小林泰三のレビュー一覧
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ネタバレ『アリス殺し』に続き、ヤスミン作品十作目。未収録作品集。一篇ずつ感想を——。
①「玩具」…その名の通り、デビュー作「玩具修理者」関連の一篇。なんと妖しくエロティックなのか…。
②「逡巡」…道中のどうもなんか可笑しいぞ!という思いがオチで「嗚呼…」と納得した。
③「侵略」…この今生きている自分さえ、本当の自分かどうかとても不安になる。そんな一篇。
④「イチゴン」…うーん、特にないかな…。
⑤「草食」…さまざまな暗喩がありそうだが、これも特にないかな…。
⑥「メリィさん」…みんなが知っている怪談話を現代風にアレンジしたもの…かなぁ。甚兵衛のお化けへのたいおうには笑いました。
⑦「流れの果てに」…小 -
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めったにしないことだが、シリーズ物の途中(3作目)から読んでしまった。もともと『オズの魔法使い』が好きだったのと、映画『ウィキッド ふたりの魔女』を観た勢いで。といっても、独立した物語として読めた。ただし、オズの世界観は分かっていた方がよさそうだ。
全体的に会話文が多くて読みやすい。特に、米国のアニメ映画に出てきそうなトボけたキャラクター同士の会話が面白い。とはいえ、過激な描写もあるので、子供には向かないかも。
結末は「意外な殺人犯」というミステリ小説としての驚きよりも、「独裁によるユートピアは成立するのだろうか?」という疑問が強引に回収されてしまったことの方が衝撃だった。反則的ではあるが -
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前作のアリス殺しと比べてだいぶ複雑なようなきがしました。それに加えて、前回は広く知られている「不思議の国のアリス」だったのに対して、今回はアリスほどメジャーなものではないので、広くおすすめできるかと言われると少し難しくなってしまいます。ただ「そうだったのか!」と思わせる仕掛けが本当に面白いです。トリックが複雑な分、完璧に推理はなかなか難しいものではあると思いますが、泰三先生の癖を理解しつつ推理してみると、「やっぱりそうだよねぇ」と思う部分があり推理が捗ります。ただ、「やっぱりそうだよねぇ」と思いながらも、実は自分でその線はないなと思ってたパターンの推理が当たっているんですよね。全体がこうである
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数十分前までの記憶しか思い出せないはずなのにある男に体を触られた途端ニ時間前の記憶が突然生じるという矛盾した状況に、この男は危険だと主人公だけが気付く。という展開がアツい。
以前も書いたけど小林泰三作品の登場人物はどんな絶望的な状況でも最善の行動を取ろうとし続ける所が本当に格好良いんだよなあ…
記憶はないけど自分ならきっとこうしたはず。という過去の自分を信頼して行動するブレなさが凄く魅力的。ブレなさすぎて、あっけらかんとしすぎて、軽薄とも取れるかもしれないけど、そんな所もかっこいい。
そんな冷静でかっこいい主人公仁吉に感情移入すればするほど、ラストのどんでん返しが効いてくる。
本作以外で -
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今回も流血なんてお上品な言葉では表現し切れないシーンが満載で非常〜に人に勧めづらい(通常運転)
絶望的な状況の中、冷酷とも言える程に今出来る最善の行動を取り続ける登場人物達に作者の美学の一端を感じる。
かと言って、必ずしも救われるとは限らないのが小林泰三作品だけど、解説で我孫子先生が使われていた[情]と[理]という言葉を借りるならば『わざゾン』は限りなく[情]に寄った作品であり珍しくハートフル(?)な結末を辿る。
『アリス殺し』で作者のファンになったのでアリス〜のトリックやクララ〜の残酷表現を彷彿とさせるシーンには興奮した♡
メルヘン殺しシリーズが好きなら本書もきっとハマるはず。