あらすじ
時は中世,十字軍の時代――.神聖ローマ皇帝フリードリヒの養子となった農民の子バウドリーノが語る数奇な生涯.驚異に満ちた東方世界で出会う一本足の俊足スキアポデス,一角獣を連れた美女,胸に顔があるブレミエス族,大耳を広げて滑空するパノッティ族など,史実と伝説とファンタジーを織りまぜて紡ぎだす破天荒な冒険ロマン.(全二冊)
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Posted by ブクログ
薔薇の名前で名高い作者が書いた中世騎士の冒険の物語。農家の子どもバウドリーノが皇帝フリードリヒの養子となり、都の学校で青春を謳歌し、養父の遠征に付き従い、やがて聖杯返還の旅に出て、数々の魔物や種族に会いながら冒険を続け、囚われの身となった後、数少なくなった仲間とようやく帰還したと思ったら、もういっぺん行ってきます!と不帰の旅に出てしまう話です。
読み終わってからなかなか感想が書けなかったのは、私がこの物語を消化しきれなかったからでしょう。そのくらい内容が盛りだくさんでした。
歴史、教養、恋愛、冒険、博物誌、復讐譚…
私は物語をプロットなどで読むと言うよりは、主人公や著者に自分を重ねて書いてあることを追体験する感じに近いので(今回これを読んで、そのことに気付いた気がする)、それでしばらくぼんやりしてしまったのだと思います。
そのくらい壮大な話でした。面白かったけど、もう一度読むには体力作り(読書の)からかな(笑)
Posted by ブクログ
うう〜面白かった〜〜!!!エーコと聞いて難しい?と身構えていたけど、読みだしたら面白くて、あっという間に読んでしまった!感覚としては高丘親王航海記…!
「人生とは、逃げゆく夢の影でないとしたら何?」(p.155)
「神は、存在しない空間であり、そのなかでは、あなたも私も同じなのです、ちょうど今日、この止まっている時間のなかにいるように」(p.274)
…
彼はそのとき初めて理解した。本当に愛し合う者どうしが最初に愛の言葉を交わすとき、顔が青ざめて体は震え、口をつむぐものだとなぜ言われてきたかが。なぜなら、愛は、自然と魂の力すべてを自らに引きつけるからである。こうして、本当に愛し合う者どうしがささやき合うとき、愛は、身体の全機能を、それが肉体的なものであれ精神的なものであれ、掻き乱し、ほぼ停止させる。それゆえ、舌は話すことを、目は見ることを、耳は聴くことをそれぞれ拒み、体の各部位がおのれの義務を回避するのである…(p.294)
そして最後に
「あなたがこの世で唯一の歴史家だと思わないほうがよい。遅かれ早かれ、バウドリーノ以上に嘘つきの誰かが、それを語ることになるでしょうから」
という終わり方がとても素敵で大好きな一冊になった。
Posted by ブクログ
いつ死んでもおかしくない年というフレーズにハッとさせられた。
舞台は東方世界へ。奇想天外な種族たちはプリニウスの記述そのまんまだったのだなあ、と。新プラトン主義について曖昧模糊としたイメージだけしかなかったが霧が晴れた感じでした。最後の方で話のなかの「現在」にストーリーが追いつくところとか、ビザンツの歴史家が記述した、というような造りになっているところが憎らしい。老いてまた旅立つのもいいな。冒頭書いたフレーズが上巻下巻のどこにあったかは忘れてしまったが、読んだ時は「この時代だともう死ぬ年齢だよな」などと読んだときは思っていたがその少し後に同年代の友人が亡くなって感想が変わりました。現在でもいつ死んでもおかしくない年齢。そう言う意味でもいろいろ教えられた本。
いやあ、読書ってほんとにいいものですね。
Posted by ブクログ
史実・現実に近い前半とは違い、ファンタジー色の強い内容。ヨハネの王国を探す冒険ものになっている。
フリードリヒの溺死の裏にこんな事件があったとは(笑)
Posted by ブクログ
嘘が本当になってしまう嘘つきが、嘘をつきすぎてわからなくなった真実を探す物語。
お固い西洋史にはじまったかと思えば、夢想の果ての世界へまで足を伸ばすなんとも様相の変化の激しい作品でもある。
世界観を活かした真相の提示は見事。
しかし大きな真実の前に小さな真実を葬り去られる。
挙句に皮肉めかして作者が一番の嘘つきだと提示してくる手腕には脱帽である。
知識不足で小ネタが拾いきれないのが悲しい。また色々勉強して読みたい一冊。
Posted by ブクログ
誰もいない森の中で倒れた木は本当に倒れたのか
この議論は逆に言えば、森の中で木が倒れた音を聞いたと主張する者がいれば、真実となるということになる
この本は12-13世紀を舞台にした「法螺話」の話である
イタリア出身の主人公バウドリーノは我が半生は語られることによって真実となる、と第四回十字軍のさなか助けたビザンチン人に語り出す。
バウドリーノはフリードリヒの養子となり司祭ヨハネ(プレスタージョン)の王国を目指して旅をするが主人公の話そのものが虚実が曖昧である。更に旅の途中で聖遺物の偽造で金儲けを図るが、偽の聖遺物を売って儲けた金で本物の聖遺物を購入しようとする欺瞞。更に旅の先では様々な神学論争を戦わせ、真実が曖昧となる。
こうなると何が真実か、真実の条件は何かが不明となる
本書は真実かそうでないかの判断基準とは何かも問いかけてくると思う