小林泰三のレビュー一覧

  • 海を見る人
    SFは読み慣れないところもあって、作中の理論にはほとんどついていけなかった。
    ストーリー自体は小林泰三らしい。個人的には「独裁者の掟」と「キャッシュ」が好きだった。「独裁者の掟」は読み進めて総統の背景が分かってくると途端に無機質な人物だった総統の人間らしさが伝わってくる書き方がうまいなと思った。
  • わざわざゾンビを殺す人間なんていない。
    世界的に免疫力の低下により発症されるゾンビウイルス(正確にはタンパク質で構成された感染症の病原体である、と作中で説明されている)が蔓延した物語の舞台で発生した密室殺人事件を八つ頭瑠璃という女性の探偵が解決の為尽力するミステリー小説。
    非現実的な存在に妥当な根拠を与え続けるので説明が冗長になっているの...続きを読む
  • 失われた過去と未来の犯罪
    突如訪れた「大忘却」によって人類は新たな情報の記憶能力を失った。 覚えてられるのはごく最近の出来事である短期記憶と体に染み付いた手続き記憶だけ・・・。 遠くない未来、人間の記憶は体に埋め込む機械型のメモリーに委ねられた。 ここに一つのメモリーがある。 体は事故で失ってもう無い。 生きた人間にこのメモ...続きを読む
  • 天体の回転について
    ハヤカワ文庫から出てる小林泰三の短編ですね。レーベル通りSF寄りの作品が多めです。
    後に失われた過去と未来の犯罪 や 記憶破断者になるような記憶の扱いが見られファンには嬉しい作品かもしれない。ミステリーとしては、重力が無いのが普遍的な未来の世界で実は重力のある地球が舞台でしたという叙述トリックを成立...続きを読む
  • ティンカー・ベル殺し
     いわゆる「メルヘン殺し」シリーズ第4弾。アリス、クララ、ドロシィときて、ティンカーベル殺し。相変わらず、地球とアーヴァタールが存在する世界が存在する。アーヴァタールが死亡すれば、地球上で、アーヴァタールに対応する存在が死亡し、地球上で死亡しても、「夢」になってしまって、アーヴァタールが死亡するわけ...続きを読む
  • 失われた過去と未来の犯罪
    色不異空、空不異色、色即是空、空即是色。本物と幻を区別する方法がないのなら、本物と幻は同じものだと考えるしかない…そんなめちゃくちゃな!(でも「阿・吽」で般若三蔵も「目に見えるものも記憶も全ては虚妄」って仰ってた…)
    人とは記憶なのか、魂とは記憶なのか。ある人の記憶を他者に入れたら、その人を定義する...続きを読む
  • ティンカー・ベル殺し
    言葉遊びの相手が、ビル以外にもう一人増えて、今回はビルが多少まともに思えてしまいました(笑)。
    今までのお話も、殺人のハードルが低かったですが、これを読んでしまうと、まだまだだったんだなと思ってしまいます。殺人事件の容疑者を探しているはずなのに、事情徴収がてら殺していくっていう、矛盾を突き進む感が凄...続きを読む
  • クララ殺し
    昔読んだ「アリス殺し」の続編。

    タイトルを聞いてモチーフはあの作品かと思ったらまさかの知らない作品ですっかり騙された。ホフマン4作品がモチーフとのことだが、その1作品があの有名な「くるみ割り人形」であるのは知らなかった。

    前作より複雑で、キャラクターを理解するのにちょっと大変だった。
    地球の世界...続きを読む
  • ドロシイ殺し
    アリス殺し、クララ殺しに続く3作品目。
    前2作より、事件が起こるまで長かったような気がしました。が、その分世界観に慣れてから考察し始められたのかな、とも思います。
    そして、前2作よりもミステリー自体は簡単で、今まで読むのが大変だったような方には、読みやすくなっていると思います。
    ただ私は、今まで通り...続きを読む
  • わざわざゾンビを殺す人間なんていない。
    ゾンビウイルスがまん延した世界。
    描写がグロテスクで飛ばし読みしてしまったところもありましたが、遺体活性化現象、活性化遺体とゾンビという言葉を用いず、これ以上うまい表現があるだろうかと変なところに感心してしまいました。

    ゾンビウイルスが世界に与えた影響、経済や特に食料問題などのことも細かく設定とし...続きを読む
  • 百舌鳥魔先生のアトリエ
     初出1998(平成10)年から2014(平成26)年辺りの作品を収めた短編集。
     この作家の本は3冊目だったろうか。グロ趣味が何となく面白いと思っている。
     今回は、「インターネット時代の文学」という感じが凄くした。もはや言葉の芸としての文学は、この文学には存在しない。言葉なき文学、とも言える。言...続きを読む
  • 再生 角川ホラー文庫ベストセレクション
    いやあ……怖かった。
    ずーっとゾワゾワ落ち着かない話に、オチで心臓が凍りそうになった話も。さすがベストセレクション。
  • ティンカー・ベル殺し
     まず小林先生のご冥福をお祈りいたします。

     不思議の国を探し続けて、三千里、相変わらず蜥蜴のビルは彷徨っていた。今回、彼が紛れ込んだのはネヴァーランド。
     
     そこでは殺人鬼さながら、ピーター・パンが海賊や仲間である迷子、赤膚族・陽性を気ままに殺していた。
     殺伐としたその島へ約束を果たすべく戻...続きを読む
  • ティンカー・ベル殺し
    このシリーズの世界観が好きで、文庫化をずっと楽しみにしていました。途中から違和感はあったのに、気付けなかったことが悔しい。もう一度最初から読みたくなる一冊です。
    小林泰三先生が逝去されたので、惜しくもシリーズ最終巻です。巻末に書かれているティンカー・ベル殺しの後の構想を読んだだけでわくわくしたし、心...続きを読む
  • ドロシイ殺し
    今一番好きなシリーズの3作品目

    面白かったけど、1,2作品名ほどの衝撃はなかった
    魔法の使える3人への漠然とした不安感が、好きだった

  • 未来からの脱出
    最近自分が老人でなくとも、今覚えていることを、これからも覚えていられる根拠がなくて怖くなる。昔より記憶しておくことへの集中力が無くなった気がする。主人公達はおよそ100歳の高齢者なので記憶があやふやでも当然のように思えるが、身体と記憶以外はどこか若々しく違和感を感じた。協力者のメッセージを受け取り、...続きを読む
  • 代表取締役アイドル
    地下アイドルの女の子が、ひょんなことからちょっと大きな企業の社外取締役になるお話。創業者一族によるワンマン経営で、社風はとにかくブラック。
    主人公の活躍があまりないのが残念。そう甘くは何だろうけど、一発逆転のお話であってほしかったかな。
  • わざわざゾンビを殺す人間なんていない。
    ゾンビウイルスが世界中に蔓延し、死ぬとゾンビになるのが一般化した世界を舞台にしたミステリー。被害者が密室でゾンビ化し、どうも他殺らしいという特殊状況の密室殺人ミステリーです。ちょっと状況説明に凝りすぎなきらいがありますが、ミステリーのロジックはしっかりしています。
  • 未来からの脱出
    至れり尽くせりの福祉施設(のような所)からの脱出を目指す老人たちの話。前半は状況が見えずに少しモヤモヤとしますが、主人公が脱出に成功して以降はなかなかに壮大なお話になります。最後ちょっと尻切れ感はあるかも。
  • 杜子春の失敗~名作万華鏡 芥川龍之介篇~
    芥川龍之介の小説の登場人物と、主人公たちが様々な手段で交信する、ちょっと奇妙なお話です。なかなか面白い試みだと思います。楽しく読めました。ただし、人食いっぽい描写もあるので、要注意です。