*浅見光彦シリーズ・レビュー
そもそもインパクトはない。
トリックも大したことない。
キャラも浅見を含めて色が強いわけでもない。
会話だって地味で武器にはならない。
でも、面白い。
それが浅見光彦シリーズです。
このシリーズの最大の特徴は探偵役の浅見光彦と読者が情報を共有し、共に真相に迫っていく『冒険』にあります。
解くミステリではなく、読ませるミステリ。
作りは全く無関係に思われる出来事から浅見が動き出し、調べていくうちに事件が二転三転し、読者も犯人が誰か分かる展開を辿り、無事に浅見が解決するというオーソドックスなものです。
でもその話の転がし方が上手いのです。
まず非常に丁寧に転がしていくので置いていかれる心配が無い。話と話の空きがあるので時間を置いて読むと誰が誰か度忘れする心配はありますが、それでも浅見と一緒に事件を整理して行くので情報の漏れが少ないのです。
デメリットとして犯人が分かってしまうという欠点があれますが、それは話の流れで検討がつくのでどうやって追い詰めるか、どうやって証拠を押さえるか、そういった部分に焦点が移行するので心配ありません。
そのおかげで事件がゆっくりと浅見によって紐解かれていくので、途中多少ダレても読み進めていってしまう節があります。
そして一番意外に思うのは犯人でも展開でもなく、浅見の行動でしょう。
彼自身がぶっ飛んだキャラではないのですが、ストーリーを引っ張っていく探偵としては十分に機能しています。もし情報Aが目の前に現れたとき、読者は情報Bを読み解くかもしれません。ですが、彼は情報Cを読み解くのです。これをずっとひた隠しにされると恐らく解くタイプのミステリになります。
しかし即座にその情報が浅見によってバラされるため、読者は予想外のことに驚き引き込まれます。
加えて活劇要素として浅見光彦には黄門様の印籠があります。
浅見必殺の印籠、それは……兄が警視庁刑事局長であること。
探偵役の浅見は一般人のフリーライターとして事件に巻き込まれていくのですが、時として事件に近すぎるため警察に疑われたり、協力を必要とするときがあります。
そんな時に(本人いわく申し訳ないそうですが)威力を発揮するのが兄。浅見の正体(刑事局長の弟)が分かるとさっきまで素人と舐めて掛かっていた刑事が手の平を返してヘコヘコしだす様は爽快です。
あと忘れてはならないのが地味にあるラブ・ロマンス(笑)
浅見光彦。彼は良い所の坊ちゃんで一人身です。いわば独身貴族。
そんなちょっと抜けていて常識のない男が、事件に巻き込まれた女性の手助けをする。
もう王道ですね。毎度毎度この恋愛が中心になるわけではありませんし、ヒロインポジションが居ないときもあります。けれども、そういう要素もある事でまた違った楽しみを提供してくれていて、途中で事件が停滞してもカバーしてくれる時があります。
狙って楽しむものではないですが、これも話を盛り上げるのに一役買っているのは事実でしょう。こういう恋愛要素はラノベに近いかもしれませんね(ただし微弱
私としてはこのちょっとした驚きと恋愛要素、そして実態の見えてこない事件の全容を少しずつ暴いていくのが浅見光彦シリーズの醍醐味ではないかと思っています。
気軽に読む一冊としてこのシリーズをオススメします。
ただし! 当たりハズレが存在するシリーズなので、購入するときはレビューの確認をお忘れなく。