石田衣良のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
こちらも年1回この時期のIWGPは第8作。
世相を鋭く切り取って、いつものトラブルシューティング。
今回のお題は格差社会と非正規労働者ってところかね。
前作でも階級化社会への視点が見え隠れしていたけど、今回はシングルマザーやネットカフェ難民、日雇労働派遣労働者の姿を描いて結構リアル。
とは言え、暗い話を描いて余りくどくならず、理想的に終わるっていうこの本のスタイルは、いつも通り。
うちの会社を相手にして裁判起こしている派遣社員の人もいたりで時々会社の周りでもデモがあったりするけど、デフレで就職難のこのご時勢、代表選に現を抜かす現政権では状況の好転は望み薄。いつまでこんな社会が続くかねぇ…。
***以下、多少ネタばれあり***
前作あたりからタカシやサルに電話をすれば即解決ってお話から一皮剥けてきてたけど、今回もGボーイズは少しお休み加減。
代わりにマコトの母さんや元警官の厳つい親父が出てきたり作者も結構大変だ。
しかし2番目のお話と最後の標題作のお話のスキームが良く似ているのはどうかなぁ…。
特に標題作は、いつもと違って住む世界が違う巨悪に向かって溜飲下げる話なんだけど、メイド服の彼女の正体があれでは、自ら物語を矮小化してしまったようで、ちょっと残念。 -
Posted by ブクログ
子どもの語り口調で物語が進んでいくので、
さほど重苦しさを感じませんでしたが、
大量の問題提起をしてますよね、これ。
報道のあり方とか、少年法とか、
いじめの問題にしても、
自分には関係ないとどこかで思っているから、
真剣に考えることもないし、
その裏側まで考えることもしないし。
でもホントはいつ自分に降りかかってもおかしくないし、
息苦しくて生き辛いって思うのもホント。
あ~なんかわかるわ~、
と14歳の子供の目線ではありえないけれど、
ちょっぴり共感。
でも、黒幕を死亡させてケリをつけるのはちょっと・・・。
綺麗にまとめようというか、
丸くおさめようとしたらそうするしかないのかもしれないけど、
何か、安直じゃないですかねぇ。
若干、クライマックスに不満。
☆☆☆ ホシ3つ -
Posted by ブクログ
小学生女児が殺害されて平穏な町は騒然となる。
その女児は中学3年生の主人公の妹と同級生。
そして犯人は中学1年生の主人公の弟だった。
ってことを軸に物語が展開される。
もちろん犯人はすでに分かっている。
タイトルの「うつくしい子ども」っていうのは、単純に言えば主人公の弟と妹は非常にかわいらしくて子役モデルなどもしていて母親から溺愛される。
でも一方の主人公の容姿は決してそうではない。だからと言って母親から嫌われるとかも全然ないけど。
主人公は「どうして弟がこんなことをやってしまったのか」という疑問を持ち、それを調べていく。
弟はいつまでたっても弟で、だから分かってあげなきゃいけないんだ。
そういう気持ちを持って主人公が中学生ながらに動いていく。
もちろん小説で現実離れしてるんやろうなーって点もあるけど、その主人公の気持ちの強さには感銘をうけたし、読んでいく中で自然に主人公を応援してる自分もいた。
結末がやっぱ小説やなーって感じがあったけど、全体的には主人公とその家族の動きが手に取るように分かる感じで描かれてて、読みやすい本でした。 -
Posted by ブクログ
町を歩けば彼岸花の赤い色が目につくシルバーウイーク。
この季節、こちらも年に一冊、おなじみIWGP第7作。
階級化社会、オレオレ詐欺、絵画セールス、少年犯罪、自主制作映画…。
今回も当時(今でもか)社会を賑わせていた事件を題材に、池袋の街をマコトが走る(相変わらずマコトがお店でかける音楽はCD買って聞きたくなっちゃうよね)。
前作、マコトがみんなに頼りすぎといった感じで、緊迫感と斬れ味が薄らいできていると書いたけど、今回テイストは変わらないながら、事件の解決は程々に(一応解決はするんだけど)、解説にもあるようにマコトは狂言まわしに徹し、依頼者の人となりをお話しの中核にして、前よかちょっといい感じ。
読めた展開ながら「バーン・ダウン・ザ・ハウス」にもらい泣きで、親を亡くしたり子どもが年頃になったりするとこういう話が一番泣けるでね。
表題作「Gボーイズ冬戦争」だけ“社会派”から一線を画したアクションもの。ちょっとくさかったりもするところもあるけど、こういうのも結構いいかも。 -
Posted by ブクログ
おなじみIWGPシリーズの第6巻。
いつも通りに一冊の中で四季が巡り、池袋の移ろう季節の中で起こる事件の数々。
盗撮映像売買で恐喝されるハメになった小学生、足に障害を負わされた兄の敵討ちを頼んできたブティックの販売員、ロリコンの噂を立てられた無認可保育園のアルバイト…。
相変わらず世相を切り取ったテーマ仕立てやクラシック音楽などのディテールには飽きないものの、お話の展開はいささか呆気なし。
今や誰もがマコトを知らぬ者がなくなり、タカシもサルも礼にいもゼロワンも必要な時にはすぐに頼りになるとなれば、それも宜なる哉。
まあ「オール讀物」に載せる時の頁の制約があるんだろうけど、もうひと山あるとね。
最後の話だけ2か月分で、さすがに一筋縄で行かぬ相手に一ひねり加えながらも、お終いはチョイ甘の話になっちゃって。かつてあった緊迫感と斬れ味が薄くなっている気がする。 -
Posted by ブクログ
石田衣良本人の垢抜けた印象から、軟派でライトな小説を予想していたが、意外と硬派な犯罪小説だった。女の子は妖艶というよりは健気で献身的。お色気シーンはほとんどなく、男臭い話だ。伝説のギャンブラーの唐突な登場とか、安易なハッピーエンドとか、多少ご都合主義はあるものの、イケブクロのアンダーグラウンドを舞台に二転三転するストーリーはテンポがよく、文章も素晴らしくうまい。脇役たちのキャラクターもいちいち個性的で面白く、最後まで楽しく読めた。
主人公は映像ディレクターという職業柄、目に映った映像を記憶する特殊な能力がある。昔、子供向けの翻訳童話で「名探偵カメラちゃん」というシリーズを読み漁っていたことを思い出した。カメラちゃんは「カシャッ」と言うと、カメラのようにその場の風景を記憶することができ、これが事件解決のキーになるのだ。
池波正太郎の「鬼平」や「雲霧仁左衛門」は、そばにいたら一目惚れ間違いなしのイイ男で、何ともいえない色気がある。もちろん、現実にはこんな男はナカ・ナカいないだろうというくらい、理想化された人間像だ。一方、石田衣良の小説に登場する男は、ギャンブルにはまって犯罪に手を染める、ちょっとだらしない独身の30代。それが突然正義感を燃やしたりするのはイマイチ納得がいかないのだが、一貫性のなさも含めて等身大の人間を描いているということになるのだろうか。徳間文庫版の解説者・吉野仁は、この点について、
「そのままそっくり現実に彼らがいるかどうかは別にして、けっして作り事の人たちとは思えない親近感を覚えてしまうのだ。このような優れた人物造型が作者の持ち味であり、本作でも十分に発揮しているといえよう」
と手離しで褒めている。