清水潔のレビュー一覧
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FOCUS編集部を経て日本テレビに移ったジャーナリストが手掛けた調査報道の裏側に迫る。疑問を持ったらとことん追いかける。そして常に「裏取り」を慎重に行う。正義と言うよりは、権力側の都合や思惑で泣く人が出てしまうことがよほど許せないという取材姿勢が見える。
時に危険な目に逢いながらも、一旦司法が下したことさえも疑問があれば覆そうと真実に迫る過程がドキュメンタリー風に綴られていて読みごたえがある。桶川ストーカー殺人事件など、筆者の執念で警察の怠慢や勝手な推測で事件を歪曲化したマスコミを糾弾した有名な事例もその裏側が語られている。
成功例だけでなく失敗やボツになった事案にも触れている。失敗した場 -
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初老版『深夜特急』by沢木耕太郎
ジャーナリストの清水潔氏と小説家の青木俊氏によるドタバタ鉄道旅行記。いや、本来はそういう読み方ではなく、戦争を巡る日本とロシア周辺の歴史を辿る旅でもあり、重々しいテーマを取り扱ったものだ。しかし、それを2019年にタイムトリップして当に現代を旅するものだから、まるで意識したかのような〝戦争と今“のコントラストを表現した名著。楽しく読める分、凄惨な歴史が沁みるような仕立てと言えるかも知れない。
「だまされた」亡き父の書棚、一冊の本に貼り付けられたメモ用紙。本の表紙には『シベリアの悪夢』、ミステリー小説のように始まる物語は、清水潔のお家芸。この〝読ませる文章“、 -
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南京大虐殺は中学校の時に5行ぐらい登場した。先生が「あまり深堀りしません」と、ほとんどスルーだった。
大人になって、テレビで知って「嘘だ…信じたくない」と思って、祖母に聞いたのを思い出す。「日本人は悪いことしたの?」と。返事は「うーん、確かあったんだと思うよ。戦争は人が狂うから。」だった。
それから「第二次世界大戦は、日本がアジア圏を守るための戦争だったけれど、勝者に歴史を書かれて悪者にされた。」という説を容易く信じた。
おそらく、「信じたいものを信じてしまう」というやつだったと、この本を読んだ今は思う。かくいう私も、清水氏がいう「一点突破派」だったのだ。
人数がありえないから「捏造に違い -
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筆者は、亡き父が残した本の中に貼りつけられたメモ用紙から、生前は戦争や抑留体験についてほとんど語らなかった父親のシベリア体験の痕跡を見つける。筆者は、メモに残された「だまされた」の一言にまるで追い立てられるように、長年取材を共にしてきた友人と共に、父が強制労働に明け暮れたシベリアの地に出掛けることを決意する――。
戦争や抑留の記憶をほとんど語らなかった「父」の語りの不在から、いわゆる「第2世代」の記憶の実践が駆動する。どちらかといえば韓国・中国・東シベリアと続く鉄道紀行というべき内容だが、その鉄路がまさに戦争の手段であり、戦争の目的でさえあったことが、車窓からの風景に重ねて書きつけられる -
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亡き父の戦争体験を追って。釜山からイルクーツクへ。朝鮮半島から満州、シベリアを辿る旅。
亡くなった父の残したメモ。多くを語らなかったシベリア抑留を追体験するため筆者は旅に出る。
父は鉄道連隊に所属し満州へ。終戦直前のソ連軍の突然の侵攻。捕虜となりシベリアへ送られていた。
日本から大陸を渡る筆者。ちょうど明治維新後の日本が日本が大陸に進出していく道と重なる。複雑な歴史を筆者は簡潔にまとめて描写している。特に鉄道の占める役割が強調されている。
南京大虐殺であったり政府の姿勢を追求する筆者。日本政府の暴走により名も無き庶民が犠牲となるという構図。もちろん父もその犠牲者。本書で終始変わらぬ視点 -
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旅がしたくなる
韓国から中国東北部を経由し、シベリア鉄道で亡父の辿った鉄路を行く。シリアスでありつつ、微笑ましくもある道中記。形は変わり、時は流れても、そんな旅に出てみたくなる人間の性を感じる。それにしても私はあまりにも日露の歴史に疎い。勉強したい。
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清水潔さんの本を初めて読んだ。「桶川ストーカー殺人事件」や「殺人犯はそこにいる」を読みたいと思っているのだが未読。
暗く重いものを想像して読み始めたが、思っていたより軽いタッチ(と言ってしまっていいのか)だった。ユーモアを感じさせ、クスリと笑える部分と現実の歴史の厳しさ、戦争の残酷さ、国家の薄情さを描く部分が共存していた。ご自身の父親の足跡を辿る旅なので、情緒的になりそうだが、そんなことは一切なかった。暗く重く描かれなかったからこそ、実際の苦難を想像し、考え、感じる力を発揮すべきなのだろう。
旅に出られない今、著者と青木さんと西へ西へ向かうシベリア鉄道の旅に同行させてもらった気分で、それはそれ -
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清水潔のジャーナリズム、もっと具体的に言うと、取材や調査の仕方が徹底的で好きだ。だからこそ、彼が南京大虐殺に挑むとなれば、これを読まない手はない。真相が暴かれると期待する。しかし、今回はさすがにハードルが高い。既に関係者が殆ど生存しておらず、調査し尽くされてきた分野。自ず、過去の調査を辿り、そこで手に入れた日記を頼る事になる ー 目新しい事は、やはりない。
その日記が正しいかを追求しなければ、結果、日本政府の基本的理解の通り、虐殺はあった、しかし、数は諸説あるという結論に至る。そこで、調査停止。うーむ。
どうしたのか、そこから、虐殺否定派への抗弁となり、更には、自らを戦争加害者の孫、被害者 -
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「殺人犯はそこにいる(足利事件の菅谷さん冤罪事件)」、「桶川ストーカー殺人事件」の調査報道で社会に大きな影響を与えた著者が調査報道のありかたについて、これら2冊の著作以外の案件も踏まえて述べたノンフィクション。
発表報道(対象が報道して欲しい内容を伝える)の対局としての調査報道(対象が報道して欲しくない内容を裏付け捜査をもとに伝える)の重要性、調査報道の現場で遭遇する種々の困難について著者のリアルな体験をもとに描かれています。「記者クラブ」という権力を保持する側の御用ジャーナリズムと化す発表報道の現場、記者会見現場で発表者の発言の真意を汲み取る努力ではなく、ただ”正確”にノートパソコンで発言を -
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本作は著者の清水潔氏のジャーナリズム姿勢を明確に表した一冊で、都合の良い政府や警察などの発表を鵜呑みにして記事にするのではなく、自らの調査で得た事実に基づき報道していくという姿勢なのですが、やはり何が真実かということを判断するには、自らが関係者などに直接耳を傾けた声をベースに冷静に判断する眼というのが大事だということに気付かさせられます。
でも深いなぁと思ったのは、死人に口無しですが、殺人事件の被害者は事実を言う術がないことを加害者が自分都合で正当化するという話で、これも一方的な言い分をどこまで信憑性があるかは、被害者周辺の声にも耳を傾け双方の声から判断する姿勢が大事なのだということも頷けまし