水野和夫のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
資本主義経済について、経済学者と国際関係学者との対談をまとめたもの。現在の資本主義体制は、マクロ的に転換点にあり、金融緩和(ゼロ金利政策)を継続してもデフレ脱却はできないことを中心に、説得力ある発言が多かった。わかりやすい。
「新興国の台頭によって、エネルギーをタダ同然で手に入れることを前提になりたっていた近代社会の根底が揺さぶられている」p18
「基軸通貨だからこそ、アメリカの財政赤字や経常収支赤字がいくら膨らんでも、各国はドルを買い支えてくれる」p52
「どのヘゲモニーの段階においても、実物経済がうまくいかなくなると金融化が起こる。そしてその金融化が進むと、同時に、(バブル経済が起き)そ -
Posted by ブクログ
経済の専門家による、資本主義について述べたもの。資本主義は資本の増加により成り立っており、経済規模が膨張することによって万民に富が行き渡り、それによって民主主義も成り立つ。今後、フロンティアがなくなり資本が増えない状況では、資本主義は成り立たないため、閉じた社会へと変革が必要だと著者は述べている。ピケティの考え方にも同意しており、格差の拡大に警鐘を鳴らしている。ウォーラーステインやケインズにも触れ、歴史的分析もされており、面白く読めた。
著者の考え方には概ね同意するが、閉じた社会に移行しつつある欧州との意見には、ドイツの状況を見る限り疑問。今後、日本のとるべき方向についても、単純には同意でき -
Posted by ブクログ
「より遠く、より速く」周辺へ拡大を続けることで維持されてきた資本主義というシステム。だが、もはやすでに拡大の余地は残されておらず。経済的な成長は望めない。それに抗おうと金利を下げても、投資先がないのだから、効果は低く、せいぜいが短期間の延命策にすぎない。これからは、拡大ではなく閉じていくしかない。その大きな流れでみると、トランプ政権の施策、ロシア、英国の動きも腹に落ちてくる。
16世紀に海の向こうとの貿易で拡大が始まった資本主義は、これから逆方向へ向かう。その時参考になるのは、16世紀までの社会の仕組み。もちろん、専制君主的な社会は全否定すべきだが、低成長で地味だけど、もしかすると穏やかな社会 -
Posted by ブクログ
ネタバレチャーチル『資本主義は最悪のシステムだが、これ以上のものはない』
限界収益低減の法則、 数を重ねると満足度が下がる。→満足度のシェアをすれば、解決するのでは?パイをどんどん大きくすればよいのでは?
サモア 最後通帳ゲームは3割を切ると拒否されやすい。 利子率革命 ウェストファリア条約 三十年戦争を終結させた世界最初の大規模講和条約
→17世紀のドイツを中心として起こった宗教戦争です。
荒廃するドイツにおいて、争いの渦中にいなかったプロイセンが台頭してきた。
→家康?
1618年から1648年まで、三十年間にわたって繰り広げられたため、こう呼ばれています。
中世ヨーロッパ 利子悪いの -
Posted by ブクログ
ネタバレ今日は水野和夫先生の「株式会社の終焉」。なかなかの力作ですが(お前が言うなよ~って怒られそう)、全部は紹介しきれませんので、最後の方をちょちょっと詳述します。
まず1000兆円の国・地方の借金だが、ストックとしての800兆円にも及ぶ国債をこれ以上増やさないことだ。
そのためには毎年のフローとしての国債発行額をゼロにするべきであるとする。それによって国債発行残高の増加に歯止めがかかるとのことだ。
次に、2015年度には8.8兆円と歳出100兆円の8.8%を占めていた国債利払い費が、マイナス金利によって、近い将来ゼロになることが考えられることから、それによって節約できた8.8兆円を国債の償還 -
Posted by ブクログ
閉じてゆく帝国、定常状態を目指す、そうしたコンセプトには強く共感する。
そして、読みながら頭に浮かんだのは、梅棹忠夫の文明の生態史観に描かれた4つの帝国である。
そして、日本はその帝国のいずれにも属さない。
4つの帝国が陸の帝国であり、日本は海の国である。
では、海の国日本は誰と手を組んで閉じた帝国を作れば良いのだろうか。
それは、決して中国ではない。
日本はAIIBに参加する必要はない。中国の過剰な生産力を吐き出し、フロンティアの限界を数年先延ばしにするだけの麻薬のようなものにすぎないからである。
相手の一つとして考えられるのは、本書の中でも指摘されるEUである。筆者も断るように日本のEU -
Posted by ブクログ
コンビニ 日本全国で5.5万 一店舗当たり962世帯
7-11 一日平均客数 1057 (2016/2)
これ以上増やすと既存店の顧客を食い合う
最低金利国 オランダ、イギリス、アメリカ、日本
利子率は、実物経済で利潤率と近似値を示すため、いくら追加の資本を投下しても、高い利潤を挙げることのできないくらい成熟した経済に到達していることを示しています。つまり、世界一の低金利国とは、ある特定の世界システムにおいてもっとも成功した経済大国なのです
ジェノバで11年続いた超低金利は中世の帝国システムを解体し、近代主権国家システムを準備するほどの大きな革命的な変化をもたらした
オランダ、イギリス -
Posted by ブクログ
★★★2017年6月レビュー★★★
我々は歴史の転換点に立っている、と筆者はいう。かつては「株価」と「利子率」は景気の体温計ではなくなっている。急速に力を持ちはじめた「資本帝国」。
勤労からはお金を得られず、株などの資産からでなければ、お金を得られない時代。企業は人件費をカットし、利益を確保する。そんな時代だ。事実、90年代後半から労働分配率は下落の一途をたどっていると、数字が示している。
これは何となく実感できる。
では、これからの世の中はどうなっていくのか。
1、筆者は「成長」信仰を鋭く批判する。企業は「減益計画」を立てるべき、と。これは頷ける、企業でも人でも、永遠に成長し続け -
Posted by ブクログ
2010年からの5年間で、上位62名の資産は44%上昇し、貧しい半分の人々の総資産は44%減少した。
安倍政権誕生直前の2012年には320万円の負債超から、2015年には434万円の負債超となり、全勤労者世帯の半分は負債が増えた。
成長戦略が予算に反映された2002年と比較すると、当時は20万円の貯蓄超過なので、政府が成長戦略に力を入れれば入れるほど中間層の家計は困窮していった。一方で、2001年度末には1,417兆円だった個人金融資産は、2016年末には1,741兆円に増加している。
資本の成長戦略を破棄し、企業の最終利益を抑制し、人件費を増やす政策に転換すべき。企業の最終利益は、最終 -
Posted by ブクログ
資本主義とは表現を変えた奴隷制度と植民地主義じゃないかと常々考えていたのだが、この本によってその印象が強化された。
先進国は途上国の資源と労働力を買い叩き、低コストで作った製品を売りさばいて異例の成長を遂げた。そして途上国が潤ったら新たなマーケットとして製品を売りつけ、別の途上国(安価な資源と労働力の供給元)を探す。
それを繰り返してきたが、ついにアフリカにまで手をつけて、もう後がない。で、ついに自国を標的にし始めた。
最終兵器はふたつ。
ひとつは、致命的なリスクを未来に先送りして時間という資源を買い叩く。
もうひとつは、分厚い中間層の奴隷化。 -
Posted by ブクログ
著者(水野さん)は、「より速く、より遠く、より合理的に」は近代の行動原理であり、近代システムが機能不全に陥れば、この原理をひっくり返すしかなく、「よりゆっくり、より近く、より寛容に」を前提にしたシステム(二十一世紀の「新中世主義」)を構築するこを提唱している。
二十一世紀の「新中世主義」を構築するにあたり、江戸時代中期の生活が参考になるのかもしれません。見えない時代を乗り霧には、実学重視の教育ではなく、人文系の教育が重要性がましているように思います。
著者の榊原さんは、成熟という点では日本は再優等生なのだから、「成長戦略」などといって過去の高成長をノスタルジックに求めるのではなく、成熟の果実を -
Posted by ブクログ
日本大学での講義の書き起こし。
日本、ドイツが経済復興を遂げられた背景には、安い石油を手に入れられたという経緯があるが、韓国。中国は石油価格が高騰(それまでは固定相場制で経済の常識が機能していなかった)してからの近代化であり、大きなハンデとなっているとの、指摘が興味を引いた。さらに、近代化の基本が「より遠く」であることを考えると、あとから参加するものは、グローバリゼーションが進展した現代において、市場拡大も困難となっている。
実物取引の損失をヘッジする先物市場発展のきっかけが、ドルの変動相場制への移行(ニクソンショック)にあったが、実需原則を撤廃することで、予測のもとに債権や株式を売買するよう -
Posted by ブクログ
水野さんの前作を読んでからの、今作だったが前半は資本主義経済の成り立ちがメインになっており、ややわかりづらい内容。後半については対談形式になっておりこちらは読みやすかった。
結論、前作を超えるほどのインパクトは無し。やや難しい目でした。以下抜粋
------------------------
・超低金利が意味するのは「実物投資空間」の消滅という意味
・一人あたりのエネルギー消費量と、労働生産性は正の相関関係が見られる
・近代にとって無くてはならない、電子機械と自動車産業で不正をしなくては利益が得られなくなったということは、近代の成長メカニズムが破綻したことを意味する。
・株価は上がっても賃金