安藤寿康のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
双生児の研究に30年以上携わってきた行動遺伝学の第一人者である著者が、子どもの教育と遺伝との関係について、科学としての行動遺伝学の知見に基づいて解説。
「いかなる能力もパーソナリティも行動も遺伝の影響を受けている」という科学的事実を指摘しつつ、「遺伝によって決まっている」ということは否定し、ヒトは遺伝の影響を受けながら環境に対して能動的に自分自身をつくり上げている存在だとして、子育て、教育におけるヒントを提示している。
思っていたよりも能力やパーソナリティ等において遺伝の影響が大きいということを理解したが、遺伝的素質を発揮させるためにも親による教育が一定の役割を果たすということも認識し、まさに -
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教育は遺伝に勝てるほど強くはないが、遺伝をこの世界で形にしてくれるのが教育である。
親がどのような子育てをしようと、人は遺伝的素質を通して自分の人生を築き上げていく。
逆にいえば、教育で触れることがなければ遺伝的素質を発揮する機会がないかもしれない。
(例えば数学が得意な遺伝子を持っていても、数学に出会わなければ…ということ)
また環境が狭ければ狭いほど環境に左右され、自由度が高ければ遺伝に左右される。基本的には大人になるにつれて自由度が高まるので、遺伝の影響が高くなる。遺伝と教育が逆転するのは15歳と言われている。
学校は良い学歴を勝ち取るという形式的な側面だけでなく、一人一人の個性を文 -
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ネタバレ遺伝について興味があり、この手の話は何冊も読んできました。
結果、無慈悲にも遺伝は努力ではどうにもできないという研究結果がいくつもあることを知りました。
本書でもそれを裏付けた内容ですが、遺伝的特徴を活かしたアプローチをすることによって教育が勝つというか、教育の意味があるんだなあと思いました。
私には子供がいないので、もっぱら自分の親を思い浮かべで読みましたが、実際結婚し親元を離れて何十年も経った今の方が親の遺伝の影響を受けているとあらためて感じます。将来、両親のような心待ちで老後を過ごせる可能性が高いことはとてもうれしく思っていますが、今自分が出来ることも自分の特性を鑑みながら努力していき -
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遺伝子解析の行末(ヒトとしてのタブーに入り込む)
遺伝子学の世界は、遺伝子検査によってヒトの知能、病気や性格など人生でのイベントが見えてくる、という時代になった。「環境にもよる」という説に対しても遺伝子学は人間のタブーの世界「言ってはいけない」域に入りつつある。それはゲノムの編集により病気や性格などを変更することも可能になり、身体的、精神的にも人的操作で変更できる世の中になる、可能性もある、ということだ。 また、遺伝子学の研究にはさらに何歳ごろに死ぬのかなど生まれながらにある遺伝子で病原の発生時期なども解析できる、という未知なる世界へ踏み込んでいると言う。本書は専門用語も多く理解し難い部分も多 -
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遺伝の話には抵抗がある。優生学とナチスの話は避けては通れない。でも、すでに明らかになったことがたくさんあるので、それを知ってから、倫理的に考えていくことが大切なようだ。
遺伝と共有環境、非共有環境という、双生児研究の基本的な話が主となる。心理学の教科書にグラフが載っているやつだ。あれをどう見るのか、解説してくれる。
DNAのアノテーションとか、より詳細な話はその次に出てくる。ポリジーンの話。
読んでみて残っているのが、セットポイントの話だ。遺伝が決めるのはセットポイント。そこから環境や教育や努力でポイントを頂点とした正規分布になる。セットポイントを遺伝によって正規分布になる。
統計学の授業で -
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一卵性双生児の研究を中心に、人間の遺伝の仕組みやを解説してくれる行動遺伝学の入門書。遺伝について、なんとなく親に子が似ることでしょ、くらいの認識でいた人間としては、目からうろこの知識が多く、すごくためになった。
異なる人生を歩みながらも、どこか似た経験をする双子のライフストーリーも面白かった。が、個人的に、印象に残ったのは、一番最初に説明される「遺伝は遺伝せず」の話だった。
中学だったか、高校だったかで学んだ記憶のある「メンデルの法則」について説明している部分である。遺伝子には、優生のものと、劣性のものがあり、純血の緑色と黄色のエンドウマメを掛け合わせても、黄色のものしか生まれない。改めて緑 -
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ネタバレ向かないことを頑張るよりも、自分自身の特性を伸ばし活用していくことが重要だと感じた。
自分にとって何が向いているかということを知るために、様々な経験が必要だと感じたし、将来子供ができたときには様々な経験をさせたいと思った。
歳をとればとるほど、遺伝による生まれ持ったその人らしい特性が発現してくると言う記述にはとても共感ができた。
親元を離れて暮らすようになってから、5年以上が経つが、年々行動が親に似てきていると感じている。
親に対して尊敬できるところはあるが、親のようにはなりたくないと思っているので、複雑な気持ちでいる。
私は遺伝に抗っていきたい。
筆者は向いていることを頑張れよと主張して -
Posted by ブクログ
教育は遺伝に勝てない。言い換えると、遺伝は教育に負けるほど弱くはない。しかし、遺伝(資質)の開花には、それが芽吹くための環境が必要である。
子を育む環境は、親をはじめとした周囲の保護者、隣人によって作られる。特に親は、その子が持って生まれた素質が健やかに花開くよう機会を作ること、興味を持ったことを応援することに努めることが望ましいと思った。
反対に親が子をこうしたい、と熱心に努めても、子は与えた環境の幾分かを、子の持つ遺伝の範囲でのみ受け取る。よって教育による上積みはあるものの子が親の思う通りに育つことはない。
教育とはその程度と割り切り、棍を詰めすぎることなく、親子共々、日々を機嫌良 -
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Posted by ブクログ
興味深い内容でした。
P42:『親からの形質の伝達』に記載されている図、なるほどと思いました。
以下引用
P6:
『世界は遺伝ガチャと環境ガチャでほとんどが説明できてしまう不平等なものですが、世界の誰もがガチャのもとで不平等であるという意味で平等であり、遺伝子が生み出した脳が、ガチャな環境に対して能動的に未来を描いていくことのできる臓器なのだとすれば、その働きがもたらす内的感覚に気づくことによって、その不平等さを生かして前向きに生きることができるのではないでしょうか。』
P227:
『逆に「優性的現実」、すなわち遺伝的に優秀な人が有利に生きられる社会はそのまま残ってしまった』
P246: -
Posted by ブクログ
橘玲による『言ってはいけない 残酷すぎる真実』が引用したのが著者の本。同著作のベストセラーに便乗したのだとあとがきで白状するが、橘玲は面白そうな論文や著作を紹介するマーケター的な存在であり、研究している同氏には便乗する資格は十分ある。
運動能力や身長などは、遺伝による影響をすんなりと受けている。見た目もそうだ。それなのに、知能だけは、「(勉強の)努力が報われる」という事を信じていて、このことに言及する事はタブー視されている。いや、それで良いのだと思う。知能の高い人間はこの本質に気づいても、実害が無い。知能の低い人間は、この本質に大半は気づかない。で、極力、前向きに努力をし、限界はあるが、少し -