三日月かけるのレビュー一覧
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匿名
ネタバレ 購入済みテーマは好き
童話を主軸に物語が展開されていく本作品。劇中では登場人物が「暗喩」という表現で説明しているように、起きた事件を分析し、その概要から連想される物語を推測し、対処にあたるという流れが作られている。寓話・伝承同様にさまざまな見解が生まれる童話の特徴性を利用していて味わい深い。
その一方で、利点を活かしきれていないように感じた。作中のかなり早い段階で灰かぶりについての説明がされると、そのままコンパクトにストーリーが進んでいった。本巻で事件の中心人物となるキーパーソンも起伏があまりなく、淡々と終局へと向かっていったので、もう少し意外性のある展開がほしいと思った。
構想はとても好意的。だが「嫉妬・ -
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シリーズ最終巻。
蒼衣の断章の力を利用してこの世に別れを告げることをもくろむ神狩屋は、颯姫と夢見子を連れ出します。蒼衣たちは彼のゆくえを追いますが、神狩屋は蒼衣の力の発動を誘発するために、けっして許されない行為に手を染めていきます。
神狩屋の陰謀の背景を蒼衣が「理解」し、事件に最終的な結末が訪れることになるのですが、登場人物たちの魅力がじゅうぶんにえがかれることのないまま物語の終結がやってきたような印象を受けてしまいました。多少活躍の場面を見せた勇路も、いささかスケールの小ささがめだってしまいますし、それなりに複雑な背景をもっていたはずの笑美やリカはモブキャラのようなあつかいになっています -
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神狩屋が去ったあとの古道具屋を入谷克利(いりや・かつとし)が訪れ、蒼衣に店内の書斎のカギを託します。神狩屋の書斎に入った蒼衣は、そこで神狩屋が蒼衣の断章に関係する溝口葉耶(みぞぐち・はや)の失踪事件にかんして調査をしていたことを知ります。
神狩屋がいなくなったあと、ロッジにやってくる笑美とそりがあわない雪乃も、蒼衣に同行して葉耶の記憶をたどり、蒼衣の過去に起こった事件の真相に近づいていきます。
これまであまりその断章の秘密について触れられてこなかった夢見子も、ようやくストーリーの主筋にからんできて、どのような結末へととりまとめられることになるのかたのしみです。 -
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前巻の最後に、蒼衣の能力の発動によって「葬儀屋」がこの世からいなくなってしまい、関東の騎士団に動揺が走ります。責任を感じた蒼衣は、まだ精神が不安定だといって反対する神狩屋の忠告を振り切って、他の騎士団からの要請におうじることを決意します。
蒼衣が向かったのは、飯田真佐代(いいだ・まさよ)という女性が世話役を務める騎士団でした。そこで彼らは、眞守大輔(まもり・だいすけ)という男と会うことになります。彼は、娘の死を受け入れられない妻を救うため、葬儀屋に依頼して娘を生き返らせていました。しかし、蒼衣の力によって葬儀屋が死んだために、娘もふたたび亡くなってしまい、狂気の淵にいる妻のために苦悩していま -
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「葬儀屋」のもとから一人の死体が逃げ出したという連絡を受け、蒼衣たちは捜索を手伝うことになります。逃げ出したのは浅井安奈(あさい・あんな)という少女で、彼女のゆくえを追ってきた蒼衣は、安奈のクラスメイトである多代亮介(たじろ・りょうすけ)という少年が、彼女を連れているのを発見します。亮介は安奈を逃がすために蒼衣に傷を負わせ、さらに夢見子の予言によって「しあわせな王子」にまつわる泡禍が起こることが告げられます。
葬儀屋の助手を務める可南子にも尋常ならざる背景があったことが明らかとなり、ストーリーにどのようにからんでくるのかたのしみです。それにしても、登場人物のほとんど全員が一筋縄ではいかない背 -
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「異端」になってしまった莉緒の母親が逃げ出し、「葬儀屋」の瀧修司(たき・しゅうじ)の助手を務めていた戸塚可南子(とつか・かなこ)までもが命を落とします。さらに勇路は、なぜか死んだはずの瑞姫とともに行動しており、その秘密を明かそうとしません。そんななか、さまざまなゆがみを抱え込んだ莉緒の家族の亀裂が大きくなり、彼らのなかから泡禍にも劣らないほどの凶悪な行為に手を染める人物が出てしまいます。
泡禍によって引き起こされる非現実的なグロテスクな描写以上に、ふつうの人間によっておこなわれる残酷な行為の描写が執拗につづき、少々ぐったりしてしまいました。 -
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自分たちの身に降りかかった泡禍にあらがうことを決意した臣でしたが、事件の帰結は彼と一真を、予想以上に過酷な運命の選択へとみちびいていきます。そして、一真たちの所属する騎士団をとりまとめていた群草宗平(むらくさ・そうへい)は、みずからの能力を利用して、事件のもっとも不幸な帰結を回避することをえらび、神狩屋たちの前からすがたを消すことになります。
今回の物語は、これまで以上に入り組んだ謎と救いのない結末のために、とりわけ強い印象にのこっています。すこし残念だったのは、せっかく千恵が再登場を果たしながら、あまりめだった活躍をしていないところでしょうか。もっとも、彼女のおかげで騎士として生きることを -
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かつて泡禍に巻き込まれ、家族をうしないながらも生還した海部野千恵のお見舞いに、蒼衣と神狩屋がやってきます。そこで彼らの身に、新たな泡禍が降りかかります。
石田臣(いしだ・しん)の恋人の金森琴里(かなもり・ことり)が自殺します。臣の親友で千恵とおなじく泡禍から生還した木之崎一真(きのさき・かずま)は、「雪の女王」の名をもつ著名な騎士である雪乃に、臣を救ってほしいと依頼しますが、琴里の家族にさらなる被害者が出てしまいます。
再登場を果たした千恵ですが、今回のストーリーの前編にあたるこの巻では、それほどめだった動きはありません。今後の展開にどのように彼女がからんでくるのか、すこし気になります。 -
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今回は、サブタイトルになっている「金の卵をうむめんどり」のほか、短編2編を収録しています。
「よくばりな犬」は、瀬川彰人(せがわ・あきと)という男子生徒への恋心をかくしてきた衣川遊美(きぬがわ・ゆうみ)という少女の物語。「アリとキリギリス」は、親友であり対照的な性格の霧生比奈実(きりゅう・ひなみ)と有賀美幸(ありが・みゆき)の物語。どちらも、「霊能者」として事件の解決にやってきた雪乃の登場で、それぞれの主人公たちの身に起こった災いの終わりが訪れるという構成で、あっさりしていますが本作特有の雰囲気はじゅうぶんにたのしむことができました。
「金の卵をうむめんどり」は、雪乃とその友人の古我翔花( -
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「赤ずきん」をモティーフにした泡禍の解決編です。
雪乃に向けて断章の力を使い彼女を傷つけた勇路は逃げ出しますが、そのことを知った笑美が彼を追います。そんななかで、蒼衣は勇路と情報交換を申し出ます。蒼衣の申し出を受けた勇路は、今回の事件の「潜有者」だと考えていた斎藤愛(さいとう・まな)と颯姫をのこし、蒼衣のもとへと向かいますが、そのあいだに事件は新たな展開を迎えることになります。
今回は、事件の規模は前回以上ですが、グロさでは若干抑えられている印象を受けました。新しい登場人物たちも、それぞれが苦悩を抱え込みながら、次の展開につながっていくような締めくくりになっているので、この先も活躍を見せて -
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蒼衣たちは、四野田笑美(しのだ・えみ)という女性がリーダーを務める騎士団の管轄する地域で起こった事件の手伝いをすることになります。
笑美の騎士団には、田上颯姫(たのうえ・さつき)の妹で、おなじく記憶を消す能力をもつ田上瑞姫(たのうえ・みずき)と、雪乃にライヴァル心をいだく馳尾勇路(はせお・ゆうじ)がいました。勇路は笑美の方針に反対し、事件の関係者を雪乃たちからかくそうとします。こうして蒼衣たちは、勇路の妨害によって情報がじゅうぶんに得られないまま、今回の泡禍の解決にあたることとなります。
最初はただのかませ犬の役割かと思われた勇路でしたが、意外に事件を引っかきまわしてストーリーをおもしろく -
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蒼衣たちは、泡禍にまつわる事件が起こっているという連絡を受けて、かつて神狩屋が暮らしていた海辺の町にやってきます。そこで神狩屋は、恋人であった志弦(しづる)の妹・海部野千恵(あまの・ちえ)と再会します。やがて町は凄惨な事件に巻き込まれることになり、神狩屋の過去にまつわる謎がすこしずつ明らかになっていきます。
今回はこれまで以上にグロテスクな描写がありますが、読者のほうでもすこしずつ耐性ができてきたことを見計らいつつ、著者が工夫を凝らしているような印象もあって、とにかくめったやたらなスプラッター展開といった感じでもありません。個人的には、このくらいのグロ度であればおおむねホラーとしてたのしめる -
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泡禍に立ち向かう騎士として生きていく覚悟をもつ雪乃ですが、蒼衣は彼女にもできるだけふつうの少女と変わらない生活を送ってほしいと願います。しかし雪乃は蒼衣の忠告には耳を貸さず、クラスメイトたちの迫害を受けていました。しかし、委員長の媛沢遥火(ひめざわ・はるか)だけは雪乃のことを気にかけて、彼女に接近します。
そんな遥火の過去にまつわる悲劇が明らかになり、泡禍が近づいていることを知った蒼衣と雪乃は、遥火の身に降りかかる災厄を防ごうとします。
主人公たちも今回の事件の関係者たちも、過酷な運命の波に翻弄され、幸福な結末にたどり着くことはないのですが、彼らの芯の強さが印象的で、ライトノベルにありがち