あらすじ
かつてこの国には、思いをこめて自らの仕事を成し遂げ、歴史に確かな足跡を残した男たちがいた。わが国初の政党内閣を組閣した原敬、稀代の実業王渋澤栄一、企画の天才菊池寛、プロ野球を育成した正力松太郎……男冥利の人生を颯爽と歩んだ十五人。本書は、卓抜なる批評眼で読者の支持を得ている著者が、彼らの生き方を通して理想の人生のかたちを探究する。激動の時代を生き抜いた男たちは、自分の好きを的確に知り、真実一路、一筋道を一貫して歩んだ成功者であるが、少なくともその成功が一から十まで自らの力に拠ると自認する者たちではない。達意の文章で語られる人生の断面は、自らの使命を全うしようとする強い志を表すのみでなく、家族、友人、先輩・後輩、後援者のありがたさをも見事に描いている。まさに読む者の気持ちに迫るエピソードの数々である。不安を抱え、生き方に迷う現代人に、人生における重大な心得を改めて問いかける。『男冥利』を改題。
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Posted by ブクログ
「男冥利に尽きる」人生を送った15人の生涯を簡潔に紹介しています。
とりあげられているのは、三菱財閥の創業者の岩崎弥太郎、ロシアに渡った海軍武官の広瀬武夫、日本の美術界をリードした岡倉天心、平民宰相と呼ばれた原敬、『中央公論』の編集者だった滝田樗陰、明治の実業家の渋沢栄一、大阪市長の関一、作家・編集者として活躍した菊池寛、阪急電鉄の創業者の小林一三、作家の谷崎潤一郎、読売新聞を育てた正力松太郎、オペラ歌手の藤原義江、品質管理に力を注いだ技術者の西堀栄三郎、横綱の栃錦清隆、そして松下電工の創業者の松下幸之助です。
いずれも興味深く読んだのですが、著者がおそらくは自覚的に、みずからの視野を近代的な価値観に限定して、実学思想を高く評価していることは、一面ではひとつの見識だと思うものの、やはり偏りがあるようにも感じます。15人のごく簡潔な評伝としては、おもしろく読めるのではないでしょうか。