水野和夫のレビュー一覧
-
購入済み
やはりそうなのか
資本主義は、より強いものが富を得ていくという気持ちが強まっていた。これは金が世の中と人々をこれでもかというほど痛めつけているという感覚から起こった。
「金がない世の中だったら、人も生活もどれほど気持ちのよいものになるだろう」と思っていたが、解決策は全く見いだせない。
水野氏も次なる世界は具体的にはイメージできないものの、近い将来何らかの変化が起きるであろうことは言及している。
後どれくらい持つだろう。
-
Posted by ブクログ
リーマンショックから5年が経ち、また日本ではアベノミクスと呼ばれる経済政策により、なんとなく、経済の状況が良くなっているように報道されています。
しかし、以前の状況からどのような部分で変化があったのか?と問われると、答えられない自分がいます。
そんな経済の状況について、大局に立って書かれている本があると知り、読んでみることにしました。
まず、利子率の歴史的トレンドを踏まえ、「蒐集」と言う言葉をキーワードに、資本主義の構造と大きな流れを解説しています。
そして「グローバリゼーション」をキーワードに、1995年以降に世界経済で起こったことと、その結果として二極化が進んだことを説明しています。
最後 -
Posted by ブクログ
ネタバレ日本の書き手としては珍しく、歴史的視野で経済を見る水野と、政治哲学の立場から発言する萱野による時宜を得た対談。
現在もっとも求められているのは本書のように「絶望を煽ることなく、希望のない状況を語る」ことだと思う。国全体を動かすような成長や活力が幻であることは、誰もが薄々感じていることだから、冷静に語りかけられればパニックにはならないのに、どうしたことか巷に溢れるのは超楽観か絶望あるいはスパルタ式の叱咤激励本しかない。
いや、そもそも国なんてものに縛られている必要はない、という議論もあるが、資本主義が常に市場経済の「外部」を必要としたという本書前半の対話、特に今般の危機に際して最後の貸し手として -
Posted by ブクログ
中世16世紀と今の状況の類似性から、資本主義の終着点にたどり着いているのではないかという論説。今回はエネルギーや食料の価格の動向において、もはや実需によってではなく、投資目的での価格変動が起こっており、利子率を稼げる、要はリターンが得られる要素を探し求めている状況を解説。それにより、フロンティアを求める資本主義は、フロンティア探しが行き着くところまで行き着いて袋小路に入りつつある、というのを示している。
リターンを得られるか?という観点だけで世界を眺めたら、いずれ行き着くところは「もう稼ぐ余地はありません」という状況だというのは実感として思う所があるので、本書の主張には共感する部分がとても多 -
Posted by ブクログ
F・ブローデル、I・ウォーラーステイン等の歴史学者の分析的枠組みを利用して、現在の世界経済を見ているところに非常に共感できる。
現在の資本主義世界経済、つまりウォーラーステインの提唱する近代世界システムが誕生したのが、時代的には「長期の16世紀」であった。筆者はこの時代に起きたことが現在も起きておりまさに「長期の21世紀」である、と述べている。この「長期の21世紀」は歴史的な転換点であり、新しい社会システムへの移行期であるから、混迷の時代がこれからも続いてくのだ。
「長期の21世紀」においては4つの革命が進行しており、その最先端を走っているのが日本であり、これからもしばらくこの長期的な混迷の時 -
Posted by ブクログ
本書の内容は雑誌等に寄稿したものを、3部に分けてまとめている。1部「資本主義の大転換」、2部「解体する中産階級とグローバリゼーション」、3部「歴史の大転換にどう立ち向かうか」である。
最初読んだときには、歴史的な人物やそれらを解析した歴史学者の言葉などに戸惑ったが、水野氏の著作をいくつか読んだ後では、むしろ繰り返される言葉が多い。今までの近代システムからの決別して、新しいシステムに向けてをまとめているものだと思う。
以下、自分の忘備録的なまとめとすると(やや理解がやしいが)
それは、ブローデル「地中海」から長い16世紀や帝国の分析や、ウォースラインの世界システム論などから、世界史の中で経 -
Posted by ブクログ
経済の今は、1970~2050年頃にかけての経済の移行期であるという。自国での資本が行き渡って利子を生まなくなってしまっている一方で、新たな利潤の獲得手段としてのグローバル化が起きている。このグローバル化で、新興国が資源を消費するようになり、資源価格が高騰し、この穴埋めを労働賃金の下落によって対応した。今の低賃金化はこの流れによって起きているという。そして、今後は持つもの/持たないものの所得差の拡大による2極化が起き、これを是正するための「ポスト近代」としての新たなシステムが登場するだろうと言っている。
本書が事実なら、資源高騰の穴埋めとしての低賃金化、経済のほころび(バブル)を治療するために -
Posted by ブクログ
ネタバレ1970年代前半から先進国では交易条件が悪化し資本利潤率が低下してきている。高度経済成長が止まり、資本投下によるリターンも得られなくなる。実物経済から金融経済へと舵を切るも2008年の金融危機は金融経済化の方向も息詰まらせることに。定員15%の近代資本主義が新興国の隆盛によりバランスが崩れ、今、世界の資本主義の構造が大きな転換期にさしかかっている。現在のデフレは一時的な不況などではなく構造的なものであり、金融施策で克服できるようなものでは決してない。今こそ低成長時代の制度設計の立て直しをと著者は訴える。このほかバブルのしくみ。イラク戦争の真相。ヘゲモニー移転など興味深い内容が次から次へと繰り出