谷沢永一のレビュー一覧
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「男冥利に尽きる」人生を送った15人の生涯を簡潔に紹介しています。
とりあげられているのは、三菱財閥の創業者の岩崎弥太郎、ロシアに渡った海軍武官の広瀬武夫、日本の美術界をリードした岡倉天心、平民宰相と呼ばれた原敬、『中央公論』の編集者だった滝田樗陰、明治の実業家の渋沢栄一、大阪市長の関一、作家・編集者として活躍した菊池寛、阪急電鉄の創業者の小林一三、作家の谷崎潤一郎、読売新聞を育てた正力松太郎、オペラ歌手の藤原義江、品質管理に力を注いだ技術者の西堀栄三郎、横綱の栃錦清隆、そして松下電工の創業者の松下幸之助です。
いずれも興味深く読んだのですが、著者がおそらくは自覚的に、みずからの視野を近代 -
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著者が九つの古典をとりあげ、そのなかに込められた人間理解の奥深さについて論じている本です。
『論語』や『三国志』、シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』やプルタークの『英雄伝』といった文字通りの古典から、日本の東洋史学に大きな足跡をのこした内藤湖南の『日本文化史研究』、そしてイギリスで刊行された、ある一人の男が性体験を語った『わが秘密の生涯』など、ジャンルを問わず多様な作品がとりあげられていますが、いずれもそれらを通して人間性の機微に触れることができるところに著者の力点は置かれています。
「文庫版のためのまえがき」には、「人間性の大根のところは、80年代も90年代も二十一世紀も、変化は見 -
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1932年にコミンテルンが日本共産党の任務について記した「三十二年テーゼ」は、日本の前近代性と半封建性を指摘するものでした。その後多くの「進歩的文化人」たちが、このテーゼにしたがって、日本の近代化はまがい物であると断じてきました。彼らは、遅れた日本を蔑視し、共産主義国家にしたがうべきだと主張してきたと著者は述べて、彼らに対する厳しい批判を展開します。批判の対象としてとりあげられているのは、大内兵衛、鶴見俊輔、丸山真男、横田喜三郎、安江良介、久野収、加藤周一、竹内好、向坂逸郎、坂本義和、大江健三郎、大塚久雄の12人です。
もちろん著者は保守派の論客ですので、この12人の左翼的な思想を激しく批判 -
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山本七平の著作からの引用と、それに対する著者のコメントによって構成されています。
著者は山本の仕事を総称して「山本学」と呼びます。山本学の中心は日本人論であり、「日本人のものの考えかた感じかた見かたにはどういう特徴があるのか、その日本人が群れ集っている日本人社会は、どういう見えざる原理で動いているのか、その日本人社会の運行原理に対処するにはどうすればよいのか」という問題が、考察されました。
山本は、日本人の心性について大理論を振りかざすようなことはしなかったと著者は言います。本書は、「おだやかに、静かに、いくぶん低い声で、ささやくように」語られた山本の著作から、そのエッセンスを抜き出し、分 -
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200冊を越えるという著述をものにしてきた谷沢先生が、話題になった著書だけでなく、いくつもの論文を書いたときのいきさつを書いたもの。谷沢さんは気にいった人にはとことんほめるが、気に入らない人、自分を無視した人には徹底的に攻撃を加える。攻撃は多分に急所をついてはいるけれど、その極端さは逆に疑いをいだきたくなる。攻撃された人にまったく取るところがなかったのだろうか。ぼくは谷沢先生さんが好きだけど、これはそううつ症であるところから来ていると思う。谷沢さんはひどいうつが何年かおきにくると自白しているが、そうでないときは実は躁状態で、そのときはひどく人を攻撃したくなるのではないか。無視される悔しさはわ