あらすじ
楽しいって、なんだろう?世界からヒトが消えた世界のカフェで、模造亀のカメリは思う。朝と夕方、仕事の行き帰りにカフェを訪れる客、ヒトデナシたちに喜んでほしいから、今日もカメリは石頭のマスターとヌートリアンのアンと共にカフェで働き、ささやかな奇跡を起こす。心温まるすこし不思議な物語。
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ヒトが作り出したレプリカメ、カメリのお話。壊れた世界でヒトがいなくなって代わりにヒトデナシが世界を修正する世界。そこのカフェで働いているカメリ。ちょっとした冒険をしたり、ヒトデナシやマスターなどの役に立ったりする。可愛い模造亀。
森見登美彦さんが解説を書いている!と思って手にとって、珍しく解説から読んでみたら面白そうだったので購入しました。読み始めてしばらくして、最高じゃん!と思った。どの辺が最高かというと、まずカメリが喋らないのになんか可愛い。そしてご都合主義的なことも多いもののどうにかピンチを切り抜ける。ヒトデナシたちの会話も楽しい。カメリがよくわからないままいろんなところでなんとなくやってみたら解決したというものが多い笑 とにかく面白かったです。
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北野勇作ワールドらしくて久々に好きな作品
人類がどっかに行ってしまった地球で、人類の日常を模倣して過ごす模造カメ、戦闘ヌートリア、そしてヒトデナシ達。
夢と現実の境目がわからない、寝起きのぼんやりした時間のようなものが優しく流れています
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ストレートにカメでアメリ。ちょっといい加減なマスターの開いた喫茶店で、姉御肌な同僚やにぎやかな常連客に囲まれて、日々忙しく過ごす。それだけなら、古き良き純喫茶の一幕に見える。でもカメリは模造亀(レプリカメ)。マスターはシリコンの石頭だし、同僚はヌートリア的なもので、常連に至ってはヒトならぬヒトデナシ。ヒトゆえに不条理を感じるシステムや動物的な残酷さが独特の影を生み、穏やかならぬ心地がした。
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好きなポッドキャスト「謎解き!ハードボイルド読書探偵局」で一編ずつ精読する読書会が行われていて(あと3編は配信まだ)、正直そっちを愉しむために読んでみようか、という不埒な動機だった。
が、えらく面白くて、大好きになった!
北野勇作さんは「NOVA」などアンソロジーで数編読んだだけ。
朝宮運河・編「宿で死ぬー宿泊ホラー傑作選」の「螺旋階段」という映像化不可能な異形の短編が印象深かった。
本作のカバーでキュートなイラストが描かれているので、読みながらついつい漫画化するならスケラッコかな~とか、つばなかな~、いや諸星大二郎かも、とか想像していたが、おそらく本作も映像化不可能……というか、キャラクターデザインや美術など決定しないほうが楽しみが増すのではないか、と思う。
確定不可能性を担保し続けるほうが魅力が増す、脳内に結ばれては移っていく像を追う、小説ならではの味。
それでもやっぱり敢えて連想してみるならば、
堀貴秀「JUNK HEAD」、弐瓶勉「BLAME!」、つくみず「少女終末旅行」の、メガストラクチャーや生体機械、の壮大さとグロテスクさと、
リドリー・スコット「ブレードランナー」、押井守および士郎正宗「攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL」の、レプリカントや電脳、の悲哀さと、
シナリオやテレビドラマやニセモノや、から、「世にも奇妙な物語」の「ロンドンは作られていない」の模擬記憶や独我論(今回初めて知ったが清水義範「唯我独存」が原作)、大塚寧々が主演した「壁の小説」とか、
……と、大仰なものばかり連ねてしまったが、
そんなハードSF、本気に自己の存在を根底から覆しかねない世界の不気味さが、とおーーーーーーくに仄見える洞窟の入口の、一歩手前どころか二歩も三歩も手前で、カメリは、別に、入らない。本気にならない。
ここがいい。
解説で森見登美彦が「理想的ボンヤリ屋さん」と書いている(し、本書の魅力は解説でしっかり表されているので素人が繰り返す必要はないのだ)が、そのへんがいいのだ。
ポストヒューマンにおいて、ヒトデナシたちがテレビの映像をもとにヒトの真似をする。
真似ることが嬉しい、ここに読み手は悲哀を感じざるを得ない、
だってそもそも人が神を真似ているのだから、とリドリー・スコットなら虚無的に描くだろうが、
いやまあ「レプリカメ」(模造亀)だしね、と脱力。
演技、再現、本物と偽物の実感、といった本気のテーマを、「ヒトはテレビの中に引っ越してしまった」という絶妙な世界観で表して、敢えて奥底まで探求しない。この塩梅。
あとは優しい言葉の掛け合い。これもいい。
「まあでもこれもよかったね」というフォローや、「おおおーいカメリ」と呼びかけてくれるとか、世界の素材たぶヒトデナシたちの優しさよ。
ここがまたいいんだけど、テレビの内容が地味に古いんだよな~。
世界中の老若男女に読んでもらいたいけれど、駄洒落を駆使した設定(カヌレ→「カエルみたいにヌレッとしている」はひどい!)も相俟って、主な読者は日本の中年になるだとう、と思っていたら、なんとテレビはモノクロだったと終盤に判明! 笑ってしまった。
ちなみに作者のツイッターによれば、「どろんころんど」「カメリ」「ヒトデの星」が泥世界3部作らしい。読みたい。すごい多作な作家なのだ。
また作者いわく「カメとヌートリア、ダブルヒロインによるポストヒューマン百合バディSFです。いや、ホントだってば」。
また「かめくんはカメの「ブレードランナー」、と憶えてください」とも。
ついでに先のポッドキャストの胴元さんいわく「ポストヒューマン造語駄洒落巨大怪獣百合ケモナーハードカメSF」!
そうそう、根底が駄洒落にあるのかハードSFにあるのか、ベクトルの起点が全然わからない感じも、いいのだ。
追記。
野阿梓が2000年代のSF小説のベストに、
冲方丁『マルドゥック・スクランブル』、佐藤亜紀『天使』、古川日出男『アラビアの夜の種族』、北野勇作『かめくん』、『山尾悠子作品集成』
を挙げているんだとか。
佐藤、山尾は納得だが、本書も並んでいるあたり、嬉しい。
以下に目次を示すが、各章のタイトルが、興味を催すと同時に、その章の端的なあらすじになっているのも、面白い。
とはいえ各話読み切りというよりは、前までの話が緩やかに繋がってきているあたりは、藤子・F・不二雄的歴史観かもしれない。
いやまったくいいものを読んだ。
■カメリ、リボンをもらう
■カメリ、行列に並ぶ
■カメリ、ハワイ旅行を当てる
■カメリ、エスカルゴを作る
■カメリ、テレビに出る
■カメリ、子守りをする
■カメリ、掘り出し物を探す
■カメリ、メトロで迷う
■カメリ、山があるから登る
■カメリ、海辺でバカンス
■カメリ、ツリーに飾られる
◇あとがきっぽいもの
◇解説 森見登美彦
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河出文庫の斉藤壮馬さんとのコラボ作品で知りました。
不思議な話。人間がいなくなった世界で、ニセモノの生き物(?)たちが生活をしている。テレビのシーンがあり、それを模倣して、なり切って生きているような「ヒトデナシ」という人間を似せた生き物。ヒトデナシの存在が、コミカルのような寓話っぽく描かれているような、ちょっと残酷で・・・それでも愛おしいような。
この作品は、様々なメッセージ性があるのですが、それも読みての想像次第なのかもしれない。これまでに読んだことのないタイプの一冊でした。
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ヒトの消えた世界。ヒトのように振る舞うヒトではないものたち。二足歩行型模造亀カメリの視点で、この奇妙な世界を探訪する連作短編集。
ヒトのいた頃とは似て非なる世界は、いちど壊れてしまい今は修理中らしいが本当にそうか。
健気に死ぬまで働き続ける気の好いヒトデナシたちは、本当にヒトではないのだろうか。
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解説の森見の文章にひかれて購入。
人がいないディストピア的な世界で人工物たちが人を真似て生活している、という設定。
世界が常に大きく変わっているのに対して、主人公たちの暮らしは基本的には同じことの繰り返し、というギャップや、倫理観に縛られていないために行動として表れる残酷さが面白い。
またこの作家の作品を読んでみたい
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SF。ファンタジー。連作短編集。
ヒトがいなくなった世界で暮らすレプリカのカメの物語。
『空獏』『どーなつ』と読んで、独特の緩さがイマイチ合わなかった作家さん。今作で遂にヒット!あまりに不思議な世界観にハマリました。
やわらかSF、一種のディストピアもの、とは言えるものの、なんとも表現しにくい絶妙な読後感。
自分の言葉では表現できないので、『SFが読みたい!2017年版』64ページより、冬樹蛉さんの言葉をお借りします。
「"なにかがそこにないこと"のSF性を書かせたら、北野勇作は魔法使いだ。」
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カメリがカヌレを作っちゃうのとか、オタマに爪を突き刺してしがみつくとか、ヒトデナシが実は主役なんじゃないかとか、カメは夜更け過ぎに雪へと変わるとか、ファンタジーでけっこう心に残ります。
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ふんわりした、優しい文章の裏にキツい世界をチラ見せ、っていう北野勇作ワールド。人間ではなくヒトデナシだけに「さすがに人間でこれやられたら優しい文章言うてられへん」ってこともシレッと。
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カメリは模造亀(レプリカメ)の女の子。螺旋街の西の外れのアパルトマンで、一人暮らし。石頭のマスターが経営するオタマ運河沿いのカフェで、ヌートリアンのアンと一緒に働いている。カフェの常連は、近所の工事現場で働くヒトデナシたち。毎朝わいわいとやってきて、TVを観ながらカメリが作った泥饅頭と泥コーヒーをうまいうまいと食べてくれる。彼らからもらった赤いリボンが、カメリの宝物。メトロに乗ってマントルの丘にケーキを買いに行ったり、くじ引きに当たってハワイに旅行したり、ノミの市にカヌレの型を探しに行ったり。カメリの日常は、気の良い仲間たちに囲まれて、平凡に過ぎていく。
こうしてあらすじを淡々とまとめると、これといった盛り上がりも起承転結も無く、「模造亀」だの「ヒトデナシ」といったワーディングがちょっと気にはなりますが、まぁライトな読者向けのふんわりしたファンタジーなのかな〜という印象。
が、騙されてはいけません。
ストーリーの表面だけなぞると、この作品は確かにふんわりしたとらえどころの無い物語です。
が、読み始めるとすぐに判る、この世界のグロテスクさ。ヒト(人類)がかつて暮らしていたことが示唆されながら、ヒトは既にTV画面の彼方に消え去っており、人外の者たちだけが同じような生活を延々と繰り返す、時代も場所もわからない世界。カメリもアンもヒトデナシたちも、本来は生体兵器または生体構造物であることが暗に仄めかされており、かつ彼らはそんな自分たちの存在理由を既に忘れています。
この世界の成り立ちも、その中で人間を模した「生活」を再現する意味も理解しないまま、それでも楽しそうな彼らの日常が暖かい筆致で描き出されて行く、この実にSF的な尖りっぷり。そんな優しくて気色悪い世界の中で、ただひとりカメリは、ゆっくりと、でも着実に、思索を深めていきます。自分には「楽しい」という意味が分からない、というカメリのモノローグ。それでも、「楽しそう」なヒトデナシたちの存在を、カメリは否定しません。この世界そのものが外挿されたシナリオに過ぎないという可能性すら認識しながら、それでもカメリは毎日を、たぶん「楽しんで」います。
論理が明快で白黒ハッキリしたSFが好きな人には、おススメできません。が、謎だらけで何が本当なのかほとんどわからないままでも、これだけエッジィなSF世界が成立するんですよ、というお手本のような作品です。万人向けの作品ではありませんが、鴨は大好きです。
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短編集。二足歩行のレプリカメ、オタマ運河左岸のカフェで働く。シリコンの塊の石頭のマスター、ヌートリア義人体のアン、常連はヒトによってヒトデ不足のためヒトデから作られたというヒトデナシたち。
シュール。ビジュアルだけでなく日本語の言葉遊びもあり。アリスの世界も同じようなものなんだろうけど、技術が進歩し情報が行き渡ったため表現される世界の複雑さも段違い。
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人の消えた世界。そんな世界で懸命に生きる彼ら。感動とともに物悲しさも募る。
あらすじ(背表紙より)
楽しいって、なんだろう?世界からヒトが消えた世界のカフェで、模造亀のカメリは思う。朝と夕方、仕事の行き帰りにカフェを訪れる客、ヒトデナシたちに喜んでほしいから、今日もカメリは石頭のマスターとヌートリアンのアンと共にカフェで働き、ささやかな奇跡を起こす。心温まるすこし不思議な物語。
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全てが泥になってしまった世界のカフェで働く模造亀のカメリ。
決定的な何かがあるわけじゃないんだけど、でも少しずつ世界に近づいていくような感じがある。
他作も読んでるから、違和感なく読み進められたけど、いきなりだと辛いかも。