小林泰三のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
短編集。
「海を見る人」「門」を再読。
いくつもある箱庭的な世界観の中で、やはりこの2作品は素晴らしい。
「海を見る人」は、場所によって時間の流れが異なる世界でのひと組の男女を巡る物語。悲劇的な内容なのだけど、恐ろしいほど綺麗な結末に身震いする。
原因は結果となり、結果は原因となる。
そんな作品「門」は、壮大な世界観の片鱗を示しつつも実はとても純粋なラブストーリー。もしくは宿命の物語。
ハードSFと称されるとおり、その科学的描写の大部分を理解することはできない。でも、奇抜な設定は読者の想像力を刺激するに足るものだし、卓越した結末は読者の心を見事に射止めるものがある。
解りづらいから好みの分かれる作品だけれど、噛み締めるほどにその良さを味わえる作品です。 -
Posted by ブクログ
短編7作すべてにはずれがまったくなく、すべてが最高に面白い。
『目を擦る女』
ある女性が、引っ越してきた隣に住む女に、「この世界は自分が見ている夢だから、自分が目覚めると消えてしまう。現実の世界は酷い有様になっている。」とおかしなことを言われ、現実と夢との区別がつかなくなっていく。
女が現と夢の両方の世界に対して、感想を述べるような場面があるのだが、両方に共通した評価がひとつだけあった。これに気づいた瞬間、物凄く怖くなった。
『超限探偵Σ』
探偵の友人の視点で描かれるミステリー。
そして、読み終わるとこの話がミステリーではなかったことに気づく。
そんなのありか?とも思える話を非常に面白く描いてあってすばらしいと思った。
『脳喰い』
エイリアンとの接触を描いたSF。
最強のエイリアンに立ち向かう主人公たちの結末は、《心底恐ろしいと感じるハッピーエンド》
『空からの風が止む時』
前半が重力が減少し始めた土地でのファンタジー。
そして、後半はSFなのだが、このファンタジーとSFとの繋がりが非常に興味深く、よく考えられていた。
『刻印』
地球にやってきた体長2メートルの蚊型エイリアン(雌)と人間の男との純愛小説。
結末にはSFらしさが見られるが、これはあくまで純愛小説だと思う。
『未公開実験』
タイムトラベルを実現した男が友人に、〈ターイムマスィ〜ン〉を発案したことを理解させようとして、ある悲劇に見舞われてしまうコメディ。
この作品の会話は非常に面白い。その笑えるSFコメディの結末は恐ろしかった。
『予め決定されている明日』
読むと、私たちが生活している世界が3次元であることの理由として考えられるひとつの仮定を見出すことができるのではないだろうか。
通常はコンピュータを使う必要のある演算を算盤を用いて計算させられる理由は何なのか、、、 -
Posted by ブクログ
11の物語の短編集
5ページで終わるほど短いものもあり、とても読みやすい本でした。
小林泰三にしては設定が普通な感じもありましたが、「さすが!」と思わせる場面もあり、十分に楽しめました。
『脳髄工場』
周りのほとんどの人々が脳髄に機械をとりつけ、極端な感情を抑制されている世界で、自由意思を尊重し、機械の取り付けを拒んでいた少年の見た事実は少年を落胆させ、少年の人生を大きく変えてしまう。
『友達』
ひ弱な僕が想像した強い僕。彼に名前をつけ自分と彼との区別をし始めた頃から彼と僕の関係はおかしくなり始める。
『停留所まで』
幽霊の出るバスに間違って乗り込んでしまったわたし、、
『同窓会』
同窓会に現れたその場に居るはずのない人物の招待は、、、
『影の国』
カウンセラーを営んでいる主人公が、ビデオテープの整理中に見つけた奇妙な男の記録。彼は何者なのか、どうして彼のことを思い出せないのか。
『声』
偶然拾った携帯電話。かかってきた電話に出るとそれは自分からの電話だった。言われる通りに行動することでどんどんお金持ちになるわたし。ある国の王子と結婚する機会を逃してしまったわたしは過去の自分に電話をかける。
『C市』
世界中から集められた科学者が住むC市。そこではCと呼ばれる未知のものに対する対策が日々研究されていた、、、
『アルデバランからきた男』
科学技術が発達し、人工増加に耐え切らなくなった惑星から逃れてきた男。人間のバックアップをとりその人物を殺すことで人工問題を解決しようとするその惑星から男は逃れることが出来るのか。
『綺麗な子』
ペットや子供のロボットを買えるようになった時代。人々は本物の犬や出産を拒むようになる。そんな時代の行き着く先は、、、
『写真』
心霊写真を鑑定する男の下に送られてきた一枚の写真。その写真を見た者は24時間以内に死ぬと告げる少女。写真に隠された謎は何なのか、、、
『タルトはいかが』
姉宛ての手紙の内容はだんだんと過激になっていく。同棲する女性が人の血で作ったお菓子を作り。それを食べなければ生きていけないというのだ。どんどん酷くなる内容に対して姉のとった行動は、、、 -
Posted by ブクログ
ネタバレ毎回毎回まじかぁ、、、って気持ちになった。こんなはずじゃない!
全て読み終わり、BadEndも面白いよねと思わされた。全部救いがないのもやるせ無い気持ちになるけど。
大好きな櫛木理宇さん、道尾秀介さん、辻村深月さんがいたので購入。櫛木さんは安定に最高、霊的な怖さより人間の怖さを感じた。道尾さんは短い中で2、3回ひっくり返されて気持ちが良すぎる。足元がぐらつく感じが心地よい。辻村さん流石だなーと思った、短いのに読み応えありすぎる。
新名智さんの「今頃、わが家では」良かった。強迫的に不安になってしまう気持ち分かるーっていうのと精神的に病んでるのかなって思わせといてのまさかの!
全て楽しく読めました! -
Posted by ブクログ
近年読んだアンソロの中で一番面白かったです。質が違うなと思いました。ついこの前読んだホラーアンソロを藁とした時、こちらは完全に煉瓦。造りが頑丈すぎて我々は煙突からしか入れない。が、その唯一の入口さえ地獄へ直通ですからね。まったく、感謝して落ちていきたいですね。
特に素晴らしかったのは初っ端わずか8ページほどの恐怖、どこか童話みのある骨、妙にリアルな正月女、それから大トリの人獣細工ですよね。頭抱えました、読後。こんな詰め込まんとってくれよ。俺をどうしたいねん。ほんまありがとうな。
最近のホラーがことごとく好みじゃない俺には、こういうのはもう刺さりすぎて息ができないですね。穴だらけになった心を取り出して見せてあげたいぐらいです。あまりに鋭利。真の名作は劣化しないということを、この傷をもって証明したいぐらいです。