いまのところ今年いちばん面白かった本。タイトルが軽薄なビジネス書のように思われるが、出典明示度が高く骨太。原題はTHE END OF AVERAGE How We Succeed in a World that Values Samenessなのでビジネス書感はある。単純な平均だけでは物事は測れない、環境(コンテクスト)で事象の起こりやすさが変わる。そもそも平均して人間の特質を評価しようとすること自体が発明であり、企業が利益を追うことに適合していたのでそのまま広く使われるようになった。学習においての偏差値が使われるのも、差を見出したいからであってそれが本質かどうかは別の問題である。テストの成績が良い人は、そのテストが良く解けた人であって、他の優秀さとは全く相関がない。当たり前だけれども、あらためてそこに気付かされた。
手の長さや身長体重など様々なパラメータを平均した場合に、すべてが平均的な人は存在しない。得点力が優れた選手だけを集めたバスケットボールチームが弱体化した。平均からとても離れた優秀な戦闘機パイロット、など事例が多く読みやすい。
筆者は学業において平均から離れていたため、非常に苦労して大学教授になった。成功するためには個性を活かすようにすること、というあるいみ平凡な結論ではあるが、そこにしっかり理由があった。