真藤順丈のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
異形コレクションのブックマンでハマった著者さん、単著一冊目
この方の物語は、それぞれがとても壮大な歴史観や、伝統、民族精神などのうえに成り立っているのだな、と。一作一作がドラマティックだった
そして、振れ幅…
歴史から芸事まで。
『レディ•フォックス』(アイヌ)『笑いの世紀』(演芸一座)『異文字』(アフリカ虐殺)に共通する戦争への憎悪。犠牲になるのはいつだって庶民、その悲惨さが通底して感じられた
ダントツ好きな二作
①一九三九年の帝国ホテル
ナチスがホテルに潜伏、人質事件
ホテルで働く女性と『最後の侍』が協力し、救出奪還を図る
ドラマか映画にして欲しい完成度!
ホテルの優美さ、上流階級の空気感
時代背景やナチス達の外見、振る舞い、緊迫感、闘い、描写が細かくて、引き込まれた
『恋する影法師』も原爆直後の広島で本当にあり得たのではないかと思わせる描写
影だけ残ってしまった想い人と永遠に寄り添うため
男は影になり、想いを果たす
②週末芸人
自分を痛めつける芸風も、お笑いそのものも今や嫌いな部類なんだが、
読み物になると、漫才の掛け合いってこういうものだっけな、と
口から発せられる言葉より、紙に印刷された言葉の方がわかりやすいし、本作はグロ部類だと思うが、それでも必死に生きて『笑顔への恐怖』を乗り越えようとしたジンボの壮絶さが、インパクトあった -
購入済み
とにかく勢いがある
いろいろな問題点も目につくが、とにかく勢いがあって終盤のクライマックスへの盛り上がり、迫力が凄まじい。史実上の実在の人物を交えてリアル感を出しながら、沖縄独特のファンタジー要素を交えた、虚実一体の作りがすばらしい。ただ終結部分、伏線を回収して謎解きをするのはいいが、ファンダジーっぽくなってしまったのは、やや残念である。
-
Posted by ブクログ
「夜の淵をひと廻り」真藤順丈
うっわ〜〜‼︎ びっくりでした。
お・も・し・ろ・い〜〜と呟きながら一気読み。本のグループの方からの紹介で手に取った作品です。シンドウジュンジョウさんと読むのですね。もちろん初読み作家さんでした。
『驚愕のサイコ・ミステリ』って、ネットにはありました。サイコといえばサイコでもあるけど、私自身は、かなりユーモアのある作品だと思いました。もちろん、かなり酷い事件もあり、ブラックではあるのですが。なんといっても語り口が面白い‼︎
9つの連作短編なのですが、そのうち、4つは書き下ろしです。
1作目の『蟻塚』も書き下ろしなのですが、ワタクシは、もうこの1作目で、ガシッと掴まれてしまいました。
「やだ、なにこれ⁉︎ 面白い‼︎」
というわけで、凄い勢いで読んでしまいました。
ランナーズ・ハイならぬ、パトロール・ハイとなっているシド巡査は、自分自身のことを非常に優秀だと言ってはばからず、そして、言うだけのことはやるのである。
まあ唯一思うのは、この街だけで、こんなに恐ろしい事件が起きる⁉︎ ってとこだけど、これは設定からしてもう、良しとするしかないし、それを上回る面白さがあるのでOKなのです。
謎解きも面白いし『新生』では、たくさんのキャラクターが出てきて、ちょっと映画的だった。いずれにせよ、繋がってはいるけど、9編とも、それぞれの面白さがあります。
ある意味、へんてこりんで、かなり不思議な世界観なので、お好みは分かれるかもしてませんが、私は大好きです(^o^)これ、続編があればいいのになあ〜〜‼︎ -
Posted by ブクログ
毎年夏、三出版社による文庫まつりをものすごく楽しみにしている。
今年はどの文庫がエントリーされるのか、6月に入るともうワクワクソワソワしてくる。
本来は、夏休みに入る高校生を中心とする若い人たちが対象なのだろうが、私にはそんなことは関係ない。
読んだことのない作家の作品に触れる絶好のチャンスなのだ。
真藤順丈さんもその一人。
今まで読んだことがない上に、今年(2019)のカドフェスにエントリーされたのがデビュー作だったので、迷わず購入リストに加えたのだった。
いやいやいやいや、なんだこれは。
頭をぶん殴られて目を覚まさせられたような。
でもずっと夢を見ていたような。
物語に没入している途中、ふっと浮上してもまだ物語の中にいる、不思議な感覚。
どうなってんだ、とか、なんでなんだ、とか、思っちゃいけない。
そういうことはどうでもよくなる。
すべてが純粋すぎて。
「純粋」がね、激突してくるのですよ。
んはぁ、これ好きだなぁ。
おもしろいなぁ。
真藤さんの他の作品も読んでみたい。
-
Posted by ブクログ
「日本の根幹を支える農業・林業・畜産を描く絆と再生の物語」
などという帯文から堅苦しい内容を想像してたらとんでもない!
中身はエンターテイメントに徹した、ロック魂炸裂のクライムノベル。
離農を考える二十代後半の農夫・林野省の役人の若い女性・牧場の手伝いにくる小学生の視点でそれぞれ語られているのだが、一人称視点の文体が全く違い、引き出しの多さに驚かされる。私は特に「第二次間伐闘争」の女性支点の、ニュートラルでポエティックな文体が好みだった。
キャラクターも立ちまくり!村中から頼りにされる最強の農夫(70目前)をはじめに、後家や古女房にモテまくりの色香匂い立たせる美青年、補聴器の上からヘッドホンを装備するその親友など、畔の区切りにおさまりきらない通称「あぜやぶり」と呼ばれる暴れん坊たちの活躍が痛快極まる。
就農・離農など、田舎の農村が抱える問題を取り上げながら、けっして堅苦しくならずエンターテイメントに落とし込んだ手腕は見事。
「(前略)百姓には百の業がある。その一つめが一揆だ」の演説はかっこよすぎる。
それでいてミステリーというにはささやかな成り代わりの仕掛けも憎い演出。
全編の共通項として「ミスリードによる人違い」が挙げられるのだが、ある人が帰還するエピローグでもそれは健在。餞別を見て初めて気付いた、自分は完全にだまされてしまった……。
登場人物も一部共通しており、「拳銃と農夫」のキャラクターが後の話に思いがけぬ形で登場する演出もスマート。同じ村を舞台にしながら時間が進んでいくので、あの人がまさかこうなるとは!と驚く。西部劇のカウボーイを例に引くまでもなく、農業とハードボイルドは相性がいいのかもしれない。
二話目の林業と共感覚を絡めた発想も面白いし、三話目は悪たれ牧童たちのジュブナイルな青春・成長小説で、皆テイストが違い飽きることなく一気読みできる。一番好きなキャラクターは惣。惚れたら一直線の血筋を感じさせる、親子の会話に痺れた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ真藤順丈氏の2008年、第15回日本ホラー小説大賞作を加筆訂正した2010年文庫版。
とにかく感動的なこの作品がホラー小説とされているのは、手塚治虫先生の『ブラック・ジャック』が少年チャンピオン・コミックスでは当初「恐怖コミックス」とジャンル分けされていたのと同じ理屈でしょうね。
『ブラック・ジャック』の少年チャンピオン・コミックスでのジャンル分けが内容に即して「ヒューマンコミックス」になったならば、この作品もヒューマン小説でしょうかね。
この作品をホラー小説とするのは、ホラー小説を期待した人にも不誠実だし、この感動的な作品に対しても不誠実だという気もします。
ザック・スナイダー監督のホラー映画『ドーン・オブ・ザ・デッド』を観て「CJ、お前に感動させられるとは思わなかったよ」と同じように、口汚くて凶暴な庵堂三兄弟の三男・毅巳には感動させられました。
心のどこかで不幸な展開を期待していた自分が恥ずかしくなりましたよ。