あらすじ
遺伝が学力に強く影響することは、もはや周知の事実だが、誤解も多い。本書は遺伝学の最新知見を平易に紹介し、理想論でも奇麗事でもない「その人にとっての成功」(=自分で稼げる能力を見つけ伸ばす)はいかにして可能かを詳説。教育の可能性を探る。
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Posted by ブクログ
どんな人も遺伝的特性があるので、それをうまく発現していける環境作りをできる範囲でやろう。という感じ。
どんな言葉をかけ、働きかけ方は人それぞれだが、受け取りかたも人それぞれ。
どうしてもできるようにならんといけんことなどは強制的に教育がいるが、最終的にその人らしく生きられる道を見つけられるようにしてあげたい。
そして、学校というシステムだけで狭い視野で考えず、生きていく上での特性をイメージして接するようにしたいと思った。
とてもとても面白かった。とくに最後から2番目の章と、最後の章。
人に話したくなる内容だった。
Posted by ブクログ
行動遺伝学者の安藤寿康(あんどう・じゅこう)氏による教育論。行動遺伝学では、人間のあらゆる行動には遺伝の影響が想像以上に大きいという。教育学の前提とされた真っ白な白板(タブラ・ラーサ)などなく、人が生まれつき持っている板は色も形も大きさもそれぞれ違う。教育は全能どころか、ほとんど意味が無いのだろうか。社会の環境整備が進み、各人の社会・経済的基盤が安定すれば、各人の自由度・選択の幅が広がり、結果として遺伝の影響が大きくなっていく。各人の遺伝的才能を十全に開花させるための環境的要因として、教育の意味がなくなることはないが、結果としての遺伝的才能の不平等がより明確になっていく。このどうしようも無い現実をどう捉えるのか、どう対処していくのか。教育云々よりそちらの方が大きな問題と思うのは私だけだろうか。なお、本書に収録されている双子のライフヒストリーはそれだけでも一読の価値あり。
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妊娠を機に読んだ本その弐!教育と遺伝に関してデータをもとに様々な比較をしてくれて面白かった〜〜!そしてこれから子育てをする私の肩の力を抜いてくれました。仕事にも関係するので、読んで良かったな♩
Posted by ブクログ
これは哲学書ではないかしら?
一卵性双生児の事例、一緒に暮らす双子、別々の養父母に育てられる双子、
それぞれの共通点、このあたりはなかなか読ませる。
全く違うルートをたどっても、なぜか同じ特性を持つ、
そんな事例がたくさん紹介される。
これだけ読んだら、遺伝がすべて、教育なんて関係ない、
となりそうだが、著者はそれは否定する。
教育によって、あるいは社会の環境によって、
発現する遺伝子、眠る遺伝子、そういった例を紹介する。
・・・そういえば最近読んだ発達障害の本も、
環境が違えば「発達障害」などと言われず、のどかに暮らせる人が多かったはず。
やはり環境は大事。
とはいうものの、さらに事例を出して、どんな教育をしても、
受け止め方次第で結局遺伝が勝つ、みたいな事例で終わらせる辺りが著者のにくいところ。
よく食べる、別々の養母のもとで育った双子に対するそれぞれの養母の言い分、
せっかく料理を作ってもなんでもシナモンをかける。という養母と、
シナモンさえかければ何でも食べてくれる、という別の養母。
面白すぎる。
要はとらえ方。
この辺はもはや遺伝でも教育でもない。
親が子をどう育てるか、悩ましいところだ。親もまた未完成。
1歳11か月になる孫と1日いっしょにいると、この才能?を伸ばしてあげたい、
と思う爺心。親たちとコミュニケーションして、任せるしかないと思うけど。
孫には自分の遺伝子が間違いなく入っているわけで。
考えさせられる。
はじめに
ふたごが教えてくれること/「遺伝によって決まる」の誤解/なぜ子育て本通りに育つ子がいるのか
第1章 遺伝は遺伝せず――基本はメンデルにあり
『エデンの東』に見る遺伝/遺伝は遺伝せず/すべてはメンデルの法則にあり/「隔世遺伝」はこうして起きる/形質の組み合わせはランダムに遺伝する/実は特殊だったメンデルの法則/正体はポリジーンのランダムな伝達/プロフィールのランダムネス
第2章 あらゆる能力は遺伝的である
ある一卵性双生児の軌跡/事例1 《写真に目覚めたふたご》(1994年生まれ、聞き取り時27 歳、男性)/体が思うように動かない、自分が出せない/留学先での衝撃的な出会い/別々に育てられたふたごの類似性/運命と遺伝の考え方/一卵性と二卵性を比べる/パーソナリティは親の育て方と関係ない?/ポリジェニックスコアから将来の学歴がわかる
第3章 親にできることは何か――家庭環境の効き方
親が子どもに与えられるもの/ヒトは教育する動物である/映画『万引き家族』で語られた「教育」/遺伝と環境を分けて考える/親の育て方が子どもの学力にどう影響するのか/「親の努力」の厳しい現実/収入や社会階層の影響への誤解/子どもをコントロールする親、子どもに振り回される親/子どもとの愛着関係は親しだい/物質依存の温床になる危険/遺伝と環境が逆転する〝15歳〞
第4章 教育環境を選ぶ――学校の内と外
歳を重ねると強くなる遺伝の影響/個人の経験が脳に与える影響/進化的に見た教育/すばらしき学校生活/事例2 《高校野球に生きるRさんとDさん》(1976年生まれ、聞き取り時46歳、男性)/野球との出会い/甲子園への憧れ/中学時代の監督の存在/挫折を経て体育教師を天職に/あまりにも似た足跡/事例3 《SEで活躍するHさんとTさん》(1981年生まれ、聞き取り時41歳、男性)/乳幼児期の記憶と他者とのかかわり/5歳で見つけた退屈の紛らわし方/祖母がくれた本からファンタジーの世界へ/理科教師の母親とサイエンスへの関心/共通点は学校での刺激と将来とのつながり/事例4 《建築家となったSさんとYさん》(1990年生まれ、聞き取り時32歳、男性)/絵を描くのが好きだった/自作ゲームにはまった小学校時代/建築の道へ/事例5 《踊りに導かれるAkさんとYkさん》(1975年生まれ、聞き取り時47歳、女性)/守ってあげたくなる人柄/バレエ教室と音楽クラブ/内側から「はい上がってくる」感覚/志望校不合格で見失った目標/「踊りが下手な友達」というきっかけ/プレイヤーから指導者へ/身体感覚が選択を導く?/学校という環境が広げる可能性
第5章「自由な社会」は本当に自由か?
「自由な社会」が突きつける過酷さ/都会と田舎、どちらが自由?/「のんべえ」は都会の方が遺伝!? /女性に影響する、未婚か既婚か/まばたきと遺伝/民主的な社会と遺伝のばらつきの関係/しつけの文化比較/すばらしい新世界が生む格差
第6章 そもそも、子どもにとって親とは?
親に「こうあるべき」はない/親がもっとも努力すべきこと/親が期待するほど、子は親の影響は受けない/斉藤和義も歌っている「諦め」/「素質に合う」は実在しない/子どもの「好き」を大切に
Posted by ブクログ
双生児の研究に30年以上携わってきた行動遺伝学の第一人者である著者が、子どもの教育と遺伝との関係について、科学としての行動遺伝学の知見に基づいて解説。
「いかなる能力もパーソナリティも行動も遺伝の影響を受けている」という科学的事実を指摘しつつ、「遺伝によって決まっている」ということは否定し、ヒトは遺伝の影響を受けながら環境に対して能動的に自分自身をつくり上げている存在だとして、子育て、教育におけるヒントを提示している。
思っていたよりも能力やパーソナリティ等において遺伝の影響が大きいということを理解したが、遺伝的素質を発揮させるためにも親による教育が一定の役割を果たすということも認識し、まさに子育て中の身として本書の知見を活かしていきたいと思った。特に、子どもの親に対する愛着形成には遺伝要因はほとんどないということだったので、愛着形成に努めたいと思う。
「遺伝は遺伝しない」というのも目から鱗だった。遺伝の影響力が強い割には、親子でも似ていない部分も多いということについて、その背景がよく理解できた。
また、本書で紹介されている5組の双子のライフヒストリーは、遺伝の影響云々を抜きにしても、人生というものについて考えさせられる、とても興味深いものだった。
Posted by ブクログ
一読推奨。
親として肩の荷が軽くなる本です。
【全体要約】
結論は、学力や身長のような指標には相応の遺伝率が存在しつつも、学習機会・家庭文化・しつけの在り方など“環境”も確かに効く、ただし効き方は領域ごとに異なる――という二層構造である。教育の実践論としては、読み聞かせ等の文化的環境の付与は効果があり、統制的・暴力的な関わりは逆効果になり得る一方、人格・社会的態度は「非共有環境」主導で親の影響は限定的、という冷静な見取り図が提示される。
章立て(本文)
第1章 行動遺伝学の基本:遺伝×環境の相互作用
第2章 遺伝率とランダムネス:きょうだい差と「遺伝は遺伝せず」
第3章 学力・知能:共有環境が効く領域と親の出番
第4章 パーソナリティ・発達特性:非共有環境と親影響の限界
第5章 社会階層・制度・自由:遺伝の可視化と抑圧のリスク
第6章 親と教育実践への含意:何を“足し”、何を“引く”か
各章の詳細(本文)
第1章 行動遺伝学の基本:遺伝×環境の相互作用
ふたご研究は遺伝の影響を測るが、同時に環境の影響も浮き彫りにする。
「遺伝の影響を受ける」と「遺伝で決まる」は別概念。決定論を退ける立場。
遺伝子は環境に応じて発現を変える。親の関わりも“環境”として遺伝子表現に影響。
子は環境の受け手であると同時に、遺伝的素質を通じて環境を“能動的に選び・解釈”する。
教育議論では、遺伝と環境の分割ではなく“相互作用の設計”が焦点となる。
第2章 遺伝率とランダムネス:きょうだい差と「遺伝は遺伝せず」
身長の遺伝率は高い(80–90%)が、残りは環境で説明される。
能力・顔立ち等は“多因子”で、メンデルの独立の法則に従う組合せのランダム性が大。
同じ親から生まれても、きょうだいの外見・能力差は“ありふれた現象”。
「遺伝は遺伝せず」とは、個別の遺伝子が子へ必ずしも同じ形で伝わらないという確率論的含意。
子を“親の複製”とみなさず、独自の個性として観察する姿勢が重要。
第3章 学力・知能:共有環境が効く領域と親の出番
知能・学力には共有環境(家庭の学習資源、語彙・読書文化など)が顕著に現れる領域がある。
読み聞かせ・読書機会は成績分散の一部を有意に説明し、遺伝的素質に関わらず“上積み”が可能。
「勉強しなさい」は平均的には“成績が良いから言わなくて済む”という逆因果の含み。
それでも遺伝要因は無視できない規模(しばしば20–50%超)。
親の働きかけと子の遺伝的素質の“駆け引き”が、行動・成績の動態を形づくる。
第4章 パーソナリティ・発達特性:非共有環境と親影響の限界
パーソナリティや社会的態度は、共有環境の影響が乏しく、非共有環境(個々の経験)が主。
同じ家庭で育っても、別々に育っても、人格の類似度は大差ないという知見。
多動・不注意の高い子ほど、統制的子育てが問題行動を増幅しやすい(悪循環に注意)。
遺伝子検査の“神話化”には警戒が必要。実際の実践的行動変容の方が予測力を持つ場面が多い。
「まっとうな環境」(虐待・極端な貧困なし、社会に開かれている)を前提にすれば、親の効果は限定的。
第5章 社会階層・制度・自由:遺伝の可視化と抑圧のリスク
高い社会階層では、選択の自由が広がることで遺伝的個人差が“表出”しやすく、相対的に遺伝率が高く見える。
低い階層では、選べる環境の幅が狭く、共有環境(親の作る環境)の寄与が大きく出やすい。
制度や文化が強く統制すると、遺伝の影響は“見えにくく”なるが、消えてはいない。
自由が拡大すると、遺伝的ばらつきがより可視化され、分断の力学が強まる可能性。
政策は、自由と包摂の両立を意識し、環境改善による“発現機会の平準化”を狙うべき。
第6章 親と教育実践への含意:何を“足し”、何を“引く”か
“足す”べきは、読み聞かせ・音楽・文化的刺激・規律ある生活習慣などの環境的資本。
“引く”べきは、暴力・恐怖・過度の統制。とくに特性に課題のある子ほど逆効果になり得る。
子の反応は遺伝的素質を通じて生じる“選択と解釈”であり、親の意図通りには受け止められない。
親の最重要任務は「親以前に一人の人間として、まっとうに生きる姿を示す」こと。
子どもが“思い通りにならない”ことを前提に、投資は冷静に、しかし機会提供は怠らない。
各章の要約(本文)
第1章 要約:遺伝は“決める”のではなく“影響する”。環境は受動的に与えられるだけでなく、子の遺伝的素質によって能動的に選ばれ・解釈される。教育はこの相互作用をどう設計するかが核心である。
第2章 要約:高い遺伝率でも、個別の発現は確率的組合せで決まる。きょうだい差は当然であり、子を独自の個として観る態度が必要だ。
第3章 要約:学力には共有環境が効く領域がある。読み聞かせ・学習資源の付与は有意な上積みを生むが、同時に遺伝の分も確かに存在する。
第4章 要約:人格・社会的態度は非共有環境主導で、親効果は限定的。統制的育児は特性によって逆効果になり得るため、関わり方の修正が実践的論点。
第5章 要約:自由度が高いほど遺伝的個人差は表面化しやすい。制度はそれを抑えも可視化もする。環境整備は“機会の平準化”として位置づけるべき。
第6章 要約:足すべきは文化資本と秩序、引くべきは暴力・恐怖・過干渉。親は“生き方のモデル”を示しつつ、子の独自性と反応の多様性を織り込む。
Posted by ブクログ
遺伝を遺憾無く発揮出来るよう、環境を整えてあげること(=教育)が大切なことだと分かった。
子どもが成長していく中で何が好きかということに気づけるよう見守っていきつつ、可能な限り最良な環境を与えてあげたいと思った。
Posted by ブクログ
子育てをしていくにあたり、多くの親が何度かは考えたことがあるであろう「遺伝」と「教育」の関係について、行動遺伝学の専門家が、豊富なふたご研究のデータ等をもとに解説する。
人の能力や興味・関心は遺伝に規定されているのだろうか。
それとも、教育や家庭環境により後天的に形成されるのだろうか。
これらの疑問について、行動遺伝学の分野においては、膨大なふたご研究の蓄積によって、実は能力や性格面・行動面における特質、精神的な疾患の発症傾向などにいたるまで、統計的に処理された傾向が既に導き出されている。
ふたごを研究することで、それぞれの側面が「遺伝」による影響が大なのか、「共有環境」(ふたごで言えば二人ともに共通する環境。主に家庭環境)による影響が大なのか、「非共有環境」(それぞれが個々に経験する環境)による影響が大なのかが整理されるというわけだ。
そしてみんなが気になる「知能」や「学業成績」は、遺伝と共有環境(言ってしまえばほぼ両親の影響)でその8割が説明できてしまうという。
しかし、本書の内容にとって上記の部分は核心というより前提。大事なのはそこからで、じゃあ遺伝によって殆どが決まってしまって、手の施しようがないのか、というとそうではない。
あくまで潜在的にそれらの傾向を秘めているのが遺伝要因によるもので、その能力や特質を開花させるのは教育であり環境であるということなのである。
本書を読むと、「遺伝」を過大評価する考え(結局はもって生まれた才能だよ、という価値観)とも、「教育」を過大評価する考え(子どもの将来は親による教育投資で左右できる、という価値観)とも、程よく距離を置けるのではないだろうか。
遺伝が与える影響の大きさに驚きつつも、子どもを健やかに成長させ、その特質を発揮するために親の関わりは不可欠だし、逆に親が一所懸命頑張っても子がある分野(例えば学力)に力を発揮できないとしても、それは親の教育の問題でもなければ、子ども本人の努力不足のせいでもないとも言える。
親として出来ることはする。
でも、その結果子どもがどのように育っていこうとも(公序良俗に反するのでなければ)それを大らかな気持ちで見守ろう。
そういうバランスが、健全な子育て・教育観なのかなという気持ちにさせてくれる一冊。
Posted by ブクログ
教育か、遺伝かという二項対立ではなく、それぞれがどの程度作用し合うのかという理解が深まった1冊。親にはどうにもできない限界があることを知り肩を落とす人もいれば、胸を撫で下ろす人もいそう。
教育現場では、子どもが本来持つ得意や不得意などが顕在化するような環境を整える必要があると、新たな視点から再確認することが出来た。
Posted by ブクログ
ところどころ引っかかる部分はあったけれど、自分の中ではある程度納得したので読んでよかったと思う。遺伝vs教育、ではなくて、遺伝的要素をのびのびと発揮するために教育がある、というイメージかな。長所ばかりが遺伝するわけではもちろんないから、いいところは押さえ込まずに、困りがちなところはなだらかにできるように。
Posted by ブクログ
興味があるタイトルなので読んでみました。遺伝的には同じといえる一卵性双生児を調査したデータが沢山載っており、どの能力・行動に遺伝が影響しているのかが数字で見ることができて新鮮でした。まばたきの回数すら遺伝が強く関係しているとは思っていなかったです。驚くことがたくさんありました。今後の子育てに役立てたいと思います。
Posted by ブクログ
《感想》
面白かった。行動遺伝学それ自体にも興味を持った。良くも悪くも「遺伝で決まる」と言えるようなものはほとんどなく(身長でさえそう)、確率的にブレることもあれば、共有環境(親の育て方)だったり、非共有環境(友人関係・学校やクラスの影響)も無視できない。「はっきりとしたこと(分かりやすいこと)は言えない」が真実といえるだろうか。その中でも何がどの程度遺伝や教育で説明できるか、などを統計等を駆使して科学的に追究している点が興味をそそられた。双子を追う、というのも面白いと感じた。図の見方が分かりにくい箇所が何点かあったが全体的によく書かれた本だと思う。ざっと読むというよりはじっくり読むタイプの本だろう。欲を言えばもう少し題材を絞り、代わりにもう少し優しい内容にしてもらえると尚良かった。
《メモ》
①行動遺伝学とは、遺伝が行動に及ぼす影響を明らかにする学問。基本精神は「いかなる能力も性格も行動も遺伝の影響を受けている」。
②身長は遺伝子だけで決まっているわけではない。10%〜20%は遺伝では説明されない環境の影響が関わっている。
③一卵性や二卵性の双子の類似性や相違性を調べることで、遺伝、共有環境、非共有環境の影響を調べられる。
④教育の定義→「独力では身につけにくい知識や技術を学びやすくするために他者がわざわざ手助けすること」
⑤子どもの学力評定に統計的に優位であるとわかったのは「本の読み聞かせや読書の機会を与えること」「『勉強しなさい』と言わないこと」「子どもを叩いたりつねったりしないこと」「子どもを自分の言いつけ通りに従わせること」(以上は因果関係とは限らない)。
Posted by ブクログ
教育に携わる者として、また、親になりたい者として非常に惹きつけられる題名だった。結論、教育にできること、親にできることが明確になった。仕事に、プライベートに生かしていきたい。
Posted by ブクログ
教育は遺伝に勝てるほど強くはないが、遺伝をこの世界で形にしてくれるのが教育である。
親がどのような子育てをしようと、人は遺伝的素質を通して自分の人生を築き上げていく。
逆にいえば、教育で触れることがなければ遺伝的素質を発揮する機会がないかもしれない。
(例えば数学が得意な遺伝子を持っていても、数学に出会わなければ…ということ)
また環境が狭ければ狭いほど環境に左右され、自由度が高ければ遺伝に左右される。基本的には大人になるにつれて自由度が高まるので、遺伝の影響が高くなる。遺伝と教育が逆転するのは15歳と言われている。
学校は良い学歴を勝ち取るという形式的な側面だけでなく、一人一人の個性を文化と社会の中に位置付けてくれる実質的な機能を果たしており、遺伝子の豊かな発現を促す機会を提供している。
「遺伝」というと「親に似ること」だと思いがちだが、遺伝子分配の確率的なランダムネスから生ずる現象で凡人から天才が生まれる可能性もあるし、その逆もありうる。
なので、遺伝の影響が大きいという科学的根拠があっても、「自分の子だからこれが得意なはず」と言った考えはせず、自分とは異なる独自の存在であること、その個性を素直に見届けることが大事である。
一卵性双生児(元が1つの受精卵から発生しており、遺伝子が同一)の研究データやヒアリング内容を元にしていて興味深かった。
まさに一卵性双生児の子育て中なので気になって軽い気持ちで手に取ったが、本書のおわりににあるように「遺伝というものが運命を決める悲観的なものではなく、ダイナミックで魅力的なもの」だと感じることができた。
▼別々に育った双子の話で面白かった事例
・潔癖な双子の事例
それぞれに潔癖の理由を聞くと、一人は「母親が綺麗好きだったから」、一人は「母親がだらしなかったからその反動」だという。本人の意識を超えたところで働いている遺伝的特徴を、合理的に説明しようとした時の後付け。
→自分も、自分の性格や特徴について「親の〇〇なところを見て育ったから」と思っていることが多いが、これも後付けしたそれっぽい説明であり、本当は遺伝的な特徴なのだと思うと面白いと感じた。
・何にでもシナモンをかける双子の事例
片方の親は「この子はシナモンをかけないと何も食べないからダメ」と言い、もう片方の親は「シナモンさえかければなんでも食べるからいいわよ」と言う。
同じ遺伝的な特徴もどう受け止めるかの問題で親子関係が異なったものになる。
→子育てをしていると「私の育て方が悪かったんだ」と思ってしまうこともよくあるが、遺伝的な要素が大きいというとなので、出来るだけ前向きに捉えたいと思った。
Posted by ブクログ
遺伝について興味があり、この手の話は何冊も読んできました。
結果、無慈悲にも遺伝は努力ではどうにもできないという研究結果がいくつもあることを知りました。
本書でもそれを裏付けた内容ですが、遺伝的特徴を活かしたアプローチをすることによって教育が勝つというか、教育の意味があるんだなあと思いました。
私には子供がいないので、もっぱら自分の親を思い浮かべで読みましたが、実際結婚し親元を離れて何十年も経った今の方が親の遺伝の影響を受けているとあらためて感じます。将来、両親のような心待ちで老後を過ごせる可能性が高いことはとてもうれしく思っていますが、今自分が出来ることも自分の特性を鑑みながら努力していきたいと思いました。
繰り返しになりますが、実際親がどのような子育てをしようと、子供はその中から、その子の遺伝子的素質を通して取り入れられるものを取り入れ、そうでないものには距離を置いて、その子自身の心で自分の人生を築き上げていくのです。
それを実際のデータで示してくれるのが双生児による行動遺伝学研究です。
同じ親に育てられても、別の親に育てられても、子供は同程度に類似してしまい、環境の変化はもっぱら非共有環境の影響のみであることは、行動遺伝学の発見した重要な原則。要するに、どこで誰に育てられようと、子供は「おおむね同じように」育っていく。
環境が自由になるほど、選択肢が広がって遺伝的な差がはっきりとあらわれる社会になる可能性が高くなるのです。面白い。
Posted by ブクログ
一卵性双生児の研究を中心に、人間の遺伝の仕組みやを解説してくれる行動遺伝学の入門書。遺伝について、なんとなく親に子が似ることでしょ、くらいの認識でいた人間としては、目からうろこの知識が多く、すごくためになった。
異なる人生を歩みながらも、どこか似た経験をする双子のライフストーリーも面白かった。が、個人的に、印象に残ったのは、一番最初に説明される「遺伝は遺伝せず」の話だった。
中学だったか、高校だったかで学んだ記憶のある「メンデルの法則」について説明している部分である。遺伝子には、優生のものと、劣性のものがあり、純血の緑色と黄色のエンドウマメを掛け合わせても、黄色のものしか生まれない。改めて緑色のマメが生まれるのは、さらにその次の世代で、そもそも、遺伝というのは、親に似るわけではないということになる。
人間の場合、見た目や能力などの遺伝に関わる遺伝子は、数億個もある。その組み合わせは、エンドウマメの色なんかよりもはるかに複雑で、どんな親であっても、どんな子どもが生まれるかは、ほぼランダムだという。
生まれてきた子どもは、成長するに従って、進路や就職など、自分自身で決められることが増えていく。そして、そうした選択には、遺伝的な影響がある。面白いのは、大人になるにつれて、人生の選択や能力に、元々本人が持っていた遺伝的な影響や、偶然の環境の影響の方が、家庭環境よりも大きくなっていくことだ。
つまり、どのように育てても、子どもは育つようにしか育たないのだという。
では、周りの大人の働きかけは、無意味なのだろうか。著者が出す例が分かりやすい。
たとえ、数学の才能があったとしても、その子に誰かが数学の教科書を与えてあげなければ、その子が数学の才能を発揮することはない。
著者が、行動遺伝学から考える大人にできることは、子どもたちの人生にとっての一人の選択肢になることだという。遺伝を全てを決定するものではなく、大人の在り方にも「こうあるべきこと」はないのだということ。
大人もまた、自分らしくあることの意義を教えてくれる本だった。
Posted by ブクログ
・環境が自由になればなるほど、遺伝的な格差が現れる
・遺伝という素材をこの世界で形にしてくれるのが教育
・教育が遺伝的素質に文化的影響を与えてくれるからこそ、遺伝が表現される場が作り上げられる
Posted by ブクログ
教育は遺伝に勝てない。言い換えると、遺伝は教育に負けるほど弱くはない。しかし、遺伝(資質)の開花には、それが芽吹くための環境が必要である。
子を育む環境は、親をはじめとした周囲の保護者、隣人によって作られる。特に親は、その子が持って生まれた素質が健やかに花開くよう機会を作ること、興味を持ったことを応援することに努めることが望ましいと思った。
反対に親が子をこうしたい、と熱心に努めても、子は与えた環境の幾分かを、子の持つ遺伝の範囲でのみ受け取る。よって教育による上積みはあるものの子が親の思う通りに育つことはない。
教育とはその程度と割り切り、棍を詰めすぎることなく、親子共々、日々を機嫌良く過ごすのが良いと思いました。
Posted by ブクログ
親が期待するほど、子は家庭環境の影響は受けない。影響度の大きさは「遺伝子>非共有環境>共有環境」の順になる。とはいえ、知能や技能の形成には、共有環境の累積的な影響も受ける。
自由で平等な環境(社会階層の高さや社会体制)は、遺伝子の影響を増幅させる。一方、貧困状態や制約の高い環境では環境要因が強く働き、遺伝の影響は抑制される。
子どもが健やかに成長するための最低限の環境整備は欠かせない。一方で、親としては子どもの遺伝的特徴を「良いもの」と信じたくなるが、必ずしもそうとは限らない。そう考えると、遺伝の影響を過度に強めるような環境づくりが本当に望ましいのかなと考えてしまう。
Posted by ブクログ
行動遺伝学という学問からみる教育論。
我が子に少しでもいい教育をするには、親は何ができるの!?と、育児本を読みあさる人(私自身を含む)には、ちょっとした目からウロコかも。
結局、親はなんにもできないんだなと(笑)。
子どもは、自身がもって生まれた性質をのびのび伸ばして行きていくようにできているし、それをのびのび伸ばしてやれるように応援するのが、親の役割なのかな。
それは決して絶望などではなく、むしろ、自分の責任で子どもの生き方が決まったりなどしない!と、真面目すぎる親御さんの肩の荷を下ろすものでもあると思う。
Posted by ブクログ
・遺伝の影響を受ける
・環境の影響を受ける
・子どもの好きを大切に
一卵性の双子が、別の家庭環境で育てられて
その後、どちらも整理整頓が得意になる
①母親が整頓整頓が好きだから
②母親が整頓整頓が苦手だから
環境は後付けで遺伝的な影響を受けているエピソードにとても興味を引いた。
反面教師として何かを伸ばすことも環境に反応して遺伝の影響を受けているのかもしれない。
遺伝子検査で得意なものを発見し、
それを効率良く伸ばして‥のような攻略法は無い
色々やってみて感じることが大切なんだ
Posted by ブクログ
双子研究における行動遺伝学の成果を知る上では参考になった。ただ,遺伝・共有環境・非共有環境の影響割合を始めとした統計データの解釈は,より多くの批判的検討が必要だろう。また,教育への介入(その後の効果の評価)の可能性も考えた方が良いのでは。
Posted by ブクログ
タイトルを思いついた時点で、勝ちみたいな種類の本だったけど、内容も面白かった。遺伝は強い!でも、ある程度の家庭環境と教育は必要!ということが分かって、良かった。
Posted by ブクログ
一卵性双生児や二卵性双生児の比較による統計などから導かれた考察が紹介されている
人の持つ特性を遺伝、共有環境、非共有環境それぞれの影響度合いを測り、どの程度が遺伝による特性なのかといったデータも幾つか示されている
それから類推すると、一概には言えないが性質など先天性の強いものは遺伝要因が強く、後天性のものは環境要因が強い傾向にあるよう読み解ける
逆に言えば教育や社会環境などの制限、制約により遺伝的格差は抑制されている
つまり、自由度が高ければ高いほど遺伝による資質が強く出てきてしまうと言える
現代社会は個性の尊重や受容という美辞麗句で如何にも倫理的に優れた世界を目指しているようだが、枠を外すことにより格差は広がって行くのではないかとの懸念を感じる
遺伝の要素が強く出るような社会の行き着く先はかつての優生思想になりかねないのではないか