コニー・ウィリスのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
最高です。もう夢中になって読みふけってしまった。こういう読書がいったいどれくらいできるものだろう。早くも今年度ベスト1に決定!
まずは目次を見て、ああかこうかと推測する。一九九五年?帝国戦争博物館?なんだそりゃ? ラストが一九四一年のロンドンになってるよ? 二〇六〇年のオックスフォードに帰るんじゃないの? 頭に渦巻く疑問。でもでも、読み終わる何時間後かにはすべて明らかになってるんだ。これほど楽しい気分もそうそうない。なんてったってコニー・ウィリスだもの。
「ブラックアウト」「オール・クリア1」の二冊を横に置いて、む?と思ったらすぐ前のところを読み返しながら、ずんずん読み進む。なかなかお話が進まずもどかしかった「1」とは打って変わって、三人の運命はスピーディに展開していく。読者の予想を小気味よく裏切りながら、これまでの伏線がどんどん回収されていく後半は、お見事!の一言だ。
いったい三人はどうなるの?と息を詰めて見守りつつ、全体を貫く強いメッセージに何度も何度も心を揺さぶられた。それぞれの場でそれぞれの「分をつくす」名もない人たちの営為によってこの世界は成り立っている。自らの努力の成果を知ることなく、讃えられることもなく、死んでいった膨大な人たちに対する心からの敬意がここに込められていることを、ひしひしと感じた。
この物語には実にたくさんの人が登場するけれど、ストーリーのためだけに存在する人がいない。みんな、その人として生きている(こういうところも含め、宮部みゆきさんとの共通点をよく感じる)。セント・ポール大聖堂のミスター・ハンフリーズ、教区牧師のグッドさん、サー・ゴドフリー、ダリッジの看護部隊の面々…、忘れがたい人たちばかりだ。
ラストに近づくともう涙をこらえられない。いくつもの別れの場面に泣けて仕方がない。トラファルガー広場でアイリーンがポリーの後ろ姿につぶやく言葉「私たちこれから大親友になるのよ」には、タイムトラベルの切なさが詰まっている。
八年がかりで執筆されたというが、まったく複雑な構成で、しかもそれがわかりにくくないところがすごい。非常に綿密に組み立てられているからだろう。読み返したらいろいろ発見があるに違いない。これも楽しみだが、しばらくはこの余韻に浸っていたい気もする。いやあ満足しました。 -
Posted by ブクログ
オックスフォード大学史学部タイムトラベル・シリーズの第三長編(の前編)。
であることを、解説を読んで初めて知った。
(コニー・ウィリスをはじめて手に取った)
2060年のオックスフォード。タイムトラベル技術を駆使して、過去の出来事を実地観察する「航時史学生」たちが主人公。
本作は第二次世界大戦下のイギリスを観察するために、3人の主人公がそれぞれの時期、それぞれの場所に赴く。
規則として、滞在期間を厳密に決定したうえで過去に赴き、定期的に報告のために現代に戻らないといけないし、仮に設定期間を過ぎて戻らない場合は、回収部隊がやってきて強制的に連れ戻されるという基本ルールがある。にも関わらず何かのトラブルが発生し3人とも過去に取り残されてしまう・・・。というのがあらすじ。
しっかりと一本筋の通ったタイムトラベルの設定が、作品世界をしっかり支えているし、ミステリ的な要素も含む本書は実に読みやすい良質なエンターテインメント。
また、第二次大戦下のイギリスと人々を生き生きと描き、史学生になったかのような気分で、当時の時代の空気を感じることができる筆力も大したもの。
3人の視点や場面が細かく切り替わり、ついつい続きが気になってぐいぐい読ませるストーリーテリングも魅力的だし、更には謎が謎を呼ぶ日付で最終章で本作は終わり、後編が気になって仕方がない。
SFを読むのは久しぶりだけど、あまりガチガチのSFではなく非常に親しみやすく楽しめる良作。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読む前から「オールクリア」という続編が未刊であることを知ってはいたが..... ああ,でも止まらない.止められない.
「犬は勘定に入れません」の前半はとても読みにくかったが(とは言っても,それが作者の狙いでもあるのだが),あっという間に読み終えてしまった.ロンドンの中の話が多いので,何となく通りや駅の位置関係がわかる,って言うのも理由かも.一見ハイティーン向けのようにも思えるんだけど,全然安っぽくないんだよね.ポリーの気がかりは一体何なのか? 53章で登場したのは誰なのか? 「オールクリア」,本当に4月に出るんでしょうな? じゃないと怒るよ,ホントに. -
Posted by ブクログ
ネタバレタイムトラベルが歴史研究目的で行われるようになった21世紀中盤。
オックスフォード大学史学部の学生、キヴリンは14世紀の農村に実習で赴いた。しかし、到着直後、彼女は病に倒れてしまう。一方21世紀でも謎のウイルスが蔓延し始めた。二つの時代を席捲する病。キヴリンもまた、「ドゥームズデイ」(世界の終わり)というべき悲劇に直面する……
「犬は勘定に入れません」のほうを先に知っていて、この本に興味を持ち読みました。すばらしい物語でした。
この物語のタイムトラベルシステム、「ネット」はタイムパラドックスを許容しません。歴史家たちは個々の人間に関わることはできても、歴史の大きな流れを変えることはできません。この物語を読んでいるうちに、自分もまた、14世紀の人々と紙という「ネット」を介しているのだと思いました。懸命に生きた。けれども物語の結末は変えられない。それがこの物語を読んで感じる悲しみなのではないか、と思いました。
"Requiem aeternam dona eis,et lux perpetura luceat eis."
(下巻、483ページより引用) -
Posted by ブクログ
上巻に引き続きタイムトラベルしまくりの下巻である。主人公達の思惑通りにはことが進まずにあわや歴史は変わってしまうのか?と思いきやそんなことは無くきっちり丸く収まり“主教の鳥株”は見つかる。結局時間の流れは変化を嫌い、自ら修正しようともするわけである。作中で述べられている通りの職業の人物が犯人か?と思いきや実は意外な人物が犯人でしたというパターンでミステリとしても秀逸。タイムトラベルSFであり、歴史小説であり、ミステリであり、恋愛小説であり、コメディであり、あらゆる要素を含んだエンタメ大作である。登場人物(犬1匹と猫1匹含む)も皆愛着の持てるコミカルな造形で魅力的である。上巻前半の読みにくい部分(主人公がタイムトラベルのしすぎで意識が朦朧としているのが原因)を突破すればその先はただただ楽しんで読むだけである。ぜひともあらゆる人々に薦めたい作品だ。
本作にみられるようなタイムトラベルものは世の中に数多く存在し、どれも工夫に富んだものである。同じ時間軸でタイムトラベルするものもあれば多世界を移動するものもある。純粋にSFとしての作品もあれば、ミステリやその他のジャンルと融合したものもある。人間は今のところ時間の流れに逆らうことはできず現実を見つめ現在を生き未来に進むしかない。自分の過去にたいして全く後悔していない人間などおそらく皆無だろうし、誰しも「あの時こうすればよかった」と思うことがあるはずだ。ゆえにタイムトラベルものは書かれ続けるだろう。少なくとも皆、時空間移動に対して興味をもっているはずだ。国民的アニメであるドラえもんでもタイムマシンは人気の秘密道具であり続けている。
ところで実際にはタイムトラベルは実現可能かというと科学者達(キップソンら)は少なくとも我々が生きている時代には実現不可能だと述べている。結局夢物語でしかないのかと思いきやつい先日ニュートリノが光速を超えたとの報告があった。もしこれが事実ならばアインシュタインの予測をくつがえし、極端な話、タイムトラベルが可能になるかもしれない。もちろんそんなことはやっぱり難しいのだろうがしかしそんなエキサイティングな時代に我々は生きていることに感謝したい。SF作家はタイムトラベルものを書き続けてほしいし、物理学者には時空学を研究し続けてほしい。そして願わくば時間旅行が可能になる日を拝みたいものである。 -
Posted by ブクログ
時は2057年。いくつか制約があるもののタイムトラベルが可能となった時代。オックスフォード大学はコヴェントリー大聖堂の復建に協力している。同大学史学部の院生である主人公のネッドは復建に必要な”主教の鳥株”をみつけるように命じられ過去と現在を行ったり来たりするのだが疲労困憊で倒れてしまった。ちょっとした休暇をとるために19世紀ヴィクトリア朝に軽い任務とともに派遣されたものの任務を忘れたままで行動していたら時空連続体の存亡をかけて奮闘することに……。
主軸はタイムトラベルSFであるがミステリであり恋愛小説であり歴史小説でありユーモア小説でもある。下巻のレビューで改めて感想を述べます。