安藤寿康のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
久しぶりの満点レビュー。
橘さんの本は、いつもインフォーマティブで良いのだが、時に身も蓋もないことがある。この本では、もう少し常識人よりの安藤先生との対談の形をとっているので、いつもながらの的確な情報提供をしつつも、多少常識よりの結論に落ち着くことが多いのがよい。
最先端の研究者との対談でも、ぜんぜん位負けしないところは、さすが橘さんと思わせるが、それに対して実に誠実に議論を進めていく安藤先生も、尊敬に値する。
帯の煽り文句は、煽りすぎ。売れるかもしれないが、品位を落としていると思う。
タイトルの「運は遺伝する」というフレーズは、この本の中心的な話題である「知性が遺伝する」というのとはズレてい -
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Posted by ブクログ
行動遺伝学。面白い。
■脳は予測器
才能のある人は今よりも良い状態、完成形を予測し、そこに引っ張られるように学習してしまう
■知的好奇心の広さと知能に相関がある
パーソナリティの経験への開放性、つまり知的好奇心の広さに、知能との相関がある
■学校の影響は限定的
遺伝50%、家庭環境30%、学校は20%かそれ以下。
家庭環境も、その社会において一般的に行われているであろう子育てがあった上では子どもの発達への影響は大きくない。
*「学校」の部分は、自分の意志や教育、政策でコントロールできる部分
■没頭の対象に対する2つの基準
1.対象が学習性のある素材であるか
2.対象が「本物」につな -
Posted by ブクログ
人の能力や才能や性格や成績などがいかにして決まるかを、行動遺伝学の観点から見た本。
それらの50%は遺伝子で決まり、30%は環境、20%が本人の努力である。
つまり半分は遺伝で決まる、と。
生まれた時から遺伝子によってそれらの能力値が決定される。
行動遺伝学の研究によって一貫して結果として得られる、元も子もなくなる教育業界のある種タブーでもある、この本から学んだ事実をどう捉えるか。
事実は一つだが、
解釈は無数である。
人には向き不向きや好き嫌いがあるということ。
それは、どれだけ努力しても遺伝子的に不得手なことは、遺伝子的に得意な人間には敵わないということである。
それを受容す -
Posted by ブクログ
ダーウィンとゴルトンの写真からはじまる掴みはすばらしい。
内容もしっかりしていて(もちろん10年以上前だから分野的には古いのだろうが)、行動遺伝学とかでいろいろ気になっていたことがきれいに説明されている。ブルーバックスすげー。
遺伝よりもむしろ環境について考えたり。
「将来はわからない」という節の最後は「少なくとも遺伝であっても可変性があるということを知っていれば、現時点で自分の持っている性質だけで、自分の将来を決めつけてしまうという過ちから逃れることができる。遺伝的な影響とは、静的なものではなく、ダイナミックなものなのだ。」p.133 -
Posted by ブクログ
おもしろかったーこれ! 確かに新書にしとくの惜しいわ。
「行動遺伝学」っつーのの本で、一卵性双生児と二卵性双生児とふつーの人とを比べながら、遺伝の影響と環境の影響を測ってみよう! という学問。双子の研究は事例集めるの大変だし、倫理的な問題もあったりするので難しいと思うけど、それだけにとても有意義。優生論の絡みもあるし、教育論の絡みもあるし、おとーたん、おかーたんの気になるところでもあるし。
行動遺伝学の事例で有名なのは、オオカミに育てられたふたごの「アマラとカマラ」のお話。環境も教育も大事だよねという結論に導くためによく引用される、それはそれで正しいと思うけれども、そもそも「才能」「資質 -
Posted by ブクログ
ネタバレ結局、人の形質は遺伝と非共有環境で決まる。
つまり、才能は遺伝と運で発現する可能性がある。
印象的なところは一卵性双生児の収入の差について言及したところだ。これは、一方が大学に行き、一方はそのまま働いたとき、その後の収入の差はどうなったかという研究だ。ここで示されたのは、年がたつにつれ収入はほぼ同じになったということだ。つまり、収入については、どのような環境に身をおいたからその収入に行き着いたわけではなく、遺伝した能力が年をとるにつれ、顕になっていることが示された。
結局、遺伝によりきまるので、どれだけ自分が頑張るかも遺伝子に刻み込まれているのかもしれないと思った。
また、それほど遺伝が -
Posted by ブクログ
ネタバレ一読推奨。
親として肩の荷が軽くなる本です。
【全体要約】
結論は、学力や身長のような指標には相応の遺伝率が存在しつつも、学習機会・家庭文化・しつけの在り方など“環境”も確かに効く、ただし効き方は領域ごとに異なる――という二層構造である。教育の実践論としては、読み聞かせ等の文化的環境の付与は効果があり、統制的・暴力的な関わりは逆効果になり得る一方、人格・社会的態度は「非共有環境」主導で親の影響は限定的、という冷静な見取り図が提示される。
章立て(本文)
第1章 行動遺伝学の基本:遺伝×環境の相互作用
第2章 遺伝率とランダムネス:きょうだい差と「遺伝は遺伝せず」
第3章 学力・知能:共有環