堀辰雄のレビュー一覧
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ジブリ映画『風立ちぬ』公開記念読書第二弾。表題作の「風立ちぬ」を始め、「美しい村」など五編が収録されている。
「美しい村」(1933)
初夏の軽井沢に滞在した主人公の体験が綴られる。四部構成で、それぞれ順番に発表されている。作者の実体験を元にして順次書かれているので、作者の予想しなかった方向に話が進んでいった。前半では、まだ人気の少ない軽井沢の自然が丁寧に描写されている。日本の高原地帯の自然描写の美しさでは右に出る者がいない堀辰雄の才能が存分に発揮されているが、全体的に憂鬱な空気に包まれている。後半では、絵描きの少女と偶然知り合いになり、俄かに雰囲気が明るくなり始める。この少女こそ、後の「 -
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ネタバレ「子供たちは鼠のように遊んだ」という冒頭のフレーズが淫靡で、即惹かれた。
始終薄暗いイラストが、その妖しさを常に漂わせている。暗がりで男の子たちが禁じられた遊びを繰り広げていく様は、彫刻の女性像の出現によって、更に罪悪感を増してゆく。
亡くなった母親への寂しさを慰めるために、仲間に嘘をついてまで隠れ家を独り占めしようとする悲しさも、何だか理解できる。
艶めかしい壊れた彫刻が、母親の面影と重なり、接吻をしてしまうのは、どこか近親相姦めいたものがあって、ドキドキさせられた。
堀辰雄という作家は初めて知ったが、妖艶な世界観が醸し出されていて気に入った。他の作品もチェックしてみたい。 -
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初めての堀辰雄。
少し読んでみて、なんだか翻訳本を読んでいるかのような印象を受ける。
少し検索するとフランス文学との融合という文言を見付け、納得。
作中にも、フランスの文学作品の名が幾つも登場する。
本作の一文が長いのが気になったが、慣れてくれば、風景描写がとても美しい。
美しいと思った箇所に付箋紙を立てていたらキリがなくなった程。
小説というよりも、長い詩を読んでいるかのような印象を受けた。
『美しい村』
冒頭に"ファウスト第二部"が引用されていたり、作中では感動を交響曲に例えていたり、読んでいると音楽が流れだす作品だ。
本編前も序章ではなく"序曲&quo