あらすじ
本書は、ベストセラーになった『悪魔の思想』の文庫版を電子書籍化したものである。日本という国家とその主体である日本国民を、限りなく卑しめ、蔑み、劣った者として罵り、国益を外国に売り渡す思想……。著者はそれを「悪魔」のような「反日的思想」と呼ぶ。著者によれば、この「反日的思想」は日本の敗戦を契機にして、にわかに湧きだし、論壇を占拠した、いわゆる進歩的文化人たちによって、戦後50年の長きにわたって、日本と日本人を誤導してきたという。本書は、進歩的文化の代表と目された大塚久雄、大内兵衛、丸山眞男、久野収、加藤周一、向坂逸郎、大江健三郎ら12人を俎上にのせ、そのポイントとなる発言を細かく引用、点検し、その思想の発生源に鋭く迫っている。「ああ源流はこれだったのかと、必ずやひざを叩いて頷いていただけるはず」と著者自らまえがきに記しているように、その迫りようは徹底的であり、その徹底さに快ささえ感じる、胸をすく評論である。
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Posted by ブクログ
1932年にコミンテルンが日本共産党の任務について記した「三十二年テーゼ」は、日本の前近代性と半封建性を指摘するものでした。その後多くの「進歩的文化人」たちが、このテーゼにしたがって、日本の近代化はまがい物であると断じてきました。彼らは、遅れた日本を蔑視し、共産主義国家にしたがうべきだと主張してきたと著者は述べて、彼らに対する厳しい批判を展開します。批判の対象としてとりあげられているのは、大内兵衛、鶴見俊輔、丸山真男、横田喜三郎、安江良介、久野収、加藤周一、竹内好、向坂逸郎、坂本義和、大江健三郎、大塚久雄の12人です。
もちろん著者は保守派の論客ですので、この12人の左翼的な思想を激しく批判しているのですが、彼らの一人ひとりがどのような論理に導かれてそうした結論に至ったにせよ、多くの人びとが、いわば時代の潮流に掉さすかたちで、無批判に三十二年テーゼを受容してきた事実はあったのではないでしょうか。精神の自由と独立を何よりも重んじるはずの進歩的文化人が、なぜ共産主義国家に対して精神的な隷属性を示すことになったのかという問題は、左右いずれの立場をとるにしても、冷静に批判・検証されるべきなのではないかと考えます。