安藤寿康のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大変興味深かった。
身体的特徴、学力、音楽、運動は、環境よりも本人の持ってるものが大きいだろうというのは私でもわかる。
ただ、性格的な性質、関心や好み、傷つき方、思考方法など、より内面的な資質ってどうなんだろう?とずっと疑問だった。
本書は、遺伝の影響はかなり大きいとしながらも「だからこうすべき」と選択肢を限定せず、「それはそれでその人の生き方」というのを最後まで崩さない。それがすごくホッとした。
親の育て方なんて誤差の範囲なんだなあと肩の荷が降りた気持ち。
でも人ってどうしても自分の人生にストーリーが欲しくなるよね。
例えば、「不安になりやすい特性」について遺伝的な根拠があったとしても、「親が不仲で喧嘩ばかりの環境で育ったせいで、自分は不安になりやすい」など、環境を要因とする方が自分の人生のストーリーとして納得がいってしまう。
人間って自分が納得いくストーリーを作りたい生き物だし、正しさよりも受け入れられる形に自分で構成したいんだな。
以下、印象に残った点を箇条書き。
・経済的に恵まれていない家庭ほど選択肢に制限が多いため遺伝的要素を発揮しにくい。
・親子の愛着のあり方に遺伝は関係なさそう。親の関わり方次第で愛着が作られる。
・成長するほど親からの影響は減り、遺伝の影響が大きくなる。
・好き嫌いや関心の濃淡も遺伝の影響が強い。おかれた環境の無数の刺激の中から自分が惹きつけられる刺激にウェイトを置いて世界を作り上げていく。
・どこで誰が育てても子どもはおおむね同じように育つ。親の育て方なんて大した影響力はない。
・自分の人生を親の関わり方のせいにしたくても、よほど凄惨な養育環境でない限り、本人の意識関係ない部分の遺伝的要素を「後付けで」説明しているだけ。
・親としてできるのは、人間としてまっとうに生きること。子どもに投資しまくらず、暴力やネグレクトなど虐待しない限りは親の好きなようにしてよいのでは。子どもは思い通りにならない覚悟を。
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Posted by ブクログ
本作は、行動遺伝学を通して教育の意味を問いかける一冊です。
人間を生物(ヒト)として考えた時、種の中で上位の階層を目指すために、現代社会において最も分かりやすい指標は、お金と学歴ということになるのでしょう。
では、お金や学歴を生み出すものはなにかと考えた時、能力が非常に重要になるわけですが、能力を養うためには教育が必要であり、その成果指標として分かりやすいものが学歴なのだ、という話になってくるのではないでしょうか。
ところで、能力は遺伝で全てが決まるわけではありませんが、「能力に遺伝の影響がある」ことは行動遺伝学の知見で明らかになっています。
しかしながら、能力が遺伝で決まると言明してしまうと、ならば生まれつき能力がない者は努力しても仕方がない、という遺伝決定論にもつながる危険性があります。
なので、その考えはタブー視され、その行く末は「なんでも努力すればできるようになる」という努力万能論にも行きつくことになりますが、一方で、これは非常に残酷な一面を持ちます。
つまり、誰でも東大に行けるなんてことはなく、仮に東大を目指したけれども行けなければ、それは本人の努力が足りなかったせいだ、ということにもなり、その結論はある意味で遺伝決定論より残酷なものとなってしまうことに。
著者は、巷にあふれる教育論に関し、「世には…理想の教育とはなにかを謳った本があまたあります。教育に関する研究や書物のほとんどは、こうすれば教育はうまくいくという内容ばかりといっても過言ではないでしょう。しかしいまだにそれが実現できていないのも明らかです。…いつまでたっても実現されないのなら、考え方を変えてみるべきではないでしょうか」と本書で疑問を投げかけます。
また、能力や性格の多くは遺伝に影響され、教育はそれを一時的に変化させることはできても、根本から作り替えることは難しい、とも指摘します。
学術的には、「教育」は人間特有の学習の仕方で、生命史においてまだ獲得されて間もない生存戦略だそうです。
(なお、人間以外の一部の生物にも教育が確認される例はあるようです。)
では「教育」によってできることは何か、ということを、著者は行動遺伝学の知見から分かりやすく示そうとしています。
オビには、「流行りの教育論をことごとく転覆させる問題作」なんて言葉もありますが、教育論として考えた時、本書はかなり異端な内容だと思います。
しかしながら、科学的なデータに裏打ちされた説明は非常に興味深いものでした。
生きていくうちに、興味をそそられ成長しようと思わされる出来事があったならば、それは自分自身の内側にその出来事に反応する何らかの遺伝的素質があることを示唆しています。
行動遺伝学を学ぶことは、「自分はいったい何者なのか」を追求することなのかもしれません。 -
Posted by ブクログ
わが国の行動遺伝学の第一人者による、遺伝と能力にまつわるお話。
行動遺伝学とは、行動における個人差について、遺伝的要因と環境的要因がどの程度影響を与えているのかを解明する研究分野のことです。
特に能力の遺伝については、優生学との関係や知能の優劣の判定の可能性などからタブー視されている面もありますが、現実の世界や人生を知る上で避けて通れないテーマだと思います。
本書には、「心はすべて遺伝的である」、「才能は生まれつきか努力か、という問い」、「行動遺伝学の10大発見」など興味をそそられるテーマが多いです。
人の能力、才能、学習に関して言うと、遺伝はそのいずれにも影響を及ぼします。
様々な能力(知識、記憶)と非能力(「生まれつき」や非認知能力と言われるもの)は、学習したり適応したりして高められていくものですが、やはりいずれも遺伝の影響からは逃れられない、ということのようです。
このあたりは橘玲さんの著書でもよく言及されるところですが、本書においては、著者は極めて学術的に、しかし慎重かつ婉曲的に表現と説明を試みています。
あくまでも「行動遺伝学」であり、優生学的な捉え方をされないよう配慮も必要なのでしょう。
また、行動遺伝学の知見によれば、知能の遺伝率は発達とともに増加し、自らの遺伝的な特徴が成長とともに顕在化するようです。
このことについて、著者は次のように説明します。
すなわち、「学習の臓器」とも言われる脳は、環境による刺激を受動的に処理しているのではなく、むしろ自らの遺伝的資質に従って能動的に学習を進め、あたかも遺伝的な「自分」になるよう行動しているのではないかと。
そうすると、やはり遺伝の力は人間の意志を超越したところで影響を及ぼしている、と考えざるを得ないのでしょうね。いや、むしろその意志に影響を及ぼしているのか。
人間の能力について、「遺伝か環境か」というのはずっとずっと大きなテーマです。
遺伝の要素について排除する、あるいは目を瞑るということは、反優生学的な立場からは是かもしれませんが、学術的には正しくないでしょうし、そのことはかえって「能力がないのは努力が足りないせいだ」という、遺伝の影響を全く無視した自己責任論にもつながってしまいます。
メリトクラシー的な世界からは不都合に見える遺伝の存在について、我々は理解し受け入れつつ、自分の人生を、その能力が発揮できる場で生きていくことが一番幸せなのかもしれません。 -
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行動遺伝学者が教育を生物学的に説明した本。
遺伝か環境かといったありきたりな議論ではなく、教育に遺伝的要素がどのように関わり位置づいているのか、生物学的な教育とは何かといったことを大局的に説明したところが新しく目から鱗だった。
まず、教育の実質的側面と形式的側面について、それぞれを内発的動機づけを司るデフォルトモード・ネットワーク(DMN)と、外発的動機づけに関係する中央実行ネットワーク(CEN)を対応づけた解説はとても説得力があった。
DMNの内発的動機によって向けられた課題への集中が、CENによる課題没頭のフロー状態を生みだすということも初めて知った。
また、生物学的な教育の定義も参考になる。簡単に言うと、
①知識を持たない個体がいるときに限り行う特別な行動であり、
②その行動にコストがかかるか、何の利益もない利他的行動であること
③そして、行動によって学習が成立、もしくは促進されること
の3条件を満たすのが教育であり、特に②の「わざわざ行う」ことが特異な行動なのだ。
この特異な行動を行うと確認されているの種がまた面白い。
まずはヒト。そしてそれ以外は、ミーアキャット、ムネボソアリ、シロクロヤブチメドリの4種である。
狩りの方法を見せるなど、さまざまな生き物の教育として見られる模倣は教育的行為ではなく、観察学習(社会学習)である。
双生児法という研究法によって明らかにされた、知能や性格、精神・発達障害などへの遺伝率のデータや、「遺伝とは形状記憶合金である」という例え、そして環境の影響は「いま、ここ、これ」の一時的なものだという知見、テストは百害あって一利もなしなど、教育者にとっては認めたくないようなことも多く書かれてある。
しかし、その上で筆者は教育が制度的、文化的営みである以前に生物学的な現象であるとする。
学校制度の形式的側面が強調される場においても、遺伝的素質がある実質的、創造的な教育の側面を経験できるといいと感じた。 -
Posted by ブクログ
「教育脳」というそのタイトルから、教育学と脳科学の境界にある内容だな、と想定して読み始め、その当ては良い意味で外された。
そこに留まらない。実存にも関わる意味で、哲学と言っても過言ではないと感じた。
結論を消化するのが難しい。
というのも、主張が「学力も知能も習慣もほぼ遺伝で決まる」という残酷な現実と、
「遺伝で決まっているからといって人生が決まるわけでもない」という、ある意味で相反する主張の間に帰着するからだ。
分かりやすい、単一の答えに帰着しない。
勉強してもムダ、と勉強してもムダなわけではないという、矛盾律に違反するような、微妙な論なのだ。
自ら、今興味と、必要性が揃って、主体的に学んだものでないと、自分に定着しない。
しかし本当の意味で身になるのは、今すぐ使うものだけ。
それ以外は、無意識のレベルでしか身に付かない。
確かにあらゆる知識も経験も、恐ろしいほど消えてしまう。
小学校の時にあれだけ接していた人の名前も顔も忘れてしまう。
散々繰り返して覚えた知識も技術も、使わないうちに忘れる。
しかしなぜか、そうした過去の経験も、無意識に血肉になっている。思い出せずとも。
公的な教育は尊いものだ。
そのおかげで確かに治安は守られ、知識や技術が継承され、自由な職業を選らべる素地が生まれ、道徳を持てる。
教育が充実している社会とそうでない社会には、はっきりとした差がある。
長い長い歴史の中で、少しずつ知識と技術が継承され、今これだけの複雑で難解な文明が維持できている。これは紛れもない事実だ。
然しその背後には、万能なわけでも、確実なわけでもない科学的な事実が隠れていて、確率から逃れられていない。
シュレディンガーの世界だ。
同時に無為自然の世界でもある。
少なくとも、柔軟に受け止められそうだ。矛盾のある世界を。 -
Posted by ブクログ
人間の理性とか努力を信仰するリベラルが発狂しそうな本だった。人間の努力とかはほぼ無いんだな。努力出来る遺伝子があるだけで全ては遺伝という出来レースだったのか。
飲み放題が成立するのは日本人に下戸が多いからでヨーロッパとかアフリカに飲み放題あったら店が潰れるらしい。私もお酒に酔わないし脚の長さが黒人平均だから実は黒人なのかもしれない。
「 ご著書の『「心は遺伝する」とどうして言えるのか──ふたご研究のロジックとその先へ』(創元社、 2017年)で、ストレスを感じるようなライフイベントにどの程度、遺伝の影響があるかの研究が紹介されてますよね。病気になったり、近しい人が亡くなったり、強盗に遭うなど、一般的には運が悪かったとされる偶然の出来事と、離婚や解雇、お金の問題など、本人にも責任があると見なされる出来事を比較したところ、偶然の出来事の 26%が遺伝で説明でき、本人に依存する出来事の遺伝率 30%と統計的に有意な差はなかった[* 1]。 最初に読んだときは、なぜそうなるのかわからなかったのですが、よく考えてみると、病気には遺伝が関わっているし、近しい人が親族なら同じ遺伝子を共有しているかもしれない。強盗に遭うのは確かに運も悪かったのでしょうが、危険な場所にいたり、目立つ行動をとったりしたのが原因だとすれば、そこにも遺伝の要素がある。 知人が交通事故に遭ったら、「運が悪かったね」と同情するでしょう。でもそれが、信号を無視して横断歩道を渡ろうとしたり、無理な追い越しをしようとして起きたのなら、たんなる偶然とはいえない。そう考えれば、私たちの人生のすべてを遺伝の長い影が覆っていて、そこから逃れることはできないのではないでしょうか。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「 AD H 1 Bと A LD H2のどちらも変異型を二つもっていると、アルコールを急速にアセトアルデヒドに分解しますが、そのときに出る毒素を処理できないので、ちょっと飲んだだけで顔が真っ赤になり、頭が痛くなったり、気持ち悪くなったりします。 居酒屋で「飲み放題」が成立するのは、日本には下戸遺伝子の保有者が一定数いるからですね。この変異型はヨーロッパやアフリカにはほとんどないので、日本に来た外国人は「飲み放題」にびっくりします(笑)。欧米で同じことをやったら、たちまち飲み倒されてお店がつぶれてしまうでしょう。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「日本のリベラルには想像もできないでしょうが、いまでは欧米のリベラル(左派)は、「遺伝ガチャにたまたま当たっただけでとてつもない金持ちになるのは不公平だ。超富裕層に課税して、その富を(遺伝ガチャに外れた)貧しい人たちに分配すべきだ」として、「運の平等主義」という「遺伝決定論」を主張しています。それに対して保守派は、遺伝よりも本人の努力を重視しているのだから、ある意味、保守とリベラルの逆転現象が起きている。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「期待値としてはそうなります。自分と配偶者、両方の知能が平均よりも高ければ、子どもの知能も高くなる確率が相対的に高いことは確かです。しかし、ここで統計学で最初に習う「平均への回帰」が効いてきます。通常、どの能力についてもサンプルをたくさん集めてグラフ化すれば、正規分布、つまりベルカーブを描きます。両親ともに能力が高いということはベルカーブの右端に位置するわけですが、親と子の相関係数が 1ではない、つまり親と子が同じになるわけではない場合、子どもの能力の平均値は両親の能力を足して 2で割ったものよりは、集団全体の平均に若干近づく確率が高くなります。これが平均への回帰です。 だから、「両親はどちらも東大を出ているのに、なんでこの子は……」と嘆くこともあれば、逆に「鳶が鷹を生む」ということもあるわけです。橘 確かに優秀な成績を残したスポーツ選手の子どもが期待したほど活躍できないという話はよく聞きます。これも「平均への回帰」で説明できそうですね。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「身長や体重、運動能力などの身体的な形質の遺伝率が高いことは、昔から多くの人が気づいていたでしょう。それに対して、知能やパーソナリティなど精神的な形質の遺伝については、「言ってはいけない」という空気がつくられてきました。 そこに、エビデンス(証拠)を示して不都合な真実を突きつけたのが行動遺伝学で、生物学的な形質と心は別であってほしい、いや別でなければならないという、これまでの大前提が崩されたことで憤る人が多いのでしょう。安藤 なんでそんな当たり前のことで驚くのか、というのが、いまとなっては正直なところですが、じつは僕自身、「環境によって人間がつくられる」ことを示そうとして、大学院に進んだんです。ところが研究を進めれば進めるほど、遺伝の影響が大きいことを認めざるをえなくなりました。 前章で出てきた行動遺伝学者のエリック・タークハイマーは「行動遺伝学の 3原則」の 1番目として、「ヒトの行動特性はすべて遺伝的である」ことを挙げています。この原則の意味はきわめて大きい。知能や運動能力、あるいはコミュ力だけじゃなく、ありとあらゆる能力、ありとあらゆる個人差に遺伝の影響があるんです。僕たちがいまこうして対談している瞬間にも、何らかの遺伝的素質を用いているわけですから。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「この本のテーマでもある、「人生のあらゆるところに遺伝の長い影が伸びている」という話ですね。冷静に考えれば当たり前のことなのに、直感的には受け入れがたいものがある。 とはいえ、行動遺伝学に対する批判は、突き詰めれば知能に集中していますよね。身長の遺伝について文句をいう人はいないし、スポーツや音楽の才能が遺伝することも当然と見なされている。歌舞伎に至っては、親から子へと「芸事の血」が受け継がれていくことが前提になっていますが、知能の遺伝に関してはあらゆるところから批判がくる。現代のような知識社会では、知能が高いかどうかが人生に決定的な影響を与えるので、誰もが知能の話に敏感になっているのでしょうけど。 そこでうかがいたいのは、そもそも知能とは何かということです。認知科学者は「一般知能」を調べるために知能テストを行なうわけですよね。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「そういう批判はよく聞きますし、一見説得力があるかのように聞こえますよね。でもそれって、野球選手の打率だって統計的に算出されるヴァーチャルな数字にすぎないから大谷翔平の打率が 3割といっても実力とは無関係だとか、日経平均株価は統計的数値にすぎないから日本の経済状況とは無関係だというのと同じくらい荒唐無稽で、「先に批判ありき」の詭弁にすぎません。 打率だって日経平均株価だって、野球選手としての実力や日本経済の状況と合理的に連動し、現象の理解を助ける、意味のある数値であることは誰でも認めるでしょう。一般知能も同じで、学業成績や職業選択、健康度、配偶者選びなどとも関係があることがたくさんの研究から示されています。そしてそれがいま、脳神経科学によって遺伝子とも関係していることが明らかにされつつある。 「知能は統計的現象である」と僕も書いていますが、これは、その背後に生物学的な仕組みが存在しないということではありません。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「学業成績の遺伝率と SESの関係を調べたタークハイマーの研究では、もともとアカデミックモティベーション(学習意欲)をもっている人は、 SESが高いと、その意欲が刺激されるとの結果も出ています。逆に SESが低いと、学習意欲があってもそれを実現することが難しい。そのため SESが高いほど学習意欲も学業成績も遺伝率は高くなっています。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「橘 「教育幻想」を壊したくないんですね(笑)。知能の遺伝率が成長とともに上昇していくということから、「なぜ親は幼児教育(お受験)に夢中になるのか」も説明できそうです。幼児期は遺伝より環境の影響のほうが大きいから、親の努力が結果に結びついて報われやすい。ところが思春期を過ぎると、本来の遺伝的な資質で成績が決まり、子育ての努力は報われなくなる。安藤 おっしゃるとおりです。ですから早期教育とか英才教育に親が過熱することを非常に危惧しています。鉄は熱いうちに打てといいますが、相手は打ったとおりの形になる鉄ではなく、形状記憶合金のように、遺伝子の導く形にだんだんと近づいていくんです。もちろん子どもの頃からよい文化に触れさせることの重要性は強調してもしすぎることはありません。しかし他の子より一足早く学ばせて優位なポジションに行かせようとか、あるいは他の子より出遅れるとかわいそうだから早くから学ばせようという趣旨だとすると、必ずしも報われないことがあることは覚悟しておく必要があるでしょうね。そういった個人差の半分は環境ではなく遺伝も関わっているわけですから。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「醬油にみりんをちょっと足すとすき焼きのたれに、出汁をちょっと足すとそばつゆになりますが、元が酢だったら何かを足してもぜんぜん違う味になりますよね。遺伝子型が違うというのは、人によって醬油か酢かの違いがあるようなものです。考えようによっては、すき焼きのたれとそばつゆはぜんぜん違うという意味で、エピジェネティクスも重要だとはいえますが。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「でもより重要なのは、母ラットの行動が環境への適応として説明できることです。母ラットが子ラットにじゅうぶんな毛づくろいができるのは、天敵のネコがいなかったり食料がたくさんあるなど、安全で豊かな環境のときですよね。すると子ラットは、それをシグナルとして活発な探索行動をするようになる。 逆に、母ラットが子ラットを毛づくろいできないのは、ネコがたくさんいる危険な環境だからかもしれない。この場合は、子ラットは毛づくろいされないことをシグナルとして、神経症的傾向を高め、常にビクビクするようになる。このほうが生存確率が上がるからです。 ラットの寿命は人間に比べてずっと短く、 2、 3年で世代交代していくので、その間に環境が大きく変わるとは考えにくい。だとしたら、子ラットや孫ラットにその形質が引き継がれるのは進化の仕組みとして合理的です。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「リベラルな人たちは一貫して「遺伝決定論」を批判してきましたが、よく考えるとこれは逆ですよね。先に述べたように、ノルウェーでは社会がリベラルになるにつれて遺伝率が上がっていった。男女平等になるほど性差が拡大するとか[* 18]、豊かな国では数学の平均得点が高いと同時に、成績に顕著な性差がある(男のほうが成績がいい[* 19])という研究もあります。相対的に男は数学・論理的知能が高く、女は言語的知能が高いので、社会がより自由になることで遺伝的な能力を発揮できるようになったからだとされます。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「アインシュタインには統合失調症の子どもがいるし、映画「ビューティフル・マインド」の主人公で、ゲーム理論でノーベル経済学賞を受賞した数学者のジョン・ナッシュは本人も統合失調症に苦しみ、子どもも重度の統合失調症です。高い知能と高い経験への開放性の組み合わせは、人類の文化に大きな貢献をしてきましたが、その才能はあやうい均衡のうえに成り立っているのかもしれません。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「でもより詳しく見ていくと、保守だからとって知能が低いとはいえない。シリコンバレーの著名投資家でトランプ支持者でもあるピーター・ティールは 13歳以下のチェス選手権で全米 7位にランキングされたし、トランプの最大の資金支援者であるロバート・マーサーは、ヘッジファンドで金融市場のモデリングをして大富豪になった数学とコンピュータの天才です。トランプの岩盤支持層が高卒や高校中退の白人労働者階級だとしても、共和党支持者の平均所得は民主党支持者よりも高い。これは、社会的・経済的に成功した人のなかに保守派が多いからでしょう。 そのように考えると、保守派の特徴は言語能力が低いことではないでしょうか。論理的・数学的能力が極端に高いと、心の理論がうまく構築できず、他者とのコミュニケーションに困難を抱えることがあるとされています[* 42]。その極端なケースが自閉症ですが、ティールやマーサーのパーソナリティをうまく説明しているように思えます。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「うーん、保守派にも言葉巧みな人はいそうな気がしますし、リベラルも言語化できずに感情任せの人もいるように思いますけど。ただ確かに、新しいことを説得的に示すためには、ジャン・ジャック・ルソーのように雄弁でなければならないでしょうね。 いずれにせよ人間の知能において、言語が大きなウェイトを占めていることは間違いありません。情報処理能力には、図形処理や数学的処理、記号的処理などさまざまな種類があるのに、人間という種は圧倒的に言語に依存しています。おそらく初期の人類にとって、音声を分節して、さまざまな概念を他者と共有する能力をもつことが適応的だったのでしょう。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「それでも言語的な能力にはかなりの個人差があって、言語的知能の高い子どもはあまり怒られない。なぜなら、自分の行動を説明できるから。 子どもがいたずらをしたとき、親や先生は「なんでそんなことをしたの!?」と叱りますよね。言語的知能の高い子どもはそのとき、「 ○ ○だと思ったから」「先生が × ×と言っていたから」「友だちがやっていたから」などと説明できます。 そうすると大人は納得して、「でもそれは間違っているからやっちゃダメ」と子どもを諭して話は終わる。ところが言語的知能の低い子どもは、そういう場面でうまく説明できないので、黙り込むしかない。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「言語能力には性差があって、女の子のほうが発達が早いですからね。子ども同士でも同じかもしれませんが、大人が子どもを「なんでそんなことをしたの!?」と怒るのは、因果関係がわからないと不安だからです。ホラー映画が怖いのは、殺人鬼の行動が常識では理解できないからですよね。同じように、自分の行動を説明しない子どもは、傍から見てとても不気味に感じる。 「なんでいつもそうなの!」「ちゃんと説明しなさい!」と大人の怒りがエスカレートすると、言語的知能が低かったり、心の理論がうまく構築できない子どもは、未知の世界を怖いところだと感じるようになる。そうなると、友人や知り合いだけの狭い世界で生きていくほうが快適になるでしょう。みんなが自分のことを知っていれば、いちいち説明する必要がないから。これが「保守」のパーソナリティだというのは、とても納得感があります。 それに対して言語的知能が高いと、問い詰められても説明できるので、未知の世界を恐れる理由がない。違う国の文化や宗教に興味をもち、留学したり海外で働いたりすることを面白そうだと思い、恋人をつくるときも、異なる文化圏の相手のほうが刺激的だと感じる──これは「リベラル」の典型的なパーソナリティです。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「偏差値でいえば 40から 60の範囲(全体の約 68・ 3%)の外見なら、その人を魅力的だと思う相手がどこかにいる。この実験では、あまりに美人だと男が怖れて近づかないとか、男はデートの誘いが成功するかどうかと外見があまり関係ない(おそらくはコミュ力が関係している)ことも示されていました。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「出会い系サイトや婚活サイトのビッグデータを分析すると、女性がモテる基準は年齢で、若いほどモテる。それに対して男性がモテる基準は年収というのが、一貫した傾向のようです[* 45]。これは進化心理学の予想と整合的で、利己的な遺伝子にとっては、若い女性ほどより多くの子どもを産めるから価値が高く、より大きな資源をもつ男を確保すれば、女性は自分と子どもの生存確率を高めることができる。このような主張はかつてなら「性差別」といわれたかもしれませんが、婚活サイトのデータがあまりにもあからさまなので、近年では批判の声もあがらなくなってきたようです。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「小児性犯罪には、言語的知能やコミュニケーション能力の低さだけでなく、それ以外にもいくつかの要因が関わっていると思います。例えば、ものすごく性的な関心が高いのだけど、自分の望む方向には行けないとか、衝動性が強すぎるとか。それから忘れてはならないのは、こういう形質は非共有環境も重要だということ。つまり、当たり前のことですが、たまたまそういう犯罪をしたくなるような状況と出会ってしまったことも大きな要因です。そういう状況に出会わせないというのが無理だとしても、そのときほかにもっと夢中になれるものがあれば、犯罪には至らなかったかもしれない。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「いまの話に関してもう一つ言えるのは、「頑張らなければいけない」という社会的な価値規範が強すぎるのではないか、ということです。親しくしている知り合いに宮城県・石巻の漁師さんがいるのですが、先日、「がんばろう!石巻」という大きな看板が嫌いで、その近くには絶対近づかないという話を聞きました。僕から見れば、彼自身はすごく頑張り屋というか、いろいろなことに自主的に取り組んでいる努力家だと思います。ですが、だからこそ、「みんなで一斉に頑張ろう」というムードにものすごく欺瞞を感じるというのですね。その気持ちはよくわかる気がします。 教育界にも「頑張って成績を上げよう」という風潮があります。日本社会全体にもそういう傾向が強い。「もっといい製品をつくろう」「いまよりもっとよい社会があるはずだから、みんなで頑張ろう」「女性も社会に出て活躍しよう」──間違ったことは言っていませんし、目標をもつのはいいことです。でも、それは「頑張れば必ずよくなる」とか「できない人は頑張っていない」という考えにすり替えられやすい。論理的には成り立たないはずなのに。その結果、「頑張れない人なんていないんだから、頑張らないのは心がけが悪い」と、できない人を追い詰めてしまっている。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「教育界にも「頑張って成績を上げよう」という風潮があります。日本社会全体にもそういう傾向が強い。「もっといい製品をつくろう」「いまよりもっとよい社会があるはずだから、みんなで頑張ろう」「女性も社会に出て活躍しよう」──間違ったことは言っていませんし、目標をもつのはいいことです。でも、それは「頑張れば必ずよくなる」とか「できない人は頑張っていない」という考えにすり替えられやすい。論理的には成り立たないはずなのに。その結果、「頑張れない人なんていないんだから、頑張らないのは心がけが悪い」と、できない人を追い詰めてしまっている。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「先ほど、経済学者のヘックマンの話が出てきました。彼自身はリベラルな学者ですが、教育で知能を向上させることに限界があることを認めています。少なくとも小学校入学後は、教育的な介入で子どもの学力を向上させることは困難だろうと書いている[* 54]。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「遺伝的な脳の配線が、一人ひとりの個性的な行動をつくり出している。ショパンコンクールで上位入賞( 1位なしの 3位)した横山幸雄さんは、子どもの頃にレコードを聴いていて、自分ならもっといい弾き方ができるのに、と感じたそうです。有名なパティシエだって、お菓子づくりは何だか面白そうと感じたのが出発点でしょう。社会的な評価などとはまったく別のところで、脳は価値判断や認知処理を行なっているということです。 このことは、カール・フリンストンの「自由エネルギー原理」とも整合的です。人間の脳は一種の予測器だという説ですが、とくに注目しているのは次の二つのネットワークです。一つは、後部帯状回から内側前頭前野、そして外側頭頂葉や海馬などにかけてのいわゆるデフォルトモード・ネットワークで、これは自己との関係が強く、非常に個人的なレベルで内面的な心的活動を担っています。もう一つは、前頭前野と頭頂をつなぐ実行機能ネットワークで、ワーキングメモリに関係します。こちらは、外的な情報や抽象的情報を論理的、能動的に処理するところです。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「日本人はうまく理解できないと思いますが、すくなくともアメリカでは、人種問題というのは「白人/黒人問題」のことですよね。黒人の社会階層が低く犯罪率が高いことを、右派は「自己責任」と批判してきた。それに対して左派は、奴隷制の歴史から連綿とつづく「制度的人種主義( systemic racism)」の結果だという。ここから、白人は生まれたときからレイシスト(人種主義者)で、ピープル・オブ・カラー(「有色人種」の政治的に正しい呼び方)は、仮に人種的な偏見や差別があったとしても、レイシズムとは呼ばないという奇妙な理屈が出てくる[* 66]。この論理だと、「黄色人種」である日本人は、どんな言動をしようとも「レイシズム」と批判されることはないという話になります。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「日本の場合、ヨーロッパにおけるユダヤ人のような、遺伝的に異なるヒト集団は存在しないでしょうが、これまでの理解とは違う遺伝クラスターが見つかる可能性はありそうです。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「行動遺伝学については 2000年に『心はどのように遺伝するか──双生児が語る新しい遺伝観』(ブルーバックス)を出版させてもらって以降、今日まで、それぞれの時点での最新の知見と、それをふまえた私論を、主として新書の形で、たびたび紹介させていただく機会を得てきた。遺伝環境問題という、多くの人が関心を持つであろう、しかしタブーに触れるようなテーマなので、それなりの社会的プレゼンスは示せているのかなという感触はありながらも、その反響の薄さにいささか失望し、むしろ不気味さすら覚えてきた。行動遺伝学の知見は、本来、人間存在の認識の本質に関わり、社会科学のパラダイムを根底から揺るがすかもしれないインパクトをもつと、密かに任じていたからである。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
「そもそも「行動遺伝学の知見は言ってはいけないことなんだぞ、だけどそれこそ暴露しなければいけない真理なんだぞ」という表現姿勢に偽悪性を感じたし、それが橘さんの芸風をもってするとここまでインパクトをもって世間にアピールできることが、自分が日頃取り組んでいる学問姿勢とあまりに相容れなくて、当惑しつづけた。 行動遺伝学が明らかにしてきたことは、確かに知能や学力や収入に遺伝の影響が大きいというタブー性を持つものもあるが、もっともっとずっと豊かな知見、社会のダイナミズムを理解するうえで重要な知見がたくさんあり(それをこれまでも紹介してきたつもりだ)、橘さんのストーリーだけで行動遺伝学を理解してもらっては困ると思って、 S B新書から『日本人の 9割が知らない遺伝の真実』を出させていただいた(ベストセラーへの便乗でもあったわけだが)。またその頃に一度、まだ当惑の気持ちを持ちながら、橘さんと雑誌で対談させてもいただいた。」
—『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書)』橘 玲, 安藤 寿康著
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今回の国家試験で先生が一押しされていた本なので
とりあえず読んでみた
1番刺さったページ
自分にはこれができる、これが好きだ、逆にこれは向いていないからやめておけ。もうした内側から沸き上がってくる感覚というのは、自分が生まれ持っている遺伝をもとに、環境が出会ったときに生じるのだと私は考えています。そういう内なる感覚に導かれて、人は間かに専念し、そこにリソースを集中的に投入することで才能が発現していくのではないでしょうか。
えーそうなのと驚きのページ
人間は年齢とともに経験を重ねていくわけですから、環境の影響が大きくなっていきそうなものですが、実際は逆なのです。
つまり、人間は年齢を重ねてさまざまな環境にさらされるうちに、遺伝的な素質が引き出されて、本来の自分自身になっていくようすが行動遺伝学からは示唆されます。
なかなかどうしてページ
いまの教育の現場には、「勉強をしなくてもいい」というメッセージを出す仕組みがなく、教育学にも勉強しなくてよいことを正当化する理論がありません。それがあらゆる「良いこと」を教育に取り込み、「千と千尋の神隠し」の「カオナシ」のように教育を肥大化させている元凶でしょう。教育の名のもとにすべては「良いこと」とされますから、その肥大化をもはや誰も止めようがないわけです。しかし素質が「ない」ことに無理にリソースをつぎ込むより、別のことにリソースをつぎ込んだ方がよほど合理的です。さもないと落ちこぼれという烙印を押して劣等感を植え付けるだけになってしまいます。素質がないことに気づくこともまた素質の発見なのです。
遺伝ではなく環境によって大きく成長できる分野は
スポーツや芸術以外は意外とあるが
環境問題の1番のボトルネックは
お金問題があるような気がする
日本ももれなく格差社会なので
読んでて切なくなる
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Posted by ブクログ
行動遺伝学者の安藤寿康(あんどう・じゅこう)氏による教育論。行動遺伝学では、人間のあらゆる行動には遺伝の影響が想像以上に大きいという。教育学の前提とされた真っ白な白板(タブラ・ラーサ)などなく、人が生まれつき持っている板は色も形も大きさもそれぞれ違う。教育は全能どころか、ほとんど意味が無いのだろうか。社会の環境整備が進み、各人の社会・経済的基盤が安定すれば、各人の自由度・選択の幅が広がり、結果として遺伝の影響が大きくなっていく。各人の遺伝的才能を十全に開花させるための環境的要因として、教育の意味がなくなることはないが、結果としての遺伝的才能の不平等がより明確になっていく。このどうしようも無い現実をどう捉えるのか、どう対処していくのか。教育云々よりそちらの方が大きな問題と思うのは私だけだろうか。なお、本書に収録されている双子のライフヒストリーはそれだけでも一読の価値あり。
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Posted by ブクログ
さらっと凄いこと書いてある。先生と相手から名乗られ偉そうにされるのが大嫌いだったし、先生と思いたい人は自分で決めたかったから学校とか先生という職業をずっと見下してたんだけど、この著者は学校は売春宿で先生は売春婦という言い方をしててびっくりした(笑) 私は売春婦は見下してないな。偉そうじゃないし、売春婦側から恋人面されるわけじゃないじゃん。学校の先生という職業がもう勘違いを職業化したみたいな存在だもんね。友達や恋人じゃないのに、私友達だよね?私恋人だよね?みたいな圧をかけられる感じに似てる。先生という職業は。
安藤寿康(あんどう・じゅこう)
1958年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、同大学大学院社会学研究科博士課程修了。現在、慶應義塾大学文学部教授。教育学博士。専門は行動遺伝学、教育心理学。主に双生児法による研究により、遺伝と環境が認知能力やパーソナリティに及ぼす研究を行っている。著書に『遺伝子の不都合な真実』(ちくま新書)、『遺伝マインド』(共著、有斐閣)、『心はどのように遺伝するか』(講談社ブルーバックス)など。
「例えば、職業満足度や離婚率です。 GFPが高い人ほど、現在就いている職業についての満足度が高く、離婚しない傾向がありました。当然のことながら、結婚は人間関係の一形態にすぎず、離婚しないのがいいとか悪いということではありません。ですが、現在の社会において離婚せずに結婚生活を維持している人の方が社会に適応していると見られることが多いのは確かでしょう。 GFPの高い人は、社会の多数派がよいと思うことに自分を合わせられる人ともいえます。だからでしょうか、主観的幸福感ともプラスの相関があります。一方で、 GFPが低い人は犯罪を犯しやすく、うつ病にもかかりやすい傾向が出ています。」
—『日本人の9割が知らない遺伝の真実 (SB新書)』安藤 寿康著
「I Qと GFPの間にはほとんど相関はありません。 IQが高ければ社会的に適応できる度合いは高まりますが、 IQが低かったとしても GFPが高ければ社会とうまくやっていけるというわけです。 GFPに関しては研究者の間でも激しい議論が続いています。実際に調査を行うまで私自身も信じたくなかったのですから、それも無理はありません。極論すれば、人間は頭のよし悪しと、性格のよし悪しという 2次元の値によって分類できるという、何とも身も蓋もないことになってしまうわけですから。そのどちらかでもよければまだ救いがありますが、その両方が低い人だって世の中にはそれなりにいることになります。そんなやばいことを科学の名のもとに世にいいふらしていいものでしょうか。」
—『日本人の9割が知らない遺伝の真実 (SB新書)』安藤 寿康著
「さて、体重の遺伝率が 88%、環境が共有・非共有合わせて 12%ということは、体重のばらつきをつくり上げている遺伝のばらつきのほうが環境のばらつきよりも 7倍以上大きいことを意味します。道理で、ダイエットしてもなかなか痩せられないわけですね。一方、 IQでは遺伝が 54%、環境が残りの 46%ですから、若干遺伝が大きいものの、遺伝と環境はほぼ半々程度ということになります。」
—『日本人の9割が知らない遺伝の真実 (SB新書)』安藤 寿康著
「 精神疾患や発達障害についても、図 7に見るように遺伝の影響が強く出る結果となりました。統合失調症や自閉症、 ADHDについては 80%程度が遺伝によって説明されます。 共有環境の影響が大きく見られたのは、物質依存に関する調査です。アルコールや喫煙、マリファナに関しては、特に共有環境が強くなっていますが、これは実際にモノが家に置かれている状況が共有環境として働いていると考えられるでしょう。」
—『日本人の9割が知らない遺伝の真実 (SB新書)』安藤 寿康著
「性格というものには、そうした非相加的な意味があるのではないでしょうか。私のカラープリンター理論が表しているように、性格は3つかせいぜい5つの特性を組み合わせることで無限の色あいを持った性格をつくり出せます。橙色が群青色よりも優れているわけでもなければ、黒が白より劣っているわけでもない。それぞれの色がそれぞれの働きをし、ほかの色との組み合わせの中で、それぞれに重要な意味をもって絵画の中で生かされている。そういうことが遺伝子レベルでもあるからこそ、非相加的遺伝効果が表れ、そして一見、適応的でないと思われる遺伝子も、今に残っているのではないかと推察されるのです。もしそうだとすれば、遺伝的な不平等と思われることも、実は不平等ではないといえるかもしれない。」
—『日本人の9割が知らない遺伝の真実 (SB新書)』安藤 寿康著
「しかし山形や中室らによる日本の 20歳から 60歳までの 1000組を超す大規模な双生児データからは、もっと興味深い結果が出ています。この研究でも全体でみると収入に及ぼす遺伝の影響は約 30%でした。ところが年齢まで考慮してみると、就職し始める 20歳ぐらいのときは遺伝( 20%程度)よりも共有環境( 70%程度)がはるかに大きく収入の個人差に影響していることが示されました。ところが年齢が上がるにつれ、その共有環境の影響はどんどん小さくなり、かわりに遺伝の影響が大きくなって、最も働き盛りになる 45歳くらいが遺伝の影響のピーク( 50%程度)になり、共有環境はほぼゼロになるのです(図 9)。若いときの初めの就職口は、しばしば親や親族のコネやツテ、助言などに影響を受けますので、収入もその影響を受けます。しかしそんな親の七光りが通用するのも初めのころだけで、だんだん独り立ちして自分の実力が問われるようになるにつれて、その人自身の遺伝の影響が強くなるというのは、非常にもっともらしいと思いませんか。」
—『日本人の9割が知らない遺伝の真実 (SB新書)』安藤 寿康著
「まず、家が金持ちでも貧乏でも、遺伝的に知能の高い人もいれば低い人もいます。親が金持ちの家では、子どもはおしなべていろんな環境にアクセスする機会が増えます。知的能力を必要とする活動から、あまり必要としない活動まで、子どもの接する環境の選択肢が増えることで、その子が本来持っていた遺伝的素養が発現しやすくなるわけです。 貧しい家の場合、環境の選択肢はどうしても少なくならざるをえません。親が知的でない趣味を好むのであれば子どももそれに引きずられますし、知的な活動に投資する親であれば、やはりその影響を受けるでしょう。子どもが選べる環境の選択肢が少ないため、遺伝的な素養(それがどんな素養かはわかりません)が発現する確率が金持ちの場合よりも低くなるわけです。」
—『日本人の9割が知らない遺伝の真実 (SB新書)』安藤 寿康著
「確かに、その子が明らかに評判の良くない札付きの不良だとしたら、こういうのも仕方がないでしょう。しかし一般論としてこのように子どもに教えることの危険性は、「人間を能力や家柄など、特定の属性によって選別し、排除してもいい」という価値観を子どもが学習してしまうことです。さらにその価値観は、自分だけは差別されない側にいると思い込む傲慢さ、あるいは逆に潜在的に自分自身が、差別される側に回りうるという恐怖心・猜疑心を学ぶことになります。その意味で、「あの地域の子どもと付き合ってはダメ」、「よその国から来たあの子とは縁を切りなさい」と圧力をかけるのはいいことではありません。」
—『日本人の9割が知らない遺伝の真実 (SB新書)』安藤 寿康著
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Posted by ブクログ
想像以上に遺伝によって人の能力は決められていることが分かる1冊
考えてみれば、遺伝(本人が持っている手札)は生まれつき固定されている。
その手札の中で何を切っていくか?が人生である。
特に記憶に残っている例は以下です。
20歳頃までは、共有環境(家族同士で似させようとする影響)が学力の70%を決める
年齢を重ねて、45歳頃になると共有環境の影響はほぼなくなり遺伝の影響が70%ほどになる。
要するに、結局は遺伝子が得意とすることに人の行動は集約されていく、と読み解きました。
①持って生まれた遺伝子で自然と活躍できる環境に巡り合う。
②本人が自分でそれを好きになり、その領域での取り組みを続ける。
③本人が続けている取り組みについて、さらに向上する環境をもたらす。
①~③の循環を子供にあげることができれば健やかに才能が発揮される。
世の中で必要とされる能力の出来不出来ではなく
子供が持っている遺伝で難なくできることをベースとして
支援してあげられる世の中になることを願います。