負うていることを明かしている。丸谷のいうモダニズム文学とは、
1 伝統を重視しながらも
2 大胆な実験を試み
3 都会的でしゃれている
ということだが、堀辰雄の「かげろうの日記」は、「蜻蛉日記」の現代語訳ではなく歴とした小説である。言葉遣いこそ王朝物語にふさわしい雅やかな雅文体をなぞっているが、主人公の女性心理はまぎれもなく近代人のそれであり、自意識が強く、