安藤寿康のレビュー一覧
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子育てをしていくにあたり、多くの親が何度かは考えたことがあるであろう「遺伝」と「教育」の関係について、行動遺伝学の専門家が、豊富なふたご研究のデータ等をもとに解説する。
人の能力や興味・関心は遺伝に規定されているのだろうか。
それとも、教育や家庭環境により後天的に形成されるのだろうか。
これらの疑問について、行動遺伝学の分野においては、膨大なふたご研究の蓄積によって、実は能力や性格面・行動面における特質、精神的な疾患の発症傾向などにいたるまで、統計的に処理された傾向が既に導き出されている。
ふたごを研究することで、それぞれの側面が「遺伝」による影響が大なのか、「共有環境」(ふたごで言えば二人 -
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遺伝や進化に関連する新書を立て続けに読んで(聴いて)いた中の一冊。長年行動遺伝学の研究に携わってきた著者が著者自身の研究データや成果のほか、最新の研究で明らかになっていることを解説する。
遺伝の影響の大きさを指摘することにはどこか優生学的な気配がついて回るのでタブー視されがちだが、科学的にはどこまでわかっていて、そのことは私たち一人ひとりが生きる上で、あるいは私たちが生きる社会のあり方を考える上でどのように活かしうるのかを考えることは重要だと感じる。
特に面白かったし一般的なイメージとずれるであろう部分は、遺伝か環境か、ではなく遺伝は環境と相互作用するということやどのような環境で育つかや環 -
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社会が豊かになるほど、貧しい家庭よりも豊かな家庭ほど遺伝率が上がる、知能の遺伝率は年齢と共に上がるが、それは20歳位までで、その後の遺伝率の上昇はフラットになる、しかし遺伝子が人生を変えるように、環境も遺伝子の発現の仕方を変える、パーソナリティと知能の関係、知能と政治イデオロギー、知能と障害や精神病との関係など興味深い話満載だった。衝撃的な内容もあったが、結局、自分のできること、得意なことを見つけて、それを追求していくことが一番、というごく普通の結論に至ったことが面白い。圧倒的な才能も圧倒的な努力も答えになっておらず、2割の努力で8割のライバルに勝てることを目標にするのが良いというのは少し救い
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黒色人種は遺伝の影響で持って生まれたバネが違うから、短距離走で勝てないのは当然、などと普段耳にしていましたが、なるほど確かに身体能力について遺伝の影響が話題に上がることはあっても、知能については遺伝の影響だと話題に上がることはあまりありません。
「努力すれば東大に行ける」などと言いますが、「努力できるかどうか」も含めて遺伝で決まっていると言われると、最初から決まっているのかもしれない。
生物学を専攻していても、少し内容は難解でしたが、結局ほとんどが遺伝で決まってしまうという内容で、なぜかそれを声を大にして言うことはタブー視されている。でも、だからこそ、遺伝の影響は無視しちゃいけない、念頭に置い -
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一言要約:何度でも咲き続ける、その為の旅(移動)が人生
帰結としてはロバート・キーガン氏の成人発達理論への通底、養老孟司氏の「元来人は変わっていくもの」との示唆に共通する
人は成長とともに遺伝的素質が多く発現してくる(つまり変わる)為、それに合わせて自分が咲ける環境に身を置くことで社会の構成員としての役割を全うし、幸福を得られる というのが、普遍的な「人類の生存と繁栄の仕組み」なのだろう
特に、変化の早い現代では自身の素質発現と環境の変化の両軸(視点)で見の「咲ける場所探し」が必要にもなるとみる
一方で、流行りの「自分探しの旅」のような、旅自体を目的にしていては若いエクスプローラー時期はいい -
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学習および教育が社会的な行為であることを、様々な他種の生物と比較しながら生物学の観点で考えていく。
また教育の定義を論じている部分で、教育は利他的な行為で、教育者は直接の利益を被らないというのも成程〜となるが、周り回って社会全体の利益になることに気づき、教育の場を作り上げてきた人類の歴史は興味深い。そしてその難しさにも思い至る。
乳幼児のナチュラル・ペタゴジー(自然の教育)実験には驚いた。
ヒトは産まれた後、一体いつ、どのようにして、「公」と「私」の社会性を身に付けるのだろう。。。周りにいる人間を観察することによってなのか。それがまさに学習なのか。社会的な振る舞いを1歳やそこらで会得している -
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行動遺伝学の専門家の対談形式で話が進んでおり、かみ砕いて説明しているにしても頻出する専門用語と科学的なロジックを理解しながら読み進めるのに、かなりの労力を要する本であった。
知能やパーソナリティのかなりの部分は遺伝によって決するということや、遺伝子解析から個人の将来をある程度予測できるだろうという衝撃的な見解を、エビデンスを示して説明している。キリスト教が地動説を感情的に否定したように、行動遺伝学を感情論だけで否定や批判することの社会損失についても、合理的な説明がなされている。
結局は、人間の自由意志も遺伝の支配から脱却できないといわれると寂しくも感じるが、人間である以上その事実も含めて -
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《感想》
面白かった。行動遺伝学それ自体にも興味を持った。良くも悪くも「遺伝で決まる」と言えるようなものはほとんどなく(身長でさえそう)、確率的にブレることもあれば、共有環境(親の育て方)だったり、非共有環境(友人関係・学校やクラスの影響)も無視できない。「はっきりとしたこと(分かりやすいこと)は言えない」が真実といえるだろうか。その中でも何がどの程度遺伝や教育で説明できるか、などを統計等を駆使して科学的に追究している点が興味をそそられた。双子を追う、というのも面白いと感じた。図の見方が分かりにくい箇所が何点かあったが全体的によく書かれた本だと思う。ざっと読むというよりはじっくり読むタイプの本