真藤順丈のレビュー一覧
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第15回日本ホラー大賞受賞作、角川ホラー文庫化。
オビのコメントに平山夢明氏が寄せていますが
それも分かる気がします。
遺体を解体して「遺工」なる製品を作り出す一家の
3兄弟を軸にした相当に歪みきった青春小説。
当然、遺体を解体するシーンなどは王道の
ケチョケチョのスプラッタなんですが、そこには
猟奇的な視点はなく、あくまでも職人目線で淡々と
描かれている為、ホラー的な恐怖や嫌悪感を
感じさせないのは平山氏の「DINER」に近い。
3兄弟中、一番エキセントリックな三男の「毅巳」
のキャラが壮絶でなんとも切なくなってきます。
彼が愛する女性に渡した自分の口汚い言葉を
「変換」した手紙には、正直 -
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ネタバレ戦後の沖縄の歴史は、あまり知らずに読んだがこんなにも悲惨な歴史があったのかと衝撃を受けた。私自身26歳で、沖縄返還は沖縄にとって記念すべき日だと思っていたが本作品ではそれが空虚のものとして扱われていた。本土の人たちは戦後だと思っていたが沖縄の人にとって戦争は終わっていなかったのである。
歴史認識は人によって様々であろうが、沖縄の歴史を学ぶきっけになる良い作品だと思う。
しかし、星5から1減らした理由としてはレイの最後である。テロの動機は理解できるし共感する部分もあった。だが、アメリカの米軍基地に侵入しテロ行為をしようとしたにも関わらず特に罰せられないというのはいくら小説の世界とはいえ違和感を感 -
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どんな小説か、言い表すのが難しい……!
戦後の沖縄で、若者たちが命を燃やして暴れまわる物語、といえばいいのか…
あるいは、「沖縄」というものに魂があるのであれば、それを描いているとでもいえばいいのか。
うまく言い表せないけれど、これは大作。
近年の小説の中で、これだけ骨太な物語を持つ長編は稀なのではないかなあ。
なんとなく村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』を彷彿とさせる。
主要人物たちの名前がカタカナだからなのか、彼らの倫理観がぶっ飛んでいるからなのか、物語の中でくりかえされる破壊と狂騒の熱量が似ているからなのか、、、
早く下巻を読んで、読み終わったらいま上映している映画も観てみたい -
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終戦後の沖縄から始まり、コザ暴動、沖縄返還を経て、ナナサンマルまで。
沖縄で生きぬく"基地の子"の六つの短編を収めた作品。かつて戦火アギヤーだったグスコやヤマコのその後も書かれてあり、『宝島』を読んだ時の高揚感がよみがえってきた。
〈目次〉
ブーテン
アーニーパイルで逢いましょう
五つ目の石
25セント
家族の唄
ナナサンマル
「アーニーパイルで逢いましょう」が特に良かった。
那覇に賑いが戻ってきた。劇場周辺ではヌギバイ(タダ見)が横行する。貧しい悪ガキらが、国際通りを一目散に駆けていく姿が印象に残った。沖縄映画興業界を背景に、ヌギバイ猿と女の子 -
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ネタバレ※映画の感想含みます。
まず小説。
全てが繋がった時、もっともっと何かが変わっていたら…と心が苦しくなった…。
ウタ…オンちゃん…
でもレイやグスク、ヤマコそれぞれがオンちゃんのために、沖縄のために、自分の信念のために貫く姿は上巻・下巻合わせてどれも読み応えがあった。
自分は30半ばになるが沖縄に行く機会が今まで無く、沖縄や沖縄で起きた事について正直あまり知らない。これを機に沖縄に行っていろんな場所を巡りたいし、他にも沖縄についての著書や文献を読んでみようと思った。
映画を観て…
国宝は原作も映画も素晴らしくどちらも良さがあり素晴らしかったし、宝島の製作費が国宝の2倍、加えて俳優の方が -
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「宝島」の続編。
時代も年齢も多種多様な「戦果アギヤー」の姿を描く6つの「宝」のはなし。
こちらも沖縄の史実がベースになっているので、短編なのに読み応えがすごい!
どのお話にも、ちょっとしたミステリーのような要素があって面白いし、希望が見える終わり方で読後感がとてもいい◎。
「宝島」を読んで、私は米兵や米軍に怒りを抱いたのですが(本書でも、そう思う場面はあった)、悪い人ばっかりだったわけではないんですよね。
本書を通して「宝島」だけでは知り得なかった史実を知れたのがよかったし、当時の沖縄の文化に触れられたのもよかった。
作中に出てきた唄も全部YouTubeで聞いてみたのですが、イメージが -
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感想は下巻にて✎☡
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ふたつの目を開いて、命があるかぎりは走らんね。
生還こそがいちばんの戦果、だからおまえらはその命を持ち帰らんね。(p.42)
われら沖縄人はみんな、いまのわたしやおまえとおなじ。呼吸もできずに青ざめているのさ。だがもっとたちが悪いのは、われわれが慣れる生き物ということでな。選択の自由のなさにも、海の底のように息苦しい生活にも慣らされて、地上に顔を出せばうまい酸素があふれていることも忘れてしまう。大切なのは、なにも疑問を持たない状態におちいらんことさ(p.83)
おまえたち若いのはきっちりと刑期をつとめて、大手をふって社会に出ていかなくち