小坂恵理のレビュー一覧
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筆者は社会学者。アメリカの牛の屠殺現場、屠殺工場と言える場に労働者として入り、克明にその様子を描く。それは想像以上のむごい世界なのだが、筆者の目的は、都合の悪いものを隠蔽することで世界が成り立っていることを示すこと。ゆえに屠殺工場の説明が、ただの残酷描写であるだけでなく、それが意味するものにまで及ぶ。そしてこの工場自体が最初の一番つらい部分、個性を持った命ある動物から均質化された工業製品になる部分は徹底的に隔離・隠蔽されて成り立っている。この世界そのものなのだ。都合の悪いことは隠蔽することが文明化である、人々は暴力のもたらす恩恵を享受しながら文明人でありつづける。筆者はそれらを可視化する『視界
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ネタバレ「計測」という独特なテーマを軸に、それが人間社会に与えてきた影響の歴史を追う本。
本書で私が特に印象に残ったものの1つに「計測は抽象化のツール」であるという記述。それまで「腕の長さ」や「人の声が聞こえる距離」としてある意味、主観的に測っていたものをメートルなどの計測単位を置くことによって、一段高い抽象度であらゆる対象のものを測ることができる。
それゆえに、計測単位は国家を形成する際、「1つの法律制度」を整備することと同様に「1つの計測単位」を浸透させることは極めて重要であると。
そんな感じで、計測が人間社会に与えてきた歴史を解きほぐしていく本書だが、終盤で紡ぎ出されるメッセージは、現在当た -
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江戸時代の武家の師弟に対する教えの厳しさを改めて思いました。
家名を汚すこと無く人生をおくるための男子・女子を問わない決め事。
それに理屈無く従うという厳正なルール。会津藩の「什の掟』の最後、「ならぬことはならぬ」を思いました。
越後長岡藩は、徳川の三河以来の家来、牧野家であったということは、司馬遼太郎の「峠」で知っていました。
河井継之助と反駁した筆頭家老の娘さんであったということです。
平時であれば、依然として筆頭家老の家筋であることは、徳川家康からいただい由緒あるもののくだりが出てきていました。
そういう家系の武士の娘に対する教育、とにかく一貫しています。
だから、激動の時代、数奇な運命 -
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【スターリンにとって軍事化は、マーシャル・プランの副産物だったが、トルーマンにとってNATOは、計画実行に伴う予想外の悔やまれるコストだったのである】(文中より引用)
アメリカ外交の成功譚として語られることも多いマーシャル・プラン。史上空前の「寛大な」外交政策はいかにして生まれ、対抗するソ連にはどう捉えられていたのか。著者は、米外交問題評議会のシニア・フェローを務めるベン・ステイル。訳者は、重量級の作品を数多く翻訳している小坂恵理。原題は、『The Marshall Plan: Dawn of the Cold War』。
圧巻の一言。今日まで続く誤算と誤解の積み重ねを、マーシャル・プラン -
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この本を読もうと思ったきっかけは、ワシントン・インディペンデント・レビュー・ブックスの「もしも環境の現状について誰もが読むべき本を一冊選ぶとすれば、それは本書だ」という推奨文だった。しかも「感情に流されず、ユーモアを交えたわかりやすい文章で、気候変動について説明する偉業」とまで書かれている。こんな風に言われたら、思わず期待してしまうではないか。実際、環境に関する書籍の多くは、数字やデータの満載と専門用語の多用が読書意欲のブレーキになることが多い。ノルウェー科学文学アカデミーのメンバーである筆者ホープ・ヤーレンは、自らの幼少期の思い出と温暖化が進んだ現代の違いを、ワールドワイドなデータを駆使しな
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ネタバレ幕末の長岡藩と言えば河合継之助が有名だけれど、筆頭家老の稲垣家に生まれたお嬢さまが著者、杉本鉞(えつ)子だ。
最も彼女が生まれたのは維新の後だけれど。
しかし、戊辰戦争を捕虜としてではあるけれども武士として生き抜いた父と、万事に控えめで奥ゆかしいが芯の強さを持った母、武家の教示を最後まで持ち続けて祖母などに育てられた少女は、雪深い長岡でのびのびと少女時代を過ごし、武士の娘としてのたしなみと、変わりゆく世界への興味と、神仏や祖先への畏敬の念を持って成長していく。
一度もあったことのない男性と結婚するのは、当時の女性には当たり前のことだったが、当たり前でないのは相手がアメリカ在住の日本人で -
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AI(人工知能)の持つ根本的な役割は「予測」を安上がりに実行することであるとして、それが今後の社会に与える影響を解説した一冊。
AIは、膨大な量のデータを様々に組合わせて瞬時に分析し、より精度の高い予測を実現することで、ビジネス上の不確実性を減少させ、様々なトレードオフを解決するため、企業の組織構造やビジネスの境界に変化をもたらすが、AIはデータが少ない領域や例外的な処理は不得意であり、さらには予測以外のタスク(判断や行動)についても、その大半は汎用的なスキルを持った人間が担うので、人間は機械によって駆逐されるのではなく、それぞれの得意分野によって分業することが可能である。
また、AIには -
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ネタバレ軽々しく個性ということなかれ
一つの基準で比較することを奨励したおかげで、一次元的思考に偏るようになってしまった。
人間の才能にはばらつきがあるという事実を受け入れ、子供のそれぞれのプロファイルを評価し、長所を生かすための方法を探してあげる。
行動は、特性、状況のどちらかで決まるわけではない。
特別なコンテクストでどのように行動するのかを理解する。
平均主義に騙された私たちは、正常な進路なるものがあると思い込み、成長の道が一つだけ存在すると信じて疑わない。
みんなと同じ場所でみんなよりも秀でなければならない。こんな窮屈な思考パターンに陥ってしまう。 -
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ネタバレこの本はすごい!!!
目からうろこが落ちるどころが、うろこをひっぱがされる感じ!
データをとって、「これが平均値」となると、それがマジョリティの中のマジョリティ、母集団を代表する存在である、と思うじゃないですか?
でも平均に一致するものが何もなかったり、あるいはその+/-の範囲に入るものがすごく少ないケースは多々あるという話なのです。
1940年代のアメリカ空軍は墜落事故が多発していましたが、その原因がコックピットの使いづらさだと判明。当時「パイロットの平均体形」に基づいて設計されていたものの、1950年に改めて身長、胸回りや腕の長さなど10カ所の平均値を割り、10項目すべてにおいて平均範囲 -
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トルーマンからアイゼンハワー、ケネディ、ジョンソン、ニクソンまでの大統領によるアメリカの歴史が核の問題を中心に語られる。どのように冷戦が始まったか、ソ連との関係、軍産複合体の陰、アメリカの中南米、ベトナムへの介入などアメリカの帝国主義的、負の側面が暴かれる。ケネディとフルシチョフによるキューバ危機は本当に核戦争一歩手前だったし、その後も危険な状態はいくらもあったことが明かされると、改めて運の良かったことに驚かされる。アメリカにとっては、中南米、アジアは征服されるべきアメリカの権益範囲だとしか考えていないと感じる。その一方でベトナム反戦運動が起こり、サイゴンは陥落し、最終的にはニクソンが辞任に追
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■キラー・クエスチョン
A.あなたの顧客は「誰」か
・顧客が私たちの製品を選ぶ時の基準は何か?
・私の製品に不満を持っている相手は誰か?
・将来の顧客はどんな基準で購入を決めるか? など
B.あなたは「何」を販売しているのか
・顧客の煩わしさを取り除き、ユニークな恩恵を新たに提供するためにはどうすればよいか?
・私の製品の意外に不便なところは何か? など
C.あなたの組織はどのように機能しているのか
・私たちの業界と似ているのはどの業界か。そこから何を学べるか?
・私の製品を購入する経験のどこが気に入られないのか?
・新しい顧客を確保するためには、どんな販売アプローチを考案する必要がある