安藤寿康のレビュー一覧
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ダーウィンとゴルトンの写真からはじまる掴みはすばらしい。
内容もしっかりしていて(もちろん10年以上前だから分野的には古いのだろうが)、行動遺伝学とかでいろいろ気になっていたことがきれいに説明されている。ブルーバックスすげー。
遺伝よりもむしろ環境について考えたり。
「将来はわからない」という節の最後は「少なくとも遺伝であっても可変性があるということを知っていれば、現時点で自分の持っている性質だけで、自分の将来を決めつけてしまうという過ちから逃れることができる。遺伝的な影響とは、静的なものではなく、ダイナミックなものなのだ。」p.133 -
Posted by ブクログ
おもしろかったーこれ! 確かに新書にしとくの惜しいわ。
「行動遺伝学」っつーのの本で、一卵性双生児と二卵性双生児とふつーの人とを比べながら、遺伝の影響と環境の影響を測ってみよう! という学問。双子の研究は事例集めるの大変だし、倫理的な問題もあったりするので難しいと思うけど、それだけにとても有意義。優生論の絡みもあるし、教育論の絡みもあるし、おとーたん、おかーたんの気になるところでもあるし。
行動遺伝学の事例で有名なのは、オオカミに育てられたふたごの「アマラとカマラ」のお話。環境も教育も大事だよねという結論に導くためによく引用される、それはそれで正しいと思うけれども、そもそも「才能」「資質」がなければ教育も環境も無駄になる。教育者や親をやる人には、才能や資質を見抜く力が、まず求められる、みたいな話。
英語の授業の実験で、双子ちゃんをたくさん集めてやった話が面白かった。
いわゆる講義形式と、おしゃべりを通して学ぶ形式を、たくさんのふたごを2つのクラスに分けてそれぞれ学ばせて、結果を比較する。それぞれの授業形式の特性がはっきりと出てて面白い。結論は、「どっちもいいところがある」「子供の気質にあわせるべき」みたいなこと。そらそーだよな。
検証しましたというには被験者の数が少ないのかも知れないけど、あんまり欲張り言えないだろうからなーこの分野。
はぁ、久々にあかでみっくなご本読んじゃった、少しはかしこくなったかしら。 -
Posted by ブクログ
双子研究は、行動に対する遺伝の影響を明らかにする。
家庭環境、育て方などの環境は、遺伝の影響と比べると極めて低い。
人間の遺伝子はおよそ2万3千個程度で、各々の役割もわかってきているが、行動をそれで説明できるのはせいぜい1%程度で、実は行動のパターンは複数の遺伝子によって形作られており、それでかなり説明できる。
心が遺伝するかはわからないが、行動のかなりの部分が遺伝で説明できるのなら、心の動きに遺伝が大きく関係していると言って良いのでは。
もうこんな研究はビッグデータの世界だね。統計学が最強の学問だと思うわ。また、この領域ではエピジェネティック(後天的遺伝形質)の分野がこれから開拓するべき領域らしい。これを研究することにより、突然変異や進化の仕組みなどがわかるかも。 -
Posted by ブクログ
面白かった!
「遺伝は遺伝せず」「基本はメンデルにあり」「すべてはメンデルの法則にあり」(とにかくメンデル。笑)「形質の組み合わせはランダムに遺伝する」「正体はポリジーンのランダムな伝達」の項目の通り、遺伝っていうと「親に似る」というイメージがあるけど、「親に似ないことも遺伝」であることが分かった。
印象的だったのは、親や家庭の環境がかかわるとされる学力、知能、非行、飲酒喫煙など、多くの側面で、家庭内の要因の影響がほとんどないということ(あったとしてもその効果量は数%程度、圧倒的に大きい遺伝の影響や非共有環境の影響と比べると小さいもの)。なんか気が楽になる。(笑)
最近は「親ガチャ」とか「体験格差」とかいろんな言葉が増えてきて、子育てするにも窮屈な雰囲気があるけれど、結局親が努力するべきことは「親がまっとうに生きている姿を見せること」だけっぽい。虐待とか明らかに悪影響を及ぼすことを避けるのは当たり前だけど、「〜すべき」に縛られすぎず、自分も楽しく子育てしていけたら良いな。
タイトルの問いに対しては「教育が遺伝を出現させる」的なことなのかなって思った。
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Posted by ブクログ
ネタバレ結局、人の形質は遺伝と非共有環境で決まる。
つまり、才能は遺伝と運で発現する可能性がある。
印象的なところは一卵性双生児の収入の差について言及したところだ。これは、一方が大学に行き、一方はそのまま働いたとき、その後の収入の差はどうなったかという研究だ。ここで示されたのは、年がたつにつれ収入はほぼ同じになったということだ。つまり、収入については、どのような環境に身をおいたからその収入に行き着いたわけではなく、遺伝した能力が年をとるにつれ、顕になっていることが示された。
結局、遺伝によりきまるので、どれだけ自分が頑張るかも遺伝子に刻み込まれているのかもしれないと思った。
また、それほど遺伝が人生に影響を及ぼすなら、親の才能や能力について分析することで自分の才能や能力の発現のヒントになるのではないかと思った。
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Posted by ブクログ
ネタバレ一読推奨。
親として肩の荷が軽くなる本です。
【全体要約】
結論は、学力や身長のような指標には相応の遺伝率が存在しつつも、学習機会・家庭文化・しつけの在り方など“環境”も確かに効く、ただし効き方は領域ごとに異なる――という二層構造である。教育の実践論としては、読み聞かせ等の文化的環境の付与は効果があり、統制的・暴力的な関わりは逆効果になり得る一方、人格・社会的態度は「非共有環境」主導で親の影響は限定的、という冷静な見取り図が提示される。
章立て(本文)
第1章 行動遺伝学の基本:遺伝×環境の相互作用
第2章 遺伝率とランダムネス:きょうだい差と「遺伝は遺伝せず」
第3章 学力・知能:共有環境が効く領域と親の出番
第4章 パーソナリティ・発達特性:非共有環境と親影響の限界
第5章 社会階層・制度・自由:遺伝の可視化と抑圧のリスク
第6章 親と教育実践への含意:何を“足し”、何を“引く”か
各章の詳細(本文)
第1章 行動遺伝学の基本:遺伝×環境の相互作用
ふたご研究は遺伝の影響を測るが、同時に環境の影響も浮き彫りにする。
「遺伝の影響を受ける」と「遺伝で決まる」は別概念。決定論を退ける立場。
遺伝子は環境に応じて発現を変える。親の関わりも“環境”として遺伝子表現に影響。
子は環境の受け手であると同時に、遺伝的素質を通じて環境を“能動的に選び・解釈”する。
教育議論では、遺伝と環境の分割ではなく“相互作用の設計”が焦点となる。
第2章 遺伝率とランダムネス:きょうだい差と「遺伝は遺伝せず」
身長の遺伝率は高い(80–90%)が、残りは環境で説明される。
能力・顔立ち等は“多因子”で、メンデルの独立の法則に従う組合せのランダム性が大。
同じ親から生まれても、きょうだいの外見・能力差は“ありふれた現象”。
「遺伝は遺伝せず」とは、個別の遺伝子が子へ必ずしも同じ形で伝わらないという確率論的含意。
子を“親の複製”とみなさず、独自の個性として観察する姿勢が重要。
第3章 学力・知能:共有環境が効く領域と親の出番
知能・学力には共有環境(家庭の学習資源、語彙・読書文化など)が顕著に現れる領域がある。
読み聞かせ・読書機会は成績分散の一部を有意に説明し、遺伝的素質に関わらず“上積み”が可能。
「勉強しなさい」は平均的には“成績が良いから言わなくて済む”という逆因果の含み。
それでも遺伝要因は無視できない規模(しばしば20–50%超)。
親の働きかけと子の遺伝的素質の“駆け引き”が、行動・成績の動態を形づくる。
第4章 パーソナリティ・発達特性:非共有環境と親影響の限界
パーソナリティや社会的態度は、共有環境の影響が乏しく、非共有環境(個々の経験)が主。
同じ家庭で育っても、別々に育っても、人格の類似度は大差ないという知見。
多動・不注意の高い子ほど、統制的子育てが問題行動を増幅しやすい(悪循環に注意)。
遺伝子検査の“神話化”には警戒が必要。実際の実践的行動変容の方が予測力を持つ場面が多い。
「まっとうな環境」(虐待・極端な貧困なし、社会に開かれている)を前提にすれば、親の効果は限定的。
第5章 社会階層・制度・自由:遺伝の可視化と抑圧のリスク
高い社会階層では、選択の自由が広がることで遺伝的個人差が“表出”しやすく、相対的に遺伝率が高く見える。
低い階層では、選べる環境の幅が狭く、共有環境(親の作る環境)の寄与が大きく出やすい。
制度や文化が強く統制すると、遺伝の影響は“見えにくく”なるが、消えてはいない。
自由が拡大すると、遺伝的ばらつきがより可視化され、分断の力学が強まる可能性。
政策は、自由と包摂の両立を意識し、環境改善による“発現機会の平準化”を狙うべき。
第6章 親と教育実践への含意:何を“足し”、何を“引く”か
“足す”べきは、読み聞かせ・音楽・文化的刺激・規律ある生活習慣などの環境的資本。
“引く”べきは、暴力・恐怖・過度の統制。とくに特性に課題のある子ほど逆効果になり得る。
子の反応は遺伝的素質を通じて生じる“選択と解釈”であり、親の意図通りには受け止められない。
親の最重要任務は「親以前に一人の人間として、まっとうに生きる姿を示す」こと。
子どもが“思い通りにならない”ことを前提に、投資は冷静に、しかし機会提供は怠らない。
各章の要約(本文)
第1章 要約:遺伝は“決める”のではなく“影響する”。環境は受動的に与えられるだけでなく、子の遺伝的素質によって能動的に選ばれ・解釈される。教育はこの相互作用をどう設計するかが核心である。
第2章 要約:高い遺伝率でも、個別の発現は確率的組合せで決まる。きょうだい差は当然であり、子を独自の個として観る態度が必要だ。
第3章 要約:学力には共有環境が効く領域がある。読み聞かせ・学習資源の付与は有意な上積みを生むが、同時に遺伝の分も確かに存在する。
第4章 要約:人格・社会的態度は非共有環境主導で、親効果は限定的。統制的育児は特性によって逆効果になり得るため、関わり方の修正が実践的論点。
第5章 要約:自由度が高いほど遺伝的個人差は表面化しやすい。制度はそれを抑えも可視化もする。環境整備は“機会の平準化”として位置づけるべき。
第6章 要約:足すべきは文化資本と秩序、引くべきは暴力・恐怖・過干渉。親は“生き方のモデル”を示しつつ、子の独自性と反応の多様性を織り込む。 -
Posted by ブクログ
子育てをしていくにあたり、多くの親が何度かは考えたことがあるであろう「遺伝」と「教育」の関係について、行動遺伝学の専門家が、豊富なふたご研究のデータ等をもとに解説する。
人の能力や興味・関心は遺伝に規定されているのだろうか。
それとも、教育や家庭環境により後天的に形成されるのだろうか。
これらの疑問について、行動遺伝学の分野においては、膨大なふたご研究の蓄積によって、実は能力や性格面・行動面における特質、精神的な疾患の発症傾向などにいたるまで、統計的に処理された傾向が既に導き出されている。
ふたごを研究することで、それぞれの側面が「遺伝」による影響が大なのか、「共有環境」(ふたごで言えば二人ともに共通する環境。主に家庭環境)による影響が大なのか、「非共有環境」(それぞれが個々に経験する環境)による影響が大なのかが整理されるというわけだ。
そしてみんなが気になる「知能」や「学業成績」は、遺伝と共有環境(言ってしまえばほぼ両親の影響)でその8割が説明できてしまうという。
しかし、本書の内容にとって上記の部分は核心というより前提。大事なのはそこからで、じゃあ遺伝によって殆どが決まってしまって、手の施しようがないのか、というとそうではない。
あくまで潜在的にそれらの傾向を秘めているのが遺伝要因によるもので、その能力や特質を開花させるのは教育であり環境であるということなのである。
本書を読むと、「遺伝」を過大評価する考え(結局はもって生まれた才能だよ、という価値観)とも、「教育」を過大評価する考え(子どもの将来は親による教育投資で左右できる、という価値観)とも、程よく距離を置けるのではないだろうか。
遺伝が与える影響の大きさに驚きつつも、子どもを健やかに成長させ、その特質を発揮するために親の関わりは不可欠だし、逆に親が一所懸命頑張っても子がある分野(例えば学力)に力を発揮できないとしても、それは親の教育の問題でもなければ、子ども本人の努力不足のせいでもないとも言える。
親として出来ることはする。
でも、その結果子どもがどのように育っていこうとも(公序良俗に反するのでなければ)それを大らかな気持ちで見守ろう。
そういうバランスが、健全な子育て・教育観なのかなという気持ちにさせてくれる一冊。 -
Posted by ブクログ
遺伝や進化に関連する新書を立て続けに読んで(聴いて)いた中の一冊。長年行動遺伝学の研究に携わってきた著者が著者自身の研究データや成果のほか、最新の研究で明らかになっていることを解説する。
遺伝の影響の大きさを指摘することにはどこか優生学的な気配がついて回るのでタブー視されがちだが、科学的にはどこまでわかっていて、そのことは私たち一人ひとりが生きる上で、あるいは私たちが生きる社会のあり方を考える上でどのように活かしうるのかを考えることは重要だと感じる。
特に面白かったし一般的なイメージとずれるであろう部分は、遺伝か環境か、ではなく遺伝は環境と相互作用するということやどのような環境で育つかや環境からの刺激の受け方も遺伝に左右されることも含めて年齢が上がるほど遺伝の影響は大きくなる、といった話。
同じく安藤寿康さんの『教育は遺伝に勝てるか?』を紙版で購入したので併せて考えたい。