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資本主義の終焉によって、世界経済の「常識」が逆転した。経済成長を追求すると、企業は巨大な損失を被り、国家は秩序を失う時代になったのだ。生き残るのは、「閉じた経済圏」を確立した「帝国」だけである。「長い21世紀」という500年ぶりの大転換期に始まる、新しい「帝国」システム。そのもとで、米英・欧州・中露の経済はどう変わるのか? 日本を救い出す方策とは何か? ベストセラー『資本主義の終焉と歴史の危機』で高い評価を受けたエコノミストが描く、瞠目の近未来図! 【目次】はじめに――「閉じてゆく」時代のために/第一章 「国民国家」では乗り越えられない「歴史の危機」/第二章 例外状況の日常化と近代の逆説/第三章 生き残るのは「閉じた帝国」/第四章 ゼロ金利国・日独の分岐点と中国の帝国化/第五章 「無限空間」の消滅がもたらす「新中世」/第六章 日本の決断――近代システムとゆっくり手を切るために/おわりに――茶番劇を終わらせろ
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Posted by ブクログ
幾人かの学者らが、資本主義、近代が終焉に向かっている事を指摘するが、本書の著者・水野和夫氏もそうである。
水野和夫氏は、マクロな視点で歴史に注目し、超低金利が、『長い16世紀』が利子率革命により、中世を終わらせ、近代システムが開始したように、現在の低金利が、資本主義と近代システムを終わらせるという。
その先の未来は、『世界は複数の『閉じた帝国』が分立し、その帝国の中で幾つかの『定常経済圏』が成立する。』状態がしばらく続くという。
その閉じた帝国の分立状態を、彼は、『長い21世紀』と呼ぶ。
『長い21世紀』とは、『長い16世紀』が国民国家が分立していたように、新たな中世のような状態『新中世』を意味する。
『長い21世紀』の始まりは、1973年のオイルショックであった。
『長い21世紀』は、今から2100年頃に完成するというポスト近代のシステム完成迄の過渡期である。
この時代のモットーは、『より近く、よりゆっくり、より寛容に。』だ。
つまり、近代システムの真逆だ。
『長い16世紀』の時代に、誰も次の時代がどんな時代になるか予想できなかったと同様、近代システム終焉後の新たなシステムは、誰も予想出来ないという。
ホイジンガが中世から近代への移行が、小さなさざなみが、やがて大きな波に変わっていったと表すように、ポスト近代のシステムもそのように完成して行くだろうという。
そして、縁故資本主義など、『悪しき中世』的な現象は、既に見られている。
これは、富める者の資産の三分の一は相続によるものなどを指す。
つまり、中世の王侯貴族のように、エリートら富める者が固定され、世界を支配しているということだ。
これらは、先日読んだ『ポスト・デモクラシー』のエリート企業が、ロビー活動で政治を支配し、民主主義の状態は、中世に逆戻りだという主張に通づる。
世界は閉じていくであろうというのは、経済的には僕にはわからないが、政治的にはそうであろうと思う。
何故なら、一国では対応するには難しい問題が幾つも存在し、各国が緊密に連携する必要があるからだ。
水野和夫氏も紹介するように、国民国家というシステムは、過渡期的存在であるというが、なるほど、国民国家の上位に位置する存在が無ければ、世界で何かを決定したり、アクションを起こすには、非常に難義である。
また、水野和夫氏は、『長い16世紀』において、『陸』の中世封建システムから『海』の近代世界システムへの大転換が起きたと述べる。
シュミットの言うように、世界史は、陸の国と海の国の戦いであるという。
『海の国』アメリカの時代は、終わりつつあり、『陸の時代』への移行期に現代はあるという。
近代システムの一つである『より遠く』のフロンティアが、最早存在しない。
金融の話で解り難い部分があったが、後半は読みやすく、よく理解できた。
また、水野和夫氏は、一見マイナーでありながら興味深い著作を読んでおり、読書家の一人としても参考になる。
本書は、ウォーラーステインの世界システム論に開かれており、必然的に、『近代とは?』や今後の資本主義に考えねばならず、読み応えがあるのは確かだ。
他に、本格的に資本主義とは異なるシステムに持っていくには、現在の株式会社と投資家の関係を変えて行く必要があるように思えた。
Posted by ブクログ
もはや、資本主義は終わった
『近代』とは経済的にみれば『成長』と同義語であり、資本主義は成長をもっとも効率的に行うシステム。『中心』たる欧米諸国は『周辺』(フロンティア)を広げることによって利潤率を高め、資本を増殖させてきた。そのためにグローバリゼーションを叫び、規制緩和をさせ、ひたすら『蒐集(しゅうしゅう)』に励んできた。ところが、もはや地理的な“周辺”はなくなりつつあり、かつては安く入手できたエネルギー(石油など)も高騰し、システムの限界がはっきりと見えてきている。
--地理的な「周辺」がなくなったために、アメリカは「電子・金融空間」に利潤のチャンスを見つけた
『電子・金融空間』とはITと金融自由化が結合して作られる。アメリカは世界中の余剰マネーをウォール街に呼び込み、途方もない利潤を生み出しました。だが、これも2008年のリーマン・ショックで崩壊しました。しかも『国民国家』の主体たる中間層を豊かにしたわけではなく、富を集中させ格差を拡大させた。世界的な『低金利』は、もはや投資先がない、投資しても利益が上がらないことを示している。
Posted by ブクログ
衝撃を受けた本でした、この本の著者である水野氏が「資本主義の終焉」を書かれたときにも感じましたが、この本では更に踏み込んだ内容が書かれています。
今から40年ほど前に「ノストラダムスの大予言」という本が流行りまして、その中で今でも明確に残っている内容は「共産主義はなくなるだろう、資本主義はなくならねばならない」というものでした。
丁度、ソ連が崩壊してアメリカを中心とする資本主義が勝ったような状況だったので、当時は信じられませんでしたが、国債の金利がゼロ近くやマイナスになることは、投資をすることに魅力がなくなる、いわば中世のような時代が来る、という水野氏による説明で、私の中で繋がりました。
また、現在アメリカでシェールオイルを中心にエネルギー不安がなくなるのでは、と個人的に思っておりましたが、エネルギー収支比で考えると、シェールオイルは「2」である(消費可能なエネルギー割合が50%程度、通常原油は「30」で90%以上使用可能)エネルギー収支比は年を追うごとに下がっている(p223)図が衝撃的でした。やはりエネルギー危機の時代なのかもしれません。
更にこの本では、スペイン・ポルトガルがなぜ栄えたのかとずっと疑問に思っていたことが解消された(それ以前に栄えていた、イタリア・ジェノバの投資)かが分かり、良かったです。このお陰で、その後に、オランダ・イギリスが栄えたことも分かりました(彼らが投資先を変えた)
経済に関する世界史の勉強も一緒にできて嬉しかったです。最後に日本はどうすべきかという提言で面白い内容(EUへの申請をし続ける)がありましたが、私は「日英同盟復活」もしくは「日米英同盟」というもの面白いなと思いました。
以下は気になったポイントです。
・大きな歴史の見取り図をもとに言えば、13世紀初頭に始まった資本主義が最終局面を迎えている、投資をしても利潤を得ることが極めて困難なので、利潤が得られるのであればなりふり構わない「蒐集(しゅうしゅう)」を行うようになった、これがグローバリゼーションの正体である(p4)
・資本主義の終焉という歴史の危機を乗り越えるために必要なシステムは、結論を言うと、このあと世界が100年かけて移行していく「閉じた帝国」が複数並び立つ世界システム(p16)
・これまで5000年の金利の歴史において、2.0%という水準を複数年にわたった切ったこと(資本を投下しても利潤が獲得できない)は過去に一度、中世から近代への移行期である、1611-1612年のイタリアのジェノバのみ、実物投資空間から資本が蒐集できなくなったことを意味する(p17、19)
・長い16世紀に起きた大転換とは、陸の中世封建システムから、海の近代世界システムという変化、陸で囲まれた地中海という閉じた経済から、七つの海でつながった無限の経済圏で資本を蒐集するようになった(p19)
・オイルショック(1973)までは、交易条件が1を超えていて(仕入れが売り上げの比率)先進国が有利、それ以降は資源国が有利となった(p31)
・富の追求という経済的側面から見れば、中世と近代の間に断絶はない、中世と近代を分けて考えると資本主義の本質を見誤る(p34)
・15世紀末の「印刷革命」が、地中海世界と北部欧州を結合(これによりオランダの長期金利は6.3%に上昇)、19世紀の「動力革命」が欧州と新大陸(南北アメリカ)を結合、20世紀末の「IT革命」で全地球を結合した、現在の第四次産業革命は、工場をインターネットでつなげるIoT、ビックデータ活用、AIの活用である(p59、73)
・金利の下限をなくす最も簡単な方法は、現金を廃止、電子マネーに切り替えること、マイナス金利により中央銀行が徴税権を手に入れ、民主主義の破壊となる(p83、88)
・最低金利国は、イタリア→オランダ→イギリス→アメリカ→日本、と変遷してきた。これは高い利潤を上げることのできないくらい成熟した経済に到達していることを占める(p107)
・16世紀のスペイン皇帝は何度も借金不払い宣言をして債務を逃れてきたが、イギリスは1688年の名誉革命で国債を発行して資金調達をした。国家債務の信用力は、国家のモノの生産力であった、イギリスは、東インド会社・南海会社・イングランド銀行を設立して信用を高めた(p113、114)
・1991年のバブル崩壊は、際限のない生産力増強は国家の信用を崩壊させるとわかった点で、1559年のカトー・カンブレジ条約と同じ位置づけ(p115)
・2016年10月に、習主席は「核心」の称号を得て権威を高めた、これを得たのは、毛沢東・鄧小平・江沢民だけ(p121)
・真っ先に大海原に出たのは、地中海世界という閉じた世界で利潤を得られなくなった、スペイン・ポルトガル、それを経済的に支援したイタリア。しかし海を渡った先の陸で、陸の国としての古い統治方法をつづけた、オランダ・イギリス新しいルールを自国に有利になるようにつくりあげた(p123)
・世界経済は次のうちの1つしか選べない、1)ハイパーグローバリゼーション+国家主義(新自由主義)、2)ハイパーグローバリゼーション+民主主義(世界政府)、3)国家主権+民主主義(国民主権国家システム)、これらはいずれも資本主義の終焉という危機に対処できない。現代の危機は、西ローマ帝国の崩壊に近い(p133、139)
・ゼロ金利であった日本とドイツの21世紀の将来像は全く異なる、アメリカの金融・資本帝国とどう向き合うか、その姿勢の違いがあったので(p145)
・1ドル360円で為替が固定されるとともに、金1オンス35ドルと交換比率が決められた(p146)
・アメリカはドルの一層の下落を防ぐべく、日本と欧州(ドイツ)に利上げ回避を要請した、これが1987年のルーブル合意、それにたいして日本は利上げできなかったのでバブルが加速した、ドイツは1987年9月に利上げした(p149、150)
・実物経済で成長が見込まれないと、過剰マネーは、土地・株式に流れ込む(p167)
・中世システムにおいて、資本主義は周辺に位置づけられていた、資本家=高利貸し(商人)であった。中世社会の中心は、キリスト教関係者と封建貴族で、周辺に農民がいた。その周辺に、高利貸し・娼婦・宿屋、がいた(p177)
・教会は商業目的の会社には法人格を与えず、商人が資本を蓄積することを認めなかった、1代限りのパートナーシップ(組合)だけを認めた。高利貸しが築いた富は相続の段階で、教会・貴族が没収した(p177)
・主権国家とは、血みどろの宗教戦争を棚上げするための試みであった(1648:ウェストファリア条約)都市国家では小さすぎるし、神聖ローマ帝国では大きすぎるので、主権国家が誕生し、国境が画定した(p180)
・コペルニクス革命のポイントは、1)特権的な地球を、金星・木星と等価なものとした、宇宙は均質な空間となった、2)宇宙は閉じた空間ではなく、無限空間である、こうした宇宙観の転換は、政治・経済システムに大きな影響を与えた。さらに1世紀遅れて、ニュートンが時間も無限であると証明した、これが会社や貨幣の在り方を変えた。1602年にオランダ東インド会社が法人格を取得し永遠の生命を獲得した(p184、186、187)
・1609年にはアムステルダム銀行設立、最初の預金を受け入れて、信用創造が可能。1661年には、ストックホルム銀行が世界最初の銀行券(紙幣)を発行し、金・銀にとってかわった。無限にマネー供給ができる体制となった(p188)
・中世的な宇宙観(コスモス)の崩壊とは、1)地球は一惑星に過ぎない、複数の主権国家が存在する、2)万有引力の法則、主権国家がそれぞれ作用しあってシステムを形成、3)ケプラーの法則、それぞれの主権国家により共通の規則制度が承認される(p189)
・ペルー鉱山から持ち出された銀の量は、13兆ポンド=1800兆円=現在の日本の個人金融資産と同等、これが略奪(p191)
・EU帝国に、中国・ロシアを加えれば、ユーラシア大陸に、3つの閉じた「陸の帝国」が出現しようとしている、海の国は、北米とイギリス、日本は「陸の国」の内海化に位置する(p200、213)
・1930年代は、エネルギー収支比は「100=獲得したエネルギーのうち1単位を次の採掘のために確保しておけば残り99は自由に使える」、1970年代に「30」に低下した、大規模油田が二次回収(自噴でなくなる)となった、それば今では、10程度(p224)
・シェールオイルは、採掘コストが高いのは問題であるが、さらに深刻なのは、エネルギー収支比が「2」に近いこと(p227)
・イタリアは、マキャベリの提言を受けず、またコペルニクス革命の本質を見誤り、都市国家から国民国家へ転換するのを忌避したので、オランダとイギリスに主役の座を奪われた、30年戦争が始まった1621年ころに、投資家たちは、ジェノバ国債・スペイン皇帝がオランダ領で発行した国債を売却して、オランダ東インド会社の株式を購入、つまり投資先を、ジェノバ・スペインからオランダへ乗り換えた(p230)
・ケインズのいう、人間の生き方とは、「人生の目的として、人間交流の楽しみ=愛、美しきものに接する=美、ケンブリッジ知性主義=真を求める」である(p252)
2017年6月24日作成
Posted by ブクログ
経済の専門家による、資本主義について述べたもの。資本主義は資本の増加により成り立っており、経済規模が膨張することによって万民に富が行き渡り、それによって民主主義も成り立つ。今後、フロンティアがなくなり資本が増えない状況では、資本主義は成り立たないため、閉じた社会へと変革が必要だと著者は述べている。ピケティの考え方にも同意しており、格差の拡大に警鐘を鳴らしている。ウォーラーステインやケインズにも触れ、歴史的分析もされており、面白く読めた。
著者の考え方には概ね同意するが、閉じた社会に移行しつつある欧州との意見には、ドイツの状況を見る限り疑問。今後、日本のとるべき方向についても、単純には同意できない。今後の生き残り戦略を考える上で、閉じる社会や陸上国的考え方の導入は、わが国には困難であろう。
「日本の賃金は、1997年以降、現在に至るまで下落傾向が続いています。その一方で企業の当期純利益は2001年度をボトムに増加基調に転じ、2015年度の最終利益はリーマンショック前の最高益を49%も上回っているのです」p21
「アメリカに流入する国際資本は、2007年の最盛期には対GDP比で26.6%もあったのですが、2016年1~9月期には8.8%へと、およそ1/3にまで低下しました。これは、1982年の8.7%とほぼ同じ水準で、グローバリゼーションのスタート時点に戻っていると言えます」p26
「資本と国家が円満な結婚生活を送るためには、パイの拡大、すなわち経済成長が必須条件です。逆に言えば、経済成長が止まれば、民主主義と資本主義の両立はできなくなります。その転換点となったのが、1973年のオイルショックでした。これが「長い16世紀」に匹敵する歴史の転換期、「長い21世紀」の始まりです」p30
「世界的な低金利が示唆しているのは「実物投資空間」では、もはや経済成長ができないということなのです。しかも、資本の反対側には生産力が存在します。生産力が過剰になれば、もはや需要を新たに生むことはなく、不良債権が生まれるだけです。10年国債利回りがマイナスになったということは、新規投資をすると既存の資産が不良化するというサインなのです」p41
「「より遠く、より速く、より合理的に」→「より近く、よりゆっくり、より寛容に」」p240
「中国を待ち受けているのは、バブル崩壊後の日本と同様、長期にわたるデフレや低金利です。それはすなわち、投資機会の消滅に向かっているということになります」p170
「現代は、かつてないほどマネー過剰経済になっています。マネー過剰経済では、バブルが発生して膨れ上がっていく局面で設備投資や雇用が増加し、それが崩壊すると一気に需要が減り設備過剰となって、工場の稼働率が下がり、リストラが行われ、デフレとなります。このとき当然、工業の原料である鉱物資源も価格が急落しますから、中国の本格的なバブル崩壊は、ロシア、ブラジルなど他の新興国にも及ぶことになるでしょう」p173
「高利貸しは、教会や貴族にとってライバルとなる危険性があったため、教会は利息をとることを禁じていました」p177
「国民国家においては、かつては国王と貴族しか味わえなかった贅沢を国民全員が平等に求めるようになりました。欲望に限界はないので、人々は過剰な要求をします。民主主義の下では、施政者はそれに応えなくては、政権の維持ができません」p182
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