【感想・ネタバレ】教育は遺伝に勝てるか?のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年02月20日

一卵性双生児の研究を中心に、人間の遺伝の仕組みやを解説してくれる行動遺伝学の入門書。遺伝について、なんとなく親に子が似ることでしょ、くらいの認識でいた人間としては、目からうろこの知識が多く、すごくためになった。

異なる人生を歩みながらも、どこか似た経験をする双子のライフストーリーも面白かった。が、...続きを読む個人的に、印象に残ったのは、一番最初に説明される「遺伝は遺伝せず」の話だった。
中学だったか、高校だったかで学んだ記憶のある「メンデルの法則」について説明している部分である。遺伝子には、優生のものと、劣性のものがあり、純血の緑色と黄色のエンドウマメを掛け合わせても、黄色のものしか生まれない。改めて緑色のマメが生まれるのは、さらにその次の世代で、そもそも、遺伝というのは、親に似るわけではないということになる。
人間の場合、見た目や能力などの遺伝に関わる遺伝子は、数億個もある。その組み合わせは、エンドウマメの色なんかよりもはるかに複雑で、どんな親であっても、どんな子どもが生まれるかは、ほぼランダムだという。

生まれてきた子どもは、成長するに従って、進路や就職など、自分自身で決められることが増えていく。そして、そうした選択には、遺伝的な影響がある。面白いのは、大人になるにつれて、人生の選択や能力に、元々本人が持っていた遺伝的な影響や、偶然の環境の影響の方が、家庭環境よりも大きくなっていくことだ。
つまり、どのように育てても、子どもは育つようにしか育たないのだという。

では、周りの大人の働きかけは、無意味なのだろうか。著者が出す例が分かりやすい。
たとえ、数学の才能があったとしても、その子に誰かが数学の教科書を与えてあげなければ、その子が数学の才能を発揮することはない。
著者が、行動遺伝学から考える大人にできることは、子どもたちの人生にとっての一人の選択肢になることだという。遺伝を全てを決定するものではなく、大人の在り方にも「こうあるべきこと」はないのだということ。
大人もまた、自分らしくあることの意義を教えてくれる本だった。

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Posted by ブクログ 2024年01月29日

・環境が自由になればなるほど、遺伝的な格差が現れる
・遺伝という素材をこの世界で形にしてくれるのが教育
・教育が遺伝的素質に文化的影響を与えてくれるからこそ、遺伝が表現される場が作り上げられる

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Posted by ブクログ 2024年01月08日

 本書で遺伝とは、生まれ持った素質を指す。
 教育は遺伝に勝てない。言い換えると、遺伝は教育に負けるほど弱くはない。しかし、遺伝の開花には、それが芽吹くための環境が必要である。
 子を育む環境は、親をはじめとした周囲の保護者、隣人によって作られる。特に親は、その子が持って生まれた素質が健やかに花開く...続きを読むよう機会を作ること、興味を持ったことを応援することに努めることが望ましいと思った。
 反対に親が子をこうしたい、と熱心に努めても、子は与えた環境の幾分かを、子の持つ遺伝の範囲でのみ受け取る。よって教育による上積みはあるものの子が親の思う通りに育つことはない。
 教育とはその程度と割り切り、棍を詰めすぎることなく、親子共々、日々を機嫌良く過ごすのが良いと思いました。

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Posted by ブクログ 2023年12月26日

生きるとはなんだろうか。
自分とはなんだろうか。

これまでいろいろ考えてきたような気もするけれど、整理すると、上記のようなことに収斂させることができるのかもしれない。

最近気になっていることの一つは、遺伝。

自由意志を想定しようとしても、その基礎となる自己を確定しようにも、たどり着くのは...続きを読む受精卵となることを考えると、そんものはない。
という結論に至らざるをえない。

だとすると、残るのは、遺伝、環境・偶然、ということになるのではないか。

だとしても、意志、自由みたいなものをなんらかの形で信じることなく、この人生を歩み続けることはできない。
ように思う。

そうした、疑問にも一定程度、考える手がかりをくれたという意味で、よい本だったように思う。

高校生の頃、理解したつもりの、生物学としての遺伝に関する話。
なんだか理解が面倒で、ほぼ読み飛ばしてしまったのは、怠惰のせいか、退化なのか。
退化でないことを願いたい。


すばらしい新世界が生む格差
本章では育つ社会によって遺伝と環境のあらわれ方が異なるという事例を数多く紹介してきました。そこで見えてきたのは、環境が自由になればなるほど、遺伝的な差がはっきりとあらわれる社会になる可能性があるということです。
え?社会が自由で平等になれば、人々の差がなくなることになるんじゃないの?
そうではなくて、そのときこそ一人ひとりの遺伝的な素質が自由に表現できるようになり、その結果、そこにあらわれるあらゆる差は、遺伝的な個人差が生み出したものになるというわけです。
(中略)
誰にも目由が与えられた「すばらしい新世界」では、とりもなおさず、遺伝的なその人自身があらわされ、個人差が広がることになるのです。それをいま民主的な国で起こっているような分断に陥らせることなく、異なる人々が互いに協力しあう社会をつくるにはどうすればよいのか。子育てについても政治制度についても、環境のあり方を考えるとき、同時に遺伝についてもきちんと理解をする必要があるのです。
P210-212

そもそも個性的であること、何らかの才能を発揮すること、志をもって人生を貫くことをよかれと考えること自体が、一時の流行にすぎません。ボトムラインは、まず生き抜くことです。それすら大事業です。個性や才能や志は、その人の時代と環境で見つかる人もいれば見つからない人もいる。それは遺伝と環境の条件の偶然が生み出す必然です。あなた自身の人生をふり返ってみても、そうだったのではないでしょうか。あなたのお子さんも、きっとその子なりに、その必然を生きていくはずです。
P240

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Posted by ブクログ 2023年12月06日

遺伝=親から受け継ぐもの、ではなく持って生まれたもの。

「遺伝をこの世界で形にしてくれるのが教育だ」
「教育なしに遺伝は姿をあらわさない」
教育が遺伝的素質に文化的環境を与えてくれるからこそ、遺伝が表現される場が作り上げられる

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Posted by ブクログ 2023年11月19日

興味深い内容だった。自分が今まで「遺伝」について感じていた「薄々気が付いていたこと」や「モヤモヤしていたこと」を、丁寧に言葉やデータで説明してくれていた。

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Posted by ブクログ 2023年10月07日

遺伝は教育よりもはるかに大きな影響を与える、さはなさは、遺伝をこの世界で形にしてくれるのが教育でもある。一卵性双生児の比較研究から、遺伝、共有経験、非共有経験の寄与度を測定しているところが説得力ある

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Posted by ブクログ 2023年08月25日

さまざまな事例を交えながら、「子育ては遺伝or環境」論争に、一定の答えを得られた。私自身教員の端くれとして、また親として、子どもたちへの働きかけに限界があるのではないかと考えていたので、ある程度すっきりした気分ではある。難しい内容が非常に平易で書かれているので、ストレスなく読み終えることができた。

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Posted by ブクログ 2023年08月11日

環境に左右されるほど遺伝の影響は弱くない。
だけれども遺伝で全てが決まるほど世の中は単純じゃない。
白と黒の間にある多彩な色の交互作用があることを忘れてはいけない。
視野が広がる一冊。

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Posted by ブクログ 2023年08月09日



タイトルに惹かれ購入。
中高で学習したメンデルの法則についてはじめに述べられており、遺伝と環境が成長に与える部分について分かりやすく読み進めることができた。

やはり、遺伝の影響は環境よりも大きい。圧倒的である。また、何がどのように遺伝するかは完全にランダムであり予測できないが、環境と遺伝の影響...続きを読む率について、以下のような事項が数字で示してある。
身長…遺伝80-90% 環境10-20%
知能(児童期)…遺伝41% 環境33%非環26%
知能(青年期)…遺伝55%環境18%非環24%
知能(成人期)…遺伝66%環境16%非環18%
成績…遺伝(小)25-55%→(中)14-40%
*理数系の科目の方が遺伝率は低い。
パーソナリティ…遺伝35-50%環境0%非環50-65%
*精神疾患・発達障害も環境0%

遺伝子の組み合わせは無限にあり、それゆえに一人ひとりの個性が生まれる。中には珍しい遺伝子の組み合わせにより、いわゆる「どちらの親にも似ていない子ども」も生まれ得る。

子育てする身として、諦念を持った上で子どもに関わるのが大切だと気づいた。楽観的に。
遺伝とは直接的には関係ないかもしれないが、この本を読んで、自分の心に突き刺さったのは「そもそも個性的であること、何らかの才能を発揮すること、志をもって人生を貫くことをよかれと考えること自体が、一時の流行にすぎません。」という一文。自分は改めて出来もしないのに完璧を求めるエセ完璧主義者だと気付かされた。
先日読んだ思考の整理学と通ずる部分がある。
肩肘張らず生きていきたい。前向きに。

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Posted by ブクログ 2023年07月30日

遺伝についての考え方が科学的な根拠とともに解説されている。
教育は遺伝の発現をいい方向に促すために必要だという考えはしっくりきた。

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Posted by ブクログ 2024年04月03日

タイトルを思いついた時点で、勝ちみたいな種類の本だったけど、内容も面白かった。遺伝は強い!でも、ある程度の家庭環境と教育は必要!ということが分かって、良かった。

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Posted by ブクログ 2024年02月18日

一卵性双生児や二卵性双生児の比較による統計などから導かれた考察が紹介されている
人の持つ特性を遺伝、共有環境、非共有環境それぞれの影響度合いを測り、どの程度が遺伝による特性なのかといったデータも幾つか示されている
それから類推すると、一概には言えないが性質など先天性の強いものは遺伝要因が強く、後天性...続きを読むのものは環境要因が強い傾向にあるよう読み解ける
逆に言えば教育や社会環境などの制限、制約により遺伝的格差は抑制されている
つまり、自由度が高ければ高いほど遺伝による資質が強く出てきてしまうと言える
現代社会は個性の尊重や受容という美辞麗句で如何にも倫理的に優れた世界を目指しているようだが、枠を外すことにより格差は広がって行くのではないかとの懸念を感じる
遺伝の要素が強く出るような社会の行き着く先はかつての優生思想になりかねないのではないか

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Posted by ブクログ 2024年02月14日

勉強不足の私には難しかったです。読み終わって思うのは、教育や遺伝を個を作る絶対的な要因として考えるのではなく、自分や他人を理解するための材料の一つと考えた方が気が楽かなぁという事でした。

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Posted by ブクログ 2023年11月30日

全てを理解できてないけどすごく面白い内容だった一卵性双生児の比較研究など興味深いものが多かった。遺伝はすごい。

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Posted by ブクログ 2023年09月26日

一卵性双生児と二卵性双生児を比較して、遺伝の影響の度合いを測る、という手法が面白かった。

印象に残ったこと
・タイトルに対する結論「教育なしに遺伝は姿をあらわさない」(あとがきより)
・まっとうな養育環境であれば、子どものパーソナリティには大した違いはない。→気楽に子育てしよう、てことか

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Posted by ブクログ 2023年09月11日


主に双子を対象に遺伝の傾向+環境の影響を調査した結果が語られます。

中学生くらいだと遺伝&環境の学力に与える影響が結構大きくて震えました。親ガチャ!

でも遺伝も環境も絶対じゃないので子を育てるのに解はなし。遺伝かーと気楽に考えつつ、一人一人の子に対して試行錯誤していくのは変わりないですね。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年08月31日

「教育は遺伝に勝てるか?」
親や家庭の環境が関わるとされている学力、知能、非行、飲酒喫煙などの例外を除き、多くの側面で共有環境の影響はほとんどないのが事実である。その効果量は数%だけで圧倒的に遺伝や非共有環境の影響が大きい。
しかしその数%でも自分が見える世界に少なからず変化を与える。親として、他者...続きを読むとして、関わりを持つとき変化を与える可能性があるのであれば、少しでも良い影響を与えられる素敵な人でいたいと思った。

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Posted by ブクログ 2023年07月31日

遺伝も教育も不可分なものでどちらも大事といった論旨で理解しているけどなんか違う気がする。
全て遺伝子のせいにはできないし、全て教育のせいにはできない。
でも明らかに僕たちはそれぞれの持つ遺伝子に行動を左右されている。

これは僕のためのメモだが、教育よりも認知に関心があるかもしれない。

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