堀辰雄のレビュー一覧
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バッハ「ト短調のフーガ」の追いかけるようなピアノ曲が創作意欲をかきたてたという。
「美しい村」…序曲 美しい村 夏 暗い道
「風立ちぬ」…序曲 春 風立ちぬ 冬 死のかげの谷
目次をみているとそんな楽の音が聞こえそうである。
「美しい村」
精神的危機(多分、苦しい恋愛)を持てあまして、季節にはまだ早い軽井沢に来て鬱々としている小説家らしい主人公。ラブレターもどきの手紙をうじゃらうじゃら書いて暇をつぶしている。ふざけて書いたが、この序曲手紙部分に若い私はぐっーときたのよね。何故ゆえにか。
文章をいろどっている、高原の乾いた空気、野ばらや藤の花のにほひ、空き家の別荘やバンガロオ、落葉松 -
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堀辰雄の「かげろうの日記」と「ほととぎす」。
ここにはヨーロッパ仕込みの見事な「平安文学の心理小説化」がある。前回配本の森鴎外からもう一歩進んでいる?
平安貴族の生活が生き生きと描写されて、物忌みや、待っていることしか出来ない貴族女性の立場、子供のような道綱(藤原道綱)の振る舞い、揺れ動きながらたまに男を手玉にとる道綱母の行動など、なかなか興味深い。
道綱も成人したころに、夫は他の女に産ませた「撫子」という少女を連れてくる。次第に情が移ってきちんと育て始めたころに、頭の君が撫子を求めてひつこいぐらいに道綱に連絡する。「まだほんの子供ですから」と「いや一目だけでも」何度も何度も同じやりとりを -
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まず「風立ちぬ」を読む。
重い病を患って死に向かう最愛の人「節子」と過ごす主人公の日々の心象が、美しい高原の四季と織り合わされたような物語。
「私達がずっと後になってね、今の私達の生活を思い出すようなことがあったら、それがどんなに美しいだろうと思っていたんだ。」
二人は迫る死の影にも絶望することなく、ある完全な幸福感を一日一日噛みしめるように生きている。それは死の手前にある生ではなく、死を越えてある生の物語。
私達をとりまく風景には私達の心象が反映されているし、心象というものも、とりまく風景の反映を受けている。心に思い描くものと目の前に広がるものの間には、思っている程の境界線がないのか -
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長編というか、いろいろなタイトルがおさまっていて
500P弱を読み終わりました。
堀辰雄氏・福永武彦氏(池澤夏樹氏の父)・中村真一郎氏
3人の作品。
堀辰雄氏の「かげろうの日記」「ほととぎす」は
いまいちわかりませんでした。
福永武彦氏の「深淵」「世界の終り」「廃市」は
3作品ともとてもよかったと思います。
狂気・退廃・情念などがにじみ出ていたと思います。
中村真一郎氏の「雲のゆき来」は漢文や漢詩
古文詩などが多くあって、読みづらい部分が多く
ありましたが、それを差し引いてもとてもよかった
と思いました。
やっぱり自分の知らない作品それも古典的な作品
に出逢える機会は大切だと思います。
この全 -
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堀辰雄文学忌、辰雄忌
先日ultraさんの本棚に山口百恵の「蒼い時」が登録されて、その世代の方々がざわめいておりました(*´꒳`*)
私の持っている文庫の表紙折り返し部分には、
三浦友和、山口百恵の「風立ちぬ」の映画から
3枚の写真が掲載されています
何作かこの二人の映画は観ているのですが
こちらは残念ながら観ていません
「美しい村」
1933から1934年
軽井沢で療養中、プルーストに触発
各章を徐々に発表
⚪︎序曲 精神的に弱った青年
⚪︎美しい村 あるいは小遁走曲(フーガ)
⚪︎夏 ひまわりのような少女登場
⚪︎暗い道 少女との散歩 迷う
バッハのフーガを聴いているうちに小説を音楽的