野地秩嘉のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
古き良き昭和の時代に活躍した人の生き様を描いたルポ。
解説にもあるように、社会の裏側をあぶり出すルポはあるけれど、
善良な人に焦点をあてたこの本はとても魅力的です。
儲けるためとか出世のためではなく、
そうせずにはいられないからする。
サービスの真骨頂ですね…。
サービス業を、仕事、義務としてではなく、
その人の生き様として、そう行動する。
素敵な生き様がたくさん詰まっています。
好きな章は、
ロールスロイスを売り続ける男
ヘップバーンも虜にした靴磨き
です。
前者は、高級車を売る仕事をしているからといって、自分もお金持ちになったような気にならず、一線を引いてお仕事をすること。
若いお客様も、長い目で見て接客されていること。
言葉遣いは丁寧に、身だしなみはきれいに。
家族を大切に…
とても気品のある方なんだろうなと伝わってきます。
後者は、靴を愛し、丁寧に丁寧に、磨き上げ、多くのお客様を魅了されているシューシャインサービス。
だけど、靴を受け取りにこないお客様には、少し厳しい見解を持ち合わせていて、
それも靴に対する確固たる信念ゆえ。
自分のセオリーを持って、生きる人の生き様が、こんなに美しいものだなんて。
見習って、私も生きたい、と気を引き締められる本です。 -
Posted by ブクログ
昭和の、古き良き、もう息も絶え絶えの、幾つかのサービス業のプロにスポットを当てたルポタージュ。
コツコツと一つの仕事をやってきた人の人生が書かれていて、こんなところにスポットが当たるのはとても好ましいと思うし、記録として残しておきたいと私も思った。ただ、私には筆者の情緒的な文章が、随分と鼻についたけれど。
さて、何年か前に読んだのなら、私も同じように違う場所で、ともすればスポットのあたりにくいところでコツコツと一つの仕事を極めたいと、大きく共感したと思うのだけれど、今の気分では大きな共感はなかった。むしろ、それでいいのかと疑問に思った割合の方が多かったように思う。取り上げられているいずれのサービス業も、今はもう明らかに廃れていて、業態に寿命があることをどうしても感じてしまう。ここでは業態の晩年でもそこでとどまる姿がしばしば書かれているけれど、それは美しくはなく、むしろ悲しいことなのだと思ったのだ。
私もワークシフトの呪いにかかっているのか。そんなことを考えずに、ただ美しい話として読めばよかったのか。 -
Posted by ブクログ
ニューヨークは美術館の宝庫だ。
本書を読む限り、その拝見には美術作品は時代の最先端の象徴だから、であるらしい。
日本人的感覚からすると、納得はできてもいまいちピンとこない。
しかし、本書を読むと、日本人とニューヨーカーでは美術作品とのふれあい方に違いが在るようだ。
日本人が美術館に行く目的は、教養を高めるだとか、少なくとも文化的で非常に高尚な目的である。それに対して、ニューヨーカーは美術作品を楽しむことが生活の一部なのである。
本書の前半は、日本を代表する画家である千住博氏によるプロフェッショナルの目線での美術作品の楽しみ方の紹介となっている。
ニューヨークの2大美術館であるメトロポリタン美術館とMoMAの収蔵作品を通じて、作品を鑑賞するコツを伝授してくれる。
千住氏によれば、そのコツとは
「絵は単に眺める物ではない」
「絵は作者自身を物語るもの」
「絵を見る時は、画面を『読む』ことだ」
とのことだ。
美術作品の完成度を観るのではなく、それを作るにいたった作者自身と向き合うことがコツなのだそうだ。
ちょうど、ユニクロの柳井社長が、読書について「本を読むとは書いた人と対話すること」と考えているのと同じことだろう。
だから、作品を一度観るだけでなく、美術館に何度も足を運び、絵を見続けることになるのだそうだ。
そして本書の後半は、一般人としての目線で野地氏が千住氏から伝授された「コツ」を実践する。
最先端の現代美術が集まるニューヨークのギャラリーで、千住氏は絵と対話することができたのだろうか。
観光ではなく絵を見るためにニューヨークに行きたい、旅心をくすぐる1冊である。