真藤順丈のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
2011/11/19。ホラー小説大賞受賞作。遺体の骨や皮や脂肪などを使って遺族のための日用品を作る『遺工師』という架空の職業がでてきます。遺体を解体するとこはスプラッタな、グロい描写。しかしホラーなのは、この職業にまつわる部分くらいで、ストーリーとしては家族愛というか、あたたかみを感じるとこがあり、いい意味で裏切られた作品でした。
ホラー小説大賞ということで"怖さ期待"を持ってみんな読むと思うから、怖さという意味では評価は低いかも。
でも興味深いテーマだし、三兄弟のキャラクターとストーリーが良かった。読後感はサッパリとした感じ。すごく印象に残る作品。スプラッタが大丈夫なひとには、オススメしたいな。 -
Posted by ブクログ
第15回日本ホラー大賞受賞作、角川ホラー文庫化。
オビのコメントに平山夢明氏が寄せていますが
それも分かる気がします。
遺体を解体して「遺工」なる製品を作り出す一家の
3兄弟を軸にした相当に歪みきった青春小説。
当然、遺体を解体するシーンなどは王道の
ケチョケチョのスプラッタなんですが、そこには
猟奇的な視点はなく、あくまでも職人目線で淡々と
描かれている為、ホラー的な恐怖や嫌悪感を
感じさせないのは平山氏の「DINER」に近い。
3兄弟中、一番エキセントリックな三男の「毅巳」
のキャラが壮絶でなんとも切なくなってきます。
彼が愛する女性に渡した自分の口汚い言葉を
「変換」した手紙には、正直苦しく切なく、
ホロリとしそうになった。
そんな俗世離れした奇妙な兄弟達の業や苦悩を
乗り越える過程をこんな方法で描くなんて到底
自分のような人間には発想すらつかない。スゲーなー。 -
Posted by ブクログ
誰の視点で話されるかがミックスされていて、
頭がごっちゃになりながらも上巻読み終わった。
ヤマコ、レイ、グスクに混ざって語り部も出てくるからね。
どこまでがノンフィクションでどこまでがフィクションかが気になった。
戦時中も戦後もアメリカと本土の狭間で、
どちらにもなれなかった悲しい歴史があったといいことは事実。
知れば知るほど自分の無知を感じるし、
沖縄の歴史についてもっと知りたいと思う。
映画とは違う部分があり、
ラストはどうなるのだろうかと思った。
映画ではオンちゃんが亡くなっていたのはラストに知ったけど、
小説では上巻のラストには明かされていたからね。
3人の人生が今後どうなるのか気になる!
-
Posted by ブクログ
勢いがある。展開と言うより、登場人物それぞれに勢いがある。各々が自分の生活を、人生を、物語を走っている。
その感じから終戦後に荒波の中で培わざるを得なかった沖縄の人達の逞しさをよく感じた。
幼馴染を気にかけながらもそうはいかない現実の中で、自分の道を突き進むしかない。話が進むにつれ伏線が増えていくけれど、それぞれの歩みも発散していき、本としてちゃんとまとまるのか不安になる。
しかし、最後に持ってきたオチ。登場人物がもう著者の意思を通り越して本の中で必死に生きていた雰囲気がありつつも、最後にはきっちりと締まり、読後もスッキリな素晴らしい本でした。 -
Posted by ブクログ
戦後、アメリカの統治下とされ、混沌とした沖縄を舞台に幼馴染達がアメリカ軍に抵抗する闘争の物語。
沖縄の土着文化を元にした自然の豊かさを感じさせるような比喩表現や情景描写がより魅力的にしている。
ユンターと呼ばれる語り部が沖縄方言混じりの独特のリズムで語りかけるスタイルも印象的。
幼馴染たちは大人になるにつれ、それぞれの道に分かれていきすれ違いもあるが、方法は違えど「どうにかして沖縄を良くしたい」という強い気持ちが、読んでいて、胸を熱くさせる。
アメリカ軍による沖縄での犯罪行為や基地問題などのシリアスなテーマを扱っている作品だけど、所々、著者自身からツッコミが入るスタイルは斬新で、そのおかげで話を重くさせすぎない。
著者は沖縄出身ではないけれど、沖縄に対する強い愛を感じる作品で、読み終わった後、沖縄の晴天のようとても清々しく、晴れやかな気持ちになれる。 -
Posted by ブクログ
本書を読んでいて、米兵や女給などのキーワードから、『月白』や『カフェーの帰り道』が頭をよぎりましたが、同じ時代の物語でもこんなにも読後感が違うものかと、改めて読書の奥深さを感じました。
本書は米軍と沖縄人との戦いの物語。
戦い方は様々で、幼なじみのグスク、ヤマコ、レイはそれぞれの場所で自分の信じた道を貫いている。
でも、3人の心にいつもあるのは故郷の英雄オンちゃんの存在。
オンちゃんはどこへ行ってしまったのか、本当に消えてしまったのか‥‥と喪失感を持ちながらも、沖縄人達の怒りが一つになり、同じ方向へ向かった瞬間、沖縄人全てが英雄になった。これは熱いものが込み上げてくる。
消えたオンちゃんの謎も読ませてくれるし、全体に沖縄独特のスピリチュアルな雰囲気も漂っていて、この世界観に没頭させられます。
何よりも沖縄の歴史が苦しく悲しすぎる。
そしてこういう本を読むと、自分の国のことなのに何も知らずにいた自分がとても恥ずかしくなります。だからこそ読めて良かったと思います。
「なんくるないさ」の本当の意味が分かりました。
-
Posted by ブクログ
米軍統治下の沖縄。
皆から英雄と慕われていたオンちゃんが消えた。
親友のグスク、恋人のヤマコ、弟のレイ。
それぞれのオンちゃんへの想い。
オンちゃんがいなくなってから3人は心の穴を埋められず、それぞれの方向へ向かいつつも、故郷を取り戻すために全力を尽くす。
血生臭いシーンが多く、じっくり読むのが躊躇われるくらいなのですが、沖縄の言葉の語り部がクスッと笑えるようなことを挟みつつ物語を進めていく形なので、深刻になりすぎずにページを捲ることができます。(この語りの進め方は『国宝』っぽいですよね)
でも、米軍による抑圧、大事な人の不在による底知れぬ寂しさが全編に渡っていて、語り部のユーモアをも超えてきます。
オンちゃんはどこにいるのか、本当に消えてしまったのか、ドキドキしつつ下巻へ進みます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本作にヤマコのその後が描かれているのは知っていたけれど、ウタが山原の洞窟に通っていた頃の物語(三線が弾けるとは驚き。薬などを調達してきたウタは偉すぎ)、探偵として働くグスク(相変わらず優しい)の話もわずかに出てきて、うれしかった。特に「ナナサンマル」ではグスクも結構出てきて、久しぶりに会えたのがうれしい。よくぞ40歳を超えても諦めずにに走ってヤマコに追いつき守ってくれたこと!
「この島はすこしずつ明るくなる。すこしずつ生きやすくなる」(p393)
ヤマコはそう言っていたが、グスクもヤマコも90歳前後、グスクの息子達も50歳を超えているであろう今この2026年も、まだ沖縄に基地があり、米軍基地関連の事件・事故の7割が沖縄で起きていることを思うと、悲しみは残る。
『「いまは三人だけでも、もしもこの広い基地を囲めるほどに連帯できたら、結んだ手と手が輪になってつながったら、沖縄はきっと取り戻せるさ」祈るようにヤマコは、切実な想いを吐露する。ちょっと青臭いようでも、あらゆる孤立を、あらゆる分断を止めるところから、まずはそこからだ。』(p395)
分断。意見や主張が分かれて、ついつい分断しやすいけれど、本当は民がまとまることこそ、多分、平和へつながる一歩なのだろうなと思う。 -
Posted by ブクログ
公開されていた映画をみてから、原作を読みました。映画は3時間の長編で、興業的には奮わなかったようですが、映像作品としてなかなかの力作だと思いました。
他の方のコメを見ていると、沖縄言葉や括弧書きの表現が読みづらいといった感想がありましたが、映画を観ていたことが幸いしたのか、独特の言い回しやイントネーションがリアルに入ってきました。情景描写も同様に、文章がよりリアルに臨場感をもって入ってきたように思います。(映画は原作とは筋立てが変わってますが、まあそれはそれで。)
登場人物の沖縄人(ウチナンチュ)の苦難・葛藤をみごとに表現した力作だと思いました。
現在も続いている彼らの心情の底流にもふれれた気がします。
直木賞も納得です。
それにしても、作者は沖縄の出身の方かと思ったら、Wikiでみたところ東京のご出身。相当な取材力がおありなのでしょう。