水野和夫のレビュー一覧
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大澤真幸との対談でじわじわと感じてはいたけど、今回は萱野念人という結構若手の哲学者との対談で、ドゥルーズ=ガタリへの言及があった。その線ではあまり掘り下げがなかったけど、水野氏の他の著作と同じく、現在の経済的行き詰まりを一過性の問題としてみるのではなく、歴史的な転換期にあるものとしてとらえている。
本書で目を引いたのは、現代史的な事件の裏の真相的なところ。
例えば、大義名分が不明瞭だった湾岸戦争に米国を駆り立てたものは、基軸通貨としてのドルを守るためだったとか、日本の80年代バブルは、米国の軍拡競争の財政赤字を補てんするために引き起こされたものであるとか。
米国が覇権を握り続けるためには、なん -
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水野和夫と大澤真幸の顔合わせは意外だったが、以前より知り合いだったらしい。2人の対談を通じて、経済学的な観点と社会学的な観点から、いまにも崩れそうな資本主義について、歴史的なスパンでとらえ直している。
近代とともに発展した資本主義は、現代に至ってかつてないレベルでグローバル化した。この帰結として、搾取できるフロンティアは消滅し、「成長」する余地がなくなっている。このことが、さまざまな問題として露呈している。きわめて低い金利の状態が続くというのは、歴史的に見ても経済システムが成長しきった状態で、大きな社会的な変化がなければ解決しない。
資本主義に代わる最適な経済システムの想定があるわけでもない。 -
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本書は2014年3月に発行された本だが、小生は2014年4月に一度読んでいる。このほど再び本書を読み、時の流れと共にさらに説得力を増してきたと思った。
「西欧的な近代化は、途上国から資源を安く購入することで成り立っていたが、途上国の近代化によってその条件はもはや消滅した」。まさにその通りではないか。本書を高く評価したい。
以下は2014年4月に読書した時のレビュー。
『本書は,「経済書」なのか「政治書」なのか、それとも「文明書」なのか、とにかくすごい本である。
本書によると、資本主義はもう「終わっている」となる。 なるほど昨今のウクライナ情勢を見ても、本書の見解は理解できないわけではない -
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ネタバレ市場は国家の存在なくしてはその枠組みを持ちえないという前提のもと、経済覇権国の利子率の推移を下に現在は歴史的な大転換の位置にあるという議論。
これまでの歴史的な流れにおいては、実体経済で隆盛を極めたのち経済体系が金融化する、ことを指摘しリーマンショックはその終わりを意味するものとしている。
しかしいぜんであれば、陸から海、海から空へと領域を拡げていくことで成長してきたが、今回は違うかもしれない。これが意味することは、歴史上はじめて生産国と資本蓄積の場の分離が起こっていることであり、国家と資本の分離である。つまり、今後は中国が以前のアメリカのようになるのではなく、相変わらずアメリカが資本をマネジ -
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資本主義が始まって以降の歴史的な分析がわかりやすく明快だった。
今までこの本に気づかなかったことを悔しく思うほど。
スペインやポルトガルが新大陸を発見するだけでは世界の海の支配を確立するには十分ではなかった。16世紀以降、オランダが造船技術を革新して世界の海を支配する基礎をつくり(空間革命)、それをイギリスが決定的な形で引き継いだ。
16世紀末から17世紀初頭に、イタリア、スペイン、オランダで金利が最低水準になり、領主が利潤を得ることができなくなったことを示している。封建制が崩壊し、土地が売買や賃貸の対象となって資本主義と絶対王政が始まった。
現在の途上国では、東インド会社の時代から交易条件 -
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ネタバレ資本主義は普遍的なものなのか、過渡期的なものなのか?なぜ西洋〜キリスト教の下で発生したのか?国民国家と資本との関係は?
ローマから始まって、スペイン、オランダ、イギリス、アメリカ、日本、EU…。歴史上、ヘゲモニー国家は生産拡大→金融拡大→バブル→崩壊というサイクルで移行して行きます。その指標として水野氏は「利子」に注目します。そもそもキリスト教でもイスラム教でも禁じられていた「利子」を採用する事によって資本主義は生まれたといいます。その利子が10年を超えて2%以下の超低金利が続くと、既存の経済・社会システムが維持できなくなるという仮説なのですが、現在の日本は16世紀のジェノヴァの記録を40 -
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「現在が未来に食い込むにつれて、過去はその姿を新しくし、その意味を変じていく。」という清水幾太郎が訳書のはしがきで書いた言葉が、まさに体感出来る本です。今、起こっているグローバル経済の流れをブローデルの「長い16世紀」との近似から、中世から近代へのシステムを転換させた歴史の断絶と同じことが進行しているとの指摘がなされます。曰く「長い21世紀」。ここで起こっている断絶が「利子率革命」「貨幣革命」「価格革命」「賃金革命」の4つの革命が無茶苦茶、腑に落ちるように語られます。9・11、9・15、3・11を近代が持っている無限の膨張主義の破綻として共通の概念で語っているのも目鱗でした。その概念が「蒐集」
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私の現在の世界経済に対する解釈と合致する本でした。内容はそこまで濃くないですが、簡潔に要点を押さえてまとまっており、①コストパフォーマンスの高さ、②非常に分かっている(偉そうですんません)世界経済の解釈が行われている、点に於いて☆5にさせて頂きました。
まず、近代の先進諸国が現在の新興国などで安く資源を買入、付加価値を付け、高く売ることで成長を続けて来たと言うところから始まります。資源ナショナリズムに依って資源の支配権が薄れ、資源価格が高騰し、これによって新興国の交易条件が先進国に近づき、実体経済に於ける先進国の成長モデルが崩壊したと説明されています。
米国は実体経済で成長を続けることが出 -
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歴史に学び、現状と今後に対して深く考察する名著
1973 オイルショック
先進国の交易条件の悪化→変動費の増加→人件費の減少→景気回復と所得回復の分離
(1971ニクソンショック)1974
実物経済から金融経済へ
95~08の13年間で100兆ドル(米4割、欧3割)
・石油価格の決定権WTI・ドル決済
・イラク戦争は、フセインがユーロ建て決済に挑んだため
・陸地の獲得やコントロールから、経済システム管理のための軍事力行使
・現代版・陸と海との戦い
陸 EU、ロシア、中国
海 英、米
・最後は陸軍が強くないと治安維持ができない
利益率(利潤率)の低下→実物経済から金融経済へ -
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今までの先進国経済は、資源国から安い資源を輸入して得られる高い収益によって、高成長を続けてきた。(植民地時代の収奪の仕組みと基本的には同じ)
これが、オイルショックを契機として成り立たなくなり、もはや実物経済ではやっていけなくなり、金融によって利益を上げる仕組みに変化していく。
金融経済化はヘゲモニーの黄昏である。
しかし、ヘゲモニーを中国がアメリカに取って代わるとは考えづらく中国が世界の工場となっても、その利潤をコントロールするのはEUか、米国ではないか。実物経済で利潤がもたらされる場所とその利潤がコントロールされる場所が資本主義上初めて分離されるだろう。
新興国の経済成長による資源 -
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自分自身、特に経済論に詳しくないんだけど
いまの多くの経済評論家の議論は、
金利引き下げがどうのとか、量的緩和がどうのとかの金融施策や
果てには「もっと、モノを買いましょう」といった
欲しくもないのに、無理矢理お金を使わせることを是とする
ような議論ばかりで、
「そんなことではいまの経済は変わらないんじゃない?」
といった漠然とした疑問がずっともやもやしていた。
例えば、野球の人気衰退についての議論に例えると
社会のなかの野球の立ち位置や環境が変化しているのに
スタジアムで起こることだけに目を凝らし、
「ネームバリューのある助っ人外人を連れてこなければならない」
「先発4本柱を育てなきゃチー