ウンベルト・エーコのレビュー一覧
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[偽の蝕み]「偽書」でありながら、反ユダヤ主義の言説に決定的な影響を与え、ヒトラーも引用をした『シオン賢者の議定書』。この文章を執筆した人物のみを架空の設定とし、『議定書』がいかに著されていったかに迫った歴史小説です。著者は、イタリアの小説家であり記号学者でもあるウンベルト・エーコ。訳者は、京都外国語大学で教授を務める橋本勝雄。
これは小説なのかそれとも小説という形式だけを借りた思想史叙述なのか......。凄まじいディティールと時代描写で、近代ヨーロッパの暗い側面の歩みが透けて見える異色作だと思います。テーマ的にも、分量的にもかなり重い読書にはなりますが、陰謀や偽説というものがいかに創り -
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史実の中に巧みに虚構を立ち上がらせるのは、ウンベルト・エーコの得意とするところ。しかしそれを単純に虚構だと割り切って読むことが出来ないのもまたこの作家ならではのこと。そのことを肝に銘じて読まねばならないと自戒しつつ読み進める。
「薔薇の名前」を初めて読んだのはもう四半世紀以上前のこと。歴史の中の「もしも」を推理小説風に描いた作品は単純にエンターテイメントとして面白く、ショーン・コネリー主演の映画も素晴らしかった。しかし時を経て読み返すと、輻輳し縦横に入り組んだ話の全体像、あるいは、小さなエピソードが意味する暗喩を一つ一つ受け止めるには文字を追う必要があると、思い直した。映像はともすれば勧善懲 -
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ネタバレタイトルのイメージから、デジタル化されたものに言及されているように感じるが、そうではない。
タイトルと内容はあまり関係ないように思えて、実は確かに紙の書物について言及しているので面白い。
実によく考えられたタイトルだ。
本好きの雑談。
要点メモ:
・勉強のやり方や資料のまとめ方、探し方は、それぞれをこなしていかない限り身につかない。それぞれをこなすのが最善の方法。
・一日十冊読めと記載された記事をみるたびに、その必要はないと考える。効率のよい読書のやり方は、十冊読むよりも参考文献を数多く使用している本一冊を読むことである。
・一つの物事を十の違う方法で調べて、検討するくせをつける。おのず -
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訳者あとがきで原題は「だから本好きはやめられない」というようなものと書いてあったが、そっちのほうが内容をよく表していると思う。
「薔薇の名前」のエーコと「昼顔」のカリエールが書物について縦横無尽に語りつくす。
まず、2人とも最初から電子書籍の登場で紙の書物がなくなるなんて全く、これっぽっちも思っていない。邦題にあるような危機感なんて始めの数ページであっさり否定し、その後は2大書籍おたく(笑)が本をめぐるあれこれ、うんちくを古今東西、古代から現代までにわたる広範囲にわたってひたすら語り倒す。本好き(≠読書好き)にとって「そうそう、そうなんだよ(笑)」と膝を打つ会話があちこちにちりばめられている -
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物語の舞台は1327年11月。
あくまでもフィクションなのだが、実はこの日付が重要だ。時は教皇のアヴィニョン捕囚の真っ只中。教皇ヨハネス22世と神聖ローマ皇帝ルートヴィヒ4世との確執やフランシスコ修道会の「清貧論争」が相まって、物語に奥行きを生み出している。一見すると犯人探しのミステリー仕立てだが、横糸となる『異端審問』や党派対立などについて、ある程度理解しないと話についていけない。(久しぶりに世界史の復習をした気分)。特に、日本ではそもそも基礎知識が無い“ボゴミル派”や“ドルチーノ派”など、異端審問に出てくる教派。(勉強になりました)
物語は見習修道士だったアドソの回想という形をとっている -
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1980年にイタリアで発売され、各国でベストセラーになった本書。1986年にはショーン•コネリー主演で映画化された(こちらは私も見た)。日本版刊行は1990年。著者は記号論学者。難解。でも面白くて、二週間ほどかけてじっくりと読みました。
本書は著者の構想メモなども追加収録した『完全版』で、読みでがあります。
北イタリアの修道院を訪れたウィリアム修道士とその弟子アドソ。ウィリアムは、数日前に起きた修道士の死について調べてほしいと修院長から依頼を受ける。閉ざされた修道院で起きた不可解な死。しかし、事件はそれだけでは終わらず…。
中世のイタリアを舞台にしたミステリーを縦糸にして、物語は修道院をめぐ -
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ネタバレいつ死んでもおかしくない年というフレーズにハッとさせられた。
舞台は東方世界へ。奇想天外な種族たちはプリニウスの記述そのまんまだったのだなあ、と。新プラトン主義について曖昧模糊としたイメージだけしかなかったが霧が晴れた感じでした。最後の方で話のなかの「現在」にストーリーが追いつくところとか、ビザンツの歴史家が記述した、というような造りになっているところが憎らしい。老いてまた旅立つのもいいな。冒頭書いたフレーズが上巻下巻のどこにあったかは忘れてしまったが、読んだ時は「この時代だともう死ぬ年齢だよな」などと読んだときは思っていたがその少し後に同年代の友人が亡くなって感想が変わりました。現在でもいつ -
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ネタバレカバーに騙された岩波文庫。
半年くらい前に読んだ思い出し感想。コンスタンチノープルの地図だけでごはん3杯はかるくイける。パリでの青春時代、後々の友人達との出会い。ローマ皇帝とウザいイタリア諸都市との関係とか面白い。面従腹背の諸都市と泥沼のイタリア戦争。その中での当時のパリの位置付けとかも含めてこれが同時代人のマンタリテなのか、とか思える。「薔薇の名前」よりはだいぶ読みやすい。イタリアの田舎出身でフリードリヒ皇帝の養子とか設定がうますぎる。当時の最下層から最上層までの視点を得るためのものか。大変勉強になる。こんな度胸と語学とホラの才能が欲しいと思えるアレッサンドリアの守護聖人。
いやあ、読書って -