北野勇作のレビュー一覧
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コテコテB級ホラーが読みたくて手に取った本作、予想に反してかなりよかった。
没入型のゲームをプレイするうちに現実との区別がつかなくなっていく…という、最近だと輪をかけて月並みなプロットだけど、顔をしかめる情景描写、滑らかな場面移行の合間にふと「そういえば社内会議が」と正気に戻る瞬間があり、浅い悪夢のようなトリッピーさが楽しい。空中分解しそうでギリギリ筋が通ってるという塩梅が見事だと思う。
つかの間我に返った主人公の"説明"の支離滅裂さには変な笑いがこみ上げてくる。「同僚が個人的に進めていたゲームの開発を一人で引き継ぐことになり、社内会議までに一度クリアしないといけない」という強引なプロットには当初鼻白んだけど、読み終わってみるとこの滑稽なまでに低い解像度も演出に思えてくる。
すこし演出過剰な気はあり、ある程度”付き合わないといけない”というか、小っ恥ずかしく思いながらも擬音含めて逐一舐めるように読んでこそノれるタイプの小説だと思うので、入り込めなかった層から演出がくどいとかプロットがよくわからんと低評価を受けるのはまあ納得。でも僕は好き。 -
Posted by ブクログ
100文字という制限下でSFを綴る。
読んでいて思うのは、この100文字という制限であるからこそ、無限に広がる世界が内包されているのだな、という感覚。
これは、FC時代からゲームに親しんできた世代なら共感してくれるだろうと思います。あの荒いドットで表現された世界に、どれだけ興奮し没入して、描ききれなかったことも描かなかったことも想像し世界を構築してきたことか。
技術の進歩によって解像度が上がったことは素晴らしいことであって、現実との境目があやふやになってきているのは、高精度の限界に挑戦していくということで頼もしいことです。ただ、見えるものに感動するのと、見えないものを補完して感動するのは違った喜びであるのです。
そんな懐かしさに打ち震える100文字の数々でした。
『定期的に襲ってくる人食い巨大怪獣への対策として行われたのは人を巨大化する計画。誰かひとりが巨人となって戦う。勝てるんですか。勝てなくても、今回から食われるのはひとりで済むだろ。あんなに大きいんだから』
『妻と娘が揃って工場へ。おせち料理を作るために行くのだという。それで工場へ、というのがじつはよくわからないのだが、彼らにもいろんな事情があるのだろう。嘘をついてはいないはず。そういう機能はないからな。』
『もともとあそこは高地などではなかった。ただ周囲が沈下していっただけ。そのとき、あそこだけは沈まず、それで周りよりも高くなったのだ。ついでに言えば、もともと我々はヒトではなかった。ただ周囲が以下略。』
ふと思い出した3つを引用。ちょっとしたブラックさが好みなのかな。限られた制限下ではオチとして優秀なのかもしれないな。好き。
感想も100文字で、なんて考えもしたのだけど、全くと言っていいほどにまとまらない。長文でも短文でも読ませる力を含んだ文を書くというのは、相当のことだと再確認です。 -
購入済み
「54字の物語」や「一行怪談」のような超ショートショート集。
SFだけあって星新一先生みたいな話もあれば、ホラーに近い奇妙な話もあって面白かった。
話の前後があれこれ想像でき、世界を拡げてみられるものが特に面白いと思った。 -
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こちらも再読ですが好きです。
ぼんやりと見えてくるとおとかあと春子が暮らす世界の状況はとても厳しいのですが、ほのぼのしていました。「保育園送り迎えSF」。
春子はとても可愛くて子育ての大変さと子どもの成長のきらめきも感じたのですが、とおは何かよく分からないものですし、かあは家の天井と融合している。
とおの、家族を守りたい、を強く感じました。先は長くない、いつかはツケを払わなくてはならない、とわかっていても。
3.11を思わせる大災害で、ラストの、誰かが決めた全てを押し流そうとする描写はあの津波を思わせたのですが、あとがき読むと震災前の2009年に既に書かれていたようでした。
まともなものはひとつもないかもしれないけど、ほのぼのしていて寂しくて切ないお話でした。
かめ系のお話も良いですが、こちら系のお話も好きです。(北野さんから何系なのか言われたけど失念してしまいました…)
桜が生えているのはあたま山なのかな…?「おーい、でてこーい」も嬉しい。 -
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大災害に見舞われ壊滅し、再構築され隔離された『人に化けた者』が生きる町で生きる家族の物語
少し詳しく書くと人間が作り上げた人工巨大人による暴走によって街を破壊し、人工巨大人の超活性細胞が人間を飲み込み、そして人間に呑み込まれ、互いに『生きる』ために再構築された世界で生きる家族の物語です。妻は、暴走による巨大人の『肉の津波』に呑み込まれ、人に再構築出来ず、家の天井の壁と一体した生命体と化します。そんな妻から生まれた春子。"私"はこの小さな世界で、春子の保育園の送り迎えをする。
そう、この物語は『日常』を描いています。
時に生存のため、狐の如く化けた人が、呑み込まれた人間(人間だった、というのが正確な気もするがあえてしない)を誑かしたり…そんな奇妙な世界での日常。春子は、今読んでいる私たちと同じように、成長していきます。
その『小さな世界』は、その外にある『大きな世界』と全く違うのに、です。微笑ましくもあり、切なさも感じました。
3.11直後に出版された事もあり、現実の災害とこの物語を重ね合わせる部分もあるとおもいます(執筆自体はそれよりずっと前というのが驚きですけど)
どこか胸が締め付けられる、切ない物語でした。
『何度もも夢に見て、その途中で目覚めた。あたかも、今からでもやり直せるかのように。』
『もちろん、やり直しなどない。それはわかっている』『いろんなものを真似て、それで化かすのだ。もっとも、それを悪ととるかは人それぞれだ。進んで化かされようとする人間だって、中にはいるだろう。そう、私も似たようなものではないか……あの夜、人工巨大人に家ごと呑み込まれてしまった妻を、同じ方法で修復しようとしたこの私もーー』
『とにかく、ここにこうしている』
この世界は切ない事や後ろめたい事が多い。でも、最後に家族3人で、花見が出来て良かったと思います。この世界で、3人は幸せに暮らす。そんな将来を想像し、切なさと小さな温かさを抱き、
『とぉ、わらってよ』
私は笑った。
と書かれた最後のページを閉じました。
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ヒトが作り出したレプリカメ、カメリのお話。壊れた世界でヒトがいなくなって代わりにヒトデナシが世界を修正する世界。そこのカフェで働いているカメリ。ちょっとした冒険をしたり、ヒトデナシやマスターなどの役に立ったりする。可愛い模造亀。
森見登美彦さんが解説を書いている!と思って手にとって、珍しく解説から読んでみたら面白そうだったので購入しました。読み始めてしばらくして、最高じゃん!と思った。どの辺が最高かというと、まずカメリが喋らないのになんか可愛い。そしてご都合主義的なことも多いもののどうにかピンチを切り抜ける。ヒトデナシたちの会話も楽しい。カメリがよくわからないままいろんなところでなんとなくやってみたら解決したというものが多い笑 とにかく面白かったです。 -
Posted by ブクログ
北野SFの原点にして、一つの到達点であり、後の北野勇作のすべてが集約された傑作物語。
また、2000年代の日本SF復活の幕開けとなる長編の一つ。
10年ぶりの再刊で読み返したけど、10年間に北野勇作の作品をいろいろ読んだので、10年前より作品がより理解できるようになったと思う・
背景レイヤにかなりハードなSF設定があるのに、その前景レイヤに日常とノスタルジーを感じさせる風景、どこかずれているけどほのぼのとした優しい世界。
それを描き出す作者の文章が考え抜かれ、でもなんか読みやすく、擬音の巧みさもあり、淡々と進むけど奥が深い小説。
この風景がカメモリのどこかにひっそりと冬眠して、いつかかめくんが少しの懐かしさとともに夢でもいいから思い出してくれることを思いながら、ラストでまた少しく泣いた。
とにかく読んで欲しい、かめくんのお話です。 -
Posted by ブクログ
不思議な世界観。
いえ、SFの設定としては決して珍しいものではないのですが。
かめくんは「レプリカメ」です。
亀に似せて作られました。
人に混じって生活していますが仕事や生活面で弱い立場です。
作られた存在ですがりんごやパンの耳を買って食べます。
口がきけなくてワープロを使って会話します。
そういったことから、
どちらかというと受身で周囲の人たちを観察している感じ。
でも内面でいろいろな事を不思議に思い、常に考えています。
そんなかめくん視点で語られる世界は静かで優しく、でも切なくて。
そしてよく考えると怖い。
淡々とかめくんの生活が語られていく中で、
底知れない不安と悲劇の予感がじわじわと効いてきます。
表紙の男の子(?)はかめくんだと思われます。
そのイメージで読みました。
でもよく考えると見た目は亀のようで甲羅もあるんですから、
まったくの内面的イメージということですね。
イヤリングのりんごも、
りんごが好きで食事として食べる場面が何回かあったりして。
象徴的。