コニー・ウィリスのレビュー一覧

  • ドゥームズデイ・ブック(上)

    Posted by ブクログ

    タイムトラベルなSF。
    こちらとあちらの二幕仕立てで、交互にお預け状態になるため、一気に読破。

    中世研究のためのトラべルだったのが、アクシデントで…。
    ドラマティックなお話というより、サスペンス仕立てな実録というか。
    余計に切なくて仕方ない。静かにじわじわ泣けてくる。

    散々会話に出てくる「姪の息子」君、あんなん可愛いすぎるやろ!
    てっきり脇役だと思ってたのに。

    0
    2016年04月07日
  • オール・クリア2

    Posted by ブクログ

     このオックスフォード大学史学部シリーズ、タイム・パラドックスを起こす可能性がある時点には時間旅行できないという設定で、面倒くさいパラドックスは回避されている。それゆえ、過去から帰れなくなってしまったというほかは延々と戦時の生活が描かれるのだが、物語も最終局面に向かって、時間旅行の問題が前景化してくる。

     1940年に閉じ込められた(本巻では41年に年が開ける)、マイク、アイリーンことメロピー、ポリーの3人は、2060年のオックスフォードにメッセージを送ろうと偽装した広告記事を新聞にのせたり、様々な努力をするのだが、そうした帰還のための努力が効を奏しているなら、すでに回収チームが来ているはずだというパラドックスに気づいて、不安に苛まれる。
     もうひとつの問題は、同じ時代に2回いることはできない(同一人物が2人になってしまうから)というルールで、すでに1943年から終戦までロンドンに来ているポリーは、そのデッドラインまでに帰らないと命が危ない。
     そんななか、マイクが戦火にまかれて死んでしまう。ここまで引っ張ってきてそれはないでしょう、と思う。これもウィリスの仕掛けたプロットの罠なのだが、様々な仕込みがここにきて炸裂する。
     マイクの死にうちひしがれる2人の前に現れたのは、彼らを助けに来たのにやはり戻れなくなってしまったダンワージー先生。うちひしがれたダンワージー先生は絶望的な結論に達している。

     体験的な時間は過去・現在・未来と連なっているものである。過去は既になく、未来はまだない。ところが、ここにタイムマシンを導入した途端、現在は時間軸の外(つまりタイムマシン内)に移動し、過去も未来も既にそこにあるという、事後性のモードにはいってしまう。過去も未来ももう決まっていて、歴史は変えられない。徹底的な運命論になってしまうのだ。それでは時間旅行そのものも不可能になってしまうので、時間旅行者の行動の結果は時空連続体に吸収されて後に影響を残さないといった妥協策をとられることが多く、本書もその路線。
     他方、歴史変え放題で、歴史を変えるたびに新たな平行世界が生ずるという、多元宇宙的設定を取るSFもある。あるいは過去・現在・未来という時間軸のさらに上にメタ時間があって、メタ時間の経過とともに、過去・現在・未来も変化していくとか。

     ダンワージー先生の現状分析は、時間旅行者の影響は最初のうちは時空連続体に吸収されていたが、ある閾値を超えるともはや修復不能となり、その時間線には「降下点」も開かなくなって、隔離されてしまうという、部分的平行世界解釈である。彼らに帰るすべはない。
     先生も助けにならないとすると、あとは『ブラックアウト』の冒頭に登場するコリン・テンプラーに望みを託すしかない。コリンは前作で12歳にして時間旅行に密航して大活躍したらしい(何しろ評者はまだ読んでない)。それがいまや高校生となって、オックスフォード大学史学部をめざしつつ、ラボのあたりをうろうろしてダンワージー先生に閉め出されていたのだ。彼はポリーに恋していて、何かあったら絶対助けにいくと言っていたのだ。

     戦争は歓迎されるものではないが、敵はヒトラーなので、勝つまで耐え忍ぶしかない。ここには反戦も厭戦もなく、むしろ降りかかってくるものを耐えながら、自分の分を果たしていくという、むしろ災害下に近い状況が描かれている。マイクは戦時の英雄的な行為を調べるために渡航したのだが、市井の人々の自分の分を果たすという英雄的な行為、ポリーやアイリーンの英雄的な行為を見る。自分も英雄であることには気づかないまま。
     ポリーは時空連続体のふるまいについて、ダンワージー先生とは違った解釈に到達するが、それはやはり運命論的時間解釈である。人は運命から逃れることはできないのに、自分の愛する者のために何かすることは、運命に強いられた犠牲や代償ではなくなるのだ。そしてそれこそが英雄的な行為と呼ぶにふさわしい。そんなとき、人は幸せな顔をしている。マイクも、アイリーンも、コリンも、そしてポリーも。歴史という時間の捕囚である人間に自由はないのに、人間は運命を自分のものとすることができる。
     コニー・ウィリスの言いたいのはそういうことだ。それをこの紙幅を費やして、細部を積み重ねて呈示することで、読者はまるで実体験からその考えに到達したかのように感ずることになる。
     『ブラックアウト』を読んでいても、何でこれが3大SF賞総なめの作品なんだと疑問に思うのだが、まさにその感動に賞が与えられていることに納得することになる。

    0
    2016年02月04日
  • オール・クリア1

    Posted by ブクログ

     2060年のオックスフォード大学史学部、タイムマシンを使って、学生が過去の時代に旅行してフィールドワークをしているという設定のシリーズ、『ブラックアウト』の続編であるが、長くなってしまったのでひとつの長編を『ブラックアウト』『オールクリア』、すなわち第二次大戦中のロンドンの灯火管制とその解除をタイトルに2分冊にしたもの。日本語訳ではさらに『オールクリア』も2分冊になってしまった。

     評者も最近、フランケンシュタイン産業のロンドン、裏ロンドン、クラーケン神のロンドンなど結構ロンドンに行っているのだが、オックスフォードの航時史学生もたくさんロンドンに行っている。第二次大戦下のロンドンに。
     そのうちの3人。

     マイクは史上最大の救出作戦ダンケルク撤収を遠目に観察する予定が、もろそれに巻き込まれてしまい、負傷し入院、降下点に行けなくなる。アイリーンを名乗るメロピーはロンドン郊外で疎開児童を観察するが、帰還予定日直前、はしかの流行で隔離されてしまう。ポリーはデパート店員となってロンドン空襲下の市民生活を観察するが、帰還予定となっても降下点が開かないことに気づく。
     過去に旅立つ前、オックスフォード大学史学部では、ダンワージー教授が渡航スケジュールを大幅に変えさせていて、てんやわんやしていたが、「向こう」で何かあったのか、それとも、自分が歴史を変えてしまったせいではないのか。3人は不安になりながらロンドンで落ち合う。はい、これが『ブラックアウト』のあらすじであります。

     『オールクリア1』の表紙は欧州戦勝記念日のロンドンの光景なのだが、それがなぜここにあるかといえば、本館冒頭でメロピーはすでにこの日にロンドンに来ていることが明かされているからである。このことはあとで重要な問題となってくる。

     1人だけ1940年に取り残されたのではなく3人がまとまったのはよかったが、今度は、2060年に戻る活動のために別行動をせざるを得なくなると、このケータイのない時代、連絡がつかないと仲間の安否がたとえようもなく心配になる。読者もいっそ1人のほうが楽だという気分になるくらいだ。
     『ブラックアウト』では3人それぞれが降下先で様々な困難に遭い、さらに降下点が開かないことに気付き、という展開で、話の進みはいささか散漫だったが、本館では3人で協力して2060年に戻ろうとするプロットに集約してきて、俄然面白くなってくる。
     史学生が戻ってこないと来るはずの回収チームが来ないのはタイムトラベルに何か不具合が起きた可能性がある。ただ、同時代に他にもロンドン周辺に来ている史学生がいるはずで、うろ覚えの記憶を頼りにその史学生ジェラルドを探し出し、一緒に帰ろうというのが当面の目論見である。何しろうろ覚えなので、ジェラルドがどこに行くと言っていたのか思い出せない。地名を思い出すために地図を手に入れねばならないが、戦時下ロンドンではドイツのスパイに情報を与えないために、地図も手に入りにくい。地図を持っているのは、悪戯のかぎりでアイリーンを苦しめた疎開児童ホドビン姉弟だ!
     そうこうするうち、2060年では異常に気づいたダンワージー先生が自ら1940年ロンドンに降下する。しかし──

     『オールクリア1』の終盤にかけて、3人の決死の脱出劇は、ロンドン空襲の激化とともに大いに盛り上がる。ホドビン姉弟大活躍。もちろんまだ「2」があるから、オックスフォードに戻れないことはわかっているんだけど。
     あ、それからミステリ・ファンのみなさん、アガサ・クリスティーが出てきますよ。

    0
    2016年02月04日
  • ブラックアウト

    Posted by ブクログ

     第二次世界大戦中の日本の様子については、書物やドラマなどでそこそこに知っていると思うのだが、はて、イギリスがどうだったかなど、とんと知らぬ、本書を読むまでは。
     すなわち、ロンドンはナチスによる空襲にあって、灯火管制が敷かれていた。灯火管制、英語ではブラックアウト。

     2060年のオックスフォード大学史学部では、タイムマシンを使って、学生が過去の時代に旅行してフィールドワークをしているという設定のシリーズだが、私は初めて読む。時間旅行は過去へのみ可能で、ネットといわれる装置で「降下点」を開いて学生を過去に送り出す。「降下点」が開くのを現地人、いや現時人に見られる可能性があったり、そこに「降下」するとタイム・パラドックスを起こす可能性があるときにはネットは開かないという設定で、時間旅行の面倒くさいパラドックスは回避されている設定である。

     主人公は三人の学生。それぞれ、ロンドン大空襲、児童疎開、ダンケルク撤収の観察に赴く。一人はロンドン空襲下のデパートに勤め、一人は空襲に遭っているロンドンから疎開した子どもたち受け入れる近郊の篤志家宅に勤める。ダンケルク撤収というのは、フランスへのドイツ軍侵攻時に、イギリス派遣軍を民間船舶も協力して撤退させたという出来事だが、三人目は新聞記者に扮してこれを遠巻きに観察しようとする。
     三人とも、命の危険がない安全なところに「降下」したはずが、現地の状況に巻き込まれているうちに「降下点」が開かなくなっている。帰れないのである。「これは時間旅行なのだ」から、救出チームが任意の時間に降りたって、戻ってこない学生たちを拾いに来るはずなのに、なぜか助けは来ない。観察者として来たはずが、帰れないとなると現時人と同じ立場にあることに気づく。そして、次第に見えてくる困難な時代に生きる人々の姿の詳細、困難な状況に陥った平凡な人々の英雄的な行為、それがこの大部の小説を厚くしている要因であり、作者が描きたいことなのである。
     終盤に向かって別々の時期、場所に「降下」した3人が集合してくる。それで『ブラックアウト』は終わり。『オールクリア』すなわち「空襲警報解除」に続く。

    0
    2016年02月04日
  • 犬は勘定に入れません(上) あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎

    Posted by ブクログ

    ヒューゴー賞とローカス賞のダブル受賞を果たした本書は、コニー・ウィリスの人気シリーズ<史学部シリーズ>の第2弾。
    いったいこのシリーズだけでどれだけの賞を受賞したのか気になるところです。

    全2巻。シリアス路線だった前作「ドゥームズデイ・ブック」と異なり、今作はどたばたコメディ。抱腹絶倒もの。
    そして単なるどたばたコメディではなく、SF、ミステリー、そしてラブロマンスも兼ねそろえた充実ぶり。こういうと、ごちゃまぜな感がありますが、うまくバランスが保たれているのは、著者の技量によるものか。
    ウィリスのシリアスな作品も好きですが、どちらかというと「まれびとこぞりて」のような作品が好きな自分にとっては、もの凄く楽しく読み進めることができました。今回は結構笑ったなぁ。
    相変わらず「人の話を聞かない登場人物」の存在が強烈。もはや様式美ですね。
    本書では、前作に比べてさらにドギツイ登場人物が登場します。それはもちろんレイディ・シュラプネルとミアリング夫人(他にもたくさんいますが…)。なかでも烈女シュラプネルの理不尽を通り越した要求の数々には、怒りを通り越して、思わず笑ってしまうほど。この女、殆ど登場しないのにかなりの存在感。苦難苦悩、紆余曲折を経てようやく見つけた主教の鳥株に対して彼女が投げ掛ける一言には、「こんのクソババア!」と返したくなりますが、これもまあ彼女らしいといえば彼女らしい。

    一方、肝心のSFの部分では、カオス理論を基軸とするタイムトラベルの仕組みが少しばかり明らかになるところも。
    ここでのタイムトラベルは、過去に戻って出来事を変えることにより、未来を変えることが「できない」とされます。したがって、未来を大きく変えるような過去での行為は、そもそも「過去では行えない」か「その後の調整により無効化」されます。「その後の調整により無効化」とは、最終的な結論が同じになるよう、未来に大きな影響がない範囲で途中のプロセスが改変されること。こういった幾つかの制約、そして神の見えざる手により、未来は保全されるのです。
    ところが、本書ではタイムトラベル上では「できない」とされていた行為が行われてしまいます。
    それは過去の「モノ」を現在に持ち込むこと。
    なぜ実現不可能な行為が行われてしまったのか、そしてその影響とは…?
    このあたりの謎を解明することが、本書のミステリー要素の核となる部分。そして、本書の終わりに明らかにされる壮大な仕掛けは、「おおきな風呂敷を広げたなぁ」との印象が拭えません(笑)。なぜかヴォークト「イシャーの武器店」のラストを連想したこの大風呂敷。果たしてきちんと閉じられるのでしょうか。

    さて、文庫版の装丁にもなった犬のシリルと猫のプリンセス・アージュマンド。
    この2匹にとにかく癒される本書は、頁数の多さが気にならないほどストレスフリーに読み進められる傑作でした。

    0
    2015年08月31日
  • オール・クリア2

    Posted by ブクログ

    ポリーは魅力的キャラで好きなんだけど、ちょっとイラっとする面もあって、何故だろうと考えたら、これはマイクやアイリーンも多かれ少なかれ共通するんだけど、先走りしすぎる傾向がある、事実を確認する以前に想像をたくましくしすぎる。これって歴史を専攻する者の資質としてどうなの?タイムトラベラーはそういう性向になりがちなのかな。このシリーズの長編は読破したので、残るは短編だな。ここでは結局つかまえられなかったジョン・バーソロミューさんの話が読みたい。

    0
    2015年08月19日
  • ブラックアウト

    Posted by ブクログ

    ヒストリアン達がそれぞれ微妙なズレを感じているところがハラハラ。ダンワージー先生による急の予定変更も理由が明らかにされていないので、不穏だ。私はヒストリアンには向いていないな。口が軽いから。コニー・ウィリスのページターナーの才能は凄い。この長さでちっとも飽きさせないんだもの。そういう意味では現代の、SF界のディケンズだね。

    0
    2015年08月14日
  • オール・クリア2

    Posted by ブクログ

    空襲警報は解除され(オールクリア)、全ての謎が明らかになる。

    第二次世界大戦下のロンドンで、それぞれの学問的課題を研究するために2060年のオックスフォードからやってきた3人の史学生。ポリー、アイリーン(メロピー)、マイク。
    過去へのタイムトラベル。それは絶対に安全なはずであり、もしも危険なことが起こりそうになったら、または歴史を改ざんしてしまいそうになったら、すぐに2060年の世界へ戻されるはずだった。
    だがしかし、何度も命を失いかねない危険な目に遭い、本当なら死んでいたのかもしれない人々の命を多数救ってしまう彼ら。

    だからなのか?
    2060年へ繋がるはずの降下点はどこもここも使用不可能であり、不具合があったときに現れる回収チームもやってこない。
    誰かが歴史を変えてしまったのか?

    20世紀の時代人としての生活を送りながら、なんとしても2060年の世界に戻るべく必死で手掛かりを求める3人。

    ところが…!!!
    というところで前作の「オールクリア1」は終わる。
    そして、えええ~!!!
    というところから「オールクリア2」は始まる。

    1941年と1944年と1995年。
    時間を変え、場所を変え、人を変えて入り乱れる数々の出来事の意味が、徐々にわかってくる。
    そうするともう、読むことを止められない。
    長い長い物語の中に張り巡らされていた伏線が次々に回収され、あるべき形に向かって収斂していく。

    9.11をきっかけに、この物語を書くことにした作者。
    どんなに絶望的な状況でも希望を失わないこと。
    自分にできることの精一杯を尽くすこと。
    本当に大切なもののためには自己犠牲を惜しまないこと。

    別な長編作品「航路」の中で、何度も繰り返されるタイタニックの沈没を描くことにより、この覚悟のほどを書いた作者。
    今回は、どうやっても脱出できない戦時下のロンドンという舞台を与えることで、登場人物たちの、極限状態の中でも失われることのない善き人間性というものを書いた。
    イギリスの最終兵器といわれる、極悪なホドビン姉弟ですら、善き人間性を発揮するのだから。

    何かひとつの出来事で、戦争に勝ったわけではない。
    誰か一人の英雄の力で、戦争に勝ったわけではない。
    歴史に名前の出てこない、一人一人の人たちの、毎日の精一杯の積み重ねが、歴史を作っていくのである。

    ただ、そういった意味では、歴史の意味(?)、歴史の意志(?)、そこら辺の書き方に、ちょっと納得はいかなかったのだけど。
    歴史が作られるのは時代と同時進行でも、歴史に意味を持たせるのはあとから人間がやっていることだと思うのね。
    歴史自体はあくまで中立なんじゃないかと。私はそう思っているんです、ダンワージー先生。

    イシカワ教授がタイムトラベルについて、どんな問題点を見つけ、どう解釈していたのか。それをもう少し書いてほしいと思った。
    あまりに話が長くなりすぎて削った部分なのかもしれないけれど、今ひとつ、ずれの解釈がよくわからなかったので。

    要所要所に出てくる、シェイクスピア劇の中の台詞。お芝居の台詞でありながら、生きた言葉として登場人物たちを支え、励まし、慰める。
    そして何度も繰り返し出てくるアガサ・クリスティのミステリ。
    彼女の作品の謎を解くのは容易なことではない。答えは最初から提示してあるのに、逆に解釈するように仕向けられる。答えはわかっているはずなのに、決して最後まで気づくことができない。

    ポリーにとって、コリンは希望だった。コリンが希望だった。最初から。

    う~わ~!!!
    なんてスケールの大きな物語!
    たくさんの、数え切れないほどたくさんの人たちの、抱えきれない思いの上に、今、私は生きているんだと思うと、世の中に無駄な行いというものは、何ひとつないと思うわ。

    「ブラックアウト」「オールクリア1」「オールクリア2」
    この、3冊合わせて1745ページの一連の作品の中で、特に気に入っているのが「ブラックアウト」に出てくる、空襲でショーウィンドウが粉々になてしまったデパートの貼り紙。
    『散らかっていますが、遠慮なくどうぞ』
    大人の国だよねえ。

    それから作品とは関係ないんだけど、びっくりしたので覚書。
    ポリーってメアリーの愛称なんですって。
    ちなみにペギーはマーガレットの愛称とか。
    どうしてMがPになるの?英語ってわからない。orz

    0
    2015年04月14日
  • 犬は勘定に入れません(上) あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    SFは総じて導入の設定を読み込むのが大変。なのでこの本に限ったことではないけれど最初がしんどい。けどそこさえ乗り越えてしまえばぐいぐい読ませるお話でした。タイムトリップが可能になった時代に空襲で焼けた大聖堂を再現しようと躍起になった女王?政治家?金持ち?権力者に振り回され、そのせいで起きた時代の齟齬を直すためにさらに振り回され………上巻なのでまだ先わからず。主人公可愛いヴェリティ可愛いフィンチがいちばんすき。そしてトシーの赤ちゃん言葉は最初は本格的にイラついてたけどだんだん愛らしく感じられてくる病気。

    0
    2015年01月06日
  • オール・クリア2

    Posted by ブクログ

     3冊合わせて1745ページ。ポケット判で750ページ以上もある「ブラックアウト」を読んだ時には、「これ、普通の作家なら200ページぐらいで書き終えるのでは」などと思ったが、全部読み終えてしまったら、タイムトラベルものの常でまたすぐに最初から読み直したくなる。

     実際に読み返さなくても、あれはどうだったか、ここはどうなっていたかとページをめくって確認してしまうこと必定だ。それほど登場人物たちに魅せられ、この長い物語から離れたくなくなってしまう。大空襲下のロンドンに閉じ込められるポリー、アイリーン、マイクの史学生3人をはじめ、いたずらが過ぎて手に負えないビニーとアルフのホドビン姉弟、勝利を信じて懸命に生きる人々をコニー・ウィリスは生き生きと描き出す。

     SFだなんだという前に、この小説には物語の魅力が詰まっている。

    0
    2014年10月04日
  • オール・クリア2

    Posted by ブクログ

    長かっただけに感動もひとしお。ポリー、マイクル、メロピー三者三様の結末は正直、意外だった。
    思えばこれまでの短長編の登場人物の出演・言及などサービスも有り、この終わり方。航時史学生シリーズは本作を持っておしまいなのかもしれない。犬は勘定のような大団円とは言えないかもしれないが、余韻のあるいい終わり方なのかも…
    でも、本心はもっとこのシリーズ読みたい!

    0
    2014年09月08日
  • 犬は勘定に入れません(下) あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎

    Posted by ブクログ

     オックスフォード大学史学部シリーズの長編第2作。まるでシェイクスピア悲劇のようだった前作からうって変わって、今度はヴィクトリア朝を舞台としたてんやわんやのラブコメディが描かれている。
    「彼と彼女がくっつかないと未来が大変なことに!」という某名作映画を彷彿とさせるストーリーはもちろん、主人公とヒロインの距離加減もまた読んでいて楽しい。ウィムジー卿に憧れる女の子なんて素敵。
     そしてある意味主役の犬と猫! たかがペットと侮るなかれ、驚くほどキャラが立っている彼(&彼女)は始終物語を引っ掻き回すがどうにも憎めない。人間だけじゃなく動物も魅力的な本作は、一見の価値ありです。

    0
    2014年08月14日
  • ドゥームズデイ・ブック(下)

    Posted by ブクログ

     タイムトラベルによって実地的な歴史研究が行われるようになった近未来が舞台の、“オックスフォード大学史学部シリーズ”最初の長編。本作では、中世イングランドに降下した史学部生キヴリンを軸に、迫りくるペストと21世紀のオックスフォードで発生した原因不明のパンデミックとの闘いを描く。
     紛れもない長編で専門用語も多く、翻訳SFに慣れない人は二の足を踏みそうな作品だが、それでも読む者をグイグイ惹きつけるこの作者はさすがとしか言いようがない。登場人物は皆活き活きとしており、本当にその時代に生きていたかのよう。主人公の成長物語としても歴史小説としても一級品なので、興味がある人は是非読んでみてほしい。
     また、読後は短編である『空襲警報』を手に取ることをおすすめする。書かれた時期は短編のほうが先だが、脇役として登場するキヴリンにぐっと来ること請け合いである。

    0
    2014年08月14日
  • ドゥームズデイ・ブック(上)

    Posted by ブクログ

    2054年のオックスフォード大学では、開発されたタイムトラベル技術を歴史研究に利用している。女子学生キヴリンは現地調査のため、飢餓と疾病が蔓延する14世紀にタイムトラベルするが、キヴリンを現地に送り届けた技術者が未知の病に倒れ、キヴリンが無事現地に到着したか確認できなくなってしまう。キヴリンの非公式指導教授のダンワージーは、彼女の安否を確認すべく奮闘するが、未知の病が次第にオックスフォードを覆ってしまい… 一方、キヴリンは14世紀に到着するも原因不明の病に倒れてしまう。現地人の看護により一命を取り留めた彼女は、もとの時代に戻るために出現地点を目指すが…

    全2巻。終盤までは、物語は遅々として進みません。張り巡らされた問題は何一つ解決しないまま、ただいたずらに時が過ぎるばかりで、とにかくもどかしい気持ちでいっぱいになります。とはいえ、退屈というわけではありません。なんといっても「ひとの話をきかない登場人物」の多いこと多いこと。読中、何度も殴ってやりたい衝動にかられるぐらいで、こういった憤りやキヴリンと現地人の交流を微笑ましく思いつつ、読み楽しんでいきました。

    終盤以降は、これまでの鬱屈を爆発させるかのような怒涛の展開をみせ、一気にクライマックスまで突き進みます。ただ、この怒涛の展開は決して気分が晴れ晴れするものではないのです。ダンワージー側は悲惨さの割りにお気楽な展開でしたが(メアリが可哀相だ)、キヴリン側は違います。14世紀を襲った黒死病を目の当たりにし、現地人を助けるべくあがき苦しむも訪れるのは歴史の惨劇のみ。読んでいるこちらが悪寒を感じる展開で、彼女がのこした記録(ドゥームズデイ・ブック)の淡々とした描写が悲惨さを助長させました。歴史は変えられないというのが、この世界の鉄則であるだけに、「みんなとっくに死んでるんだ。そう考えても、とても信じられなかった」「どうかロズムンドを死なせないでください。どうかアグネスを感染させないでください」といったキヴリンの言葉が胸を刺します。

    先日読んだ著者の短編集がコミカルな内容だっただけに、落差が激しかった… 過去も未来もパンデミックが発生しており、時代の危険度合いは普遍的であるのかもしれませんが、それでもキヴリン側の描かれ方が悲惨かつ迫真であっただけに、歴史の冷酷さを感じる物語でした。

    0
    2014年07月06日
  • 航路(上)

    Posted by ブクログ

    『犬は勘定にいれません〜』以来のコニーウィリス作品。2作目。

    『犬は〜』のような登場人物が冗談を交えながらのんびりと話が進んでいくSFコメディを想像して読み始めたが、今作ではギャグの面白さもますます磨きがかかっており非常に読みやすかった。

    病院内で臨死体験について調べている主人公が神経学者のリチャードとともに疑似的に臨死体験を起こし科学的に解明しようとする一方で、「臨死体験は死者からのメッセージだ!」と言って譲らないトンデモノンフィクション作家との攻防(?)を中心に繰り広げられる物語は、総合病院の中という限られた舞台にも関わらず話のネタは尽きない。

    あまり書いてしまうとネタバレになってしまうが下巻のある部分で衝撃的な展開を迎え、そこからラストまでは怒濤のクライマックスになる。
    そこに込められた悲しくも素晴らしい作品のメッセージは、宗教や信心を超えた普遍的なものだ。

    0
    2014年04月21日
  • オール・クリア2

    Posted by ブクログ

    最後のほう、涙が止まりませんでした。思い出しても泣けてくる…。とても長いので、一気には読めませんが、一週間くらい睡眠不足になりました。

    第二次大戦中のヨーロッパの知識がなく、ブラックアウトではよくわからない単語もありましたが、読み終わりにはすっかりイギリス人の気分になれました。

    この長さで、はじめからの、すべてのパズルがカチカチはまっていく感じ、すごいです。ああ、そうだったのか〜。ばっかり思ってました。伏線ばっかりなんです。始めからもう一度読みたいです。

    0
    2014年03月02日
  • ブラックアウト

    Posted by ブクログ

    コニーウィリスは大好きで、この本を手に取りました。なので、続いているとは知らず…。とにかく長いですが、少し読み進めると止まりません。おもしろいです。幾つもの物語が並行して進んで行くので、長く感じるのかもしれません。いくつかの物語は合流していきます。

    多くの部分が伏線になっているので、一気に読んだほうがよくわかるかもしれません。

    0
    2014年03月02日
  • オール・クリア2

    Posted by ブクログ

    ブラックアウトから毎日夜なべして一気に読みました。
    レビューの長い、登場人物が複雑の声を
    留めつつ読んでいたためそこまで
    大変にはならず。
    しかし、この大長編を全くそらさずに
    引っ張り込み続ける展開凄い!
    オールクリア最後は泣いちゃってばっかりだったし。
    素晴らしすぎます!

    0
    2014年02月12日
  • 航路(下)

    Posted by ブクログ

    ヴィレッジブックスにて読みました。
    ハヤカワから復刊とのこと、喜ばしい。買います。
    人生のベスト3です。
    しばらく他の本読めませんでした。
    圧倒的な読後感。
    人に面白いよ、って話すのですが、内容全く伝わらない。もどかしい。

    0
    2014年02月09日
  • オール・クリア2

    Posted by ブクログ

    「ブラックアウト」「オール・クリア1」「オール・クリア2」通しての感想。
    厚い!紙で読んだのだが、1冊目を手にしたとき、あまりの厚さに読む前から心が折れそうに…。3冊で、400字換算3,500枚。当初もっと長かったものを、必死でこの長さに収めたらしい。どれだけ長いの、コニー・ウィリス。まさにこういった本こそ電子書籍向けではあるのだけれど、「新☆ハヤカワ・SF・シリーズ」の装丁も格調高く捨てがたい。
    読み始めると、この分厚いページがみるみる減って楽しくなる。特に「ブラックアウト」終盤1/4はものすごい疾走感。物語に完全に入り込んでいるため、単語を見た瞬間に状況が理解できてしまう。プロットだけを考えるともっとコンパクトにできるはず、と冗長に感じるけれど、物語ピークでの加速感は、飽きるほどひたすら描き込まれた助走期間があればこそ。
    舞台は、第二次世界大戦中のロンドン。タイムトラベルしてきた学生がトラブルに巻き込まれ…という物語。歴史や地理などの背景知識が全くなくても十二分に楽しめたが、知識があればもっと楽しめたのでは、と感じてしまったのは残念。
    タイムトラベルSFでは「パラドックス」の処理が肝心。本書では、流行りの量子力学的に煙に巻くでもなく、「感覚的に理解できる」パラドックス解決法が提示されている。しかし登場人物はこの解決法に疑問を抱き、実は…。このテーマが、物語を構成する単なる「ギミック」にとどまらず、登場人物の心の動き、そこから紡ぎ出されるストーリーの根幹に影響を与えていく。この処理がお見事。
    章構成も、短い章構成で時間・場所をシャッフルする中に、「叙述トリック」を紛れ込ませていく巧妙な構成。二転三転する登場人物の名前がトリックの要。一見誤植かと見逃しそうな中にヒントが埋め込まれており、本当は再読して解き明かしたいところ。ただこの長さでは…。
    今だからこそ3冊連続して読むことができ、久々の濃い読書体験ができたのは幸せだった。

    0
    2013年12月23日